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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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五九話 正体


動き出したか。



ソラは離れた所からヒロムと飾音が接触したのを確認すると周囲を見渡した。



ヒロムに対して向けられる敵意は感じられない。

ここまでは予定通り。



「……異常はないな」

(この分ならガイが離れたのも気にならないな)


「なんだ、アンタも来てたのか?」


するとソラの背後から一人の女性が声をかけてくる。


ソラは振り返り、その女性の姿を確認すると一礼するように頭を下げる。


ソラに声をかけた女性。

黒い髪を後ろで束ね、黒いスーツを着ていた。


この女性についてソラはよく知っている。


「蓮華さん、どうかしましたか?」


姫神蓮華。

彼女の名だ、姫神の姓からわかるように彼女がヒロムの母・愛華の姉であり、ヒロムとは叔母の関係にある。


そして彼女は白崎蓮夜が団長を務めている「月翔団」を作り上げた創設者である。


が、今は導一のフォローにまわり、当主代理も行っている。


そんな彼女が声をかけてくるということは何かあるのだろう。


「いいや、ヒロムの姿が見えないから探してたのよ。

愛華からは来るとは聞いてるけど……どこにいるんだ?」


「さあ……?

オレも探してるところですよ」


ソラは平然と嘘をついた。

ヒロムが飾音といるのを先ほどソラは見ていた。


だから知っている、があえて嘘をついたのには理由がある。


ヒロムの目的のためだ。

そのためにはたとえ「月翔団」の人間であろうと、ヒロムの血縁関係にある者だろうと偽る。


それがヒロムのためになるからだ。


「お力になれなくて申し訳ないです」


「まあ、いいわ。

そのうち会うだろうからね」


「そうですね。

オレはもう少し探しますので」


「見つけたら声かけて」


蓮華はソラに一言告げるとそのまま歩いていき、その後ろ姿を確認するとため息をつき、そしてヒロムが向かったであろう方向へと歩き始めた。



***

「やっと見つけた……」


ガイとイクトは少し遅れてユリナたちと合流した。


はぐれたという言い方が正しいのだが、その言い方を素直にするとどこか情けなく思える。


だがこの人の多さ、一瞬でも目を離せば見失うのは仕方ないのかもしれない。


「無事みたいで良かったよ」


「ホント、姫さんら見失って焦ったんだぜ?」


「む〜……」


再会して安心するガイとイクトとは裏腹に、ユリナはまた少しだけ拗ねていた。


おかしい、何かあったのだろうか?

気になったガイは何かあったのか尋ねようとしたが、ユリナの隣にいたチカがガイが聞きたかった内容について説明した。


「ヒロム様が飾音様とどこかに行かれたんです。

せっかくお会いできたのに、残念です」


「なんだ、チカもここにいたのか」


「お久しぶりですガイ様、イクト様」


チカはユリナたちの時のようにガイとイクトに丁寧に頭を下げて挨拶をする。


ガイが軽く挨拶を返す中、イクトは笑顔で挨拶を返した。


「お久しぶり〜」


「軽いな、おい……」


「お久しぶりです。

先ほどまでヒロム様もおられたのですが……」


丁寧に話を進めるチカはヒロムの不在に少し残念そうな表情を浮かべるが、ガイは少し辺りを見渡していた。


「ガイ様?」


「いや……どこに行ったのかなぁと思ってな」

(そろそろオレも役目を果たさなきゃな……)


イクト、とガイは彼の名を呼ぶと視線だけで伝えたいことを伝え、イクトもその場の雰囲気で察したのか何となくで理解したのか頷く。


「あいよ」


「……すまん、チカ。

少しヒロムを探してくる」


「え、探しに行くなら私も……」


「ユリナたちはイクトとここにいてくれ」


「ええ……」


「そんな嫌そうな反応しないでよ……」


任せたぞ、とイクトに一言告げるとガイは走っていく。


イクトも手を振って見送るが、リサはなぜかイクトに警戒するようにユリナとチカを連れて離れようとする。


「……リサさん?

そんなに警戒しなくても良くない?」


「いや、イクトって顔の割にモテないから……」


「リサさん、ひどすぎません!?

オレなんかしました!?」


「されそうだから、かな」


酷い、とリサの言葉にショックを受けたようなリアクションをするが、心の中では全く違うことを考えていた。


そう、ガイのことだ。


(……大将が動いてるならソラも動き出してるはず。

必ず成功させろよ、ガイ!!)



***


パーティー会場の外。


噴水のある庭、そこにヒロムは飾音を連れて来ていた。



なぜここに連れてこられたのか、わからない飾音はなぜ連れてきたのかをヒロムに尋ねた。


「どうしたんだい?」


「さっき軽く言っただろ?

バッツについてだ」


知ってるよな、とヒロムはどこか冷たい口調で飾音に問う。


飾音は頷くと自身の知りうる情報をヒロムに伝えた。


「蝙蝠の騎士を名乗る戦士。

煙を操り、音もなく現れて消える……」


「んなこと知ってんだよ。

今更な情報いらねぇよ」


「……少し態度悪いよ?

何が……」


「オレはもうバッツの正体は知ってんだよ」


ヒロムの言葉を聞いた飾音は少し驚いていた。

そんな飾音の反応を気にすることなくヒロムは続けて話し始めた。


「……けど、確信ねぇんだよな」


「確信?

まだハッキリしていないのかい?」


「ああ、まだな。

……自分のこともあるからな」


「そうだよね。

キミの「ハザード」もようやく抑えられ……」


誰に聞いたんだ、とヒロムは飾音の言葉を遮るように訊いた。


何を言い出すかと思えば……


飾音はため息をつくとヒロムの問いに答えた。


「カルラの報告があったんだよ。

三日前に戦闘があったんだろ?」


「……三日前?

何言ってやがる、カルラはそんな報告してねぇよ」


「……は?」


ヒロムの一言、それに飾音は言葉が出なかった。

いや、耳を疑うしかなかった。


「何を言ってるんだ?

カルラは……」


「たしかに三日前にバッツの攻撃を受けたよ。

でもな、そのことは黙ってるように伝えたんだ」


ヒロムはあの日にカルラへ伝えた言葉を思い出していた。



『それと、一つだけ頼みがある。

この戦闘のことは伏せててくれ。

オマエは何かあればかならず報告すると思ってるだろうからな』


『なるほど……考えましたね』



「……カルラは「姫神」が送ったオレの護衛兼報告係。

だから何か報告が入ると考えてるはずだ」


「……それで黙らせてたのか?」


「ああ、バッツについてだけ伝えるようにな。

ただ誤算は母さんと蓮夜にだけは伝えてたことだな」



ヒロムはため息をつくと飾音に近づくと胸ぐらを掴んだ。


そして、鬼気迫る表情で真相を確かめるように叫んだ。


「アンタはどっちの味方だ!!

オレかトウマ、どっちの味方なんだ!!」


「それは……」


「あの日に言っていた愛する者ってのは誰なんだよ!!」


「……」


「答えろ!!」


ヒロムの叫び声が響き、それを最後に少しばかり沈黙が周囲を包む。


が、そんな中でヒロムの飾音の胸ぐらを掴む手には力が強くなっている。


怒り、その感情から来るものだ。


ヒロムから目線を逸らすように飾音は申し訳なさそうにすると、ヒロムを突き飛ばした。


「!!」


「……キミや愛華のことは何よりも愛している。

けど、それでもオレはキミの力になれない……」


「何を言ってやがる……」


「ヒロム、キミを「無能」と呼び始めたのはバッツだ」


「それはオマエだろ?

今更言い逃れか?」


「そうじゃないよ……

ただ、バッツは……」


そこまでだ、とバッツの声が響き渡ると同時に飾音が紫色の光に包まれてしまう。


何か起きる、そう思い動こうとするヒロム。

だが、それよりも先に光が消え、飾音の瞳が紫色に光る。


「……おい、何した?」


「……簡単な話だ。

主導権を変えたのさ」


口調が変わった。

飾音と全く違うその話し方、ヒロムには覚えがあった。


そう、今飾音がそれだと思っていたヤツだ。


「バッツ……!!

どういうことだ!!」


「簡単な話だ。

元々オレは別の体に憑依していた」


「憑依、だと?」


飾音の体の中身はバッツだということに驚くヒロムにバッツは更なることを告げる。


「オレは先代当主に宿っていた……精霊だ」


「精霊、だと!?」


「ああ、オレはバッツ……蝙蝠の騎士としての姿は本来の姿を投影したものだ」


「何を言ってやがる……!!

親父はあの日……」


「ああ、あの日か……。

憑依したのに、コイツはオレを自我の中に封印しやがった!!」


「……何?」


「だが憑依した前後の記憶がないせいでコイツは「八神」が名付けたと思っている」


すると飾音の体が紫色の煙に包まれ、煙の中から鎧に身を包んだバッツが現れる。


「ああ、この姿が一番落ち着くぜ。

目的のためとはいえ、前の宿主殺して憑依したのに……

コイツのせいでオレは十年近く不自由な思いをした。

だけど、おかげでコイツの体を支配するほどの力を蓄えれた」


「……そういうことか」


何かに気づいたヒロムは拳に力を入れ、込み上げる怒りを抑えながらバッツにそれを告げる。


「オマエは……親父の体からオレの体に憑依する気だろ?」


「……Excellent!!

その精霊を従える力を持つ体……オレの求めていた力だ!!」


「……それでオレを殺そうとしたのか?」


「それは違うな。

あれはトウマの独断とオマエを強くさせるためのオレの指示だ。

オレとしては強くなった「器」でないと意味がないからなぁ」


「外道が……!!」


怒りを抑えられなくなったヒロムは殴りかかるが、バッツはそれを右手で払い除けるとヒロムを蹴り飛ばす。


「!!」




「十一体の精霊を支配するためにもオマエには頑張ってもらう必要があった」


「この……!!」



「だが所詮は人間、「ハザード」に発症して苦しんでる姿は無様だったよ」


黙れ、とヒロムはバッツを睨みながら言い、そして立ち上がると構えた。


「この体も十分な力を持ってはいるがな、オマエの方が優れている。

だから一度絶望させ、そこから強くさせたかった」


「……てめぇ!!」


ヒロムが走り出し、再び殴りかかろうとした時だ。

炎弾がバッツに襲いかかり、ヒロムもそれを見て足を止める。


炎弾の飛んできた方を見ると、ソラが銃を構えて立っていた。


「ソラ……」


「複雑だな……オレたちは飾音さんがバッツだと思ってたのに、バッツが別の人格だったとはな」


ソラは銃の狙いをバッツに定めると炎を身に纏う。


「けど……オレはヒロムのすべてを奪おうとしたオマエを潰す!!」


「やれるのかぁ?

オレは……ぐっ!!」


突然、バッツが苦しみだし、仮面の一部が砕けるとそこから飾音の素顔が姿を見せる。



そして、



「……ヒロム、ソラ。

オレを……バッツ諸共殺せ!!」


「……!!」


「飾音さんなのか!!」


「殺せ……バッツはここで殺さなきゃならない!!

だから……迷うな……!!」


「ふざけ……」


「オレがオマエにしてやれることだ!!

迷うな!!だから……

「あああ!!」



砕けた仮面が下に戻るとバッツは雄叫びを上げ、そしてヒロムとソラを睨むように見つめる。


「……迷うな、か。

迷うも何も、今のオレにはコイツの力もある!!

オマエらガキじゃ勝てねぇよ!!」


やってやるよ、とヒロムはジャージの上着を脱ぎ捨てるとフレイとマリアを呼び出し、そして自身は拳を構えた。


「どんな相手だろうとやってやるよ……!!

アンタの頼みなら……血も、覚悟も、闘志も……!!

オレの中にある魂とこの怒りを燃やして、オマエを潰す!!」


「……じゃあ来いよ」


「ソラ、力を貸してくれ!!」


「任せろ!!」


ヒロムとソラは走り出し、そしてバッツに襲いかかる。


「「いくぞ、バッツ!!」」

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