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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
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五六二話 ワールド・ジョーカーズ


 ヒロムたちが葉王や「一条」の真の計画たる「世界王府」について話を聞き、真相に近づく頃……

 

 

 

 どこか分からぬ薄暗い空間に赤い髪の青年・リュクスはいた。

カリギュラのキリスやヘヴン、「四条」の人間たる四条貴虎を「七瀬」のクルージング船に向かわせてヒロムたちと戦わせた張本人たるリュクスはこの薄暗い空間にいた。

 

「オレ一人なのか……。

退屈だな」

 

「なら遊び相手になれよ」

 

 誰もいない空間に一人でいることにリュクスが退屈していると彼のもとへ一人の男がやってくる。

 

 バイザーのようなもので顔を隠した青髪、灰色のコートに身を包み、リボルバー銃の弾倉を思わせるような大きな装飾を両肩に付けた男はリュクスの前へと歩き現れると彼に中指を立てながら告げた。

 

「こっちはオマエがあの謎の鎧共のことを画してたせいで無駄な調査させられたんだぞる

どう落とし前つける気だ?」

 

「キミがヴィランに指示された通りに素直に調査したのが悪いんじゃないか。

オレはオレの指令を全うするために利用価値のあるカリギュラと手を組んでただけだよ」

 

「あぁ?

オマエ、一回潰すぞ?」

 

「やれるのならやればいいさ。

オレはキミの相手をするつもりもなければヴィランの指示に逆らうつもりもないからね」

 

「怖気付いてんのか?」

 

「キミと一緒にするなよ、ヴァレット」

 

 リュクスの言葉に青髪の青年・ヴァレットは舌打ちをするとどこからか取り出した銃をリュクスに向けて構え、ヴァレットが銃を構える中リュクスはため息をつくと右手に魔力を纏わせて応戦しようとする。

 

 二人が睨み合う中、彼らの近くの空間が歪むと何やら全身に紫色の包帯のようなものを巻いた奇妙な男が現れ、現れたその男は不気味な笑い声を出すと二人に声をかけた。

 

「クケケケ……オマエら、元気ダナァ」

 

「カノリス……」

 

「オマエ、カノリス!!

ヴィランの指示無視してどこにいやがった!!」

 

 謎の男・カノリスが現れるとヴァレットは声を荒らげながら彼に銃を向け、銃を向けられたカノリスは不気味な笑い声を出すとヴァレットに言った。


「世の中の悪意がオレを呼んダンダヨ。

オレはオレで忙シイシ、オマエが真面目ニ調べてるナラ問題ナイだろ」

 

「その態度が気に入らねぇなぁ。

仮にもヴィランに認められた人間なのによ」


「猟奇的な殺人鬼に常識を求めるヴァレットが悪いね。

彼の望みは恐怖、忠義なんかより恐怖の方が殻を刺激するんだよ」

 

「そういうオマエも忠義より己の利益が優先だろうがリュクス」

 

 カノリスの登場により一度は二人の間にあった不穏な空気は消えたかのように思われたが、リュクスの言葉に反応したヴァレットの言葉が消えかけた不穏な空気を呼び戻してしまう。

 

 カノリスの前出繰り広げられる殺気を持って睨み合うリュクスとヴァレット。

二人の殺気にカノリスは不気味な笑い声とともに嬉しそうな反応を見せており、彼は二人を止めようとはしない。

 

 リュクス、ヴァレット、カノリス。

三人の男がいるこの薄暗い空間の奇妙すぎるこの状況、おそらく常人はこの場にいるだけで気が狂うかもしれない。

 外観からして不気味さと恐怖しかないカノリス、話が通じそうなリュクスとヴァレットも冷静に見れば笑顔で殺気を振りまく異常さの塊、もはやこの場にいる三人は普通ではなかった。

 

 テロリストを束ねし集団の中枢を担うであろう三人の人間。

闇の世界とも言える裏世界の中で生きているであろう三人の発する異質な気は先程も述べたが異常さの塊、そこには常識など通じないと思われる。

 

「一つ確かなことはキミよりもオレの方がヴィランの指示に従って行動した上で成果を残してるということだ。

調査するよう指示されてたくせにまともに調べられていないキミなんかよりもオレはやるべき事を全うしてるからね」

 

「その調査対象たるカリギュラとやらと内密に手を組んでいたのはオマエだ。

そのオマエのせいで無駄な調査をさせられ、挙句はオマエの邪魔のせいで何の情報も得られなかったんだがな」

 

「キミの失態をオレのせいにするなよ」

 

「……ならオマエとオレのどちらが正しいか試すか?」

 

 リュクスとヴァレット、もはやここに現れてから二人はいがみ合い、そして再び一触即発のムードになりつつあった。

二人の現状を見るカノリスは不気味な笑い声を出すとともにどこか楽しそうに二人を見物しており、彼には二人を止めようという気は無いように思えた。

 

 一切の進展のない三人、そんな三人のもとへと足音を立てながら誰かが歩み寄ってくる。

 

「相変わらず、無駄に争っているのか」

 

 バイザーのようなもので覆われた仮面を付け、全身をマントのようなもので包む男。

現れたその男はいがみ合うリュクスとヴァレットに呆れながら言葉を発し、男が言葉を発するとリュクスは彼に視線を向けると言った。


「これは無駄な争いではないよ、ゼクス。

ヴァレットが無駄に突っかかってきたから相応の対処を取ろうとしていただけなんだけどね」

 

「待ちやがれ、リュクス。

その言い方、まるでオレのせいと言ってるようにしか……」

 

「どちらでもいい。

ヴィランからの招集で集まったのに無駄に争う暇などないはずだ。

あまりヴィランを失望させるようなことはするな」

 

「真面目なゼクスさんの言葉としては聞き入れるけど、キミが傀儡にしてる八神トウマのあの不甲斐なさはどう説明するつもりだい?」

 

 仮面の男・ゼクスに対してリュクスは八神トウマの状態について訊ねるが、訊ねられたゼクスはリュクスのその問いに答えることも無く無視するとカノリスに話しかける。

 

「カノリス、そちらの方は順調なのか?」

 

「クケケケ……。

順調すぎるくらいだよ、恐ろしいくらいにな。

おかげで進捗率は快調に実績を上げてるし、この調子ならヴィランも気に入ってくれるはずだ」

 

「そうか、それならよかった」

 

「おい、ゼクス。

何でオマエが仕切ってんだ?

オマエが仕切る権限は無いはずだ」

 

「……オレはオレで成果を残してる。

カリギュラについて調べることも出来ずに不甲斐なくここに現れたオマエと一緒にするな」

 

 ヴァレットの言葉に反論するようにゼクスは言い、ゼクスの言葉を受けたヴァレットは彼を強く睨むと手に持つ銃を彼に向けようとした。

その時、音も立てずに彼らの前に黒髪に金色のメッシュの入った青年が現れて彼らの些細な争いを止める。

 

「……何をしている?

オマエたちをここに招集したのは無駄に口論させるためではないぞ」

 

「ノーザン・ジャック……」

 

「分かったらその口を閉じろ、ヴァレット。

オマエの調査に関してはヴィランが直接話しをするはずだ」

 

「ヴィランは今どこにいるんだ?」

 

「……オマエが知る必要は無い」

 

 ヴァレットがヴィランという男の所在について問うも黒髪にメッシュの男・ノーザン・ジャックは冷たく言葉を返すとそこで彼との話を終わらせ、話を終わらせたノーザン・ジャックはリュクスの方を見ながら彼に告げた。


「リュクス、オマエの私情のせいで姫神ヒロムほシンギュラリティが覚醒したとヴィランから報告があった。

直接の指示は何も受けてはいないが、そのうちオマエに何らかの話をするだろうから覚悟しておけ」

 

「以後気をつけるよ。

というか、覚醒したところで姫神ヒロムくらいならキミが何とか出来んじゃないの?」

 

「力の有無は些細な問題だが、問題はシンギュラリティの覚醒が「一条」の計画にとって都合がいいということだ。

それも、オマエが真に把握していない部分のな」

 

 リュクスの言葉に対して返す中で冷たく、そして突き放すように睨むノーザン・ジャック。

彼のその睨むような視線を受けるリュクスはそれ以上話そうとせず、他のものもそれ以上何かを発言するのをやめた。

 

 静寂、沈黙とも言えるようなこの状況に到るとノーザン・ジャックは彼らに対してある指示を伝えていく。

 

「ヴィランからの指示だ。

我々の仲間となりうる新たな人間を見つけたらしい。

早々に出向いてそいつを引き入れるぞ」

 

「新しい仲間か。

どんなヤツだ?」

 

「詮索はするな。

とにかく、今はそいつの気が変わる前に仲間にするだけ」

 

 何か暗躍しようとするノーザン・ジャックは指示を出すと消え、彼に続くようにリュクスたちもこの薄暗い空間から姿を消していく……

 

 

 

 

***

 

 場所は戻って「一条」が手配した船の一室。

鬼桜葉王より彼と「一条」の真の目的たる「世界王府」についての話を聞かされたヒロムたちは葉王から忠告とも取れるような言葉を告げられた。

 

「オレたち「一条」が何をさせたいのか……これを聞けば、オマエに拒否権を無くすぞ?

それでも……聞くのか?」

 

 ここからの話を聞けば後戻りは不可能、その事を告げた上で続きを聞くかどうかを問う葉王。

彼の言葉にガイたちは迷いが生まれつつあるのか言葉を詰まらせ、気づけば彼らは仲間同士で互いの顔色を伺うように視線を向けていた。

 

 が、ヒロムは違った。

葉王の忠告、後戻りは不可能になると告げられたにも関わらずヒロムは迷うことなく葉王に言った。

 

「元々オレは「十家」に喧嘩を売るつもりで生きてきた。

その「十家」が「世界王府」と関与してるからとかそんな理由はどうでもいいが、オレは何もしないくらいならオマエの話を聞いて戦ってやるよ」

 

「ヒロム……」


 ヒロムの答えにガイは言葉を詰まらせる。

いや、彼としてはこれまで通りヒロムのために力を尽くしたいのだろう。

だが今の話は「世界王府」や「十家」が大きく絡む話、即座に決断を出せるような話でもなく、ヒロムの判断が間違いかどうかも分からないガイは今何を言うべきかわからなくなっていた。

 

 そんなガイにヒロムはあえて、冷たい言葉を伝えた。

 

「答えに迷うならオマエはここからは関与しなくていいぞ。

この先にあるのは今までとは違うものだからな」

 

「オレは別に……」

 

「今回の件は……無理にオレに合わせなくてもいい。

これからのことを考えたら、尚更だ」

 

「……気持ちは嬉しいけど、オレも覚悟を決めて今までこうやってヒロムについてきたんだ。

今更、臆病風に吹かれて逃げたりなんてしないさ」

 

 ヒロムの言葉を受けながらもガイはこれまでのようにヒロムとともに行動することを伝え、ガイの言葉に賛同するようにソラたちはヒロムに視線を向ける。

 向けられた視線、その視線の秘めた思いを感じ取ったヒロムは彼らを代表するかのように葉王に伝えた。

 

「オレたちの答えは出た。

オレたちは……何をすればいいか教えろ」

 

「何をさせたいのかではなく何をすればいいか、か。

オマエのその無駄に賢いところは気に食わねェがァ、覚悟が十分ってことは伝わったァ。

なら、こっからは対等な取引と行こうかァ」

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