六三二話 連動連撃
トウマを倒すべくヒロムたちは力を合わせて挑んでいた。
「でりぁ!!」
「オラァ!!」
激しい雷撃を纏うシオンと紅蓮の炎を纏うソラは二人同時に攻撃を放ってトウマを倒そうとする。
轟音響かせる雷撃と燃え盛る紅蓮の炎は勢いよくトウマに向かって飛んでいくが、トウマが首を傾げると二つの強い力は目に見えぬ何かによって防ぎ止められて消されてしまう。
二つの強い力が消えるとトウマは闇の翼を大きく広げ、闇の翼が広げられると翼から漆黒の雷撃と炎が放たれる。
放たれた漆黒の雷撃と炎をシオンとソラは纏う力を強くさせて動きを加速させることでそれを避けるが、攻撃を避けた二人はトウマの攻撃についてある事を感じていた。
「コイツ……!!
オレとシオンの攻撃を真似てやがるのか!!」
「真似るとかいうレベルじゃねぇ!!
コイツ本来の力が高いせいで放った攻撃が元々の力のように作用してやがる!!」
「ちっ……こっちの攻撃はワケわかんねぇ力に止められるし、面倒な野郎だな!!」
「つうかアイツの「天霊」の力はオマエとノアルの使う「魔人」の力が有効的じゃなかったのか」
「そのはずだ。
「魔人」の力と「天霊」の力は相反する存在、そして「魔人」の力はそんな関係性でありながら「天霊」の力に対して強い力を発揮する……って聞いてたんだが、話が違いすぎる!!」
ソラは紅い拳銃「ヒート・マグナム」を構えるなり紅蓮の炎を巨大な弾丸として数発放ってトウマを仕留めようとするが、放たれた紅蓮の炎の弾丸はトウマに襲いかかる中で何かによって防がれ消されてしまう。
ソラの紅蓮の炎は「魔人」の炎、それも「炎魔」の名を冠していたイグニスと心を一つにして完全な「魔人」の力へと進化した力だ。
その完全な力となった「魔人」の炎をトウマは防ぎ消しているのだ。
双座アリスによって導かれ、その教えに従いソラは仲間であり家族でもあったイグニスと一体化して完全な「魔人」の能力者に進化したはずなのに、その力が今のトウマには通用していない。
「単純な能力的な面では「魔人」が上回るようになってるはずだが、今のアイツは機械天使が混ざってんだろ。
その機械天使に何か細工がされてるとすれば……まず考えられるのは「天霊」の弱点である「魔人」の力を抑制する機能的なものだろうな」
「面倒な細工を施してやがるな。
このままじゃアイツにダメージも与えられないのに」
「それは可能だ」
ソラとシオンがトウマの前の目に見えぬ何かに攻撃が妨害されてダメージを与えられないことに苦戦しているとヒロムは左手の白銀のブレスレットを緑色に光らせながら二人に伝えた。
「アイツは攻撃と防御のどちらかにしか力を発揮できない。
こっちの攻撃を防ぐ場合はカウンターはできない代わりに攻撃を放つ間は無防備になる。
ダメージを与えるなら……それが切り替わる瞬間が狙い目だ」
ソラとシオンに説明するとヒロムは左手をトウマに向けてかざし、かざした手から巨大な雷撃を放つ。
放たれた雷撃はトウマに迫る中で目に見えぬ何かによって防がれるが、防がれると同時に炸裂して衝撃を解き放つと一方的にトウマを吹き飛ばしてみせる。
「……まぁ、それを上回る力があるなら別みたいだがな」
「オマエが実演してくれたからそこは理解出来た」
「だがヒロム、オマエの言う切り替わりの瞬間をオレとソラが狙ったとしてそれだけで倒せるのか?
ヤツはオレたちの攻撃方法から独自の攻撃手段を学んでいる。
長期戦になれば……」
「長期戦もクソもねぇよ。
要は……アイツを倒しちまえばいいだけのことだ!!」
シオンの言葉にどこか適当にも聞こえるような言葉を返したヒロムは吹き飛ばしたトウマに向けてさらに雷撃を飛ばし、飛ばされた雷撃は吹き飛ばされたトウマに襲いかかる。
雷撃はトウマに襲いかかると轟音を響かせながら力を増して大きくなり、大きくなった力はトウマの体を焼こうと……するかのように見えたが、トウマは雷撃で体を負傷しながらも闇の翼を羽ばたかせて勢いよく飛翔して体が妬かれるのを回避すると天からヒロムたちに向けて漆黒の雷撃を無数の矢のように放っていく。
放たれた漆黒の雷撃の矢が雨の如く降り注ぐ中ヒロムは左手の白銀のブレスレットに藍色の輝きを纏わせながら構えようとしたが、彼がそうするよりも先にどこからともなく黒炎を纏った蛇の形をした影がトウマの放った攻撃を全て食い潰してしまう。
「「!!」」
「死獄輪廻!!」
蛇の形をした影が来た方向……その先にいるイクトが叫ぶと突然大地と天に亀裂が生じ、亀裂から黒炎が噴き出されると周囲の景色が闇に染まっていく。
闇に染まった景色、景色が一変するとトウマの闇の翼が突然何かによってねじ曲げられ、さらにトウマの体は無数の黒炎の鎖に拘束されて動きを封じられてしまう。
「ゥ……!!」
「イクト!!」
「悪いけど、しばらくの間トウマの能力と思考の繋がりを断つように「死獄」の力で現実を虚構のものに書き換えた!!
しばらくは能力がないと錯覚させられるはずだから二人の攻撃も通るはずだ!!」
「……ナイスアシストだ、相棒!!」
イクトの言葉を受けるとソラは紅蓮の炎を強く纏いながら力を紅い拳銃「ヒート・マグナム」に収束し、ソラが炎を収束する中でシオンはソラの紅い拳銃「ヒート・マグナム」に自らの力たる雷撃も装填させる。
「ぶっ放せ、ソラ!!」
「雷炎合技!!」
「「ヴァーミリオン・イフリート・バスター!!」」
打合せした訳でもないのに息ピッタリにソラとシオンが叫ぶと「ヒート・マグナム」から雷撃を帯びたビーム状の紅蓮の炎が放たれ、放たれた雷撃纏いし紅蓮の炎は防ぐものに阻まれることなくトウマに直撃する。
紅蓮の炎と雷撃がトウマに直撃すると彼を拘束していた黒炎の鎖が破壊され、黒炎の鎖は破壊されると炎を炸裂させながら紅蓮の炎と雷撃に襲われるトウマにさらなるダメージを与える。
三つの力に襲われるトウマの姿は大きな力に襲われる影響もあり倒したかどうかをすぐに確かめられるような状態ではなく、ヒロムたちはただただ倒せたことを祈り、彼が姿を見せるのを待つしか無かった。
だが……
「ゥ……ゥゥ……」
ソラ、シオン、イクトの攻撃を受けたトウマは地上に落下するように姿を見せ、姿を見せたトウマは全身を負傷しながらも闇の翼を背に纏いながら未だに戦える状態を維持していた。
さらに言うなら負傷しているトウマの体は地上に迫る中で徐々に再生しようとしていた。
「野郎……!!」
「どういうことだイクト!!
オマエの能力で書き換えたんじゃないのか!!」
「わかんないよソラ!!
オレの「死獄」の能力は現実と虚構を支配する力だから現実にあるものを虚構の嘘として認識させて封じるようにすれば能力は機能しないはずだから問題ないはずなのに……」
「なら斬るしかない」
トウマの傷が再生しようとしていることにソラたちが困惑していると地上に足をつけようとするトウマのもとへガイが目にも止まらぬ疾風の如き速さで接近して刀を振り上げる。
「いくぞ「飛天」、斬速!!」
ガイが叫ぶと刀は……霊刀「飛天」は蒼い炎を纏ってガイをさらに加速させ、加速したガイはもはや視認不可能なレベルでトウマの周囲を駆けると無数の斬撃を一瞬でトウマに食らわせる。
斬撃を受けたトウマの体は再生しようとしていた負傷の上に新たに負傷してしまうことにより再生を中断するしかなくなり、ガイは続けて白い柄の霊刀「希天」を出現させて装備すると刀に魔力を纏わせながらトウマの周囲に無数の分身を出現させる。
「……「希天」、斬像!!」
ガイが強く言うと彼の分身は刀を構えて一斉に斬撃を放ち、放たれた斬撃はトウマに直撃する。
斬撃の応酬を受けるトウマは完全に怯んでおり、それを見たソラはすかさず「ヒート・マグナム」を構えると紅蓮の炎を弾丸にして撃ち放つ。
撃ち放たれた紅蓮の炎の弾丸はトウマに命中すると炸裂し、弾丸が命中するとソラはある事を確信する。
「イクト、オマエの力は確実に効いている!!
今のオレの攻撃とガイの攻撃を防がなかったということは再生能力以外は封じられてるってことだ!!」
「なら次は再生能力を封じれば……」
「そんなのは二度手間だ。
やるからには徹底的に潰す!!来い、ライバ!!
形態変化!!」
再生能力を封じようと考えるイクトの横からシオンが叫ぶと彼が宿す兎の精霊・ライバが現れ、現れたライバは雷撃となってシオンの右腕と一体化していく。
雷撃となったライバと一体化したシオンの右腕は銀色のアーマーを纏っていき、アーマーに纏われたシオンの右腕は巨大なガントレットを装備した状態となり、さらに彼の体は雷撃と同化したかのような状態になると髪が少し伸びていく。
「雷皇王・拳迅!!」
『兎角、クールに決めるぞ!!』
巨大なガントレットを装備したシオンにガントレットとなったライバが伝えるとガントレットは雷撃を強く纏い、ガントレットが雷撃を強く纏うとシオンは大地を強く蹴って走り出し、そして一気にトウマに接近すると同時にガントレットの拳をトウマに叩きつける。
「『ヴァーミリオン・バスター・ハンマー!!』」
拳がトウマに叩きつけられると同時に雷撃が炸裂し、雷撃が炸裂するとトウマは全身を雷撃に焼かれながら吹き飛ばされて倒れてしまう。
「やった、のか……?」
「動く気配はない。
これだけやれば倒したも同然だな」
吹き飛ばされて倒れたトウマはそこから動く気配がなく、トウマが倒れるとガイたちは彼を倒したと感じていた。
だが、ヒロムは違った。
「……オマエら、構えろ!!」
「え?」
ヒロムが叫ぶとガイたちは少し驚いたような反応を見せ、彼らが驚いたような反応を見せていると倒れているトウマの体が闇に包まれながら起き上がる。
起き上がったトウマは闇に包まれる中で全身に漆黒の鎧を纏い、漆黒の仮面をつけると闇の翼を大きく広げながらガイたちを威圧する。
「こ、これは……!?」
「バカな……!?
トウマの能力はイクトの力で封じてるはずだろ!?」
「機械天使だ。
アイツの中には今三体の機械天使が取り込まれている。
アイツはそのせいで貴虎にルシファーと呼ばれる兵器にされ、今の連撃で完全な兵器に変貌しやがったんだ」
ヒロムの言葉を受けたガイたちは衝撃を受け、その中でガイたちは自分たちの加勢と攻撃がトウマを強くさせたと責任を感じてしまう。
「オレたちが仕留めきれなかったから……」
「ヤツにチャンスを与えちまったのかよ……!?」
「いや、オマエらのおかげでアイツの中の機械天使は外に出てきた。
もしアレを壊せたら……トウマを戻せるかもしれない。
だから、やるって決めたらついてこい!!」
責任を感じてしまうガイたちを鼓舞するとヒロムは走っていき、未だ諦めていないヒロムのその姿を前にガイたちは武器を構えるとトウマを倒そうと走り出す。