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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
555/672

五五五話 レディアント・ブレイド


 十の色の稲妻を纏うヒロムの左手。

その左手の稲妻の色の輝きにトゥルースは驚くしか無かった。

 

 ヒロムの稲妻の色、あれは天の字名を持つフレイたち精霊の霊装の力の証だ。

大剣、刀、ライフル、薙刀……彼女たちがそれぞれ持つ武器が霊装に値し、それらを扱いその力を制した証として発動されるのが各々の色を持った稲妻だ。

 

 フレイ、ラミア、ティアーユ、ステラ、オウカ、テミス、アルマリア、メルヴィー、八人の精霊の力だからこそヒロムは八色の稲妻を左手に纏わせていた。


 それはトゥルースにも分かっていることだが、問題は後から纏わされた灰色と金色の稲妻だ。

八色の稲妻に対して該当する八人の精霊、そこまではトゥルースの知る範疇で収まることであり、ヒロムの取った行動としては今ある力を発揮したとして想定の範囲で終わらせることが出来たのだろう。

だが、後から纏わされた二色の稲妻は違う。トゥルースの想定の範囲を超えていたらしく彼は驚き、そしてトゥルースの中には二色の稲妻を扱うに適した該当する精霊が思い浮かばないのだ。

 

 ヒロムの精神世界に存在する深層、その精神の深層の先にあるとされる真理より仕向けられた裁定者とも言えるトゥルースがヒロムと精霊のことに関して知らぬことはほぼないと言っても過言ではない。

なのに……トゥルースは今目の前で起こることについて理解出来ず、何がどうなってこうなったのかその要因すら思い浮かばなかった。

 

 それ故にトゥルースはこれまで優位な立場にあったにもかかわらず、ヒロムに対して彼の纏う二色の稲妻について問うてしまう。

   

『何だそれは?

その灰色と金色の稲妻は何なんだ?

キミのどこにそんな力が隠されていた?』

 

「別に隠してねぇよ。

ただ、片方はアイツのでもう片方は使いたくても使い道が分からなかったからこれまで使わなかっただけだ」

 

『アイツ……?

使い道が分からなかった……だと?』

 

 自身の問いに対して返されたヒロムの言葉。

その言葉を聞いてもトゥルースは二色の稲妻の出処がわからず、ただ頭を悩ませてしまう。

 

 どの精霊の力なのか、どの精霊が秘めていた力なのか。

ただひたすらに考えられる可能性を考えていくトゥルース。

その中でトゥルースはヒロムの言う「アイツ」が誰なのか考えるが、ヒロムがわざわざ「アイツ」と呼称する精霊に関しても思い当たるものがない。


 戦いと力関係で優位な立場にあったトゥルースを悩ますヒロムの二色の稲妻と彼の言う「アイツ」と呼ばれる人物。

謎が謎のまま残る中でトゥルースはそれについて悩まされるが、ふとヒロムの二色の稲妻のうち灰色の稲妻だけを見ると、彼の中で何かが結びついたらしくそれについてヒロムに確認するように言葉にしていく。

 

『……その灰色の稲妻、キミが「アイツ」と呼ぶ人物。

まさかだが、この場にいないゼロの霊装の力か?』

 

「そのまさかだよ。

アイツの「ソウル・レイジング」も霊装の力だ。

だからこうしてオレが纏うことも出来るが、アイツはアイツで何とか頑張ろうとしてるからわざわざ借りるのは申し訳なかったから今までは使わなかったのさ」

 

『何故ゼロの霊装の力を使うのを躊躇っていたのかはどうでもいい。

問題はもう一つの稲妻、その金色の稲妻だ。

使い道が分からなかったと言うが、その霊装の力の持ち主は誰だ?』

 

 霊装の力の証たる灰色の稲妻の持ち主がゼロと判明したことにより一つの問題が解決したトゥルースだが、そこで安心するのはまだ早いと彼も理解していた。

 

 そう、まだ謎は残っている。

十色目となる金色の稲妻、その稲妻の原点たる霊装の持ち主は誰なのか、そして何故ヒロムは使い道が分からなかったと言ってこれまで使わなかったのか。

その謎がまだ残っている。

 

 どの道ヒロムに訊ねたところで彼が答えないことは分かりきっているトゥルースはヒロムがこれまで使わなかった金色の稲妻について考えを働かせて答えを導き出そうとするが、そんなトゥルースの思惑を読んだのかヒロムは頭を使って考えようとするトゥルースに答えにも近いヒントを告げた。

 

「オマエ、勘違いしてるよな。

この金色の稲妻の霊装の持ち主が誰なのか、誰が使っている霊装の力をオレが何故使ってないのかとか勘違いしてないか?」

 

『何?』

 

「今冷静になってようやくオマエの思考が何となくだが分かるようになってきたよ。

オマエ、今目の前にいるオレを見ても分からないのか?」

 

 ヒロムは何を言っている?

トゥルースは彼の言葉の真意に疑問を感じながら彼をよく見……ようとしたが、よく見るまでもなくトゥルースは十の色の稲妻を纏う左手に目をやると彼の左手首に装着された金色のブレスレットに注目した。

 

 金色のブレスレット、光を発して精霊の武器へと変化させてヒロムを武装させ、時には稲妻を放ってヒロムの力となる金色のブレスレット。

先程の自身の光の刃を消し去った眩い光もあのブレスレットから発せられたわけだが、トゥルースは彼の左手首の金色のブレスレットに目を向けた自身の着眼点を否定しようと言葉を発していく。

 

『キミのそのブレスレットは精霊の力を間接的に発揮するためのツールでしかない。

霊装の力をキミが纏えるのもそのブレスレットが力をの供給口となっているからであって、真理に到っていないキミのそれ霊装だということは……』

 

「だから、オマエ何勘違いしてんだよ」

 

『何?』

 

 自身の言葉を遮られたトゥルースはヒロムを強く睨み、睨まれるヒロムは彼に睨まれながらもあることを言及するように話していく。

 

「たしかにオレは真理に到達していない。

到達したのもオマエが言っていた通りならゼロと二人三脚で仲良く到達した未熟な到達だ。

不完全とも言える到達、オマエとアナザーとして初めて会った時の話を聞いてそう思っていたが、よく考えたら矛盾してた」

 

『何も矛盾はしていない。

霊装とはこの精神世界に身を置くものが到達すべき地点に到達したことで手にする力だ。

キミは中途半端な到達をして供給口程度の力しかないブレスレットを授かり、同じブレスレットを授かったゼロは己の意思で力に変えて真の霊装へと昇華させた。

だがキミは違う。キミのそれは……』

 

「あんま長話を聞く気もねぇけど、ハッキリしてることを教えてやるよ。

オマエのその認識は間違いだらけだ」

 

『何?』

 

「オマエはオレが真理に完全に到達してないからとか覚醒に到ってないとかオレの未熟さを指摘することばかり言ってるけど、そもそも真理に到達してこのブレスレットを得るきっかけを手にした時点でオレはオマエが言うような不完全だとしても真理に到達したってことを認められて力を与えられてんだよ。

フレイたちの力を使えるのも、「クロス・リンク」をイメージだけで再現出来るのもこのブレスレットの力があるからだ。

オマエがどう思おうがどうでもいいが、このブレスレットは飾りなんかじゃない、紛れもないオレの力だ」

 

『そのブレスレットが力と言うなら何故その霊装を完全に使えていない?

そのブレスレットが力なら、その力を何故か使えないのかについてはどう説明するつもりだ?』


「それはオレが間違えてたからさ」

 

 何かを言おうとしているヒロム、そのヒロムの言葉の真意が掴めぬトゥルースはヒロムが語るであろう説明に興味を抱き、トゥルースはヒロムを見つめる。

トゥルースの視線を受けるヒロム、そのヒロムは彼ではなく白銀の稲妻を纏うフレイに視線を向けると彼女に向けて伝えた。

 

「セラが精神世界に現れて、オレとフレイが意見のぶつかり合いの結果分かり合えた結果、オレとフレイは白銀の稲妻を纏えるようになった。

ラミアが現れて紫の稲妻を纏えるようになった時、オレはそこでラミアは紫、フレイは白銀をそれぞれ宿していると間違えた」

 

『何を……』

 

「だからフレイ、オマエに返すよ。

オマエの霊装の力、色を……」

 

 ヒロムが優しく言うと彼の左手の纏う金色の稲妻の一部がフレイに向かって飛んでいき、飛んでいった稲妻はフレイの纏う稲妻と一体化すると彼女の稲妻を金色へと変色させ、さらにフレイの大剣の刀身に金色の装飾が施されていく。

  

「それがフレイの本来の霊装だよ。

これまではオレの間違いでその力を渡せなかったけど、これで返せた」 

 

「マスター……」

 

『だがこれで白銀の稲妻は消える。

十の色の稲妻の一つが他の色を塗り替えた、それこそが間違……』

 

 トゥルースはヒロム、纏う稲妻について何か言おうとするが、そのトゥルースはヒロムの纏う稲妻に変化がないことに気づくと動揺を見せた。

 

『どうしてだ……?

何故白銀の稲妻が塗り替えられたのにオマエはまだ十の色の稲妻を纏ったままなんだ!?』

 

「だから、間違えてたのさ。

オレは……フレイに本来のオレの霊装の力の一部を押し付けてたんだよ」

 

『押し付けてただと?』

 

「妙だと思わないか?

何故単体でも優れた力を持つフレイの霊装が他人に依存するような力なのかって。

他の霊装はその精霊の力を高めるものばかりなのに、どうしてフレイだけは違うのかって」

 

 ヒロムの口から語られる内容、その内容にトゥルースは何も言えずにただこれまでのことが間違いだということを受け入れられぬまま茫然としていた。

トゥルースが茫然とする中、ヒロムは彼の事など気にすることなく金色のブレスレットを光らせ、ブレスレットが光ると新たな色の稲妻がヒロムの左手に纏われていく。


 白銀の稲妻が強く輝きを発する中で緑色の稲妻と水色の稲妻、杏色の稲妻、琥珀色の稲妻、紫紺の稲妻、白の稲妻が纏われるとヒロムのブレスレットはさらに強い輝きを発していく。

強い輝きがブレスレットから発される中、ヒロムは静かに右手をブレスレットにかざし、そして深呼吸すると瞳を閉じた。

 

「この新たな六つの稲妻はいつか天醒に達した時までオレが預かっておくだけだが、今だけは力を貸してくれ」

(ゼロ、自分で答えを見つけ出したオマエの力も……今だけでもいいからオレに貸してくれ!!)

 

「……抜剣!!」

 

 ヒロムが叫ぶと金色のブレスレットは光を発しながらその色を消すようにして白銀へと染まり、白銀へと変化したブレスレットが眩い輝きを放つ中でヒロムはブレスレットにかざした右手を何か掴むかのように指を曲げるようにしながら勢いよく横に振り払う。

右手が振り払われるとともにブレスレットは強い光を発すると共にヒロムを包み込み、光がヒロムを包み込むと何やら強い力が風を巻き起こしてトゥルースを吹き飛ばそうとする。

 

『ぐっ……!!』

 

 吹き飛ばされそうになるも何とか耐えようとするトゥルースは瞳を光らせると吹く風に迎え撃たせるように烈風を食らわせて相殺して免れる。

 

『今のは……』

 

 今起きたことが気になるトゥルースが光に包まれるヒロムの方を見る中、ヒロムを包み込んだ光が徐々に弱まっていき、光が弱まるとそこからヒロムが姿を現す。

 

 姿を現したヒロムは……右手に何やら白銀に光る大剣を握っていた。

 

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