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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
580/672

五八〇話 イレギュレーション


 どこかの廃工場。

そこには真紅の鎧を身に纏った騎士が一人いた。

 

 グラム、この鎧を身に纏った騎士はそう呼ばれる男であり、この男は前日の「七瀬」主催のリゾート中のヒロムたちの前に現れたカリギュラの主要人物と思われる男。

 

 いや、そう思っているのはヒロムたちだけ。

主要人物と思われる男ではない、彼はカリギュラの主要人物どころか……今のカリギュラを表向きに動かしている男だ。

 

 つまりは……リーダーだ。

 

「姫神ヒロム、キミのその力は我々の想像を簡単に超えてくれる。

理解の外にある限界、とでも呼ぶべきなのだろう。

さすがは……我々カリギュラが革命種として危険視している一人だ」

 

 誰かに話しているのか、それともただの独り言なのか……定かではないがグラムは何かを話している。

 

「シンギュラリティの到達が中途半端だという話はリュクスから聞いてはいたが、どのような経緯かは分からぬ覚醒に至った結果中途半端だった到達は完全なものとなり、完全な到達に伴い覚醒に至ったことで得られる力は当初リュクスが想定していたものとは異なる形で現れた。

いや、仮にあの光の粒子が姫神ヒロムのシンギュラリティの覚醒でないとすれば、あれこそが姫神ヒロムがシンギュラリティに到達した証と呼ばれるものかもしれない」

 

 ヒロムについて次々に考察を出していくグラム。

その考察の中にはヒロムのシンギュラリティの覚醒による力も入っていた。

 

 機械兵器・イヴナントを破壊し、さらにはカリギュラ側の兵を追い詰めるほどの力を発揮した光の粒子を発したヒロムのその力、グラムはそれがシンギュラリティの覚醒による力ではなく別の何かだと考えていた。

 

「彼の力はおそらく今後も進化していく。

進化とも変化とも言えるそれを彼は止めない。

止められないのではなく、止めることの出来ぬ成長と言うべきその力の増幅は我々カリギュラの計画に必要になると同時に危険な存在ともなる。

デバイスシステムのシンギュラリティの到達、それが達成する前に彼が真の強さを手にした場合……我々カリギュラの計画の成功は無いに等しいものとなる」

 

「戻ったぞ」

 

 グラムが一人で話す中、彼のもとへと光とともにキリスが現れる。

現れたキリスはヘヴンを抱えており、抱えられているヘヴンはガイの攻撃によって負傷した上に気を失っていた。


 キリスはヘヴンを下ろすなり床に寝転がせ、ヘヴンを寝転がせたキリスはグラムに報告した。

 

「計画通りにスローネとオウガは例のシステムをデバイスシステム内に完成させた。

用済みになった二人に関してはヘヴンが始末してチップを回収したから後始末は終わったも同然だ」

 

「そうか。

そのヘヴンはひどく負傷してるようだな」

 

「アンタの言う通り、雨月ガイはシンギュラリティに到達していた。

想定外だったのはこの目で見た感じではあれは姫神ヒロムの力に次ぐ程の強さを秘めている」

 

「やはり、か。

彼も革命種の一人として危険視すべきと考えていたが、それが現実になるとは思わなかったな」

 

「姫神ヒロムは能力、底の知れぬ潜在力と精霊を宿す素質とそれを使役するだけの膨大な魔力が人の域を超えている。

そして雨月ガイも人の域を超えるほどの一面がある。

才能、それこそが革命種として危険視すべき点だ。

意識せずにシンギュラリティに到達したにも関わらず今に至るまで一度もその力を使わず、シンギュラリティの能力者ということを意識した途端に覚醒に至るほどの力を発揮したんだ。

力ではなく、そこまで力を引き出せるあの男のセンスが危険だ」

 

「たしかにキリスの言う通りだ。

姫神ヒロムは能力、雨月ガイは才能。おそらくこの二人に関しては革命種として危険視すべきだ。

だが、彼らが手を組んでいるかとしれない一条カズキの戦闘力と鬼桜葉王の力も革命種として危険視しなけへばならない」

 

「その二人が我々の邪魔をすると?」

 

 可能性はある、とグラムはキリスの言葉に対して答えると続けて一条カズキと鬼桜葉王について話していく。

 

「前回の大規模な戦闘にて鬼桜葉王は彼ら「天獄」の味方として現れた。

あの場に「一条」の一人であったリュクスがいたからなのか、リュクスが言っていた「一条」の計画に必要な姫神ヒロムを奪われぬように守ろうとしたからかは不明だが鬼桜葉王は現れた。

そして鬼桜葉王の言葉によってゼロは本来のシンギュラリティの力、鬼月真助と東雲ノアルはシンギュラリティに到達するとともにその証たる精霊を現界させた」

 

「今後も介入してくるとでも言いたいのか?」

 

「可能性の話ではなく、鬼桜葉王と一条カズキが今の姫神ヒロムを重要視しているとなれば今後の我々カリギュラの活動を阻害してくるのは間違いない。

リュクスの言う計画が本当に「一条」が起こそうとしている計画ならば、間違いなく姫神ヒロムはキーマンになるからな」


「ならどうする?」

 

「計画はこれまで通りに進める。

それに、キミやヘヴンが集めてくれたデータのおかげで彼らを本格的に動かすことが出来る」

 

 ヒロムが重要視されれば「一条」の人間たる鬼桜葉王と当主の一条カズキがカリギュラの計画の邪魔になるかもしれないのならどうすればいいのかキリスは指揮する立場であるグラムに問い、問われたグラムが指を鳴らすとグラムのもとへと鎧の戦士が何人も現れる。

 

 鬼武者を彷彿とさせるような面持ちの鎧の戦士や天使のような穢れなき白の鎧に身を包んだ戦士などがおり、その中には堅牢な白の鎧に身を包んだ戦士・ヒューリーと赤い鎧を纏った戦士・バローネもいた。

 

「我々のやるべき事に変わりはない。

そしてデータが揃いつつある今、これまで身を潜めてもらっていたり行動を控えてもらっていた彼らの力を存分に発揮して戦うときだ。

我々の目的は果たされるべきところまで来ている。

それ故に止まっている暇はない」

 

 今後についてキリスに大まかに話したグラムはこの建物の中のある方向に視線を向ける。

視線を向けられたその先には……体長二~四メートルほどはあるであろうボロボロに朽ちている人型の機械兵器があった。

 

 胸部にあたる部分には何やら紫色に怪しく光る機械がはめ込まれており、その機械兵器を見ながらグラムは呟いた。

 

「いよいよだ、カリギュラ。

我々の目的が、達成される……!!」

 

 

 

***

 

 

 その頃……

 

 スローネやヘヴンとの戦闘により戦場と化した学校には多くの警察やギルドが駆けつけていた。

幸いな事にヒロムたちの行動は正当防衛として警察に処理され、学校への被害等についても彼らに責任を問わない方針で話が勧められた。

 

 生徒たちもカリギュラに加担した生徒会長を除けば全員無事であり、全員家に帰された。

そして今回の一件により学校はしばらく休校となったのだが、それに関しては何故かヒロムに対する冷たい目が現れていた。

 

 元々「竜鬼会」の一件を誤認している彼らはヒロムのことを嫌っていた訳だが、今回の件に関しては生徒会長を殺したとしてさらに嫌うようになっている。

いや、ヒロムは何も悪くない。カリギュラに加担した生徒会長はカリギュラの用意したプロトタイプのデバイスシステムの副作用によって消滅してしまっただけ。


 ただそれだけの事実のはずなのに、生徒たちはヒロムが悪いと思っている。

 

 以前ヘヴンが口にした言葉、そこにヒロムがいるから敵が現れて争いが起きると言う言葉は今の彼らの謝った認識とどこか一致してしまう。

そこにヒロムがいるだけで敵が現れるというのに、彼らは全てヒロムが悪いと決めつけている。

 

 だがヒロムはそんなことは気にしていなかった。

いや、気にしている間はなかった。

なぜなら、そんな些細な問題よりも解決しなければならない問題が目の前にあるからだ。

 

 警察によって正当防衛として処理されたヒロムたちはすぐに解放され、ヒロムたちはひとまずカルラを連れて学校から離れた場所にある広場へと集まっていた。

 

 そこでヒロムはカルラに全てを話させようと迫っていた。

 

「今まで何をしていたかを話せ。

事と次第によってはオマエが「天獄」に戻る以前の問題だからな」

 

「さっきも話したスけど、オレとロビンはネクロに協力を依頼して自分たちの素性を偽ってもらったんだ」

 

「何のためにだ?

ヒロムが危機に晒されてる中で何でオマエらはそんなことをしたんだ?」

 

「仕方なかったんス。

立場上簡単に助けに行けなかったのもあったんス」

 

「立場上?

オマエらが「天獄」と「月翔団」の二つに属してるってことか?」


「それは違ェなァ」

 

 ヒロムが問い詰め、カルラの言葉に対してガイとソラが追及しようとすると、誰かが話に入ってくるようにやってくる。

 

 口元を覆い隠した毛先だけが紫色の茶髪の青年、以前会った時は陰陽師でもイメージしたかのような服装をしていたのに今は黒い装束を身に纏っていた。

 

 ヒロムたちはこの青年を知っており、この場に一緒にいるユリナたちも青年を知っている。

 

「葉王……何でオマエがここにいる?」 

 

「よォ、姫神ヒロムゥ。

順調そうだなァ」

 

「話を逸らすな。

オマエが何でここにいる?

オマエはカルラとロビンのことを知ってるからここに現れたのか?」

 

「まァ、落ち着けよォ。

オマエらとオレたちの関係は秘匿事項だがァ、滝神カルラの件については話せるからなァ」

 

「カルラの件?」

 

「あァ、コイツらがオマエのことを助けられなかったのはァ……コイツらがオレの配下の能力者だからだァ」


「「!?」」

 

 葉王の言葉、それを聞いたヒロムたちは驚きを隠せなかった。

葉王の配下の能力者、彼の言うその言葉の意味をそのまま解釈するのならば……

 

「オマエら、ずっとオレを騙してたのか?」

 

 そのままの意味で解釈したヒロムはカルラに対して問うが、話を聞いた葉王はため息をつくとヒロムに説明した。

 

「少し違うぞォ、姫神ヒロム。

滝神カルラは「姫神」にいるオマエの事をオレに報告させるために、ロビンがオマエを殺しに現れたのはオマエの中の力を引き出すきっかけにさせるためにオレが仕向けたんだよォ」

 

「何……?」

 

「要はコイツらはオレや「一条」の計画を理解した上でオマエらの身の安全を確かに保とうとしてたってだけだァ。

この話は終わりだァ、話を変えるぞォ」

 

「待て、今ので納得なんて……」

 

「いいのかァ?

せっかく「十家」勢揃いの十家会議が数日後に行われるって事を話に来たのによォ」

 

「十家会議……だと!?」

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