五五三話 ラース・オブ・パワー
光を強く身に纏うトゥルースは未だに諦めようとしないヒロムたちを視界に捉える中で体を浮遊させ、自身の体を浮遊させるとトゥルースはヒロムに通告した。
『ここで潔く己の非力を認めるのならまだ遅くはない。
キミたちのその無謀で浅はかな心では何も救えない、それどころかこのままでは勝つことすら出来ない』
「だからどうした。
悪いがそんな事言われてもオレたちは止まれねぇんだよ。
オマエのその力が「レディアント・ロード」とかいう力だろうが関係ない。
オレたちは前に進むためにオマエを倒す、それだけだ」
『前に進むためにオレを倒す、と?
前に進むことだけが正しいと思っているその浅はかな考え、今ここで正してやる』
「やってみやがれ!!」
トゥルースの言葉に強く返すとヒロムは稲妻を強く纏いながら走り出し、フレイたちもそれぞれが持つ霊装の力たる稲妻を纏うと走り出す。
ヒロムとフレイは白銀の稲妻、ラミアは紫色の稲妻、ステラは赤の稲妻、ティアーユは青の稲妻、オウカは黒の稲妻、テミスは藍色の稲妻、アルマリアは緋色の稲妻、そしてメルヴィーは桃色の稲妻を纏っており、九人はトゥルースを倒すべく持てる力を出し切ろうとしている。
だが、そんな意気込みと纏う力を前にしてもトゥルースは動じない。
それどころかトゥルースは走り出した九人の姿に対して何も思わないのか平然とした態度で浮遊していた。
『……無駄なんだよ。
キミたちが力を合わせ、束になったところでこのオレには到底及ばない』
「そう思うなら!!」
「試してみればいいわ!!」
トゥルースの言葉に対してラミアとオウカは言い返すと稲妻を強く纏いながら高く飛び、浮遊するトゥルースのもとへと飛んで接近するとラミアは刀、オウカは薙刀に稲妻を纏わせながら斬撃を放とうとした。
しかし……トゥルースは瞳を光らせるとどこからともなく刀と薙刀を出現させて二人の斬撃を止めさせ、さらに瞳を光らせると天から無数の雷を降らせて二人に直撃させる。
だが二人は稲妻を纏っていたことで何とかダメージを免れるが、それを予期していたのトゥルースはさらに瞳を光らせると嵐を巻き起こして二人を吹き飛ばしてしまう。
そして、トゥルースは瞳を光らせると吹き飛ばされたラミアとオウカを仕留めるべく轟音を響かせながら数千数万の落雷を降り注がせていく。
「「きゃぁぁぁあ!!」」
『万雷の力に沈め』
「これ以上はさせません!!」
トゥルースの数千数万の落雷を受けて悲鳴を上げるラミアとオウカの敵を討つかのようにフレイは赤い刀身の剣に稲妻と炎を纏わせながらトゥルースに斬撃を放ち、さらにアルマリアはマントを翻すと二人に分身して稲妻を纏わせた斬撃を分身と共にトゥルースに向けて放つ。
ステラと二人のアルマリアが放った斬撃はトゥルースに迫っていくが、トゥルースが瞳を光らせるとどこからともなく四本の刀が現れて斬撃を放って相殺し、トゥルースはさらに瞳を光らせると弓を出現させてそれを手に持ち、構えるなり無数の魔力の矢をステラとアルマリアに向けて射ち放って二人に襲わせる。
魔力の矢が放たれるとステラとアルマリアは稲妻を纏わせた武器で防ごうとするが、二人が魔力の矢を防ごうとすると同時にトゥルースが瞳を光らせると魔力の矢をは無数に分裂していき、分裂を続けながら迫る魔力の矢をステラとアルマリアは何とかして防ごうとするも増え続けるその力の前には為す術もなく圧倒されて攻撃を受けてしまう。
「ぁぁぁあ!!」
「きゃぁあ!!」
「よくも!!」
ステラとアルマリアが無数の魔力の矢に襲われる中、ティアーユは超高速でトゥルースの周囲を駆け回り、駆け回る中でライフルに稲妻を流し込むと稲妻を帯びた光弾を四方八方からトゥルースに向けて撃ち放っていく……が、ティアーユの放った稲妻を帯びた光弾が迫る中でもトゥルースは動こうとせずに瞳を光らせ、トゥルースの瞳が光ると彼の体から周囲に冷気が放出され、放出された冷気に稲妻を帯びた光弾が触れると光弾はどういう原理なのか完全凍結してしまい、凍結した光弾はそのまま砕けて消えてしまう。
「そんな……」
光弾が防がれるどころか全てが消されたことに驚ティアーユの動きが止まると同時にトゥルースは瞳を光らせると無数の魔力の龍を出現させてティアーユに襲いかからせ、ティアーユに襲いかかる魔力の龍はティアーユの体に巻きつこうとするとともにその身を炸裂させてティアーユを負傷させながら吹き飛ばしてしまう。
「いやぁぁぁあ!!」
「はぁぁぁあ!!」
ティアーユが吹き飛ばされた先で倒れる中、メルヴィーは杖を天に掲げながら稲妻を強くさせると無数の光弾と魔力の矢をトゥルースに向けて撃ち放ち、さらにトゥルースの頭上と彼の下の地面に魔法陣を出現させるとそこから稲妻の鎖を放たせてトゥルースを拘束させていく。
トゥルースは抵抗することも無く上と下から迫ってくる稲妻の鎖に体を拘束されて身動きが封じられ、動きを封じられたトゥルースを仕留めようと光弾と魔力の矢が迫っていく。
だが、体を拘束してもトゥルースには意味がなかった。
トゥルースは首を鳴らすと瞳を光らせ、トゥルースの瞳が光ると光の槍が数本現れてメルヴィーの放った光弾と魔力の矢を破壊していき、全て破壊すると上と下にある魔法陣を貫いて爆散させてトゥルースの身を縛る稲妻の鎖を消滅させる。
拘束が解かれ自由となったトゥルースが瞳を光らせると重力が圧縮された球がメルヴィーの周囲に現れて彼女の動きを封じ込め、トゥルースが瞳を光らせると重力が圧縮された球が炸裂して閉じ込められていた圧が衝撃となって彼女を吹き飛ばしてしまう。
「うそ……」
「「はぁぁぁあ!!」」
メルヴィーが倒れる中、フレイとテミスは稲妻を強く纏いながらトゥルースに斬りかかり、トゥルースは瞳を光らせると大剣を出現させて手に装備して二人の攻撃を防ぎ、攻撃は防ぐと二人に向けてある事を訊ねた。
『何故キミたちは諦めない?
ここに至るまで六人がオレに倒された。
それでも諦めないのはなぜだ?
目の前で倒される仲間を見ても何故諦めない?』
「そんなのアナタには関係ない!!」
「マスターがアナタを倒すと決めた時からそれが私たちの戦う理由になっただけよ!!」
トゥルースの大剣を押し返そうとフレイは大剣、テミスは銃剣に稲妻を強く纏わせて持てる力を出し切ろうとするが、トゥルースは瞳を光らせると手に持つ大剣に光を強く纏わせ、光を纏わせた大剣を軽く動かして二人の武器を押し返すと纏わせた光を炸裂させると共に二人を吹き飛ばしてしまう。
が、二人は倒れなかった。
フレイとテミスは吹き飛ばされた崎で地面に稲妻を叩きつけることで吹き飛ばされた際に生じた勢いを殺して受け身を取り、受け身を取ると武器を構え直して稲妻を纏わせてトゥルースに向けて稲妻を纏わせた斬撃を飛ばす。
『無意味なことだ』
トゥルースは大剣を手放すなり瞳を光らせ、彼の瞳が光ると彼が手放した大剣が意思を持つように動いて斬撃を迎え撃とうと飛んでいき、大剣は斬撃を受けると刀身を炸裂させて自身諸共斬撃を消滅させていく。
「そんな……」
『無意味なことだと言ったはずだ。
キミたちの力は確かに真理の精霊となったことで高まってはいるが所詮はその程度。
オレの前ではその程度の力は無いにも等しいのさ』
「なら……これならどうだ?」
トゥルースがフレイとテミスの力について酷評する中、ヒロムは彼の背後へと一瞬で移動し、移動したヒロムは左手に稲妻を纏わせながらさらにトゥルースに接近しようと走り出す。
無駄なこと、そう思いながらトゥルースがヒロムを迎え撃とうとした時、彼は自身の目を疑った。
トゥルースに接近しようとしているヒロムは左手に稲妻を纏わせているが、その稲妻は一色でなかった。
白銀、紫、赤、青、黒、藍色、緋色、桃色の八色、天の字名を持つ八人の精霊の霊装の力たるそれぞれの色の稲妻を全て左手に集めて迫っていたのだ。
想定していなかったヒロムの行動にトゥルースは驚きを隠せず、驚きを隠せず動きが止まってしまうことによりヒロムはトゥルースへと容易に近づくことが出来、近づいたヒロムは左手の拳を強く握ると八色の稲妻を纏わせてトゥルースに殴りかかる。
「はぁぁぁ!!」
動きが止まるトゥルースに最接近したヒロムは拳を強く握るとトゥルースの体を殴り、拳がトゥルースの体を殴ると衝撃がトゥルースに体を走るとともに八色の稲妻が激しく炸裂して敵を吹き飛ばす。
ここまで圧倒的な強さを見せてフレイたちを追い詰めてきたトゥルース。
そのトゥルースへとヒロムの拳と彼の奇策とも言える稲妻がトゥルースに命中し、そしてその一撃がトゥルースを吹き飛ばしたのだ。
「やった……!!」
ヒロムの一撃にフレイとテミスは手応えを感じ、倒されたラミアたちも体を起き上がらせる中でヒロムの攻撃の瞬間を見て流れが変わったと感じていた。
だが、そんな彼女たちの思いを終わらせるかのようにトゥルースは起き上がると何も無かったかのように首を鳴らし、彼の体を見るとヒロムの一撃を受けたはずなのに一切のダメージを負っていなかったのだ。
『少し驚かされた。
まさかそんな方法でオレに攻撃するとはな』
「バカな……今のが効いてないだと!?」
驚きを隠せないヒロム、そのヒロムの顔を見るなりトゥルースは瞳をヒロムが拳に纏わせた稲妻と同じように八色に光らせるとヒロムに向けて一陣の風を吹かせ、風が吹くとヒロムは何もされていないはずなのに全身に負傷を負い吐血しながら膝をついてしまう。
「は……?」
『キミの攻撃と似たようなことをしただけさ。
もっとも、キミがそれほど負傷してもオレには何の痛みもないから同じでは無いのだけどね』
「この……野郎が……!!」
『その体の傷ではもう戦えないだろう。
この戦いに関してはキミの敗北で終わらせよう。
真理への到達は……また次の機会にするといいよ』
負傷した体、その体の影響なのかヒロムは思わず地面に手をついてしまい、ヒロムが地面に手をつくとトゥルースはさらに瞳を光らせてヒロムにトドメをさそうとした。
トゥルースの前に進むために光が集約されていき、その光は刃となってヒロムに向けて放たれる。
「くそっ……!!」
放たれた光の刃が迫ってくる中、体が万全ではないヒロムは避けたいと思っても体が動かなかった。
このままではトゥルースの一撃を受けて終わってしまう。
それだけが彼を焦らせる。
「このまま……オレは……!!」
何も出来ぬまま迫り来る光の刃を受けるしかないと諦めかけるヒロム。
ヒロムが諦めかけたその時、ヒロムの左手の金色のブレスレットが今までに見せたことの無い強い輝きを発して迫り来る光の刃を消し去ってヒロムを守る。
『!?』
「これは……?」
トゥルースが驚き、突然の光にヒロムが戸惑う中ブレスレットはさらに強く輝き、そして気づけばヒロムの全身を包み込んでいた……




