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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
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五六七話 ENCOUNT FATE


 夕方。

正確には生徒が帰宅し始める時間だが、誰一人として帰ろうとしない。

 

 その原因は校庭の中心に立っていた。

そう、ヒロムはそこに立っていた。ガイやソラ、イクトやシオンが彼のそばに並ぶ中でヒロムは現れるかもしれないカリギュラの出現を待っていたのだ。

 

 そしてそのヒロムに注目する生徒は彼がどのような決断を下すのか、その運命の瞬間を見届けようとするかのように彼を包囲していた。

 

 ヒロムが包囲されるその異様な状況、ユリナたちはただじっと見守るしか無かった。

 

 彼女たちは知っている、ヒロムたちが現れるかもしれないカリギュラを倒すべく策を練っていたことを。

その策が無事に成功することを信じるしかユリナたちには出来ないのだ。

 

 ユリナたちが無事を祈り、そしてヒロムたちを取り囲む生徒たちはヒロムがどのような決断を下すのかを見届けようとしている。

 

……だが、一向に動きはない。

カリギュラ側の人間が現れる様子はなく、カリギュラを待つとされるヒロムたちも動きを見せない。

動きがない、それは彼らを取り囲む生徒たちを苛立たせる。

 

「さっさと終わらせろ!!」

 

「いつまで待たせるのよ!!」

 

 一人が叫ぶとまた一人、この流れが出来れば彼ら彼女らの不満が消えぬ限りは止まらない。

別にヒロムが待てと言ったわけでもカリギュラ側が彼ら彼女らを足止めしてるわけでもない。

 

 単に生徒たちがヒロムが下す決断について気になってこの場に留まってるだけ、つまりは帰りたいなら勝手に帰ればいいだけの話だ。

 

 それなのに、自分たちが勝手にここにいることをヒロムのせいにして叫んでいる。

 

 身勝手すぎる、そう思わざるを得ない中でヒロムはため息をつくとソラに視線を向けて彼に伝えた。

 

「もう少し待って動きがなければ頼むぞ。

責任はオレが取るから手筈通りに頼む」

 

「了解だ」

 

「何コソコソ話してやがる!!」

「さっさと答えを出しなさいよ!!」

 

 ヒロムがソラに指示を伝えるその様子を見た生徒たちはさらに激しく叫び始める。

あまりにも身勝手な彼ら彼女らの言動にヒロムたちを見守るしかないユリナたちも我慢の限界に達しようとしてるのか少し表情が険しくなる。

 何もしないのに文句だけは言う、そんな生徒たちにユリナたちは怒りが抑えられなくなっているのだろう。

だがそれでも彼女たちは何もしない、自分たちにはどうにかするほどの力がないと分かっているからこそ彼女たちはヒロムの決断を信じているのだ。


 そして、そんなユリナたちの思いを理解しているヒロムは首を鳴らすとソラに視線を送り、視線を受けたソラは頷くと右手に炎を出現させるとその炎を赤い拳銃「ヒート・マグナム」に変化させ、変化させた赤い拳銃を天に向けて構えると数発炎弾を撃ち放つ。

 空には何も無い、何も無い空へと放たれる炎弾とともに銃声が響くと叫んでいた生徒たちは少しの恐怖を感じたのか思わず黙ってしまう。

 

 その静まり返った生徒たちにヒロムは冷たい眼差しで彼ら彼女らを睨みつけると冷たい口調で言った。

 

「文句があるなら黙って帰れ。

オマエら部外者がいたら邪魔なだけだ」

 

「邪魔ってなんだよ!!

オレたちの命は……」

 

「知るかよ。

オマエらの命を守ってもどうせオレは悪人なんだろ?

この前の戦いの時も結局オレは悪党扱い、どんだけ命を張っても感謝もされないなら……死んでくれた方がマシだ」

 

「ふざけんな!!」

「アンタなんか……」

 

 ヒロムの言葉に再び生徒たちが次々に言葉を発しようとしたその時、ソラは天に向けて構えていた赤い拳銃「ヒート・マグナム」を生徒たちに向けると引き金を引いて炎弾を放つ。

 銃声が響くと共に放たれる炎弾、炎弾は迷うことなく生徒たちに向かって飛んでいき、そして生徒たちから少し離れた地面に着弾して地面を抉る。

 

 炎弾が地面を抉るとソラは続けて炎弾を放ち、銃声が響き地面が抉られる度に生徒たちは怯えて後退りしてしまう。

 

 突然のソラの行動、その行動に生徒たちは沈黙してしまうとともにヒロムに向けていた悪意を隠すかのように視線を逸らしてしまう。

そんな生徒たちにソラは「ヒート・マグナム」を構えながら忠告した。

 

「次から言葉には気をつけろ。

不用意な発言が出る度に発言者以外の誰かの体を撃ち抜く。

自分の発言で誰かが死ぬかもしれない、そう思いながら発言しろ」

 

「な、なんでだよ!!」

 

「そいつが悪……」

 

 一人の男子生徒がヒロムに対しての発言を発しようとしたその瞬間、銃声が響くと共にその男子生徒の近くにいた生徒の右肩に炎弾が直撃し、炎弾の直撃を受けた生徒は火傷を負うと座り込んで痛みに顔を歪めてしまう。

 

「うがぁぁ!!」

 

「ひぃっ……!!」


「警告したはずだ。

オマエらの発言一つで自分以外の誰かが傷つく、まさかだがオレが冗談で言ったと思ってたのか?

悪いが……オレは本気だ。本気だからこそ躊躇いなくオマエらを撃てる」

 

 脅しでもハッタリでもないソラの本気の警告。

不用意な発言が招く惨劇の一部を目の当たりにした生徒たちは完全に沈黙してしまい、黙り込む生徒たちにソラは呆れた様子で吐き捨てるように言った。

 

「どうした?ヒロムの時は何もしてないのに好き放題言ってたくせにオレの時は何も言わないのか?

得意なんだろ、後先考えずに無責任に発言して他人を傷つけるのが大好きなんだろ?」

 

「違う、オレたちは……」

「私たちはそんなつもりじゃ……」

 

 ソラの言葉に対して言い訳でもするかのように二人の男女が震える声で言葉を発しようとしたが、ソラはすかさず銃声を二度響かせると今度はその二人の肩に炎弾を命中させる。

 

 別にヒロムに対しての悪口でも何でもないただの言い訳でもソラは許さなかった。

 

「そんなつもりじゃなかった?

オマエら、自分が傷つかないと思って好き勝手言ってたんだろ?

そのクセして自分たちがヤバいってなったら関係ないってか?

都合のいい野郎どもだな」

 

「だからってこんなこと……」

 

「その程度の火傷なら数週間程度で治る。

けどな……ヒロムがオマエらから受けた心の傷は消えない。

何もしてないオマエらが好き勝手に言って傷つけたヒロムはもう戻らない。

オマエらはそれを理解してんだろうな?」

 

 本気で殺すつもりのソラが放つ炎弾、それが直撃すればどうなるのかを思い知った生徒たちは完全に恐怖を抱いてしまい、それによって彼らは何も言えなくなっていた。

 

 恐怖による支配、ソラが彼らにしたのはそれだ。

ヒロムを目の敵にしていた者たちはソラが起こした行動を前にしてこれまでと同じようには行動を起こさなかった。

 

 が、一人は違った。

 

「キミたち、何をしている?」

 

 ソラの行動によって静まり返った校庭、そこへ一人の男がやってくる。

 

 制服をしっかり着用し、左腕には「生徒会」と刺繍がされた腕章を付けた黒髪の青年。

その青年はヒロムとソラを睨むように視線を向けながら彼らに問う。


「キミたちは……何をしているんだ?」

 

「何って?」

 

「何故彼らは怪我をしている?

キミたちがやったんだろ?」

 

「だったら何だって言うんだよ生徒会長さんよ。

コイツらがあまりにも好き勝手にヒロムに発言するから黙らせたんだろ」

 

「ふざけるな。

彼らが好き勝手に発言したからキミは怪我をさせたのか?

そんなのが許されるわけ……」

 

「ならカリギュラを恨め。

ヤツらはヒロムに決断を迫るだけ迫って姿を見せなかった。

だからオレがカリギュラを誘き出すためにこうして行動してんだろ」

 

「テロリスト集団の言葉を鵜呑みにするなんてどうかしてる!!

キミたちが従わないかどうかを答えるだけなのに……」

 

「……何でカリギュラがテロリスト集団だって分かるんだ?」

 

 ソラの言葉に反論する青年……生徒会長の言葉、それを聞いたヒロムは生徒会長の言葉の中にあった不自然なワードについて問う。

 

「あれが本物のカリギュラなら確かにここにいるヤツらの命は危険だ。

それにカリギュラを知らなくてもここの生徒を狙うって言えば危険な存在だとは思うのは当然だ。

けどよ、何でカリギュラをテロリスト集団って判断できた?

あの放送ではヤツはヘヴンの名を出すだけで他にも大勢いるような言い方はしなかった。

なのに何でオマエはあたかもカリギュラには他にも仲間がいるように発言した?」

 

「たまたまだ。

そんな……」

 

「なら聞き方を変えようか。

何でこのタイミングで出てきた?

ソラが弾丸を放つ銃声が聞こえてたならもっと早く出てこれたはずだ」

 

「キ、キミたちがここに現れるであろうそのカリギュラという人物を待たずに無関係な生徒を……」

 

 何のことだよ、とヒロムが指を指し、その方向を生徒会長が見ると驚きを隠せない光景が目に入った。

ソラの放った炎弾を受けて火傷を負ったはずの生徒、その生徒は何故か何も無かったかのように平然としており、火傷を負ったはずの場所は何も無かったかのように元に戻っていた。

 いや、元に戻ったのではない。おそらくだが、最初から何も無かったのかもしれない。

 

 何が起きてるのか分からない生徒会長、他の生徒たちも起きてる現実に理解が追いつかないらしく混乱した様子を見せるが、そんな彼ら彼女らに向けてヒロムは説明した。

 

「犯人の目星が何となくついてたからな。

とりあえず炙り出すためにソラにはオレの脚本通りに動いてもらって悪役になってもらった。

それらしい言葉を並べてもらって、あとはオレが精霊の力でもある幻術を発動させて現実の一部分をすり替えた」


「すり替えた、だと……!?」

 

「さて、生徒会長さんよ。

一つ聞きたいんだが、オレに決断を迫ったカリギュラが何故ここに現れると言い切れる?

あの放送だけじゃカリギュラがどうやって答えを確かめに来るか分からないのに……何でアンタは知ってるんだ?」

 

 動揺する生徒会長、その生徒会長がカリギュラがここに現れると発言したその理由を聞き出そうとヒロムは彼を睨む。

 

 ソラたちも彼を睨み、ヒロムを敵視していた生徒たちも次第に彼へと目を向けていく。

全員の視線が生徒会長に向けられる。その全ての視線を受ける生徒会長はため息をつくなり人が変わったように冷たい眼差しをヒロムに向ける。

 

「……何故だ?

あの放送だけでは誰がカリギュラの人間かなんて特定は不可能なはずだ」

 

「別にあの放送があったから犯人探しをしたわけじゃない。

最初から……ヘヴンがオレの前に初めて現れた時からオレはその鎧の下の素顔と正体を見抜こうとしていた」

 

 睨むような眼差しをヒロムに向ける生徒会長に対してヒロムは何故生徒会長がカリギュラの人間なのか分かった理由を話していく。

 

「最初の決め手は愛咲リナたち五人のバンドメンバーの家に送られた脅迫にも近いメッセージだ。

あのメッセージを知ったオレは彼女たちをよく知る人物が関係してると考えた。

で、今朝の校内放送がオレの考えを答えに導いたんだが……簡単な話、アンタは証拠を消しすぎた」

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