五三七話 閉ざされた未来道
「ここから先は……オマエたちの踏み込める領域ではない」
ソラ、シオン、シンクの三人のそばを超高速で駆けたキリスは斬撃を放って三人を襲う。
「「!!」」
放たれた斬撃、それが至近距離まで迫ってきたことでソラたちはキリスの動きを認識することが出来たらしく、避けるのが間に合わないと判断したのか三人は斬撃を防ぐべく力を迫り来る斬撃の方へ集めるとキリスの攻撃を相殺して防いだ。
「今のは……!?」
「……作戦変更だ!!
どうにかして、倒すぞ!!」
シオンの「晶眼」による未来予知からの連携で倒そうと指示を出していたソラは急遽作戦を変えると炎を強く纏いながら加速しながら走り出し、超高速で動くキリスの動きを止めようとする。
「はぁっ!!」
超高速で動くキリスを止めるべくソラは自身の周囲に無数の炎の弾丸を出現させ、出現させた無数の炎の弾丸をキリスに向けて放ちながら両手に持つ二丁の拳銃から次々に炎を放ってキリスに襲わせようとする。
……が、キリスは超高速で動く中でサーベルを構えると迫ってくる無数の炎の攻撃を瞬く間に消し去り、炎を消し去ったキリスはソラが反応出来ぬ速度で背後へと移動すると彼の背中に一閃を放つ。
「がっ……!!」
放たれたキリスの一閃はソラの背中を抉り、キリスはソラの背中を抉ると続けて彼の首を斬ろうとサーベルを横薙ぎに動かそうとした。
だがソラは右手に持つ黒い拳銃に炎を集めると炎を刃に変えてキリスのサーベルを止め、左手に持つ白い拳銃をキリスに向けて構え直すと至近距離から炎の弾丸を速射して……いくが、キリスはどこからか短剣を取り出すとそれを用いて炎を弾丸を難なく対処し、炎の弾丸を処理したキリスはサーベルと短剣に風を纏わせると斬撃とともに烈風を解き放ってソラを吹き飛ばしてしまう。
「ぐぁっ……!!」
「野郎……!!」
ソラが吹き飛ばされると入れ違うようにシオンは雷を強く纏いながらキリスに殴りかかろうとするが、シオンが殴ろうとするとキリスは音も立てずにシオンの視界から消えてしまう。
「……!!」
「遅い」
キリスを見失ったシオンが敵を探し当てようとするよりも先にキリスはシオンの前に現れて目にも止まらぬ速さで連続突きを放つ。
放たれた連続突きはシオンに命中するのだが、キリスの連撃を受けたシオンは雷となって消えてしまう。
そして……
消えたはずのシオンはキリスの背後に現れると雷を右手に集めながら手刀でキリスを貫こうと攻撃を放つ。
「……」
「隙だらけだ!!」
自身の存在にキリスが気づいていないと判断したシオンは迷うことなく攻撃を放とうとするが、シオンの雷を強く纏った手刀がキリスに迫っていく中で的は光となって消えてしまい、キリスが消えると同時にシオンは無数の斬撃に襲われて負傷してしまう。
「っ……!?」
「隙だらけ?
どちらがだ?」
「この……!!
雷鳴王……!!」
斬撃を受けて負傷してもシオンは倒れずに雷を強く纏うと体と同化させ、雷と体を同化させると雷鳴を轟かせながらキリスに殴りかかるが、キリスはシオンの攻撃を簡単に避けると足に魔力を纏わせて蹴りを放ってシオンを蹴り飛ばす。
「がっ……!!」
「その技はもはやデータにまとめられていて通用すらしない。
たかだか雷と同等のスピードを得るだけの技など……無意味!!」
蹴り飛ばされたシオンが倒れる中キリスはシオンの「雷鳴王」が通用しないことを告げてサーベルに魔力を纏わせながら巨大な斬撃を放ってシオンを葬ろうとする。
「くっ……」
「させるか!!」
倒れるシオンに斬撃が迫っていく中、竜装術を発動させたシンクは冷気を全身に纏いながらシオンの前に立つとキリスの放った斬撃を凍結させて防ぎ、凍結させた斬撃を粉砕するとシンクは無数の氷柱を出現させてキリスに向けて放つ。
放たれた無数の氷柱はキリスに向けて飛んでいくが、キリスはどこからか取り出したリボルバー銃を装備して魔力の弾丸を放って無数の氷柱を破壊していく。
が、放った氷柱を破壊されたシンクは氷の翼を大きく広げると飛翔してキリスに迫ろうとする。
シンクが飛翔していくとシオンも起き上がると雷と同化した体に雷をさらに纏わせると走り出す。
「……無駄なことを」
迫ってくるシンクとシオンを前にしても余裕が崩れぬキリスはサーベルを構え直しながらリボルバー銃を構えて弾丸を放ち、放たれた弾丸を避けながらシンクとシオンはキリスに接近しようと止まらない。
「……止まらないのなら仕方ない」
止まる気配のないシンクとシオンに呆れてため息をつくとサーベルを構えながら動き出そうとするが、それを邪魔するかのように炎が襲ってくる。
「……!!」
「させるかよ!!」
吹き飛ばされたはずのソラに炎を纏いながら二丁の拳銃を構えてキリスに接近して蹴りを放つと至近距離から炎の弾丸を数発撃ち込もうとするが、キリスはソラの蹴りを避けるとリボルバー銃を構えてソラより先に弾丸を放とうとした。
が、キリスの邪魔をするように黒い雷が飛んできてリボルバー銃を破壊し、弾丸を放てなくなったキリスにソラの炎の弾丸が敵を襲っていく。
「何……!?」
炎の弾丸を受けたキリスは仰け反る中でリボルバー銃を破壊した黒い雷が飛んできた方を見ると、その先にはフラつきながらも立ち上がった真助が右手に黒い雷を纏わせていた。
「鬼月真助……!!」
「油断してんじゃねぇぞ、ゴラァ……!!」
「ドラァ!!」
真助がキリスに向けて言葉を発するとそれを合図にするかのようにソラはキリスに続けて炎の弾丸を撃ち込み、さらにシオンはキリスに接近するとキリスの顔面を殴り、シンクは氷の爪でキリスに連撃を食らわせる。
「「オラァ!!」」
三人の攻撃にキリスが怯むとソラたちは同時に攻撃を放とうとした。しかし……三人が攻撃を放とうとするとキリスは青い光となって三人の前から消えてしまう。
「何!?」
「馬鹿な!?」
「無駄なことだ」
キリスが消えたことにソラたちが動揺しているとキリスは彼らの後ろに現れてサーベルに魔力を纏わせ斬撃を放つ。
放たれた斬撃はソラたちに迫っていく中で無数に分裂しながら三人を襲い、無数に分裂した斬撃に襲われた三人は負傷しながら吹き飛ばされてしまう。
「ぐあっ!!」
「がっ……!!」
「そろそろ終わらせてやる。
オマエたちの相手も飽きてきたからな!!」
三人が倒れるとキリスは三人の命を奪うべくサーベルに強い力を纏わせると斬撃を放ち、放たれた斬撃は三人の命の鼓動を止めて終わらせようと迫っていく。
迫り来る斬撃、倒れたソラたちは斬撃を何とかしなければと頭の中では考えるが、倒れてしまった三人の体は負傷した影響ですんなり立ち上がれなかった。
このままでは斬撃が三人を殺してしまう。
その危険性が高まっていく中……
「はぁっ!!」
キリスの放った斬撃が迫っていく中、立ち上がれぬソラたちを守るかのようにヒロムの精霊・フレイが大剣を構えて三人の前に現れ、現れるとフレイは大剣に魔力を纏わせながら一閃を放ってキリスの斬撃を相殺してソラたちを危機から救い出す。
「……!!」
「フレイ……」
「無事ですか?」
「……見たまんまだ……」
体の安否を気遣うフレイの言葉にシオンは冷たく返すと立ち上がり、ソラとシンクも続けて立ち上がる。
が、キリスの攻撃を受けて負傷した三人の体は万全とは程遠い状態、このまま戦いを続けられるか怪しいものだった。
そんな状態だとしてもシオンは戦おうと雷を纏う。
「シオン、その体では……」
「止めるな……!!」
シオンの体を心配してフレイは止めようとするが、そんな彼女に対してシオンは止めないように言うと続けて彼女に言った。
「後ろにはガイが足止めしてる機械兵器、向こうには鎧のヤツが足止めしてる四条貴虎、バローネってのを足止めしてるイクトもいる……。
この状況で……オレたちの誰かが戦えるなら目の前のあのサーベル野郎をどうにかしなきゃならない……!!
出来なかったら……ヒロムが狙われ、後ろにいる女どもが狙われる……!!」
「シオン……」
「この命を賭して守れるものがあるなら……オレは……」
ダメよ、とシオンの言葉を遮るようにヒロムの精霊の一人であるラミアがやってくるなり刀を抜刀しながらシオンに告げた。
「マスターのために何かしようとするのはいいけど、その結果で死のうとするなんて……マスターが知ったら悲しむだけなんだからやめてよね」
「刺し違えてでもアイツを倒さなきゃならない。
今のオレたちはそういう状況に……」
「シオン……アナタ、その目で未来をちゃんと視てるの?」
「何?」
「アナタのその「晶眼」は未来を視てるの?
その力は何故その目に宿ってるのか……思い出しなさい」
「何を……」
「マスターからアナタへの伝言よシオン。
先を読み考えることと未来を知って動かされることとは異なる、て」
「……!!」
ヒロムからの伝言だと言うラミアの言葉にシオンは何かを感じ取ったのか纏う雷を弱くし、シオンの力が弱くなるとキリスは青い光を強くさせながら動き出す。
「精霊風情が今更出てきて何になる!!
オマエたちが出てきてもオレは倒せない!!」
キリスはサーベルを構えながら接近して来るが、フレイとラミアは武器を構えるなり迎え撃とうとした……が、二人の動きを読んだかのようにキリスは青い光となって消えると同時に一瞬で二人の背後へと現れてサーベルを振り上げる。
「消え失せろ……精霊!!」
「させるか!!」
シオンは雷を右手に集めるとキリスに向けて撃ち放って攻撃を阻止しようとするが、キリスは青い光をサーベルに纏わせるとシオンの雷を相殺する。
「負傷した体で放った程度の力で……」
「……ソラ!!
撃て!!」
「分かった!!」
キリスがシオンに向けて言葉を発する中シオンが叫ぶとソラは両手の拳銃で炎を放ち、放たれた炎がキリスに直撃する。
「!?」
「シンク!!
ヤツの動きを!!」
「任せろ!!」
炎を受けて仰け反るキリスの動きを封じるべくシオンが指示するとシンクは地面を強く蹴ってキリスの周囲の地面を凍結させながら敵をも凍らせようとするが、キリスは青い光を強く纏うと飛んで避ける……が、キリスが飛んだ先にはフレイとラミアが待ち構えており、二人は武器を構えて一撃をキリスに食らわせると敵を吹き飛ばす。
「ぐぉぉぉ!!」
吹き飛ばされたキリスは船室の壁に叩きつけられ、叩きつけられたキリスは何とかして起き上がるとシオンの方を見ながら彼に問う。
「何をした……!?
オマエのその目でオレは捉えられないはずだ……!!」
「……オレはオマエを捉えようとはしていない」
「何……!?」
「ラミアの言葉で理解した。
この「晶眼」は未来視出来る力を持っている。
けどオレはその力を最大限に引き出すことをしていなかった。
だからオレは……冷静になってその力を引き出しただけだ!!」
「ふざけたことを……!!」
「覚悟しろ……カリギュラ!!
ここから先はオマエらの好きにはさせない!!」




