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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
613/672

六一三話 狂威乱舞


 

「よぉ、四条貴虎。

こうして間近で顔を合わせるのは初めてだよな?

でも……オレはこの時をどこかで心待ちにしていた」

 

 四条貴虎に向けて真助が口にした言葉、その言葉の意味をヒロムは理解できなかった。

間近で顔を合わせるのは初めて、その言葉に秘められた意味が何なのか。そして真助はそれを心待ちしていたというのは何故なのか。

 

 彼の言葉の真意を知りたい、そう思うヒロムは真助に問おうとするが、闇に支配されたに等しいトウマも警戒している今の状況では簡単にそれを行えなかった。

そんなヒロムの代わりに問うように貴虎が真助に尋ねる。

 

「オマエに何かを期待されるようなことをした覚えはないがどういう意味だ?

オレはオマエに何かしたというのか?」

 

「あぁ、オマエは知らなくても当然さ。

ヒロムも知らねぇだろうし、そこにいるバケモンも知らねぇだろうしな。

ただ……デバイスシステムの開発者がオマエってこととカリギュラのヤツらの使う装備を見てオレの中でずっと引っかかるものがあったんだよ」

 

「オマエの勝手な思い過ごしか。

ならオレには関係ない話だ」

 

「そうでもねぇよ。

おおよそ一年前、強さを求めて戦いに明け暮れていたオレの前に全身を武装した傭兵が何度も襲ってきた。

何度倒しても同じように襲ってくる傭兵を倒し続ける中で一人の傭兵がある事を口にした。

そいつは「月閃一族」は戦いの中で確実に成長するとしか言わなかったから当時のオレは何も気にとめなかったし今の今まで頭の片隅にしまって忘れていた。

けど、カリギュラのアップグレードを見てオレはそれを思い出すと同時に当時耳にした言葉の意味を理解した」

 

「オマエの思い出話に付き合うつもりは無いんだが……」

 

「オレを襲った傭兵はどういうわけか戦い続けることで経験値を積み重ねる「月閃一族」特有の力である「戦血」を知っていた。

カリギュラのデバイスシステムのそれもオレたち「月閃一族」のそれと似ている。

さらにデバイスシステムのデータの元手は四条貴虎、オマエだって言うんだからここまでくれば分かるよな?」

 

「……何が言いたい?」

 

「四条貴虎……オマエ、オレたち「月閃一族」を利用して「四条」の軍事力を強固なものにしようとしたろ?

今や亡き者とされる一族を技術で復活させて自分の兵力にして頂点に立とうと目論んでいた、そうだろ」

 

「……なるほど。

あの時の「月閃一族」の生き残りがオマエだったとはな。

数人いた一族の生き残りとなる末裔は数人確認されていた。

一人は「一条」が捕縛、残る数人の中から消息を掴めた末裔を追い詰めて「月閃一族」の持つ固有能力を引き出してデータに転用しようとしたわけだが……あの手練を倒していたのはオマエだったとはな、鬼月真助」

 

 真助の話を聞くとこれまで話をまともに聞こうとしなかった貴虎は一転して真助の話に反応して次から次に明かしていくように話し、貴虎の話を聞いた真助は小太刀を構える中で貴虎に問う。

 

「他の生き残りはどこにいる?

シオンとカズマ、それにオレ以外にも生き残りを把握してるのならオマエはその居場所を知ってるはずだ」

 

「生き残り、か。

もはやそれはその三名にしか通じぬ言い方だな」

 

「何……?」

 

「オマエを襲った傭兵が他にいないと思ったのか?

先に言っておくが、オレは「月閃一族」の末裔とされる人間を把握していたが、身元も名前も知らなかったからオマエが明かすまでオマエがその対象だったことに気づかなかったわけだ。

オマエ以外に傭兵に襲われた名前もわからぬ末裔のヤツらは……もうこの世にはいない」

 

「殺したのか?」

 

「殺してはいない。

勝手に死んだのさ」

 

 貴虎の口から出た言葉、それを耳にした真助の表情は一瞬殺気立つと小太刀を握る手にも力が入っていく。

 

 勝手に死んだ、餓死したならともかく雇ったであろう傭兵をわざわざ「月閃一族」の生き残りのもとへ仕向けておいてそう言っている。

その貴虎の言葉が気に食わなかったのか真助はそれを感情で表そうとするが、真助のそれを感じ取った貴虎は彼に告げた。

 

「オレが憎いなら憎めばいい。

オマエが恨みを抱くのは勝手だが、オマエは死んでいったヤツらの顔も名前も知らぬはずだ。

そんなヤツらの死を弔うのか?同じように名も知らぬ傭兵を簡単に殺してきたオマエが自分のことを棚に上げて他人の行いに怒りを抱くか?」

 

「……」

 

「憎しみや怒りを抱くことにオレは何も言わないが、オマエはまず自分の身勝手さを理解するべ……」

 

「……何勘違いしてやがる」

 

「……何?」

 

 貴虎の言葉に被せるかのように真助は彼に問い、彼の問いが意外だったのか貴虎は少し意外そうな反応を見せる。

その貴虎の反応を見ると真助は彼の発言を訂正するように話していく。


「たしかに一族の生き残りがいたのにすでに死んでることに関しては一瞬心が揺らぎかけた。

けどな……オレが怒りを感じてるのはオマエが雇った傭兵に殺されたことによるオマエへの憎悪ではない。

戦闘種族たる「月閃一族」の血をその身に宿しておきながら負けるだけで終わらず死んでいることが情けなくて怒りを感じているだけだ」

 

「何の恨みもないと言い切るのか?」

 

「オマエに対する恨みなんざこれっぽっちもねぇよ。

何ならオマエが傭兵使って集めた「月閃一族」のデータが基で生み出された力と戦えるのならオレはそれで十分だ」

 

「……戦闘狂が」

 

「オマエがそれを言うのか、軍事力野郎。

その自信ごとオマエが築き上げてきた全てをぶっ潰してやるよ」 

 

 貴虎を倒すべく真助はやる気を見せると全身に魔力を纏うとともに自身の能力「狂」の力たる黒い雷を全身に纏って走り出す。

 

 真助が走り出すと貴虎は手刀を構えて迎え撃とうとするが、真助は加速して一瞬で距離を詰めると小太刀を振って貴虎を斬ろうとした。

 

 が、貴虎は魔力を纏わせた手刀で真助の小太刀を防ぐと手刀で真助を貫こうと一撃を返すが、真助は余裕を見せるかのようにバク転する形で貴虎の攻撃を避け、攻撃を避けると真助は立ち上がって黒い雷を貴虎に向けて放つ。

 

 放たれた黒い雷は貴虎に迫っていくが、貴虎は数度バックステップを繰り返す形で避けると真助に魔力の弾丸を撃つ。

だが真助は黒い雷を小太刀に纏わせて一閃を放つと魔力の弾丸を両断して消し去り、魔力の弾丸を破壊されると貴虎は立て直すかのように手刀を構え直す。

 

「……なるほど。

データの数字は当てにならないな。

本来のオマエの戦闘データなら今の一撃で倒れてもおかしくないはずだが……どうやらオマエの戦士としての実力は数字では測れないようだ」

 

「オマエに測られるほどオレは弱くない。

それにオレもオマエの傭兵を倒してた頃より強くなってるし、「七瀬」のリゾートの時よりは強くなっている」

 

「あのリゾートの時より、か。

この短時間でよくここまで強くなったものだな」

 

「まったく、苦労したぜ。

おかげでついさっきまで時差ボケしてたからな」

 

「時差ボケ?

まさか……」

 

 貴虎に向けて真助が言った「時差ボケ」というワードに反応するヒロム。

トウマがいつ動くか分からない中でヒロムは真助に簡潔に質問して答えさせようとした。


「真助!!

オマエはあっちに行けたのか?」

 

「ああ、ヒロム。

単純計算だとこっちの一時間が向こうだと六時間~八時間ってところだ」

 

「……そうか。

真助、向こうから戻ったばかりだと多少感覚のズレが起こる!!

油断するなよ!!」

 

 真助の答えを聞いたヒロムは彼にアドバイスをするとトウマが動き出す前に自らが動いて彼に攻撃しようと向かっていき、ヒロムのアドバイスを受けた真助は小太刀を構えると呟いた。

 

「当然、油断はしない。

ましてあっちの世界の過ごし方を熟知するオマエの言葉なら尚更従うさ」

 

「何を戯けたことを!!」

 

 真助の言葉が聞こえたらしく貴虎は彼がふざけているとして魔力を纏わせた手刀を構えて接近すると真助の心臓を貫こうと至近距離から一撃を放つが、真助は至近距離から放たれる手刀の一撃を防ごうとせずに身を逸らして躱すと続けて貴虎の腹に蹴りを入れ、蹴りを受けた貴虎が一瞬怯むと真助は小太刀に黒い雷を強く纏わせて斬撃を放って敵を負傷させる。

 

 斬撃を受けた貴虎の体は真助の小太刀によって肉を抉られ、抉られた傷からは血が溢れ出ていた。

 

「がっ……」

 

「今のでその程度か。

たしかに多少の感覚のズレってのは起きるようだな。

「號嵐」の一太刀でオマエを仕留めて終わらせるつもりだったのに……ズレとは厄介なものだ」

 

「感覚のズレだと……?」

 

「ああ、ヒロムが言ってたろ。

向こうから戻ったばかりだとズレが生じるってな。

体の動きは思考とほぼ同化してるみたいだから問題ないわけだが、攻撃の際の力加減だけは少しズレてるな。

今のでまだオマエが倒れないとなるとこっちだともう少し力入れてもいいってことだからな」

 

「オマエ……さっきから向こうからとかあっちの世界とか訳の分からないことを……」

 

「訳の分からないこと?

それはオマエが知識として理解してないってだけだ。

ただオレはこの現実世界だけでは足りないと考えたからヒロムがやってるやり方を真似したのさ。

今現在、アイツだけが行き来出来る心の中にある世界……精神世界にな」

 

「なっ……精神世界だと!?」


 精神世界、その言葉を耳にした貴虎は驚きを隠せなかった。

驚きを隠せぬ貴虎のことなど気にかけることも無く真助は小太刀を……小太刀の霊刀「號嵐」を構え直すと彼に向けて話した。

 

「御伽噺でもなければ作り話でもない。

精神世界は現実として人の中に実在し、ただ多くの人が自由に行き来出来ないから無いもの扱いされてる世界ってだけだ。

ヒロムみたくガキの頃から行き来出来るわけじゃねぇから入るまでには時間がかかったが、入っちまえば何時でも行き来出来る権利を与えられるからな」

 

「精神世界に行けたとしてもオマエの強さは……」

 

「変わるさ。

精神世界ってのは言わば己の中で己と向き合う場所、そこで自らを磨くことは強さを得ることに直結する。

己を磨き鍛錬を続けることが強さに繋がることは軍事力野郎のオマエでもわかるだろ」

 

「……認めん」

 

「あ?」

 

「己を磨き鍛錬を続けることが強さに繋がる?

そんな子どもの絵空事とオレの軍事力を同列に扱われることは断じて認めん!!」

 

 真助の言葉に怒りを抱く貴虎は強く叫ぶと全身から魔力を放出し、魔力が放出されると真助の小太刀が与えたダメージが一瞬にして貴虎の体から消えてしまう。

 

「コイツ……再生能力なんてあったのか」

 

「オマエらのような脆弱で束にならねば何も出来ぬヤツらの戯言などにオレの軍事力を語られてたまるか!!

オマエはオレのプライドにかけて……ここで殺す!!」


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