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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
能力邂逅編
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五四話 想解



結局ヒロムの手助けをして難なく事を終えたガイはそのまま使用許可を得た地下の部屋に向かっていた。


地下の部屋、といってもトレーニングルームだ。


そこでしか出来ないことを今からする。


そしてそれにはヒロムの精霊の協力が必要となる。


「さて、覚悟決めろよオレ……」


トレーニングルームの扉を開け、その先へと踏み込む。


そして、その先に待つ二人の姿を確認したガイは軽く一礼した。


それはこれから相手をしてもらうことへの敬意と協力してくれることへの感謝を込めてだ。


「遅い〜!!」


ガイが来たのを確認するとエリスは頬を膨らませながら駄々をこねる。


「マスターと愛を育みたかったのに〜!!」


「相変わらず、ヒロムへの愛が強いな」


「……だから、加減しないよ?」


エリスは両手に金色の装飾の施された二本の刀を持ち、そしてガイに殺気を放ちながら構える。


その殺気に応えるべくガイも「折神」を抜刀する。



が、もう一人の精霊はエリスとは異なり、構えようとしない。



青いドレスにも似たその衣装に身を包み、肩、腕にそれぞれアーマーを装着し、水色のマントを羽織る長い金髪の少女。


腰に剣を携えているが、それを抜こうともせず、ただ立っているのだが、その状態でも一切の隙がなく、容易に近づけないような威圧感を放っていた。





そう、だからこそガイは彼女の力を借りたいとしてヒロムに指名したのだ。


彼女を、ヒロムの十一人の精霊の一人であるアリアを。


彼女の実力、ガイはそれを知っているからだ。


「剣を抜かなくても余裕ってか?」


「いいえ、今は抜くべきではないと判断しただけです。

それに、あなたがマスターの力になろうとしているのであれば、その力になるのは当然のこと。

その上であなたの実力を把握しようとしているだけ」



「なるほど……」


つまり、アリアはガイを試そうとしている。

ガイの実力を知るためにあえて武器を手に取らないというのだ。


ガイも協力してくれるのであれば、どんな形であろうと構わないと思ってはいる。


「だったら意地でも剣を抜かせてやるよ!!」


ガイは「折神」を持つ手に力を入れると、走り出し、アリアを狙うように接近する。


が、それを邪魔するかのように無数の魔力の刃がガイを襲おうとする。


ガイもすぐにその存在に気づくと刀に魔力を纏わせると、立ち止まると同時に刃を順番に斬り落としていく。



「私もいるんだけどな〜?」


エリスは両手に持つ刀を引きずるようにゆっくりと歩きながら自身の周囲に魔力の刃と魔力の剣を出現させ、それをガイに狙いを定めると弾丸や矢を放つように刃と剣を放つ。


ガイは刀の纏う魔力を消すと、代わりに蒼い魔力、つまりは「修羅」の力を纏わせ、斬撃を放ってエリスの攻撃を相殺する。


やっぱり、とエリスは自分の攻撃を防いだガイの姿に笑みを浮かべると走り出し、そして一瞬でガイの背後に姿を見せると刀で斬りかかる。


だがガイはそれをギリギリで回避し、「折神」で攻撃しようとしたが、エリスはそれを魔力を纏わせた刀で防いでしまう。


「甘いよ!!」


「さすがに素早いな……!!」


「……油断」


エリスに攻撃を防がれたガイの隙をつくようにアリアはアーマーで覆われた右手で殴り、そのままガイを殴り飛ばす。


が、ガイは攻撃を受ける瞬間に攻撃された箇所に魔力を集中させていたようで、ダメージは少ないらしく、すぐに立ち上がる。


「あなたの弱点は油断。

己の力の未熟さを理解している一方、一つのことを対処する上でそれ以外のことに関しては一瞬だけ気が逸れてしまう」


「……まったく、人が気にしてることを言ってくれるな」


「わかっているなら大丈夫ですよ。

ですが、一つわからないことがあります」


「ん?」


「あなたは「修羅」を使い、そしてその刀を使えばマスターと互角に戦うことも容易いはず。

なのに、なぜ更なる力を?」


アリアの問いかけにガイは一瞬考えてしまうが、それでもガイは今答えられることを自分の口から自分の言葉で話した。


「それがいつかヒロムのためになると思っているからだ。

ヒロムのために……アイツが前に進むためにもオレが道を切り開こうと!!」


構え直すガイ、それに対してアリアは未だ剣を抜かずに魔力を纏わせた拳での攻撃を仕掛けてくる。




アリアの攻撃をガイは刀で防ぐが、それはガイにとって数時間前の戦闘の記憶を呼び覚ますだけ。


バッツ、あの蝙蝠の騎士をだ。


「……ヒロムの決意の邪魔だけはしたくないんだ」



「それはマスターの話を聞いたから?」


アリアの二度目の問いに対してガイは首を横に振るとその理由を語った。



「元々オレにとってヒロムは憧れであり、いつか認められたい存在だ。

アイツの背負うものを改めて聞いたからとかじゃない、アイツがいるからそうしたいんだ」


なるほど、とガイの言葉を聞いたアリアはそれ以上のことを聞こうとせずに納得し、その上でガイの目を見た。


ガイの目はただ前だけを見ており、そこからわかることは今語ったことが嘘ではないということ。


つまり、彼は本気でマスターのためになりたいと思っているのだ。


「……ならば、あなたに教えなければなりませんね」


「なんだ?

まだアイツオレに……」


「あなたが今必要とする技を……」


「必要としている技……?」


わかったからです、とアリアは何を言ってるのかわからないという顔をするガイに説明を始めた。


「もう少し様子を見たかったのですが、あなたの言葉を聞いてその必要がないと判断できました。

なので、あなたがこの先強者として敵を倒すために欠けているものを今すべて授けます」


「……マジかよ」


それは驚きとともに喜びの一言でもあった。

おそらく彼女の言う欠けているものというのはガイの思っているものとは違うかもしれない。


だが、そうであってもなくてもアリアが自身に何かを教えてくれるというのは大きい。


何せ彼女はヒロムのことをよく知っている。

つまり、ヒロムの強さに繋がる技術が聞けるかもしれないのだ。

「願ってもいないチャンスだよ……」


「ただし、何を教えるかは言わない。

そして、あなたへの容赦はしない」


「……上等!!

元から教えてもらうつもりはない、だからオレが勝手に会得させてもらう!!」



***


帰ってくるなり「疲れた」とリビングにあるソファーの上で横になったヒロム、そんなヒロムに対してソファーに腰掛けるアイリスは膝枕をしてあげていた。


眠りについているのか、ヒロムは何も言わず、目を閉じてじっとしていた。


よしよし、とアイリスは何事もないようにヒロムの頭を撫でており、それを傍から見ているユリナたち三人の少女は目を奪われていた。


「い、いいなぁ……」


アイリスの姿を羨ましそうに見るユリナ。

彼女が想いを寄せるヒロム、そんな彼に膝枕をしてあげたいとユリナは思っていた。


それはリサとエリカも同じらしいが、ユリナ以上に羨ましそうにアイリスを見ていた。


「……さすがにそこまで見られると恥ずかしいです」


「あ、その……」


「羨ましい」


恥ずかしそうにこちらを見るアイリスに申し訳ないと感じたユリナは何か言おうとしたが、それを遮るようにリサが思っていることを口に出した。


さすがにそれを聞いたアイリスは驚き、ユリナも急に変なことを言わないでと言わんばかりにリサの顔を見る。


だがリサはそのユリナの視線を気にすることなくアイリスに話し始めた。


「どうしたらそんなに警戒されなくなるの?」


「そ、それはマスターと私がこれまでずっと一緒にいたからでして……」


「どうしたら今の私でも膝枕できるかな?」


「そ、それはマスターと話し合われた方が……」


「そもそもヒロムくんはそういう話をまともに聞かないから話し合いは難しいです!!」


ええ、とリサの言葉に圧倒させるアイリスは唖然とし、助けを求めるようにユリナを見る。


ユリナはそれにすぐに気づいたが、どうしたものかと悩み、悩んだ挙句、ユリナはエリカに助けを求めた。


「どうしよ……」


「私に言わないでよ。

私だって知りたいんだし……」


「い、今はリサを止める方法を……」


「……リサ、冷静になってみて」


ユリナに言われ、リサ同様にヒロムへのスキンシップの多いエリカが柄にもなく冷静な口調、そして真面目な顔で話し始める。


「何?」


「話し合える人がこの場にいるじゃない」


「どこに……」


エリカに言われ、何かに気づいたリサはじっとユリナを見つめる。


今の状況、エリカの言葉。

それらからすべて理解したユリナは首を横に振り、否定するように口を開く。


「む、無理だよ?

私でもさすがにヒロムくんにそんなこと……」



「言わないだけで言おうと思えば言えるでしょ?」


「だ、ダメ!!

ヒロムくんに迷惑かけれないもん」


「でも何も言わなくても頭撫でられてたじゃない」


それは、とリサに言及されたユリナは顔を赤くし、急に声量が小さくなる。


「……ぐ、偶然……」


「聞こえませーん」


「た、たまたまだったから……

あれは不可抗力なの!!」


「あ……たしか初めてこちらに来られた時、ユリナはマスターに抱きつかれてましたね」


「あ……」


言わないで欲しかった、とユリナは思うが、時すでに遅し。


アイリスが口走った言葉を聞いて、リサとエリカはユリナに問い詰めようと顔を近づけ、そしてアイリスの言葉の真意を確かめた。


「「どういうこと?」」


「あ、あのときはヒロムくんを励ますのに必死で……」


「いつも私たちが抱きつくと注意してたのに?」


「離れなさいって怒ってたのに?」


「……はい」


詳しくは聞かず、真偽だけを確かめるような二人の言葉にユリナは小さな声で返事をする。


と同時にそれを聞いた二人は笑顔になり、そしてユリナに一つ提案した。


「じゃあ、これから抱きついても怒らない?」


「そ、それは……」


三人で話が進む中、アイリスがそれを制するように咳払いをした。


三人がアイリスの方を見ると、アイリスは自分の口もとに右手人差し指を当て、そして左手でヒロムを指さす。


あっ、と三人は思い出した。

ヒロムは今寝ているのだと……



「「ごめんなさい……」」


「わかってもらえれば大丈夫ですよ?

でも……あまり無駄に抱きついたりされるのはさすがに私たちが止めますからね?」


アイリスは優しい笑顔で言うが、その笑顔からはただならぬ何かを感じられ、それに気づいた三人は何も言わずにただ首を縦に振った。


「……わかってもらえたみたいですね。

ですが、三人なら大丈夫ですよ」


「どういうこと?」


「リサは話し合いは難しいと言われましたが、マスターが気を許さない相手をこうして自分の屋敷に招き入れ、そして宿泊させると思いますか?」


「じゃあ、それって……」


「私の個人的な意見ですが……マスターは皆さんに気を許しておられますよ、きっと」


フォローするかのように告げるアイリスの言葉を聞いた三人はどこかうれしそうな表情を浮かべる。


「あっ、こんな時間ですね……

そろそろお昼ご飯の準備をお願いしたいです」


「あっ、はい!!」


アイリスに言われ、ユリナは元気に返事をすると立ち上がりキッチンへ向かい、リサとエリカは寝ているヒロムに手を振りながらその後を追っていく。



ふぅ、と何とか解決したと安心し、安堵のため息をつくアイリス。


するとタイミングよくヒロムが目を覚ましたのか、目を開けた。


「あ、マスター……」


「うるさくて寝れねぇ……」


「すいません……。

私が余計なことをしたせいでマスターの時間を……」


「ま、何とか解決したならいいさ。

オレが起きてるの気づいてアイツらをここから出したんだろうしな」


はい、とアイリスはヒロムに対して申し訳なさそうに返事をする。


状況を察しているのかヒロムもそれについて何かを言うわけでもなく、ため息をつくと起き上がる。


「……アイツら、こんなオレのことで悩んでるんだな」


「マスターにはそれだけ人を惹きつける力があるということです。

それに、ご自身のことを「こんな」なんて言わないでください。

マスターに仕える私たちのためにも自信を持ってください」


「ああ、そうだな……」

(だからこそ、オレにできることをやらないといけない。

仲間のために、アイツらのために……そして)


「オレ自身のためにも」

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