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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
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五七七話 予期せぬ刃


 スローネをヒロムから救い出すかのように突如現れたヘヴン。

剣を構えるヘヴンはヒロムの方を見ており、ヘヴンの出現に際してヒロムもそれなりの警戒心を見せる。

 

「ヘヴン……」

 

「ここまでだ、姫神ヒロム。

これ以上は我々の計画に問題が生じる故、遠慮願いたい」

 

「はいそうですか、で納得出来るわけねぇだろ。

先に仕掛けてきたのはオマエらカリギュラだ。

人の平穏を乱しておきながら自分の都合で話終わらせようとすんなよ」

 

「平穏、か。

オマエは今朝登校してからいつものように授業を受けてもいない、そして周りの人間もキミに対してはいつもとは異なる冷たい態度を見せたはずだ。

それなのに、オマエはそれを平穏の一言で済ませるのか?」

 

「オレにとっては平穏な日常なんだよ。

昔から誰かしらに嫌われてるオレからしたら周りのヤツらの態度なんざ今更関係ない。

コイツらのこういう態度には飽き飽きしてるからな」

 

「なるほど、オマエが心を強く持てているのはオマエ自身がそこを割り切っているからというわけか」

 

「あ?」

 

 まぁいい、とヘヴンはヒロムに対して冷たく言うとヒロムに背を向けるようにしてスローネへと歩み寄っていく。

 スローネに歩み寄るとヘヴンは彼に手を差し伸べ、スローネは差し伸べられたヘヴンの手を掴むと彼の力を借りる形で体を起き上がらせる。

 

 起き上がらせた体、だがその体にはヒロムの猛攻により蓄積されたダメージがあり、そのダメージによってスローネはフラついてしまう。

 

「助かったよ、ヘヴン。

キミの登場がもう少し遅かったら……オレはあの男に殺されていた」

 

「デバイスシステムの防御機構があればどんなダメージを受けても致死量に達することは無い。

オレが来なくともオマエならどうにか出来たはずだ」

 

「想定外の事態になってね……。

とにかく助かった、ここからキミが時間を稼いでくれればオレのデバイスシステムを修復して何とか……」

 

 その必要は無い、とヘヴンはスローネの言葉を遮るように冷たく言うと彼の腰のバックル部分のデバイスシステムを何故か取り外してしまう。

デバイスシステムが取り外された、そのことに戸惑うスローネは不思議そうにヘヴンの方を見ていた。

 

 すると……誰もが想像していないことが目の前で起きた。

 

「……ッ!!」

 

 それは本当に突然の事だった。あまりにも突然すぎてヒロムたちはそれを目の当たりにして驚くしかなく、そしてスローネも為す術もないままに直面してしまう。

 

「何故……」


 何故だとヘヴンの方を見ながら問い尋ねるスローネ。

そのスローネの体は……ヘヴンが手に持っていた剣によって貫かれていた。

 

突然だった。

スローネの腰のバックルからデバイスシステムを取り外したヘヴンは何の躊躇いもなくスローネの体を剣で貫き、味方であるはずのヘヴンの突然の行動にスローネも何も出来ぬまま体を貫かれた。

 

 ヘヴンの剣がスローネを貫いた、その光景にヒロムたちが驚く一方で戦いが起こる前にヒロムが展開した障壁の中で守られている生徒たちは人の体が剣によって刺されるという状況にパニックを起こしていた。

 

 生徒たちが混乱する中、ヘヴンはスローネから剣を引き抜くと彼のバックルから取り外したデバイスシステムを見ながらスローネに向けて言った。

 

「悪く思うな。

これも全てはグラムの命令だ」

 

「な……に……!?」

 

「前回の失敗を踏まえた上でグラムはオレにオマエの始末を頼んでいたんだ。

一度の失敗はグラムも許せたみたいだが、二度目の失敗はカリギュラ全体の指揮に関わる問題となる。

結果としてオマエは姫神ヒロムに大敗し、そしてデバイスシステムが自壊しかねないほどの損傷を与えてしまった。

オマエが失態を犯したかどうかの判断はオレに一任されていたが……個人的な意見としては同じようなミスを犯すオマエと今後行動するつもりはない。

姫神ヒロムを倒せないのであれば、オマエは不要と判断した」

 

「ふ、ふざけるな……!!

グラムがオレを……このオレを見捨てるはずがない!!

前回の失敗もグラムは許して……」

 

「それは一度目だったからだ。

独断での行動が多いオマエの身勝手なその態度とカリギュラの作戦に弊害を生むオマエの失態をグラムはこれ以上耐えられないらしいからな」

 

「ふざけるな……ふざけるな……!!

ふざけるなぁぁぁあ!!」

 

 ヘヴンの言葉に納得のいかぬスローネはどこからともなく剣を出現させると手に持ってヘヴンの首を切り落とそうとする……が、ヘヴンは目にも止まらぬ速度でスローネの剣を防ぐとすかさずスローネの体を数回剣で突き、そして剣に魔力を纏わせるとスローネの体を両断するかのように振り下ろしてスローネの体に斬撃を食らわせる。


 斬撃を受けたスローネ、そのスローネの体が身に纏う鎧は完全に砕け、そして鎧は砕けると何かを炸裂しながらスローネ諸共その場から形も残すことなく消滅してしまう。

 

 中にいたはずの人間も消えた。

塵一つ残すことなくスローネは消滅し、スローネが消滅するとヘヴンは彼から取り外したデバイスシステムを触り、一部分を展開させるとそこから何やらICチップのようなものを取り出す。

 

 取り出したそれをヘヴンは自身のバックル部分のデバイスシステムにはめ込み、はめ込まれたヘヴンのデバイスシステムは何やら音声を読み上げるとヘヴンの体に一瞬光を走らせる。

 

「……次だ」

 

 体に一瞬光が走ったヘヴンは音も立てずに倒れているオウガのもとへ移動するとオウガを無理やり立ち上がらせ、立ち上がらせたオウガの腰のバックルからも同じようにデバイスシステムを取り外すと剣で貫きオウガの命を奪う。

 

「が……」

 

 剣で貫かれたオウガは何かを言う間もなく息絶え、そして鎧が消滅していくとともにスローネと同じようにオウガも鎧と一緒に消滅してしまう。

 

 そしてヘヴンは何もなかったかのようにオウガのデバイスシステムからスローネの時と同じようにICチップのようなものを取り出すと自身のデバイスシステムの中へと組み込んでいく。

 

「これで二つ回収出来た」

 

「オマエ……今仲間を殺したのか……?」

 

 目の前で起きたことを確認するかのようにヒロムはヘヴンに問い、問われたヘヴンは剣を握り直すとヒロムの方を向いて言った。

 

「見たままの光景を受け入れられないのか?

オレは今、スローネとオウガを殺した」

 

「何のためにだ?

何のために仲間を殺した?」

 

「オマエたちの仲間意識はオレたちカリギュラには関係ない。

オレたちは目的のために集った戦士、仲間意識など必要ない。

度重なる失態には罰を、それがカリギュラだ」

 

「目的のためなら躊躇いなく殺せるってか。

それがオマエらの本性ってわけだ」

 

「本性?

別に隠していたつもりは無いし、どちらかと言えばオマエたちが甘ったるい覚悟で戦ってるからそう思ってるだけだ」

 

「甘ったるいだと?」


「戦場で命が散るのは至極真っ当なこと、敵味方関係なく命は奪われる。

それが敵からか身内からかは関係なく、狙われる時は見境なく狙われるのが道理だ」

 

「仮にも手を貸しあった仲間だろ。

その仲間に対して何の躊躇いもないのか?」

 

 無い、とヘヴンはヒロムの言葉に返すと剣を強く握り、そしてヒロムのもとへ向かおうとするかのように歩を進めようとした。

 

 ヘヴンが動こうとするとガイとシオンがヒロムを守るべく彼の前に立ち、二人が立ちはだかるとヘヴンは何故かため息をついてしまう。

 ため息をつくとヘヴンは握っていた剣を手放すように消し、そして何故かやる気が無さそうにガイとシオンに言った。

 

「邪魔をしてくれるなよ。

せっかくここから盛り上がるところだったのに、興ざめじゃないか」

 

「生憎だが、オマエを楽しませるつもりはない」

 

「オマエはここで倒す。

これ以上は好きにはさせねぇよ」

 

 ガイとシオン、二人はヘヴンを倒すべくやる気を見せるが、二人のやる気を感じ取ったヘヴンはまたため息をついてしまう。

 そしてため息をついたヘヴンはガイに向けてある話をした。

 

「雨月ガイ、オマエは自分を理解していないのか?」

 

「何?」

 

「この場にいる姫神ヒロム、相馬ソラ、黒川イクト、紅月シオンはシンギュラリティに達した能力者。

中でも姫神ヒロムはシンギュラリティの覚醒という一線を画すほどの領域に達した能力者になっている。

だが、オマエ一人が唯一シンギュラリティに到達していない。

言うならばオマエはただの能力者だ。

そんなただの能力者がオレを倒せると思うのか?」

 

「たしかにオマエはシンギュラリティに達した真助とノアルが追い詰められるほどに力を増してる強者だ。

だが、シンギュラリティの到達は能力者の強さを測る上での一つの判断材料でしかない。

到達の有無は関係なくどうやって戦うかが真の強者に求められる素質だ」

 

「素質、か。

残念な話だがシンギュラリティの能力者にはその類の言葉は通じない。

あるのは力の有無のみ、素質など論外だ」

 

「論外、か。

オマエがそう思ってるだけで案外その考え方は間違ってるかもよ」

 

 それに、とガイは鞘に収めている刀の柄に手をかけながら全身に魔力を纏い、魔力を纏ったガイはヘヴンを睨むような眼差しを向けながら言った。

 

「そろそろオマエのその間違った考えを正さなきゃならねぇしな」

 

「間違った考えだと?

何を言っている?オマエ一人がシンギュラリティに達し……」


 ガイの言葉を訂正するかのようにヘヴンは話していたが、そのヘヴンの言葉を途切れさすかのようにガイは刀を素早く抜刀する。

 

 抜刀された刀、刀が抜刀されるとガイが纏っていた魔力は突然蒼い炎のように燃え上がると大きく膨れ上がり、さらにガイの持つ刀……霊刀「折神」の刀身からも膨大な量の蒼い炎のような魔力が放出されていく。

 

 放出されていく蒼い炎のような魔力は力を増すように揺らぎながら強くなっていき、その魔力は次第にガイの背丈の十数倍にまで膨れ上がっていた。

 

 膨れ上がり続ける魔力、その魔力を目の前にしてヘヴンは思わず一歩後退りしてしまう。

 

「な、何だ……この力は……!?」

 

「教えておいてやるよ、ヘヴン。

オレはシンギュラリティに到達してないんじゃない」

 

 驚くヘヴンに対してガイは何かを教えるように話しながら刀を振り上げ、そして……

 

「オレは……誰よりも先にシンギュラリティに到達していた能力者だ」

 

 ただ一瞬、振り下ろすためだけにガイは刀を握る手に力を入れて刀を振り、刀が振られると一瞬空間が歪むと共にヘヴンが巨大な斬撃に襲われながら吹き飛ばされていく……

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