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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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五七話 祝会

愛華がヒロムのもとを訪れてから三日後……


ヒロムの母・愛華の誕生日を祝うパーティー当日。


ヒロムはガイ、ソラ、イクト、シオンとともに愛華が迎えに来させた車に乗り、パーティー会場に向かっていた。



愛華が来た日に面倒を見ることになった真斗、ヒロムが連れて行くと言ったユリナたちとシオンについてきたハルカはヒロムたちとは別の車で向かっていた。



その移動中の車内で、ヒロムに確認するようにガイたちはあることを話していた。


「このパーティーの目的はあくまでバッツの招待を暴くことだ」


「ガイに言われなくてもわかってるさ。

オレもイクトもシオンもそのつもりで来てるんだからな」


「オマエらの気持ちは嬉しいが、さすがに五人全員がバッツに対しての警戒心を持ちながらパーティーに参加するのは警戒される」


だから、とヒロムはシオンとイクトを見ながら一つ頼み事をした。


「シオンとイクトはユリナたちの護衛を頼む」


「オレらでお姫さんたちを守るんだな?」


「……オマエの指示なら聞いてやる」


イクトは何の問題もなく了承し、一方でシオンは嫌そうに返事をした。


その理由についてはヒロムたちはすぐに理解出来た。


「さすがのシオンもハルカ程度じゃ女嫌いも治らねぇか?」


「ヒロム、その言い方はハルカに聞かれたら怒られるぞ」


知らねぇ、とガイの忠告に対して冷たく返すと、シオンへ護衛についての説明をした。


「シオンはハルカの護衛で大丈夫だ。

あとはイクトが三人とも護衛してくれる」


「えっ……大将、初耳なんだけど……」


「とにかくオレが行動を起こすと何が起きるかわからない。

何かあればさっき言ってたプランBに切り替えてくれればいい。

だから二人はアイツらを頼む」


それと、とヒロムはガイとソラの方を見ると、二人についてもある頼みをした。


「オマエらには前日に言っておいた通り動いてほしい。

頼めるか?」


「ああ、任せろ」


「オレとガイでならどうにかなる」


「んじゃ、あとはオレが……」


それにしても、とヒロムの話の腰を折るようにガイはヒロムの服装に触れた。


今回のパーティーの服装は自由だとは聞いていた。

だとしてもそれなりの格好としてガイたちは相応の服を選んで着ているが、ヒロムは相変わらずというか、普段通りジャージだった。


「こういう時くらいは普通の服を……」


「バカ言うな、いつもと違うだろうが」


ジャージに対してのいつも通りなんてわからないが、ガイたちから見たら何の変哲もないジャージだ。


だがヒロムは違うというのだ。



「……何が違うんだ?」



「背中に翼生えてるんだよ、外行き用のジャージだからな」


(知らねぇよ……)



***


会場に到着し、ヒロムたちは車を降りると会場内に入ろうとする。


こういうことに慣れてるヒロムは何食わぬ顔で一人中に入ろうとするが、ユリナたち女性陣は会場の規模に驚いていた。


シオンも多少は驚いていたが、ガイ、ソラ、イクトは一度来たことがあるらしく、反応を見せない。


「広いね……」


ユリナはその一言しか言えぬほど、言葉を奪われていた。


テレビでよく聞くような野球ドーム数個分と言う方が早そうな敷地面積、それを盛大に活用した洋風の城がモチーフであろう建物。


今自分がその場にいることが夢を見ているかのようで仕方が無いのだ。


「す、すごい……」


「大した広さだな」


「そうか?

別荘地だからこんなもんだろ?」


ヒロムの何気ない一言にユリナたちはただ唖然としていた。


初見の自分たちと慣れ親しんでいるヒロムとの差なのだろうか?


とにかくヒロムの感覚がズレているようにしか思えなかった。


あっ、と何かを思い出したようにガイはユリナを見ながらヒロムを呼び止める。


「ユリナの衣装、可愛いと思わないかヒロム?」


「ああ?」


ガイに言われ、ヒロムはユリナの衣装を見た。


ユリナはヒロムの母である愛華が手配したであろうドレスを纏い、慣れぬヒール、そして花を模した髪飾りを付けていた。


そして、ヒロムの視界に入ろうとリサとエリカも愛華が手配したであろうドレスを着ていた。


傍から見ればとても可愛らしく、綺麗でオシャレだ。


だからガイもさすがのヒロムもこれを見れば一言褒めると思っている。


が、現実はそううまくいかないのだ。


「……ドレス着てるだけだろ?

いつも通りじゃねえか」


「おい!!」


思わずツッコミを入れるガイだが、ヒロムはそれを聞くことなく中へと入っていく。




さすがにヒロムの一言に傷ついたのか、ユリナは少し拗ねていた。


「えっと……」


「まあ、ガイが悪いな」


「ソラ!?」


「つうか大将がそんな服装で褒めると思う?

求めるだけ損だって」


「……オマエらのヒロムに対しての評価酷くないか?」


さあな、とシオンはハルカの腕を取ると会場内に入ろうと歩いていく。


突然のシオンの行動、それに驚くハルカは顔を赤くしていた。


「シオンくん!?」


「シオン……」


「オレはオレのやりたいようにやる。

だからさっさと来い、ハルカ」


「今名前で……」


「……いくぞ、女」


ひどい、とシオンの急変し、冷たくなった態度にハルカは文句を言うが、シオンとともに歩く姿、そしてその表情はどこか嬉しそうだった。



お幸せに、とイクトは手を振るとユリナたちの護衛を努めようと声をかける。


「じゃあオレたちも……」


「む〜……」


女嫌いのシオンとハルカの後ろ姿に少し嫉妬するユリナは頬を膨らまし、リサとエリカもそんなユリナの頭を撫でていた。


とても声をかけれる状態じゃない……



するとガイがイクトの様子を見兼ねて、ユリナたちに告げる。


「きっと会場のどこかでヒロムと会えるさ。

その時にちゃんと言ってもらおう」


「……うん」


「じゃ、オレとソラは会う人がいるから三人さんはイクトについて行ってくれ」


やだ、とリサとエリカは即答で拒否し、それを言われたイクトは傷つき、思わずその理由と説明を求めた。


「何もしてないよね!?」



「だからよ」


「何されるかわかんないし……」


「人のこと変態みたいに言わないでくれるかな!?」


イクトとリサ、エリカが何やら上手くいっていない。


これはまずい、そう思ったガイはソラに対して耳打ちするように一つ提案した。



「……オレがイクトのフォローにまわる。

オマエの方でヒロムのこと、頼めるか?」


「珍しいな、オマエがアイツの手助けとは」


「たまたまだよ。

とにかく、ソラはヒロムを頼む」


「……しゃあないか。

たまにはオマエの我儘聞いてやるよ」




***



パーティーの会場内。


そこには普通に生活している中ではテレビドラマやマンガなどでしか見られない光景が広がっていた。


その光景にユリナたちはただ目を輝かせていた。


「すご〜い!!」



ただただ広い会場、無数の丸いテーブルは純白のテーブルクロスがかけられ、その上には様々な料理が並んでいた。


さらにウェイトレスが飲み物を運び、華やかな宝石を身につけた大人たちの姿も見える。


(この中で一人ジャージがいると思うと気まずいな……)



ヒロムの服装を思い出したガイは心の中で呟くとため息をついた。


そのため息が何を指しているのか理解しているイクトは同情するようにガイの方を軽く叩く。


「まっ、大将らしいからいいだろ」


「……そういう問題ではないがな」


よく来たね、と一人の男性がこちらにやって来るなり声をかけてきた。


黒いスーツに青いネクタイ、赤みがかった茶髪のその男性が誰なのかガイは知っていた。


「お久しぶりです、導一さん」


「去年は来てくれなくて寂しかったからね。

ゆっくりしていってくれていいからね」


ありがとうございます、とガイが礼を言う中、ユリナは導一と呼ばれた人が誰なのかガイに説明を求めるように言った。


「知り合いの人?」


「愛華さんのお兄さんだ。

まあ、ヒロムにとっては叔父にあたる人だ」


「ああ、彼女たちは初めましてだね。

姫神導一、今は代理で「姫神」の当主を務めているんだ」


「代理……ですか?」


代理、という言葉が気になるユリナだが、導一はそれについてすぐに説明をした。


「次期当主の彼が中々返事をしてくれないんだ。

だから何かあった時は対処出来るようにしているのさ」


「その次期当主って……」


「大将のことだよ。

ま、大将は「面倒」とかで拒否してるけど……」


「ヒロムくんって次期当主なの!?」


思いもしないことに驚くユリナたちだが、導一はそれについて補足するように説明をした。


「彼に次期当主を頼みたいと無理言ってるからね。

返事を渋るのも仕方ないんだ……まして学生の彼に家のことを押し付けるようなことでもあるしね」


「でもヒロムが嫌がってるのになんで諦めないんです?」


「彼だからいいんだよ。

誰よりも強く、そして優しい彼だからこそね」


(優しいのか……?)


(大将が……?)


導一の言葉に疑問を抱くガイとイクトだが、導一はふとガイたちにヒロムについて伝えた。




「そう言えば、さっき彼と会ったよ。

何か目的があるようだったけど、羽咲さんのお嬢さんと一緒に歩いていったよ」



「あ……」


導一からヒロムがどうしてるか聞けたのはいい。

が、タイミングが悪かった……



「羽咲って誰……?」


ユリナが、そしてリサとエリカが導一の言った羽咲のお嬢さんについて詳しく説明しろと言わんばかりにガイを見つめる。


気になるのだろう。

自分たちの想い人であるヒロムが知らぬ女といることが。


「だ、大丈夫だ。

悪い人じゃないし……変なことするような人でもないって」


嘘はついていない。

ガイの知る羽咲のお嬢さんがリサとエリカのような強引なことはしないし、あわよくばそれ以上のことをしようなどと考えるような人でもない。


だが、誰かを想う気持ちというのは時に人の冷静さを奪うのだと理解させられる。


「どんな人なの?」


「あ、いや……リサ。

今言ったように……」


「そんなので納得出来ないわよ」


「エリカまで……。

大丈夫だって、あの人は優しい人だし……」


「ガイ……!!」


ユリナはじっとガイを見つめる。


どうしたものか、と困惑するガイを他所にイクトは去ろうとしたが、ガイはそれを許すはずもなく、ガイはイクトの腕を掴んだ。


「逃げるな……!!」


「勘弁してよ……」


「「ちゃんと説明して!!」」


ユリナたちは説明するよう詰め寄り、ガイはそれを前にしてただため息をついた。


(なんでオレが……こんなことなら素直にソラと行動しとくんだった……)



「なんだか、まずいこと言ったかな?」


「そうですね……導一さんのせいで話がややこしくなりそうですよ……」

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