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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
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五五七話 ネクスト


 トゥルースが消滅し、フレイたち八人の精霊は勝利したと感じていた。

武器を下ろし、笑顔を見せていた。

 

 だがヒロムは……何故か浮かない顔をしていた。

何かを感じてなのか、それともトゥルースを倒したことで何かを感じているのかは分からないが、とにかくヒロムは何故か喜んではいなかった。

 

「……まだ、だよな」

 

 トゥルースが消えたにもかかわらずまだ何かあるような言い方をするヒロム。

そのヒロムの言い方が気になったフレイたちは先ほどまで見せていた笑顔を隠すように表情を戻して彼のもとへと駆け寄ろうとした。

 

 そんな時だった。

突然、ヒロムたちの前に異様な空間の歪みが現れ、現れた空間の歪みの中から黒い装束に身を包んだ青年が現れる。

現れた青年、その青年を知るヒロムは大剣を手放して光にしてブレスレットへと戻すと彼に話しかけた。

 

「まだ終わりじゃないよな?

オマエが現れたってことはまだ何かあるんだろ?」

 

「マスター、彼は?」

 

「……トゥルースが攻撃してきた時の光に包まれた時に出会った男だ。

オレに道を指し示し、あの白銀の大剣を与えてくれた謎の野郎だ」

 

「あの、仰る意味が分からないのですが……彼は味方なのですか?」

 

「わからねぇ。

けど……コイツがいなきゃトゥルースを倒せなかったのは事実だ」

 

『少し……違うな』

 

 フレイに話すヒロムの言葉を聞くと青年は口を開いて彼の言葉に誤りがあることを指摘し、ヒロムを指差すと彼はヒロムの力とトゥルースの消滅について語っていく。

 

『トゥルースを倒したオマエのその力はオマエが思い描いた可能性、その可能性が形を得たのがあの大剣だ。

そしてオマエのその可能性はトゥルースが持つ真理の力の可能性を上回ったことにより、トゥルースは存在意義を失って消滅する道しか残されなかった』

 

「消滅する道?

どういう意味だ?」

 

『トゥルースの言う「レディアント・ロード」の力とは可能性が具現化した力であり、その可能性とは真理に直結する。

人の可能性、そして真理の到達による力の解放はたしかに未来を掴み取る力となるが、それだけでは人の未来は変わらない。

人の未来とはあらゆる可能性が交差する中でそれ。見出すからこそ確定するものだ』

 

「……難しい言い方してるだけなのか?

いまいち話が見えてこないんだが……オマエはトゥルースと同じようにオレを試すのか?

それとも、何か企んでるのを話に来たのか?」


『試すのも企んでるのもウソだ、と言えばそれ自体が嘘になるがオレはオマエが可能性を掴み、そして己と真に向き合って理解したからこうして姿を見せたに過ぎない』

 

「いや、どっちなんだ?

嘘になるとか言ってそれに近いようなこと言ってややこしくしてないか?」

 

『何もおかしなことは無いし、ややこしくも無い。

現にオマエは証明したのだからな』

 

「何をだよ?」

 

『シンギュラリティの覚醒、そして真理に到ったオマエが示した答えをだ』

 

 言い方が言い方なせいで青年の話がどこかややこしく感じてしまうヒロムだが、青年がシンギュラリティの覚醒と真理に到ったという点に関して口にするとヒロムはそれについて彼に訊ねた。

 

「オレはシンギュラリティの覚醒を遂げたのか?

それに真理に近づいたのか?」

 

『正確にはもともと真理に近づいていた。

だがオマエは心のどこかでそれを避け、そして覚醒するために必要なものすら忘れようとしていた』

 

「じゃあ、オマエがあの時オレに言ってたのは……覚醒に必要なものだったのか?」

 

『そうだ。

今のオマエがどうしたいのか、何を思っているのかを嘘偽りなく表に出すことはオマエが発展する上で必要なものだった。

トゥルースの言う「レディアント・ロード」の力ではなくオマエ自身の本来の姿が可能性を引き出したのだ』

 

「……今更だけどよ、トゥルースが消えたってことは「レディアント・ロード」の力は消えたのか?

アイツが持ってたあの力は……」

 

『一つ訂正を入れるなら、「レディアント・ロード」の力とは可能性が具現化する力だ。

トゥルースが力を持って道を示そうとする意志を具現化したのがあの「レディアント・ロード」の力ならば、オマエの得たその可能性の力はオマエのために具現化してオマエの手に「レディアント・ロード」の力として現れたとも言える。

つまり、「レディアント・ロード」の力には正解など無い』

 

「じゃあ、「レディアント・ロード」の力は……今オレが持っているのか?」

 

『そうとも言えるが、そうでないとも言える。

そもそもそれを「レディアント・ロード」と名付けたのはあのトゥルースであり、元来その力には名前などない。

人の可能性にわざわざ名前が与えられないのと同じことだ』


 青年の話、一時は理解出来る方へと進んだかのように思えたが、気がつけばまたヒロムたちの理解の外の話へと逆戻りしていた。

 

 青年の話が理解しにくい内容に逆戻りするとヒロムはフレイたちに視線を向けてどうすべきか問うように見つめるが、視線を向けられたフレイたちはどうにも出来ないとして首を横に振ると青年の方を見るように視線で指示するが、フレイたちの反応にヒロムはため息をつくと嫌々青年に結論のみを話すように相談しようとした。

 

「悪いんだけど……話をまとめてくんないかな?

いまいち理解しにくくて困るんだけど……」

 

『そうか、オマエの頭の悪さはよく分かった』

 

「……オマエのその憎たらしい言い方も今よく分かったよ」

 

『……結論から言おう。

あのトゥルースは無意識下でオマエが発動した不完全な「レディアント・ロード」力をシンギュラリティの覚醒の証となる力として身に宿し、オマエが無意識下で発動した形に独自性を加えて使っていた。

対するオマエはオレの言葉を受けて自分がどうしたいかを自らの手で決めてその先にある未来を進んだことで霊装であるブレスレットは変化し、その変化とともにオマエは真に覚醒して真理に到達してあの武器を手に入れた。

オマエが宿す精霊の力を己の意思で自由自在に操るトゥルースの形とは異なり、オマエのその力は精霊とともに戦いたいというオマエの思い描いたものとなったわけだが、その力はトゥルースの予想すら上回っていた』

 

「要はオレのあの大剣が「レディアント・ロード」の力であり、シンギュラリティ覚醒の証なんだな?」

 

『左様、そしてオマエの「レディアント・ロード」の力は武器の形を持って具現化する力となったが次元が違いすぎるほどの力を秘めている。

十四の稲妻を宿すことを可能とした武器であり、稲妻が秘めた力一つ一つを余すことなく最大限に引き出す力を持った武器はオレが想定していた形を大きく覆してくれた』

 

「そんな大層なものなのか?」

 

『大きなものだ。

オマエが「レディアント・ロード」の力を武器の形で得て、そしてトゥルースの力を覆して真の力として証明した。

オマエは完全に覚醒し、真理の到達を果たしたシンギュラリティの能力者というわけだ』

 

「真理の到達を果たした、シンギュラリティの能力者……」

 

 だが、と青年は自身の言葉に聞き入るヒロムに対して一言添えると続けて彼に警告した。


『その力はオマエの今後を導く諸刃の剣だ。

オマエが使い方を誤れば未来は閉ざされ、正しき心を持てば道はいつでも切り開かれる。

「レディアント・ロード」の未来を掴む力というのは意志の力だ、それを忘れるな』

 

「……分かった」

 

『ならばいい。

オレがオマエの霊装の一部として封印していた残りの霊装の力はすでにオマエが解放している。

あとはその霊装を扱えるようになった精霊が天醒するのを待つだけだ』

 

「……一ついいか?」

 

 話を進める青年、その青年の言葉を聞いたヒロムは何かが気になるのか青年に確かめるように訊ねた。

 

「どうして六色の稲妻はオレのブレスレットに封印してあった?

そもそも霊装の力ってのは何なんだ?」

 

『……ごく普通の疑問だな。

答えてやろう』

 

 ヒロムの問いに青年は答える意思を示し、そして青年は指を鳴らすとこの空間の天に四十二の光の玉を出現させる。

出現した玉は金色、紫、赤、青、黒、藍色、緋色、桃色、緑色、水色、紫紺、杏色、琥珀色、白色がそれぞれ三つずつ色分けされており、四十二の光の玉の中心に白銀の光の玉が一つ現れると青年は霊装について語っていく。

 

『そもそも霊装とはオマエを中心に十四に分類された力の指揮者同士が力を合わせ、中心にいるオマエとで共有するシステムだ。

一色につき三つ玉があるのはそこに分類される精霊が三人いることを表し、その中の一人が霊装を持って各色の代表となる。

元々はそういうシステムになるはずだったが、オマエの精神が不安定になったせいでシステムが変わってな。

代表するものが持つはずの霊装はいつしか素質のある精霊が持つ力となってしまった』

 

「オレの精神の崩壊を防ぐために施された封印と関係があるのか?」

 

『……ああ、そうだな。

その見解で間違いはないし、結果としてアナザーと曖昧な存在の個体が生まれ、それが暗躍してオマエを苦しめた。

アナザーの個体の一つが真理に近づいたことによりトゥルースとなり、オレが導くはずのオマエを勝手に導こうとした。

結果は……オマエが知る通りだ』

 

「アナザーとトゥルース、アイツらは……オレの一部なのか?」


『簡単に言えば、オマエの中で起きた精霊の封印に対して不足要素が生まれたがために埋め合わすために生まれたこの精神世界の一部だ。

だからオマエや精霊がヤツらの出現までその存在を知ることも感じることも出来ず、ヤツらの干渉がオマエたちを成長させたのも己の精神が乗り越えようという成長を見せたからだ』


「つまり、オレたちはオレの精神世界によって動かされてたってことか」

 

 青年の話、不確定要素はもちろん、謎めいた部分が多すぎる。

それでもヒロムはその難しい内容にを何とかして理解しようとしており、青年もヒロムのその様を理解しているのか彼により知らすべく話していく。

 

『元々はオマエの力とも言えるものが精霊として具現した。

オマエがこれまで認識していた精神崩壊の危機とはオマエ自身の中で力が精霊となったことによる変化の余波だ。

その変化の余波によってオマエの心も変化しようとして崩壊しかけたんだ』

 

「……その辺もオレたちの認識と違うんだな」

 

『なら、知りたいか?』

 

 するとヒロムたちは強い光に包まれ、光に包まれると目の前の景色が変化していく。

 

「これは……?」

 

『見せてやろう、オレが記憶するオマエの精神の始まりと崩壊と呼んでいる変化の瞬間をな』

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