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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
589/672

五八九話 死神の盤遊


 シンクが天宮スバルと睨み合いながら話を進めている最中……

 

 相馬ソラと黒川イクトは桃園リサと高宮エリカをそれぞれ家まで送り届け終えていた。

家まで無事に送り届けた二人はヒロムの屋敷に向かうべく歩いており、そしてその傍らでは微笑ましい光景が広がっていた。

 

「ニャー」

「ナー」

 

 ソラがその身に宿す精神である子猫の精霊・キャロとシャロが散歩するかのようにヨチヨチ可愛らしく歩きながら戯れており、イクトはそんな二匹の可愛らしい姿を見ながらソラに話した。

 

「キャロとシャロってさ、やっぱサビイロネコって種類だと思うんだよな」

 

「んだそれ?」

 

「ほら、前に話したろ。

そん時はソラが保護者として変なスイッチ入って怒ってたけど、いざこの二匹の小さい体を見るとやっぱサビイロネコとしか思えねぇんだよな」

 

「……思い出した。

オマエがそのサビイロネコとかいう種類の名前を出した時、オレはたしかオマエにこの二匹が汚れてるって言いたいのかって謎にキレてたな」

 

「そうそ、謎にキレてただろ?

まぁ、サビイロって言われたら音だけなら鉄錆とかの錆の方を思い浮かべるよな」

 

「だがサビイロネコって絶滅危惧種だろ?

そんなのが精霊の姿に反映させるのか?

それに……コイツらは見た感じ生後間もない子猫みたいな姿のままだし、サビイロネコか云々の前に成長するかすら怪しいだろ?」

 

 キャロとシャロ、二匹の子猫の猫としての血統、種類について話を進めるソラとイクト。

サビイロネコという種類について二人が話していく中、キャロとシャロはソラに甘えるように可愛らしく鳴き、二匹が鳴くとソラは腰を下ろすと二匹を抱いて立ち上がる。

 

「ニャー」

「ナー」

 

「ったく、散歩したがったと思えばひとしきり楽しんだあとはこれだよ。

わがままで困るんだがな……」

 

「けど、可愛いと思ってるんだろ?」

 

「まぁ、この二匹がいて楽しいからな」

 

「キュッ!!」

 

 ソラがキャロとシャロのことを口にしていると彼の宿すもう一匹の精霊であるリスの精霊・ナッツがソラの頭の上に現れると自分もいることを彼に伝えようとする。

 

「キュッキュ!!」

 

「忘れてねぇよ。

ただ今イクトと話してたのはキャロとシャロの話だったからナッツのことを言わなかっただけだ。

オマエら三匹がいるからオレは楽しいんだよ」

 

「キュ〜」

 

 嫉妬でもしてるかのように鳴くナッツに対してソラが優しく言うナッツは嬉しそうに鳴く。


 嬉しそうに鳴くナッツの声にソラは単純なヤツだと少し呆れながらもナッツのことを可愛いと思い、彼が三匹と仲良くする様子を見るイクトはどこか羨ましそうに話していく。

 

「いいよなぁ、みんな何かしら癒される要素のある精霊がいて。

真助の狼の空牙、ガイの子供の精霊(?)の飛天、シオンのウサギのライバ、ノアルの恐竜の子供みたいなガゥ……なんかみんなマスコットキャラみたいな精霊で羨ましいよ」

 

「オマエにも精霊がいるだろ」

 

「たしかにオレはバッツを宿してるよ?

けどバッツって飾音さんの精霊って感じがしてさ……。

みんな自分の精霊を宿してるのにオレは人から受け継いだみたいで釈然としないんだよな」

 

「けどオマエはバッツを宿し、そしてシンギュラリティに達し……」

 

 達してないよ、とソラの言葉にかぶせるようにイクトは言うと何故か足を止める。

彼の言葉に驚かされるソラは足を止めたイクトの方を見ると何故シンギュラリティの到達について否定するような言い方をするのかを彼に問う。

 

「どうしてだ?

オマエは葉王やヒロムが言うようにバッツを宿して「死獄」の力を開花させて強くなったんだろ?

ならオマエはシンギュラリティに……」

 

「たしかにシンギュラリティには達したかもな。

けど……オレは大将やガイのようには強くないよ」


「……比較対象が違いすぎる。

ヒロムは元々が規格外だし、ガイの場合も元々のセンスがあるからあんだけの力を発揮したって話だ。

オマエ自身の力の話をするなら、応用力とか万能性を考えればアイツらには劣ってないんだから自信持てよ」

 

 どこか不満げ、そしてどこか自信なさげに話すイクトに対してソラは彼を励ますような言葉を伝えるが、イクトは後ろ頭を掻くとソラに伝えた。

 

「自信持てって言うのは嬉しいけどさ、やっぱりこのままじゃダメだって思っちまうんだよな。

大将はシンギュラリティの覚醒に達して自分に出来る戦い方でカリギュラのヤツらを撃退してるし、ガイだってシンギュラリティの力を誰よりも後に使えるようになってるのに真っ先に到達してるオレなんかより使いこなしてるわけじゃん?

シオンと一緒にシンギュラリティに到達してる身としては後から到達してる二人やソラに追い越されるってのは楽観視出来な……」


「イクト、その話は後にしろ。

今は……構えろ」

 

 イクトの話を聞くソラは途中で終わらせるように冷たく言うと構えるように伝え、抱き上げていたキャロとシャロを両肩に載せると炎とともに紅い拳銃・「ヒート・マグナム」を出現させて右手に持つ。

 

 ソラに言われるとイクトは話をやめて影の中から大鎌を出現させて構え、さらに自身が宿す黒い鎧の騎士の精霊・バッツを出現させて彼に指示を出した。

 

「バッツ、悪いけどキャロとシャロをソラの代わりに見ててくれ」

 

「任せとけ」

 

 イクトに言われるとバッツは従うように返事をしてソラに歩み寄ってソラの肩に乗せられた二匹の子猫を預かり、二匹の子猫を抱くと後方へと下がる。

 

 バッツがキャロとシャロを抱いて下がるとソラとイクトは武器を構え、二人が武器を構えると彼らのまえに前に軍服に似た装束を身に纏った能力者が十数人現れる。

 

 そして……

 

「オマエら二人だけか……。

仕方ねぇなぁ」

 

 十数人の能力者の前に黒い戦闘装束に身を包んだ黒髪に金メッシュの男が魔力を纏いながら現れ、現れた男を前にしてイクトは大鎌を強く握ってしまう。

 

「蓮夜さん……!!」

 

「……イクト、「天獄」が「姫神」と「月翔団」から離れて敵対する仲にあるのにまだオレをそう呼ぶのか?」

 

「それは……」

 

「惑わされんな、イクト。

コイツは敵、オレたちの邪魔をする敵だ」

 

「心外だなソラ。

オマエら二人が何と思おうとオレはオマエら二人を敵とは思っていない」

 

 黙れ、とソラは男……白崎蓮夜に向けて言うとともに紅い拳銃、「ヒート・マグナム」を蓮夜に向けながら蓮夜に問う。

 

「オレたちを敵とは思っていないと言うなら何故ヒロムを裏切った?

何故オマエはヒロムの命を狙うような真似をした?」

 

「裏切ったつもりは無い。

そもそもアイツはオレたちが必死で守ろうと色々考えても無茶苦茶に掻き乱して好き放題やってた身だ。

もはやガキのわがままでは済まされないレベルにまでアイツは身勝手なことを繰り返している。

だからオレたちは大人としてオマエらを止めなきゃならない」

 

「止める?

従わなかったらヒロムを殺してでも自分の思い通りにしようとしてるオマエがか?

戯言も大概にしろ!!」


「現実を見ずに戯言を言ってるのはオマエらだ!!

オマエらが好き勝手暴れた結果どれだけの大人が後始末のために動かされてると思ってやがる!!

オレたちには果たすべき責務がある、オマエらガキがそれを邪魔して自分たちの敵だのなんだの言ってめちゃくちゃに掻き乱してんだろうが!!」

 

「黙れ!!

姫神愛華の身勝手な行動を黙認しておきながら今更ヒロムをどうにかしようとか思うなよ!!」

 

 ソラと蓮夜、互いが互いの強い意志のもとで己の思いをぶつけていく。

互いの思いがぶつかる中、二人は放つ言葉が強くなっていき、両者の間にイクトや蓮夜が引き連れてきた能力者たちは割って入れなかった。

 

 互いの思いがぶつかり、そしてそこに僅かな沈黙が生じると蓮夜は自身の娘・夕弦に対する思いをイクトに向けて言っていく。

 

「イクト、オマエが夕弦と出会い「天獄」と「月翔団」の橋渡し役になってから夕弦は変わってしまった。

ただ遠くから見守るだけだったアイツがいつの間にか「月翔団」のことを蔑ろにして「天獄」の一人として振る舞うようになった。

そして気づけばアイツは「姫神」に仕える「月翔団」の部隊長ではなくヒロムが束ねる「天獄」の戦士としてオマエらの側に寝返った」

 

「待ってください!!

誰も夕弦に強制はしなかった!!

あれは夕弦が自分の意思で……」

 

「オマエらが何かしてなくても関係ないんだ。

オマエらの姿を目の当たりにして夕弦の信念は曲がり、そしてその結果夕弦は道を違えた、今必要なのはその事実だけだ」

 

「道を違えたって……夕弦には夕弦の思いがあるはず!!

アナタはそれを無視して自分の考えを押しつけることが望みなのですか!!」

 

「自分の娘が危険に晒されることがどれだけの苦しみかオマエには分からないだろ!!

たかだか数週間付き合ってる仲のオマエには夕弦が何かする度にオレがどれほどアイツを気にかけてるかなんて分からないだろうな!!」

 

「……だとしてもオレは夕弦が自分のやりたいことをやってるのならそれを尊重すべきだと考えてる!!

アナタのその考えが親として正しいとしても、オレは……彼女が信じて進む道を応援する!!」

 

「そうか……。

これ以上の話し合いは無意味だな。

オマエらはここに来るまでに一戦終えてるはずだ。

疲弊した相手に対して勝負を持ちかけるのは心苦しく思える……そこで、オマエらに提案したい案がある」


 イクトの言葉を聞くと蓮夜は打って変わって落ち着いた様子で話し始め、口調が変わった蓮夜はソラとイクトにある提案した。

 

 だが、その提案は二人が想像していたものとは大きく異なっており、その提案を聞いた二人は驚くしか無かった。

 

「オマエらがこれ以上騒ぎに巻き込まれるのはオマエら自身、身が持たないはずだ。

そこで、オマエら二人をオレの直属の部下にしたい。

もしこれを受け入れてくれるなら……姫神ヒロムへの全ての攻撃を取り下げ、今後「天獄」への干渉もしないと約束しよう」

 

「なっ……!?」

 

「テメェ……!!

ヒロムを人質にして取引するってのか!!」

 

「平和的な解決を望むならこうするしかない。

オマエら二人が従うなら全てをやめる、その代わり従わないのなら……覚悟はしておけ」

 

 ソラとイクトに忠告した蓮夜は全身に魔力を纏うと強い殺気を身に纏い、纏われた殺気が周囲に強い衝撃を走らせていく。

 

 走る衝撃、蓮夜が放つ殺気。

それらを受けたソラとイクトは蓮夜の力、そして蓮夜の宿す強さの奥にあるものを見抜く。

 

「この力……まさか!?」

 

「オマエも……!?」

 

「オマエらに教えておいてやろう。

オレが隠していた強さ……シンギュラリティの能力者としての強さをな!!」

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