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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
631/672

六三一話 繋がる絆


 二年前、氷堂シンクは自らの強さとヒロムの力となる能力者を集めて彼と幼き日に約束した部隊「天獄」の完成のために「八神」を利用して暗躍していた頃、リュクスもまた「八神」の人間である一人の男を利用していた。

 

 名はキキト、「八神」に属する情報屋にしてヒロムの始末のためにイクトを利用し、イクトがヒロムの始末を失敗した際は彼をヒロム共々始末しようとキキトが仕向ける中でシンクは彼に目をつけ、イクトがキキトと決着をつけるべく関西圏に来た時、シンクは素性を隠して「ウィンター」と名乗って彼を導くと共に「八神」の戦力を削ぐためにキキトを始末するよう誘導しながら戦力となる情報を手中に収めていた。

 

 一方のリュクスはキキトと決着をつける前のイクトがキキトの考えや真実を探るべく行動を始めた頃に彼の前に現れ、そしてイクトがキキトを倒した時、キキトが所有していた願望器とされるシェンショウジンのレプリカを回収して雲隠れした。

 

 互いに己の目的のために共通の人間を利用し、片方は後に仲間となり、片方は因縁の相手として再会している。

 

 そして今、同じ人間を利用していた者同士が互いの意志のために戦おうとしている……

 

 

******

 

 冷気を纏い氷の翼を広げるシンクと魔力を纏うリュクス。

リュクスが連れ去ろうとした四条美雪についてらイクトとシオンが連れていかれぬように見張り、変貌したトウマがいつ動いてもおかしくない中吐血してしまったヒロムは集中を解くことなくトウマを見ている。

ソラとガイはおそらくヒロムの加勢に入る、となればリュクスの相手はシンクが単独で担う必要がある。

 

 互いに相手に恨みがある訳では無いが、両者ともに目的とそれに伴う意志と覚悟がある。

 

 だから譲ることも出来ず、そして相手を見逃すことは出来なかった。

 

「ヒロムに仇なすのなら殺すだけだ。

オマエの背後にいるのが誰かは分からないが、少なくとも黒幕の一人である四条美雪を連れ去ろうとしたのならオマエは「八神」を利用してヒロムを陥れたヤツと同罪だ」

 

「おいおい、オレは姫神ヒロムに恨みも何も無いんだけどな。

それに四条美雪が欲しいなら与えるよ。だから……」

 

「見逃せ、と?

悪いが無理な話だ。オマエは「七瀬」の主催したリゾートでヒロムを負傷させるような兵器を持ち込んだ。

それについての責任も取ってもらう必要がある」

 

「おいおい、何か知らない間に増えてないか?

後付けにも程があるだろ?

オレ、やる気なくしちまうじゃないか」


「オマエにやる気がないのならそれでもいい。

それならそれでオレはオマエを容赦なく殺す、それだけだ」

 

「……忠誠心通り越して単細胞なだけかよ。

結局オマエはそこにいるヤツらと何ら変わらないってことだな。

どれだけ自分の強さを示そうとしても、結局根底にあるものは変わらない。それはオマエの人間性も同じだな」

 

「人間性云々は知らんが、少なくともオレはアイツらと違うのは確かだ。

オレはアイツらと違って強さを証明することでしか自分を生かせられない。

これまでの経験から力の証明だけが存在意義と思ってるからな」

 

「アイツ、何言って……」


 だが、とソラが不思議に思っているとシンクは続けて自らの言いたいことを自らの覚悟として話していく。

 

「アイツは人としての強さを持っている。

復讐に動かされていたヒロムは今ではトウマを救おうとし、ガイたちはそんなヒロムのために力を尽くそうとしている。

これまで個々で強さを得ていたアイツらは今は誰かのために強くなっている。

オレとは違う道を進んで得たその力はアイツらを高みに導き、そしてアイツらは今では当主の能力者たちを圧倒する強さに達している」

 

「それで、何が言いたいの?」

 

「オレはアイツらと違う。それは純粋な強さを求めたオレと誰かの力になろうとしたアイツらとで進む先がズレたからだ。

そして……オレの強さでしか出来ない事があるのなら、オマエを殺すしかないという話だ」

 

「へぇ……回りくどすぎて眠りかけたけど、たしかに今の話はその通りだと思うよ。

姫神ヒロムは哀れな弟を救おうとし、そのお仲間は彼の行く手を阻むものを倒すために力を得た。

けどキミは違う。昔から一つの目的のために強くなろうとし、そしてキミはその目的を果たしたことで強くなる理由を失った。

そのキミは理由がないことを隠すために今もオレを殺すと言ってるに過ぎない。

そうだろ?」

 

「かもな。

だが……そんなオレの強さの限界をオマエは知らない」

 

 リュクスの言葉に反論するように言うとシンクは全身に何か強い力を纏い、その強い力が纏われるとリュクスはそれに威圧される。

威圧されるリュクス、そのリュクスは自らを威圧するシンクの強い力が何かをすぐに見抜いた。


「全く……ここはバーゲンセールの会場かな?

まさかキミなんかがシンギュラリティに到達しているなんてね」

 

「意外だったか?

シンギュラリティの能力者は新たな到達者を導く、と聞いていたから不思議では無いはずだ」 

 

「まあ、キミの到達は想定内だよ。

でも……オレが言いたいのは、こんだけシンギュラリティの能力者が現れたらせっかくの名前が台無しだってことだよ!!」

 

 シンクの言葉に強く言い返すとリュクスは魔力を強く放出させ、放出された魔力は形を変えると槍となってシンクに迫っていくが、シンクが右手を軽く動かすと魔力の槍は一瞬で凍結してしまい、シンクがさらに右手を動かすと凍結した魔力の槍は冷気となって形を変えると氷の槍となってリュクスに向けて放たれる。

 

 放たれた氷の槍を前にしてリュクスはどこからか白銀の刀身の剣を取り出して手に持つと氷の槍を全て破壊し、シンクの攻撃を破壊したリュクスは剣に炎を纏わせるとシンクの方へと解き放つ。

 

 解き放たれた炎は虎のような形となってシンクに襲いかかろうとするが、シンクは左手を動かして冷気の獅子を出現させて炎の虎を噛み砕かせて破壊する。

 

 両者とも一歩も譲らぬ攻防、この攻防を見たヒロムは吐血した際に口周りについた血を拭うと彼に伝えた。

 

「シンク!!

そいつは任せる!!

トウマはオレが何とかするから頼むぞ!!」

 

「ふっ……任せておけ!!」

 

 ヒロムの言葉を受けるとシンクは吹雪を巻き起こしながらリュクスの方へ走っていき、吹雪を纏うシンクがリュクスに接近すると吹雪は大きくなって二人の姿を隠してしまう。

 

 二人の姿が見えなくなってもヒロムは動じることなくトウマを見ており、ヒロムがやる気を見せているとガイとソラは彼の隣に並び立つ。

 

「オマエら、何して……」

 

「トウマが久しぶりに現れた時はオレたちは止めたが、今回はオマエを好きに暴れさせてやるから文句は言うな」

 

「は?

オレは手を出すなって……」

 

「ヒロム、ソラもオレもオマエのために手を貸したいんだ。

いくら今のヒロムが強くなってもさっきみたいな吐血をされたら心配で仕方ない。

帰りを待つユリナたちを悲しませないためにも勝手に手を出させてもらう」

 

「……卑怯だぞガイ。

ユリナの名前を出すなんて」


 仕方ねぇさ、とイクトは言うとソラの隣に並ぶように立ち、そしてヒロムに伝えた。

 

「大将の無事を祈って帰りを待ってくれてるのは他でもない姫さんたちなんだぜ?

その姫さんたちの気持ちに大将が応えられるように手を貸すのもオレたちの役目ってことだよ」

 

「……女の考えはどうでもいいが、オマエが手こずるような姿はオレたちの上に立つ存在としては見るわけにはいかない。

オレはただそれだけだからな」

 

 イクトに続くようにシオンはどこか素直ではない言い方をしながらガイの隣に並び立ち、ガイたちが横に並び立つとヒロムはため息をつきながらもどこか嬉しそうに笑みを見せる。

 

「仕方ねぇ……フレイ。

四条美雪を見張っててくれ」 

 

 了解しました、とヒロムの指示を受けた精霊・フレイは倒れる四条美雪のそばに現れると彼女が何か行動を起こさぬように見張ろうとし、四条美雪の見張りにフレイがつくとヒロムはガイたちに伝えた。

 

「……オレはオレのやりたいようにやらせてもらう。

オマエらが加勢してくれようと関係なく、オマエらを援護することもしないし助けることもしないからな」

 

「フッ……オマエに助けられるほどオレらは弱かねぇよ」

 

「ソラの言う通り、大将に助けられなくても問題なしだ」

 

「自分の身は自分で守る、当たり前のことだ」

 

「ヒロム、オマエにその気がなくてもオレたちはオマエを支える。

あの時……シオンとオレたちが会ったあの日にトウマが現れた時はオレたちがヒロムを止めた。

けど今日は……ヒロムが暴れたいのならオレたちも暴れるのに付き合うよ」

 

「……そうか。

なら、派手に暴れるぞ!!」

 

 ヒロムが叫ぶとガイたちは強く頷き、そして五人はトウマを倒すためにそれぞれが持つ力を全身に強く纏う。

 

 白銀の稲妻、蒼い炎、紅蓮の炎、轟音鳴らす雷撃、影が変化した黒炎、五人が力を強く纏うとそれらから生じる力の衝撃がトウマに向けて発せられ、発せられた力の衝撃がトウマを威圧する。

 

「ゥゥ……」

 

「いくぞ、トウマ……!!

その身に宿すたま……」

 

「全てを斬り壊す!!」

「オレの中の炎が燃え滾る!!」

「ぶっ潰す……!!」

「ショータイムの始まりだ!!」

 

 自分の中でお決まりとなった言葉を決めようとしたヒロムだが、そのヒロムの言葉に被せるようにガイたちは今まで言ったことがないようなセリフを同時に発していく。


 四人が同時に話すせいでゴチャゴチャした感じになってしまい、あまりのグダグダ感にヒロムはため息をつくとまとめるように叫んだ。

 

「……オレたちを滾らせてみろ、トウマ!!」

 

 叫んだヒロムは走り出し、それに続くようにガイたちも走り出す。

ヒロムたちが走り出し、トウマとの決着をつけようとする中……国技館の方から葉王は周囲を見渡すように視線を向けていた。

 

「いよいよ決着だァ。

アイツらが八神トウマを倒してくれればァ……ヤツは現れるゥ。

ゼクス、ヤツがここに現れればオレたちの計画は……「十家」の再建は大きく動くことになるゥ」

(そのためにも炙り出さねェとなァ。

八神トウマを上手く利用して動かし、自分の利益のために「十家」を利用した黒幕をよォ……)

 

「どこのどいつだろうともう時間の問題ィ……姫神ヒロムたちがここまで頑張ッたのならァ、オレもそれなりに頑張らねェとなァ」

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