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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
621/672

六二一話 不倶戴天


 イクトとガイ、二人がそれぞれ受け持った相手を倒した頃……

 

 仲間の助けによりトウマとの戦いに専念する余裕の出来たヒロムは精霊・セツナの霊装の力たる「オルタナティブ・ソウル」の力を解除して白眼の稲妻を強く纏って走っていた。

 

 ヒロムを援護するように霊装の力を持つ精霊・フレイ、ラミア、ティアーユ、ステラ、アルマリア、オウカ、マリア、テミス、メルヴィー、アイリス、セツナはそれぞれが武器と己の霊装が担う力の色をした稲妻を纏って彼の後に続くように走っていた。

 

 これまでの戦い、ヒロムはその身に精霊の持つ霊装の力を纏うことで装いを変えるとともにその力を最大限に発揮していた。

なのに大本命とも言えるような相手のトウマを前にしてヒロムは戦い方を変えた。

 

 何故なのか?

それはトウマに対して力を使うことを躊躇っているのではなく、単にヒロムが力を酷使しすぎないように調節しようとしていたからだ。

 

 霊装の力、そしてそれを纏い武装にする力。その力はこれまでのヒロムの成長の中にあった技術「クロス・リンク」に近いものがある。

精霊の力を借りてヒロム自身の力を増強させる、その点については共通しているのだが、今のヒロムが行っている霊装の力を纏うという行為は「クロス・リンク」と大きく異なる点がある。


 大きく異なる点、それは能力がない故に魔力操作や出力調整が不得手とするヒロムのサポートを身に纏われた力へと変化した精霊が補助して代わりに行う「クロス・リンク」に対してヒロムが霊装の力を纏うということは彼自身がこれまで精霊と役割を分けていたことを一人で行うということだ。

 

 不得手とする魔力操作と出力調整を一人で行い、同時に敵との激しい攻防を行わなければならない。

 

 普通の能力者なら今言ったことは能力を使用する上で当たり前のことだ。

その当たり前を能力を持つものは物心着いた頃から自然と理解して平然とやれるようになっている。

 

 だがヒロムは物心着いた頃から精霊がそばにいて、その精霊に供給するための膨大な量の魔力を宿していただけにすぎない。

外部に魔力を放出する技術すら会得できず、会得できない故にただ肉体的に鍛えられる部分を徹底して鍛えることで能力無しで能力者を圧倒できるほどの実力を持つまでに成長したのだ。

 

 その成長の仕方はこれまで変わらず、変わったのはほんの少し前……最近になって魔力を霊装の力の稲妻に変えて放つことを覚えたくらいからやってる程度だ。


 これまで根本的に個人で全てのプロセスをしてこなかったヒロムにとって複数の精霊の霊装の力を纏い扱うことは常人や他の能力者の目には能力を使うことと大差ないように見えるだろうが、ヒロムにとってはようやく慣れてきた程度のことだ。

 

 それを連続して行い負担を増やすのは得策ではない、そう考えたからこそヒロムは初心に帰るかの如く白眼の稲妻を身に纏うという最初に手にしたやり方にシフトして体力を温存しようとしている。

 

 機械天使三体と融合して変貌し自我が無いに等しい今のトウマを相手に余裕があるわけではない。

だがヒロムはそれでも体力温存を選択した。

 

 それは余裕とか慢心ではない。今のトウマがまだ何かを隠しているとすればこのままではまずいと判断したからこその温存の選択なのだ。

 

 その選択をしたヒロムはトウマに迫っていく中でフレイたちに指示を出した。

 

「ティアーユとテミスは後方から援護してくれ。

メルヴィーとアイリスは街への被害ができるだけ出ないように支援を頼む。

フレイとラミアとオレでトウマに一撃を叩き込むからオウカたちはそのための隙をつくってくれ」

 

「「了解!!」」

 

 ヒロムが指示を出すとメルヴィーとアイリスは周囲に結界を張っていき、続けてティアーユとテミスはそれぞれの武器であるライフルと銃剣を構えてると青い稲妻の弾丸と藍色の稲妻を帯びた炎弾をトウマに向けて撃っていく。

 

 放たれる二種の弾丸、トウマはそれらが迫る中で闇の翼を広げると触れることも無く弾丸全てを消してしまうが、トウマが弾丸全てを消すとオウカ、マリア、ステラ、アルマリア、セツナは敵に接近するとそれぞれの武器に稲妻を纏わせながら一撃を放とうと……したが、彼女たちの攻撃がトウマに命中するであろう手前で何か目に見えぬ壁のようなものが五人の武器を止めてトウマに命中するのを阻止してしまう。

 

「「!?」」

 

「……ゥゥ」

 

 トウマの瞳が妖しく光ると強い衝撃によってオウカたちは吹き飛ばされてしまい、ヒロムは彼女たちが吹き飛ばされる中で白眼の稲妻を強く纏いながら接近して拳の連撃を叩き込んでいく。

 

 が、ヒロムの連撃も目に見えぬ何かによってトウマに当たることなく阻止され、トウマの瞳が再び妖しく光ろうとした。

 

 その時、ヒロムは両足に稲妻を集めて地面を強く蹴ると高く飛び上がり、高く飛び上がったことによりトウマの瞳が妖しく光るとともに放たれる衝撃はヒロムがいたところを意味もなく襲って終わってしまい、ヒロムが衝撃を避けるとタイミングよくフレイとラミアが武器を構えながら接近してくる。

 

「ゥ……」

 

「トウマ、オマエのその無敵に近い防御には欠点がある。

攻撃と防御、二つの点において強みを持つその力は攻撃と防御を両立出来ていない。

オレたちの攻撃を防御してからしか攻撃してこなかったのなら、攻撃した直後は防御できない!!」

 

「「はぁっ!!」」

 

 フレイとラミアが勢いよく武器を振り切ると金色の稲妻を帯びた斬撃と紫色の稲妻を帯びた斬撃がトウマに向けて放たれ、放たれた二つの斬撃は止められる事もなくトウマに直撃して彼を吹き飛ばされてしまう……が、吹き飛ばされたトウマは闇の翼を大きく広げて飛翔することで倒れることを免れ、さらに瞳を妖しく光らせると斬撃を受けて負った傷を徐々に再生させていく。

 

 咄嗟の判断と再生能力、無敵に近い防御と構え無しで放たれる強力な攻撃……どれを取っても今のトウマは強いの言葉で済んでしまうが、それ故にある弱点を見抜いたヒロムは諦めてはいなかった。

 

 高く飛んだヒロムは着地すると白眼の稲妻を強くさせながらトウマを睨み、そしてトウマを睨むヒロムは彼に語りかける。

 

「トウマ……これがオマエのやりたかったことなのか?」

 

「ゥゥ……ゥゥ……」

 

「機械天使に頼ったことは別に悪いとは思ってねぇし、オレがオマエの立場で力を求めていたとしたら……目の前に機械天使って大きな力があれば手を出したくなる気持ちはよく分かる。

けどな……今のオマエの姿を見て誰が喜ぶんだ?

オマエの許嫁の女も貴虎に利用され、オマエのその力もアイツに利用されてる。

今のオマエは……誰を信じているんだ?」

 

「ゥゥ……」

 

「ゼクスってのがオマエの信じられる相手なのか?

得体の知れない、オマエに理想を押し付けて憎悪の感情を植え付けるような相手しか信じられないのか?

オマエは……オマエの心は何を求めている?」

 

「ゥゥ……」

 

「トウマ、オレは……」

 

 ヒロムがトウマに向けて語りかけていると彼とトウマとの間を勢いよく何かが通り過ぎるように吹き飛んでいく。


 吹き飛んでいったものが何かを確かめようとヒロムが視線を向け、視線を向けた先には「九岳」の当主たる九岳マサキが全身負傷して倒れようとしていた。

 

 意識はあるらしくマサキは立ち上がり、マサキが立ち上がるとどこからともなく雷撃が彼を襲い全身をさらに負傷させて追い詰めていく。

 

 雷撃を受けるマサキが膝をつくと彼のもとへともう一人誰かが勢いよく吹き飛ばされてくる。

 

 吹き飛ばされてきたのは「六道」の当主である六道シンゴだ。

二人の当主が吹き飛ばされ、そしてその二人は次々に雷撃を受けて追い詰められていた。

 

「まさか……」

 

 二人の当主に向けて雷撃を放つ人物、その人物が一人しか思いつかないヒロムは彼らが吹き飛ばされた方に視線を向け、視線を向けた先から彼ら二人を吹き飛ばした張本人……シオンが雷を纏いながら歩いてくる。

 

「よぉ、ヒロム。

苦戦してるのか?」

 

「……オマエは余裕そうだな」

 

「余裕すぎて話にならねぇな。

こんなのが当主とは……呆れて何も言う気にもならないな」

 

 余裕が有り余っているシオンはヒロムにそれをアピールし、シオンがヒロムに話す中、シオンに吹き飛ばされたマサキとシンゴは起き上がって構えようと……したが、シオンは二人に向けて右手をかざすと巨大な雷撃を撃ち放ち、放たれた雷撃は二人をさらに負傷させていく。

 

 容赦のないシオンの一撃、その一撃を受けた九岳マサキは限界が近いのか立ち上がろうとしないが、六道シンゴはイライラしながら立ち上がるとシオンを睨みながら叫んだ。

 

「ふざけんな……!!

どこの家の出かもわかんねぇようなクソみたいなヤツにボロカスやられるなんて気にいらねぇ!!」

 

「うるせぇ野郎だ。

さっさと死ねば楽なのによ」

 

「シオン、あまり……」

 

 黙ってろ、とシオンはヒロムの言葉を最後まで聞くことなく冷たく言うと続けて彼に告げた。

 

「オマエやガイはコイツらに責任を取らせるとかそんなこと考えてんだろうが、オレには関係ない話だ。

コイツらの無能っぷり、それを徹底して叩き直すなりしなきゃ意味が無い」

 

「いや……やりすぎるなって言おうとしただけだ。

その、邪魔して悪かった」

 

「そう思うならオマエはオマエの相手に専念しておけ。

オレはそこにいる「無能」二人を潰す」


 ふざけんなよ、と限界に達しているであろうマサキはシオンに言うと立ち上がり、立ち上がったマサキはシオンを睨みながら己の覚悟を口にする。

 

「オレたちは背負うべき責任を背負ってんだよ……!!

オマエみたいなヤツにとやかく言われる筋合いはねぇし、オレたちを見下す権利もねぇんだよ!!」

 

「九岳マサキの言う通りだ……!!

オマエが何者かは知らないが……オレたちを見下すのだけは気に食わねぇ!!」

 

「何者?見下す?

そう思ってるのならあえて教えてやるよ……オレは紅月シオン、オマエたちと違い戦うことに長けた戦闘種族の末裔だ」

 

 そして、とシオンが続きを話そうとすると彼の瞳は鮮血のような赤から銀色に変化し、シオンの瞳の色が変化すると彼は全身から異常なまでに強い殺気にも似た力をマサキとシンゴに向けて放つ。

 

 放たれる力に二人は臆してしまい、そんなことに気を止めることも無くシオンは二人に教えた。

 

「オマエらに見せてやろう……戦うことの意味、そして戦闘種族を束ねるだけの素質を与えられた者だけが持つ絶対的な力をその身に教えてやるよ」

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