表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
563/672

五六三話 最悪な対等


 ヒロムたち「天獄」の意思、そしてその意思が「世界王府」に汚染されているであろう「十家」について対処する覚悟があると感じ取った葉王は改めてヒロムたちに話を進めようとする。

 

「オマエたちがやる気になってくれるならこっちとしてと他のヤツらにとってイレギュラーな切り札としてある種の有効打として展開できるがァ、仮にオマエらとオレらが手を組んで「十家」を変えるとなってもオマエらの受ける風当たりはすぐには変わらねぇからなァ?」

 

「風当たりって?

大将が今受けてるみたいな迫害のことか?」

 

「それよりも酷いかもなァ。

オマエらは「世界王府」が関与してる「十家」を潰そうとしても傍から見ればオマエらの行動は権力への反逆に等しい行為だから相応の非難はされるだろうなァ」

 

「だが手のひら返しもひどいんだろ。

オレたちが「一条」の計画云々は別にして「十家」が「世界王府」と関与してると表に出た時には「世界王府」を止めたとか言って好き勝手いいそうなもんだ」

 

「賞賛されるのかは嫌いなのかァ、鬼月真助?」

 

「オレは称えられたいわけじゃない。

ただ戦いたいだけ、その中でオレはヒロムに付き従ってるんだよ」

 

「そうかァ。

まぁ、オマエの行動理念は何でもいいけどなァ。

とりあえず、オマエたちが日の目を受けて感謝されることも有難いと称えられることもまずないが、それでもやるべき事は山ほどある。

その一つが……カリギュラの討伐だ」

 

「カリギュラの討伐?

何でだ?オマエの協力があれば「八神」も「四条」も……」

 

「話を戻させるなよ、相馬ソラァ。

話が分からないなら他のヤツらみたいに静観するなりして黙ってろォ」

 

 話に横槍を入れられた葉王が嫌味ったらしくソラに言うと言われた側のソラはイラッとした顔で話を睨みつけ、イクトは慌てて彼を宥めようとする。

イクトが何とかしてソラを宥めようとする中、葉王はあえてソラが気にした点を話を少し戻す形で解説した。

 

「姫神ヒロムが目を覚ます前に簡単に話したがァ、「四条」の方はカリギュラに関与する四条貴虎を摘発しなきゃ汚点という面を強調出来ないし、「八神」を潰すにしても今のままよりもカリギュラを倒してその企みを止めた上で協力者となっている四条貴虎を断罪してオマエらが仮にも正しいことをしてると主張出来る環境をつくる必要があるゥ。

その点を考慮し、「世界王府」を倒すためにも必要となるのはやはりカリギュラの討伐になってくるってことだァ」


「……あくまで今の目標とすべきはカリギュラってことか?」

 

「そういうことだァ。

オマエたちが確実に実力を増して「天獄」という勢力としても「十家」の配下組織にも劣らぬほどの実力があるのはオレもよくわかってるがァ、それでも世間の目という腐敗の前では力は無に帰しオマエたちも呆気なく終わらされるゥ」


 葉王の説明を受けたソラは彼の言葉にそれなりの理解を示すが、同時に葉王の言葉に対して同じくらいの疑いを抱いていた。


 葉王がここに到るまでこれからのヒロムたちには重要なことだ。

ヒロムの今後、自分たち「天獄」の未来を左右する葉王の言葉と「一条」の計画。

その自分たちの行く末の舵を取っているとも言える葉王の話、その全てに従うことはソラからすればヒロムや自分たちがしばらくは「一条」という勢力の使い勝手の良い駒のように扱われるのと大差ないと感じているのだ。

 

 ソラだけではない。シオンや夕弦、真助、それにガイとイクトもソラと同じように葉王の話の中には理解を示すとともに疑いを抱いていたのだ。

 

 ただし、この手の話で真っ先に疑いを抱いてもおかしくない一人を除いて……

 

「鬼桜葉王、一ついいか?」


 ソラたちが葉王の話に対して二つの思いを抱く中、シンクは何故か落ち着いた様子で葉王に質問しようとしていた。

 こういうヒロムに関して大きくことが動くようなことには誰よりも敏感に反応して誰よりも意見を口にするかもしれない男なのに、妙に落ち着いていた。

 ヒロムのためにと「天獄」を完成させようとそれに相応しきメンバーを選び抜き、ヒロムのもとへ集めたシンクは彼へ「天獄」の完成とともにその主導権と己の主従権をヒロムに託しているにも等しいのに、シンクは奇妙なまでに落ち着いていた。

 

 何度も落ち着いていたと語っているが、本当に落ち着いているのだ。

「八神」との戦いでヒロムが闇に飲まれて自我を失った時、誰よりも先に身を呈してでも守ろうとして命を削ろうとしたあの男が必要以上に落ち着いていたのだ。

 

 異常すぎる。「八神」の人間を欺いてヒロムのために暗躍し続けていた氷堂シンク、この男は今まさにこれまでの行いの全てを変えられようとしているのに落ち着いていたのだ。


「シンク?

何でそんなに落ち着いてんだ?」

 

 妙に落ち着いたシンクが気になるガイは彼に話しかけ、話しかけられたシンクは何食わぬ顔でガイを見ると彼に訊ねた。

 

「どうした?

オレの何がおかしかった?」

 

「おかしいも何も……何でヒロムのことなのに落ち着いてんだよ。

オマエが長年「八神」に隠れながらも尽力してきたヒロムが今目の前で鬼桜葉王の駒になりかけてんだぞ?

なのに、何でもオマエはそんなに落ち着いていられるんだよ?」

 

「逆に何で落ち着けないんだ?」

 

「今の話の流れだとヒロムは……」

 

「たしかにこのままじゃヒロムは「一条」の思惑通りに動く事になるかもな。

カリギュラを討伐させられ、「四条」や「八神」という尻拭いをさせられかけてるな」

 

「だったら何でオマエは……」

 

「……オレの全ては今、ヒロムの中にある。

ヒロムが決めたことならオレに不満はない、それだけだ」

 

 ガイとソラ、二人に対して……いや、今この場で葉王の話に疑問を抱く者たちに対してこの場の決定権はヒロムにあるとも言える言葉を発するとシンクは話を戻すように葉王に訊ねた。

 

「八神トウマを処罰はオマエら「一条」とヒロム、どっちに権限がある?」

 

「何だァ?

んなこと確認したかったのかァ?」

 

「今後に関することだからな。

オマエら「一条」の計画が「世界王府」の討伐とそれに関与する「十家」の再建なら内側で統括している今の内政を治める当主たちはどうなる?

潰すにしてもそれはオマエら「一条」なのか?それとも……ヒロムなのか?」

 

「……穏便に話が済むならどっちがやってもいいけどよォ、どうせオマエのことだから八神トウマは譲れって言うんだろォ?」

 

「トウマと因縁があるのはヒロムやオレたちだ。

オマエらが「世界王府」と因縁があるように、オレたちにも「八神」との因縁がある」

 

「……どの道どうするか決めてないヤツらの処遇に関してはオマエらが好きにしたところでカズキも文句は言わねェだろうから好きにすればいいさァ。

今のオマエらの実力ならヤツらを潰すにしても問題無さそうだしィ、何より姫神ヒロムの覚醒した力の前ではあの八神トウマの力も及ばないだろうから何の心配もねェなァ」

 

 八神トウマや他の当主に関する処遇は任せる、その言葉を聞いたシンクは納得したらしく彼の言葉に頷くとそこで話を終わらせる。


 シンクの話が終わると、今度は入れ違いでヒロムが葉王に訊ねた。

 

「オレたちに協力してくれてる「七瀬」はどうするつもりだ?

彼女たちにもこの計画のことは話すのか?」

 

「最初はそれも考えたがなァ、ちょいと不用心な気もするからよォ。

「七瀬」にはこの計画は秘匿にしといてくれェ」

 

「どうしてだ?

オレたち「天獄」とオマエら「一条」の二つだけよりも「七瀬」という「十家」のもう一つの勢力がある方が……」

 

「逆だなァ、姫神ヒロム。

だからこそ秘匿にしとくんだよォ。

今こうして互いにやろうとすることを知る間柄を増やせば「世界王府」や他の「十家」に付け入られる隙を生むことになるゥ。

ただでさえしばらくはオマエらを大々的に支援してやれない中で無駄に敵に利用されかねない勢力は邪魔になるだけだろォ」

 

「……なるほど。

要するに「七瀬」のことは信用出来ないって言いたいんだな?」

 

「言い方を変えれば、なァ。

だからといってすぐに手を切らせるつもりは無い。

「七瀬」とはこれまで通りに協力関係を継続してもらって構わないし、こちらとしてもオマエらが「七瀬」と行動してカリギュラを潰そうとしてくれる方が何かと保険をかけやすいからなァ」

 

 今後について話が進む中、ヒロムたちに協力的な姿勢を見せる「七瀬」に対してもどうするかを葉王はヒロムたちに伝え、伝えられたヒロムたちは何か不満があるわけでもないのか異論を発することなく聞き入れる。

 

 異論はない、ヒロムたちの態度からそう読みとった葉王は仕切り直すように手を叩くとヒロムに言った。

 

「これでオレたちは手を組んだ協力関係にある仲ってわけだァ。

何か他に求めるものがあるなら今のうちに……」

 

「なら、一つ頼めるか?」

 

「何だ?」

 

 何か申し出はないかという葉王に対してヒロムは挙手する形でその意思を示すと彼にある相談をした。

 

「オレたちの身はオレたちで守る。

ただ、もしもカリギュラや「世界王府」、最悪の事態に陥って「十家」が敵に回った時は……ユリナたちの身柄だけは確実に保証してほしい。

アイツらは巻き込まれる側の人間、出来ることなら傷つけたくない」

 

「それは理解しているゥ。

だがそれでも手出しできる範囲は今は限られてるからなァ……しばらくはこれまで通りの体制でやってもらえればそれに合わせて動いてやるよォ」


 ヒロムの申し出に葉王は可能な範囲で対応することを約束し、どこか不十分にも思える葉王の約束に言及もせずにヒロムは承諾すると彼に右手を差し伸べた。

 

 差し伸べられたヒロムの手、その手を前にして葉王はどこか不思議そうな顔を見せた。

 

「何のつもりだァ?」

 

「オマエが言ったんだろ。

オレたちは手を組む仲、なら立場の対等さは差し引いても仲間として認識し合える関係ってことだ。

これは、一種の挨拶だ」

 

「オマエらを利用するだけのオレたちに挨拶だァ?

仲良しごっこじゃねぇんだぞォ?」

 

「構わない。

何かあればオレが全員を助けてオマエらを倒す。

そのくらいの覚悟は出来てるからな」

 

「……そうかよ、面白ェ」

 

 ヒロムの意思と覚悟、それを聞いた葉王はどこか嬉しそうに笑みを浮かべると彼の差し伸べた手を掴んで握手し、二人は握手を交わす中で強く見つめ合う。

 ここから始まる共闘関係、ヒロムたちの目的たる「八神」の討伐と「一条」の計画たる「世界王府」に関与された今の「十家」の再建と「世界王府」の壊滅。

 異なる目的を持つはずの両者が、今ここで……手を取り合う。

 

 この先の道は……修羅でしかないとしても……

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ