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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
605/672

六〇五話 因縁の兄弟


 光の翼を広げる八神トウマは五人の当主を倒したヒロムを冷たい眼差しで睨んでいた。

 

 四条美雪もやる気を見せるようにヒロムの前に立つが、彼女は一条カズキと十神アルト、そして七瀬アリサに対して問い尋ねる。

 

「一条カズキ、十神アルト、七瀬アリサ。

アナタたちは何故何もしないのです?

姫神ヒロムの今この場での行為は我々「十家」だけではなく、日本全土を敵に回すような反逆に等しい行為のはず。

なのに何故見ているだけなのです?」

 

「……オレが出るまでもないからだ。

いちいちオレが出て終わらせても何も変わらない」

 

「オレは元々一条カズキに提案した側の人間だし、それに姫神ヒロムの実力を知るいい機会だと思ったからだ。

やはり「無能」と呼ばれるような人間ではなく、「覇王」の異名を持つ戦士としての十分な力は持ち合わせてることは確認できたから何も文句はない」

 

「七瀬アリサ、アナタの言い分は?」

 

 ありません、とアリサは一言返すとそれ以上は何も言わない。

カズキ、アルト、アリサ。三人の当主はもはや今この場で猛威を振るうヒロムを止めようとはしない。

それを改めて理解した美雪は全身に魔力を纏うとヒロムに告げた。

 

「……忠告しておきます。

アナタを止めるため……加減はしません」

 

「最初から本気ってわけか。

好きにしろよ、こうしてる間も気絶してるメディアの連中が設置してるカメラで無様な姿が全国に流されてるんだからな」

 

「なら言い返させてもらいますが……アナタのその行為も全国に流れてることをお忘れなく」

 

「お生憎様、オレにはその程度のもので失うものは無い。

今まで散々奪われてきたオレを追い詰めたいならそれなりのもん用意しとけ!!」

 

 ヒロムは白銀の稲妻を身に纏うと走り出し、ヒロムが走り出すとトウマは光を纏いながらヒロムの前に現れて邪魔するように攻撃し、トウマの放つ攻撃をヒロムは避けると彼を殴り返そうとした……が、トウマは光を右手に纏わせるとヒロムの拳を止めてみせる。

 

「へぇ……少しはやるようだな。

他人のケツ追いかけ回すだけの権力に溺れたバカと思ってたけど、少しは見直してやる」

 

「黙れよ。

オマエのような身勝手な人間が何をやっても誰も賞賛はしない。

ここでのこの騒動も外に出てしまえば味方のいないオマエが一方的に責められるだけだ」

 

「そうかよ。

自分じゃどうにも出来なくなったら世間体に頼るとか、情けないな」


「好きに言え。

この戦いに最後に勝つのは……オレたち「十家」だ!!」

 

 トウマはヒロムの拳を押し返すと光の翼を大きく広げて光の羽根を矢のように翼から撃ち放ってヒロムを貫こうとするが、白銀の稲妻を纏うヒロムは目にも止まらぬ速さで全ての光の羽根を避けていく。

 

 トウマの攻撃を避けたヒロムは右手に白銀の稲妻を集めるとトウマに向けて解き放ち、放たれた稲妻はトウマを倒そうと襲いかかる。

だが、トウマが右手をかざすと光の壁が現れて稲妻を止め、光の壁に止められた稲妻は光を受けると消滅してしまう。

 

「……そういやオマエの能力は魔力を無効にする力だったな」

 

「覚えていてくれて光栄だ。

まさか能力を持つはずのないオマエに使うとは思わなかったけどな!!」

 

 ヒロムの言葉に対してトウマは力を強めながら言うと翼を羽ばたかせ、羽ばたかされた翼から衝撃波のようなものが放たれる。

放たれた衝撃波のようなものはヒロムに襲いかかろうと迫っていくが、ヒロムは稲妻を纏う中で全ての軌道を見切ると素早く身を動かしながら回避し、反撃すべくトウマに接近しようとした。

 

 だが、ヒロムがそうしようとした時、どこからか光が舞い降り、舞い降りた光は天使にも悪魔にも見える白き機械兵器へと変化してヒロムに襲いかかろうする。

 

 鎧のようなものを纏いし人に近いその体躯の所々は骨格が剥き出しの機械兵器、人と言うよりは異形の存在のようなどこか歪なその体の機械兵器はトウマと同じように光の翼を広げている。

 

 三、四メートルはあるのではないかというこの機械兵器、ヒロムはこの機械兵器の存在を知っていた。


「機械天使か」

 

 その存在を知っているからかヒロムは不思議と落ち着いており、機械兵器……いや、機械天使の有する鋭い爪による攻撃が放たれても冷静に回避してしまう。

 

「機械天使オーディン、オマエの生み出した負の遺産か」

 

「オマエがいなければ生まれなかった。

ただそれだけのものを負の遺産などと呼ばれる筋合いはない!!

やれ、オーディン!!」

 

 トウマが叫ぶと機械天使・オーディンは雄叫びにも似た声をあげながらヒロムに襲いかかろうとするが、ヒロムの精霊・マリアがそれを阻むようにオーディンの前に現れると拳の一撃を叩き込んで殴り飛ばす。


「マスター、あの化け物は私が!!」

 

「頼むぞマリア」

 

 オーディンが殴り飛ばされるとマリアはその相手を引き受けて追撃に向かい、ヒロムは邪魔がいなくなるとトウマと戦うべく拳を構えようとした……が、そんなヒロムのもとへの無数の氷柱が飛んでくる。

 

「!!」

 

 飛んでくる氷柱に気づいたヒロムは右手に白銀の稲妻を纏わせると迫ってくる氷柱に向けて解き放ち、解き放たれた稲妻が氷柱を破壊して消していく。

誰が放ったのか、そんなことは確かめるまでもなくヒロムは放ったのが誰かをすぐに見抜いた。

 

「……それが「四条」の教えなのか、四条美雪。

他人に頑張らせて美味しいところは自分が貰う、さすがは「十家」らしいやり方だな」

 

「勘違いされていますよ。

アナタを止めることは「十家」のため、利益など無視して最適な方法でアナタを倒すのが私たちのやるべき事なのです」

 

 ヒロムの言葉に対して言い返しながら美雪は魔力を纏いながらヒロムの視界に現れ、視界に入った美雪は右手に杖を持っていた。

その杖を美雪が軽く振ると無数の氷柱が彼女の頭上に現れ、もう一度杖を振ると氷柱はヒロムに向けて放たれる。

  

「今のアナタはテロリストと変わりない。

国をまとめ導こうとする「十家」の名を汚す蛮族よ」

 

「名を汚す?

あのな……どの口が言ってんだよ?」

 

 美雪の放った氷柱に向けてヒロムは左手をかざし、左手がかざされると無数の氷柱は何もされていないはずなのに自壊して消滅してしまう。

 

「!?」

 

 突然のことに驚きと戸惑いが隠せない美雪、その美雪にヒロムは呆れながら話していく。

 

「この程度なんだよ、オマエらは。

無駄に言葉並べて「十家」のためだの何だの……結局は自分たちが都合よく立場を利用するために権力を示したいがために集まってるだけのオマエらの力はままごとしてるガキと変わらねぇ。

名前だけでチヤホヤされてる温室育ちが束になっても勝ち目はない。

現実を受け入れろ」

 

「黙りなさい!!」

 

 ヒロムの言葉を受けた美雪は今まで落ち着いた様子で話していたのから一変して声を荒らげるように叫び、ヒロムに対する感情を剥き出しにする美雪は杖を強く振るとヒロムの周囲に無数の氷柱や氷塊を出現させて彼を仕留めようと……

 

「『失せろ』」

 

 ヒロムを仕留めようと展開されたいくつもの氷柱た氷塊を前にしてヒロムはただ一言呟く。

その一言が呟かれると氷柱や氷塊は粉々に砕け散って消える。


「なっ……どうして!?」

 

「これが生まれてから能力に恵まれて今まで上に立つ地位を与えられて生きてきた人間の力か?

数日前に能力に等しい力を使えるようになった人間がこんなに簡単に防げる……それが何を意味するのか理解してるよな?」

 

「な、何をしたの!?

アナタは一体……」

 

「姫神ヒロム……またの名を八神ヒロム。

そこにいる「八神」の当主の兄であり、オマエら温室育ちより強い戦士だ」

 

「くっ……」

 

「話はここまでだ。

そろそろ終わ……」

 

 それはどうかな、とトウマが指を鳴らすとヒロムの周囲に何かが現れる。

何が現れたのか、それを確かめようとしたヒロムが目にしたのは……先程彼が倒したはずの九岳マサキ、三日月宗近、六道シンゴ、五樹・F・ルルーナ、二葉一葉だった。

 

 立ち上がるほどの力が無いまでに負傷させられ倒れたはずの五人の当主、その当主が一切の傷を負っていない姿で立っていた。

五人だけではない、この場に現れた彼らの配下たる能力者たちも気づけば負傷していたはずなのに普通に立っていた。

 

「……何かしたのか?」

 

 何かが起きた、それはすぐに理解出来たヒロムはトウマに問い、問われたトウマはすぐに答えた。

 

「オマエはオレを甘く見過ぎだ。

オレの力、この「天霊」の力は成長している。

この光の翼か翼から抜け落ちた光の羽根に触れたものは超速再生を一時的に与えられて治癒される。

オマエに対してのさっきの攻撃もオーディンの出現も全てはオマエからその事を悟られぬようにする為のものだ」

 

「なるほど。

束で挑めば勝てるって思ってるのか。

弱いヤツまで治癒させて同じ苦しみを味わせるなんて残酷なヤツだな」

 

「残酷なヤツだと思うならせめて抵抗せずに倒されろ。

オマエが抵抗するからオレが……」

 

「なら一人ずつ殺すだけだ。

殺さずとも四肢の一部を削ぐなりしてしまえばオマエの再生力でも処理できないだろうし、そうでもしなきゃオマエらは諦めないなら仕方ないな」

 

「……ッ!!

ふざけるな!!」


 ヒロムの言葉にトウマは怒りを顕にしながら光の翼を六枚になるように増やし、さらに右翼の三枚を闇で染め上げながら右の瞳も闇を思わせるような紫色へと変化させる。

 

 そしてトウマのそばに機械天使・オーディンと同じ彼の下僕である機械兵器・ロキとラグナレクが現れる。

 

「オマエはいつもそうだ!!

何かあれば力で解決するような真似で人を掻き乱す!!

オマエ一人の行動がどれだけ迷惑しているのか……それを理解していないのが腹立たしい!!」

 

「好きに言えよ。

オマエらが頼りないからオレが何とかしてんだろ?

テロリストのことも責任を押し付けて逃げるだけのオマエらに信頼もクソもないからな」

 

「黙れ、黙れ!!

オマエはここで殺す!!そしてオマエの仲間やオマエが守っている女も同罪で殺す!!

オマエに関わった人間は同じ罪を繰り返す危険がある!!

今それを断ち切ってやる!!」

 

「……そうか。

なら仕方ない」

 

 トウマの言葉を受けたヒロムは静かに呟くと一条カズキに問う。

 

「一条カズキ、一つ確認だが……この際コイツらの安否はどうなってもいいよな?」

 

「……構わん。

ここで倒れるようなヤツらなら「十家」の名を背負う資格はない。

オマエに倒されるようなヤツは肩書きを持つ必要もないから好きにしろ」

 

「そうか……なら、そうさせてもらう」

 

 カズキの言葉を受けたヒロムは全身から殺気を放ちながら白銀の稲妻を纏い、そしてヒロムは自身を倒そうとする当主や能力者たちに向けて告げた。

 

「死にたいヤツからかかってこい。

オレに挑んで死にながら後悔したいヤツから……かかってこい」

 

 

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