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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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六三話 秘策



「がぁぁあ!!」


バッツは何度も地面を転がるように吹き飛び、そしてそのまま天を見上げるように倒れてしまう。


完全に再生したはずの鎧はまたしてもボロボロになり、それどころかさっきまでのダメージではありえなかったことが起きていた。


鎧の一部が砕け、崩れ落ちていたのだ。


「……ありねぇな」


「これが現実だ」


ヒロムはその手に持つテミスの銃剣とアルカの銃に魔力を込めると、バッツに狙いを定めた。


「覚悟決めろ、バッツ!!」


「……何勘違いしてやがる?」


するとため息をついたバッツが起き上がり、そして指を鳴らすと損傷した鎧が徐々に修復されていく。



が、修復が完全に行われないのか、中途半端に損傷した状態で修復が止まってしまう。


「まだオレは動けるんだぜ?

なのに何勘違いしてん……だよ!!」


バッツは魔力の玉を生成するとヒロムに向けて放つが、ヒロムの前へとアリアが現れるなりマントでそれを防いだ。


そしてマントに触れた魔力の玉は防がれると同時に周囲にバラバラに飛び散ってしまう。


「!?」


「私のこのアーマーとマントは魔力を弾く力を持つ。

今のオマエの攻撃も弾かれ、飛び散ったのよ」


「……なら魔剣による近接攻撃は防げねぇよな!!」


バッツは走り出そうとするが、ヒロムは手に持つ銃剣と銃から無数の弾丸を放ってバッツを襲う。


が、バッツは魔剣で弾きながらもヒロムに迫ろうと走る。


「この程度でオレは止まらねぇんだぜぇ!!」


「別に止まらなくてもいい。

止まらないなら、止めるだけだ!!」


ヒロムは手に持った武器を投げ捨てると新たにアイリスの槍を持ち、走り出す。


さらにアルカとテミスはヒロムが投げ捨てた武器を拾い、アルカは二丁の銃、テミスは二本の銃剣を構えてバッツへ弾丸を放つ。


放つ武器が倍になったことで弾丸は多くなり、バッツは魔剣で防ぐ一方で足を止めてしまう。


「くっ……!!」


「ほら、止めたぞ!!」


ヒロムは二人の放つ弾丸の雨の中を駆け抜け、バッツに迫ると槍で突き、そして何度も斬る。


「この……!!」


バッツは何とかして攻撃しようとするが、弾丸がそれを阻み、そしてヒロムが槍で攻撃してくる。


さらにヒロムは左手にメイアのレイピアを出現させると槍とともに突きを放つ。


「オラァ!!」


この、と突きを受けたバッツは大きく仰け反り、その身に弾丸を、そしてヒロムのさらなる攻撃を受けてしまう。


どうにかして反撃しなければ、と考えるバッツだが、その考えを阻むようにアリアが連続で斬撃を放ち、さらにエリスとアイリスが攻撃を放つ。


そのすべての攻撃が命中し、とどめと言わんばかりにマリアが懐に現れると魔力を拳に纏わせるとバッツに重い一撃を叩き込む。


「くそが……」


バッツはその一撃により吹き飛び、そして倒れてしまう。




が、倒れたとはいえ油断はできない。

バッツはまだ何か隠している可能性がある。


ヒロムはアイリスの槍を消すとマリアのガントレット、そしてフレイの大剣を出現させると装備した。


いつでも攻撃できるし、その気になれば今のバッツを倒せるかもしれない。


が、それもそう簡単にできるわけではない。


なぜなら、今のバッツは飾音に憑依し、飾音の体に自身の姿を投影している。

つまり、このままバッツにとどめを刺して、飾音に対してダメージがないとは言いきれないのだ。


となれば不安要素が大きすぎ、倒すための攻撃が出来ない。


「……」


「マスター……」



フレイたちもヒロムの考えを理解しており、それ故にヒロムが動かないかぎり手を出せないでいた。


この状況に呆れ、バッツはため息をつくとヒロムを挑発するかのように語り始めた。


「……甘い野郎だ。

こんな姿のオレを殺さないのか?

大切なものを守りたいんだろ?」


「その大切なものに取り憑いてるくせによく言うぜ……」


「まさかここに来て迷うとは驚きだ……。

この男もオマエのために微かな意識の中で抵抗しやがるしな……」


「……親父」


ヒロムが戦う中、飾音はバッツの支配下の中で抗っていたのだ。


それを知ったヒロムは少し飾音のことを誇らしいと思えた。


が、それを嘲笑うかのようにバッツは魔剣を強く握りながら、起き上がる。

そして魔剣に魔力を纏わせると、剣を天に向けてかざす。


その行動の真意はわからないが、バッツが何かしようとしているのは確かだ。


「させるかよ!!」


飾音の身のことは心配ではあるが、ヒロムは何よりもまずバッツの行動を止めようと動いた。


それを合図にフレイたちも動き、バッツを止めようとする。


「だが、オマエのおかげでオレは計画を進められそうだ……!!」


「何を……」



バッツの言葉が何を意味するのかを走る中で思案するヒロム、そんな中でヒロムはふと気づいた。


ボロボロになっているバッツ、おそらくバッツの体力は低下しているはずだ。


だが魔力は尽きることがなく、それどころかバッツの戦意は消えていない。


そして魔剣・バットナイツも何一つ傷ついていない。


「魔剣……まさか!!」



ヒロムは足を止めるとフレイたちに向けて叫んだ。


「待て!!

止まれ!!」


「え……?」


「もう遅い!!」


バッツは魔剣に纏わせた魔力を解き放ち、それと同時にフレイたちから微量ではあるが彼女たちの能力を宿してるであろう魔力が魔剣に吸い寄せられていく。



そして、魔剣が妖しい光を放つとともにヒロムの身に纏う白銀の稲妻の一部を吸収していく。


「な……!!」


「オマエの体を奪うつもりだったが、オマエのその力を見て気が変わった!!

この力を……オレのものに!!」


「まさか……オレの魔力ごとフレイたちを!!」


「違う!!

オマエたちの力の一部を糧にオレは完成する!!」


バッツが紫色の稲妻と炎を放ちながら、その身を闇に包み、そしてヒロムはそれにより生じる衝撃に襲われて吹き飛ばされてしまう。


「うわああ!!」


マスター、とフレイは急いで吹き飛んでしまったヒロムの腕を掴み助けようとするが、助けに来たフレイも同じように吹き飛ばされてしまう。


ヒロムとフレイは同じように吹き飛び、地面に叩きつけられてしまうが、何とかして立ち上がるとバッツの姿を確認しようとした。


紫色の稲妻と炎、そして闇に包まれるバッツ。

その姿は確認出来ないが、闇の中からは今までにないほどの殺気を感じ取れ、ヒロムたちはそれを前に言葉を失っていた。


「な……」


「これは……」


言葉を失うヒロムたちだが、闇の中から何かが勢いよく飛んできてそれに目を奪われる。


そう、飛んできたのはボロボロになった飾音だった。


「お、親父!!」


ヒロムは何とかして走ると飛んできた飾音を受け止め、すぐに寝かせて命に別状がないか確かめた。


呼吸は微かではあるがしているが、意識は無いに等しい状態だった。


「何が……」


「そいつは不要だ。

オレは新しい姿を得た」



闇が消え、そこに一人の青年が立っていた。

色素を失ったような髪、黒い装束、そして右手には魔剣・バットナイツを持っていた。


瞳を紫色に輝かせるその青年を見たヒロムはそれが誰なのかすぐ理解した。


「バッツ……!!」


「よぉ、ヒロム。

オマエのおかげでオレは新たな姿を得た。

感謝するぜぇ?」


「どういうことだ!!

オマエの目的はオレの体を支配し、フレイたちを奪うことじゃ……」


「今回の戦闘で理解したんだ。

下手に体を乗っ取っても意識が残ってしまうと足でまといでしかないとな」


だから、とバッツは魔剣を心臓に勢いよく突き刺し、そして魔剣を自身の体と融合させる。


「オレは新しい肉体をつくり、人と精霊を凌駕した存在となったんだ!!」


「ありえない……!!」


「ありえなくないさ。

オレはオマエの親父に憑依して力を蓄え、それにより膨大な魔力を手に入れた。

そしてバットナイツの力で「炎魔」、「修羅」、そしてオマエの「ソウル・ハック」と精霊十一体分の能力の一部を合わせたことですべて揃ったんだよ!!」


バッツが魔力を纏うと、それに合わせてバッツは紫色の稲妻を全身に走らせ、ヒロムたちに殺気をぶつける。




その殺気を受けたヒロムとフレイたちは一瞬ではあるがまるで体の自由を奪われたかのように動かなくなり、そしてバッツに対して恐怖を感じてしまう。


「これが……」


「人と精霊を凌駕した存在……!!」


ヒロムのそばでフレイとアイリスはバッツに驚愕し、そして武器を構えると走り出す。


「だとしても!!」


「先に攻撃を……」


何かを言おうとするアイリスが音もなく吹き飛び、そしてフレイまでもが吹き飛ばされてしまう。


何が起きた?



ヒロムはそれを理解しようとするが、それよりも先にバッツが自身の前に現れる。


速い、ただそれしかない。

が、そう感じた時にはヒロムは吹き飛んでおり、気づけばソラとガイが吹き飛んだ方向と同じ方へと向かっていた。


(動きが……!?)



屋敷の中へと勢いよく飛んでしまったヒロムは地面に何度もぶつかり、そして転がるように倒れてしまうが、何とか立ち上がろうとする。


が、周囲を見ればパーティー参加者がヒロムに注目し、そしてガイたちが駆けつけてきた。


「ヒロム!!」


「大丈夫か?」


ガイとソラ、二人もボロボロなのにヒロムの心配をするが、今のヒロムはかなり負傷し、それは無事かどうかなど聞かなくてもわかるような状態だった。


「……見たまんまだ」


説明を省くように告げるヒロムだが、その視界の先にユリナたちがいることに気づく。


彼女たちはヒロムの姿を見て言葉を失い、そして怖そうに怯えていた。


「……くそ」



悔しそうにするヒロムを前にシオンは戦況を確認するように話しかける。


「何があった?」


「バッツが……」


呼んだか、とヒロムが話し始めるタイミングでバッツは音もなく現れ、どこからか持ってきた椅子に座った。


ヒロムとフレイたち以外に今のバッツの姿を見て誰なのか気づくことは難しいと思われるが、バッツが無意識に放つ殺気がガイたちに対してバッツだと教えていた。


「あれがバッツ……!!」


「じゃあ飾音さんは!?」


「大丈夫だ、ソラ。

……あれはオマエとガイ、そしてオレたちの力を吸収してその力を使って肉体を完成させたバッツだ。

親父は無事だ……」



よく言うぜ、とバッツはため息をつきながらヒロムの言葉を訂正するように語り始めた。


「飾音をあそこまで傷つけたのはオマエだぜ、ヒロム。

実の親に手を出したのは……オマエだろ?」


「……貴様……!!」




黙りなさい、と愛華は一喝するとヒロムの隣に並び立ち、そしてバッツを睨んだ。


「あの人を利用し、私の家族を侮辱したあなたが偉そうに語らないで!!」


「怖い女だな。

だがな、利用される方が悪いんだぜ?」


「ふざけな……」


そこまでです、とガイは愛華の言葉を遮ると刀を構えた。


ガイに続くようにソラ、イクト、シオンも構え、四人はバッツに対して殺意を向ける。



「……あなたはヒロムのそばにいてください。

オレたちで倒します」


「待って、あなたたちがそこまですることは……」


「いいや、あるからやるんですよ」


するとイクトの影から音もなくシンクと真助が現れる、二人も同じように構える。


いつからいたのか、ガイとソラはそう思ったがシオンは知っているらしく、説明した。


「万が一のためにシンクとコイツに来るように伝えてたんだよ。

で、何かあればイクトの影を利用して移動できる場所で待機させてた」


「おいおい、オレのことも名前で呼べよ?」


うるさい、と真助に冷たくシオンは言うが、それをやめさせるかのようにシンクが咳払いをする。


「……愛華様、お久しぶりです。

ヒロムの治癒を頼みます」


「シンク……何をする気なの?」


「……大丈夫です。

オレのこの身はヒロムのためにあるのですから」


「……みなさん」


愛華はガイたちの意思に思わず涙を浮かべ、そしてそれを見たヒロムはガイたちに一つ頼み事をした。

「ガイ……いや、オマエらに頼みがある。

オレは母さんの治癒の力で回復する。

だから、それまで時間を稼いでくれ……!!」


「……だとよ。

まあ、倒すつもりでいるよなオマエら!!」


「「……当然!!」」


ガイ、ソラ、イクト、シオン、シンク、真助は並び立つと魔力を纏い、バッツを睨む。


バッツはそれに対して敬意を示すかのように立ち上がると首を鳴らす。


「雑魚が群がろうが勝てねぇって教えてやるよ」


「他人利用しなきゃ生きれねぇヤツに簡単に負ける気はねぇんだよ!!」


ガイが先陣を切るように走り、それに続くようにソラたちも走り出す。


そのガイたちの姿を見るヒロムの表情は悔しそうではあったが、ヒロムはそんな状況下である相手に声をかけていた。


目の前ではなく、精神世界にだ。


「……セラ、頼みがある……!!」

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