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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
600/672

六〇〇話 覇王と戦神


「オレと戦ってもらう」

 

 カズキの与えた課題を見事クリアしたヒロム。

そのヒロムに次に出された課題、それはカズキと戦うというものだった。

 

 突然の課題内容にヒロムが息を飲む中、エレナはヒロムの身を案じてかカズキに意見を述べた。

 

「あの、どうしても戦わなければいけないんですか?

今まで話し合いで終わっていたのに……」

 

「姫神ヒロムの身を案じているのは理解できるが、今回オレと戦うのは何もコイツを潰したいとかそういう理由ではなくシンギュラリティの覚醒から今に至るまで力をまともに扱う訓練を受けていないからだ。

今回オレと実際に戦うことで感覚を掴ませると同時にこれまでの戦い方とは異なる新しい術を得てもらう」

 

「それって修行ってこと?」

 

 その通りだな、とカズキはユキナの言葉に返事をするとヒロムについて語っていく。

 

「姫神ヒロムは精霊を宿し、今ではその精霊の力を巧みに操って能力者を圧倒している。

だがこれからの戦いでその戦い方だけでは生き残れない。

そこでオレが直々に指導しようというわけだ」

 

「何でオマエなんだ?

葉王とかじゃダメなのか?」

 

「葉王に任せてもいいが、オマエの力の使い方はオレと近いものがある。

そこでオレが思う今後の戦いで必要になる技術をオマエに叩き込む」

 

「……ッ!!」

 

「ついでにオマエの残りの霊装が開花すればいいと思っている。

特訓、と軽んじるなよ……オレは本気でオマエを完全な覇王にするべく本気で挑むからな」

 

「おもしれぇ……!!」

 

 カズキの言葉を受けたヒロムはやる気を見せ、ヒロムのやる気を見たカズキは指を鳴らして景色を変化させる。

 

 ヒロムたちがいた部屋は一瞬で荒野となり、そしてエレナたちは少し離れた場所に安全が確保された空間の中へと移動させられていた。

彼女たちの移動した空間はテーブルやイス、紅茶や菓子などが用意されており、そして内側からもヒロムの様子を見れるようになっているらしく、彼女たちはヒロムの方を見ていた。

 

 彼女たちの視線に気づいているヒロムは深呼吸をすると全身に稲妻を纏い、そして左手首の白銀のブレスレットから稲妻を放つとその稲妻を大剣に変えて装備して構える。

 

 武器を構えてやる気になるヒロム、そのヒロムの構える姿を前にするカズキは右手を地面と水平に構えると音も立てずに大剣を装備して走り出す。

 

「はぁっ!!」


 走り出したカズキはヒロムに向けて斬撃を飛ばそうと大剣を振り下ろし、カズキが一撃を放とうとするとヒロムは手に持つ大剣に稲妻を纏わせながら斬撃を放って相殺し、カズキの一撃を相殺するとヒロムは再び大剣に稲妻を纏わせながら巨大な斬撃を放つ。

 

 放たれた斬撃は白銀の稲妻を纏いながらカズキに迫っていくが、迫り来る斬撃を前にしてもカズキは冷静に構え直すと一閃を放ってヒロムの一撃を消してしまう。

 

 互いに一撃を放ち、そして互いに相手の放った一撃を防ぐと警戒するように構え、構える中でカズキはヒロムの一撃を見た上での意見を彼に伝えた。

 

「なるほど……前回のオレとの一戦からかなり成長しているな。

だが、あまりにも荒削りすぎて無駄が多い」

 

「無駄?」

 

「オマエは無意識でやってるから気づかないだろうが、オマエが武器を用いて攻撃を放つ時の動きのほとんどはオマエの仲間やオマエ自身が宿す精霊の動作を見真似しているように見えるが、剣などの近接武器に関してはオマエが得意とする拳による格闘術の感覚が混ざっている点が見られる。

とくに……霊装の力の使い方がなってないな」

 

「あ?

どういう……」

 

 こういうことだ、とカズキは大剣をもう一本出現させて装備して二刀流となると左右の大剣を同時に振ってヒロムの方へと巨大な斬撃を飛ばす。

 

 カズキが斬撃を飛ばすとヒロムは手に持つ大剣に白銀の稲妻を纏わせて斬撃を飛ばし、飛ばした斬撃は白銀の稲妻を纏いながらカズキの一撃を消し去ろうとする……が、ヒロムの放った斬撃が纏う白銀の稲妻は前触れもなく消えてしまい、稲妻が消えたヒロムの斬撃はカズキの一撃に消され、カズキの一撃は衝撃波となってヒロムを吹き飛ばす。

 

「ぐぁっ!!」

 

 吹き飛ばされたヒロムは地面を転がるように倒れ、彼が倒れると白銀の稲妻を纏う大剣は光となって消えてしまう。

吹き飛ばされたヒロムの身を心配するエレナたちが彼を見守る中、ヒロムは何とかして立ち上がり、ヒロムが立ち上がるとカズキは両手の大剣を構え直す中でヒロムに話していく。

 

「今のがオマエが雑にしか扱えていない攻撃の末路だ。

これまでは何とか攻撃として成立していたわけだが、オレの課題をクリアして二つの霊装を機能させた今のオマエの力でそのやり方をしても攻撃が自壊する」


「んだよそれ……。

この攻撃方法が問題だってのか」

 

「いや、その攻撃のやり方はなんら問題ない。

あるとすれば使う側の采配だな。

姫神ヒロム、オマエが先程使っていた大剣はどの精霊の武器だ?」

 

「どのって……あの大剣はフレイのだよ」

 

 なるほど、とヒロムの答えを聞いたカズキは頷くと続けてヒロムに問題点を指摘した。

 

「精霊・フレイの霊装の力は今や白銀ではないはずだ。

金色、それがその精霊の霊装の力なのだから適性があるのは白銀ではないということだ」

 

「けど今までは……」

 

「それはオマエが本来の霊装の在り方とありどころを知らぬまま使っていたからだ。

だが実際、今のオマエはオマエの中にいる全てを知る存在から宿る先が決まっていない霊装の力を預けられるまで真実に近づいた存在、そして自身の持つべき霊装と精霊が預かっていた霊装に気づいて覚醒したんだ。

本来の持ち主たるオマエへと白銀の稲妻が渡れば霊装の力は十二分に発揮されるようになり、その結果元々その稲妻を使っていた精霊の武器でも制御できなくなっているんだ」

 

「そんな……」

 

「そしてオマエがこれまで他の武器でも白銀の稲妻を纏わせて扱えていたのは同じような理由だ。

完全な持ち主が管理する稲妻でないが故に力は弱まっており、その弱まっている力だから他の精霊の武器でも纏わせて使用できたということだ」

 

「……そうかよ。

長い説明ありがたいけど、結局のところオレはどうしたらいいんだ?」

 

「簡単な話だ。

精霊と武器に適した霊装を纏わせる、それだけで十分だ。

オレがもう一度斬撃を放つから試しに大剣に金色の稲妻を纏わせながらやってみろ」

 

 ヒロムのやる気の有無を確かめることも無くカズキは構え直した二本の大剣を勢いよく振って巨大な斬撃を放ち、カズキが斬撃を放つとヒロムは慌てて精霊・フレイの武器である大剣を出現させて装備し、装備した大剣に金色の稲妻を纏わせながら斬撃を放とうとした。

 

 ヒロムが斬撃を放とうと大剣を振ると纏われた金色の稲妻はヒロムの意思とは関係なく激しさを増すように強くなりながら斬撃とともに放たれ、放たれた金色の稲妻は斬撃と一体化すると眩い輝きと閃光を放ちながらカズキの放った斬撃を破壊し、そしてカズキを斬り穿とうと迫っていく。

 

 迫り来る金色の稲妻と一体化した斬撃を前にしてカズキは冷静に斬撃を数回放つことで相殺し、ヒロムの一撃を相殺すると彼に説明した。


「今のが十二分に霊装の力を発揮された状態の一撃、オマエが真に理解して使いこなすべき戦い方だ」

 

「今、何が……」 

 

「ごく自然な事だ。

本来適正のある武器にそれに適した最適な力を纏わせることで最小限の力も強力な一撃となる。

これが霊装の力を活用した上での戦い方の一つだ」

 

「じゃあ、ラミアの霊装の力をラミアの武器である刀で使ったり、オウカの霊装の力をオウカの武器である薙刀に纏わせたら……」

 

「そういうことだ。

原理としては正しいし、それが本来の使い方だ。

同じように霊装に適した武器に力を纏わせれば今まで以上に効率的に攻撃を行うことができる」

 

 ヒロムの問いに対して解説するように話すカズキ、そのカズキの話を聞くヒロムはふと頭に浮かび抱いた疑問点を彼に訊ねた。

 

「なら霊装を持たない精霊の武器は使うなってことなのか?

戦況によっては使い分けが必要になるのに、霊装の力を纏わせれない武器は使えないんなら……」

 

「それは違うな。

必要なのは武器と霊装の力の組み合わせの相性だ。

霊装の力を適した武器に纏わせることで真価を発揮するのなら霊装を持たぬ他の精霊の武器やその力にも適した霊装の力があるということだ。

試しに精霊・ディアナの武器に金色の稲妻を纏わせてみろ」

 

 カズキの話を聞いたヒロムは手に持つ大剣を光にすると彼に言われるがままに光を精霊・ディアナの武器である槍に変化させ、槍を手に持って金色の稲妻を少し纏わせる。

 

 ただ少し稲妻を纏わせただけ、それなのに槍は力強く稲妻を纏い、そして徐々に金色の稲妻を強くさせていく。

 

「おおっ!!」

 

「今回は「クロス・リンク」の組み合わせから例を挙げたが、他の組み合わせも可能なはずだ。

これはオレの推測だが……おそらくオマエの精霊の霊装の数は十四、精霊の数が四十二という点を考慮すれば一つの霊装につきその霊装の持ち手の精霊を含めた三体が該当するようになるかもしれない」

 

「つまり……フレイの霊装の力はフレイ自身とディアナの他にあと一人いるってことか」

 

「そういうことだ。

さて、続けるぞ。まだオマエには覚えてもらわなきゃならないことがあるからな」


 

 

 

***

 

 

 ヒロムが一条カズキとの特訓する頃……

 

ある場所に一人の少年がいた。

 

 黒髪の少年のその黒髪は少し紫かがっており、瞳はどこか暗かった。

黒いロングコートに身を包んだ少年は今いる場所から眺められる月を見ながら、背中に翼を出現させる。

 

 右翼は紫色の闇のような翼、左翼は光を発する白き翼。

左右非対称な翼が出現すると少年の左右の瞳の色はは左右の翼に合わせるかのように変色し、翼を背に出現させた少年は月を眺めながら独り言を呟く。

 

「……もうすぐだ、ヒロム。

オレのこの力を前にしてオマエは絶望する。

オマエを絶望させるためにオレは強くなった……そしてオレはオマエの強さを凌駕する力を手に入れた……!!」

 

 待っていろ、と少年は……八神トウマは左右非対称の両翼を大きく広げると羽ばたき、そして無数の羽根を周囲に舞わせながら姿を消す。

 

 その光景は、どこか不気味でどこか儚く思えた……

 

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