五二七話 意外な共闘
「オマエは……」
「よォ、姫神ヒロム。
助けに来たぜェ」
鬼桜葉王の出現が意外だったのかヒロムは驚きを隠せぬ顔で彼を見ており、ヒロムの表情を見るなり葉王は首を傾げながらヒロムに言った。
「何驚いてんだァ?
オレがここにいるのがそんなに不思議なのかァ?」
「いや……まぁ、それも気になるけどオマエ今何て……」
「昨日の戦いの時にオマエの体に転移用のマーキングを仕込んどいたのさァ。
おかげで……」
「そうじゃない。
今さっきオレに何て言った?」
「あァ?
あァ、助けに来たぜェって言ったなァ」
「何でオマエがオレを助けに……?」
葉王の言葉が不思議で仕方がないヒロムは彼に聞き返してしまい、ヒロムに聞き返された葉王は何食わぬ顔で彼に話した。
「目的の一致だよォ。
オマエらはリュクスから守りたいものがある。
一方でオレはリュクスに用があるゥ。
つまりはリュクスが共通してるってわけだァ」
「何言ってやがる。
アイツはオマエと同じ「一条」の……」
「……事情が変わったんだよ。
とにかく今は助けてやる」
ヒロムの言葉に被せるように言葉を発する葉王。
その葉王の口調は気の抜けたようなものではなくヒロムが何度か聞いたことのある真剣なものへと変わっていた。
その口調の言葉に葉王の思いを感じ取ったのかヒロムは一息つくと彼に言った。
「……ユリナたちには手を出すなよ。
もしアイツらに何かあったら……」
「助けてやる上で女も守れってんなら従ってやるよ。
その代わり足引っ張るなよ?」
「……作戦は?
あのイヴナントの中には人がいる」
「壊せば済む話だ」
「ダメだ!!
あの中にいるのは……」
「無関係の人間かもしれないんだろ?
ならオレの能力を使って倒せば何とかなるだろ」
「オマエの能力……そうか!!」
葉王の言う彼の能力、それを思い出したヒロムは葉王がやろうとせん事を確認するかのように彼に話していく。
「オマエの因果律を操作する「因果」の能力ならあのイヴナントの装甲が受ける衝撃が中の彼女に流れるのを止められるのか」
「止めるなんてちゃちな話じゃねぇ。
オレの能力なら衝撃の流れる先を改竄すればあの機械兵器は使えなくなる」
させると思うか、とヒロムに説明する葉王に向けてリュクスが歩きながら言うが、リュクスがこちらに歩いてくるのを見るとヒロムはイクトの方を見た。
イクトの方を見ると彼は今もリュクスと戦っていた。
が、それだとおかしい。
イクトの戦うリュクス、今こちらに向かってくるリュクス……二人いることになるのだ。
「何で二人……」
「物理投影だ。
おそらくはヤツの下僕の精霊のランスロットとジョーカーの力だ 」
「下僕の精霊……?」
「道化と騎士王だ。
オマエのとは精霊って点は同じだが、ヤツの場合は道具も同然の器だ」
「どういう……」
「オマエのと違って代用が利くって話だ。
その話はどうでもいいが……片方はランスロットの騎士兵具現の力にジョーカーの幻想改変の力でリュクスの姿と力、さらには思考を投影させたものだ。
厄介なことにあの中も外もリュクスと大差ないから判別出来ないってことだ。
歩いてる方が本物か黒川イクトが戦うリュクスが本物かはオレにも見分けがつかない」
「なら倒すだけだ。
肝心の話を忘れてたが……オマエとアイツはどっちが強い?」
「決まってんだろ。
……オレだ」
「なら……何の問題も無い!!」
葉王の答えを聞いたヒロムは白銀の稲妻を強く纏うと拳を強く握り、ヒロムが構えると葉王も並び立つように構えた。
「あの機械兵器はオマエがやれ。
中の人間を気にすることなく攻撃しろ。
さっきのでしばらくは中の人間への被害は無くなってるはずだから一気に潰せ」
「ああ……頼むぞ!!」
葉王の指示を受けるとヒロムは走り出し、ヒロムが走るとリュクスは彼を迎え撃とうと魔力を纏いながら動き出そうとする……が、リュクスが動こうとすると葉王は一瞬で彼の前に移動してそれを阻止する。
「葉王……!!」
「リュクス……オマエが姫神ヒロムの前に現れて余計な事を言った時に始末しとくべきだった」
「仲間を手にかけるのか?
ひどいやつだな……オマエは!!」
リュクスは攻撃を放とうとするが、葉王はそれよりも先に蹴りを放つとリュクスを蹴り飛ばし、葉王は魔力を右手に纏わせてユリナたちの方へ向けると彼女たちを守るように魔力の防壁を組み上げていく。
「何これ……?」
「……オマエらに何かあって姫神ヒロムに文句言われんのも面倒だから守ってやるよ」
葉王は冷たい態度でユリナたちに言うとリュクスの方へ向かっていき、ヒロムは葉王が吹き飛ばしたイヴナントの方へ向かっていく。
ヒロムが走っていくとイヴナントは起き上がり、雄叫びのような声で叫ぶと両腕の爪の先に魔力を集め、集めた魔力を無数のビームにして撃ち放つ。
「……!!」
(避けるか?
でもここは船の上……避けて船が壊れて二次災害に見舞われるくらいなら!!)
迫り来るビームを避けようとするヒロムだが、今戦っているこの場が船の上であり避けるのは危険だと判断したヒロムは即座に大剣と槍を構えると迫り来るビームを消し去るように一撃を放ち、次々に来るビームを消し去りながらイヴナントへ接近していくが、イヴナントは突然両手の爪を手から分離させるように勢いよく射出すると翼を大きく広げ、大きく広げた翼から刃の形をした羽根がいくつも放たれる。
射出された爪と刃の形をした羽根は意思を持つかのように不規則な動きをしながらヒロムに迫り、翻弄するかのような動きをしながらヒロムに襲いかかる。
「これは……ビットか!!」
ビット、それは使用者の脳波などのより遠隔操作される浮遊砲台や浮遊兵器のことを指すものだ。
ヒロムに襲いかかろうとする爪や羽根もそれに該当し、それらはイヴナントの指示を受けて動いている。
「厄介なものを!!」
迫り来る爪や羽根をヒロムが回避してもそれらはすぐに旋回すると再びヒロムに襲いかかろうとし、ヒロムは大剣と槍で破壊しようとしてもそれらはヒロムの攻撃を避けてしまう。
「……だったら!!
「天紡」ティアーユ!!「弾撃」アウラ!!
クロス・リンク!!」
ヒロムはフレイとディアナの「クロス・リンク」を解除して叫ぶとショットガンを構えた青髪の少女の精霊・アウラを出現させ、アウラは出現するとともに光となると十二基の長身の銃身に変化し、ティアーユはヒロムのもとへ駆けて行く中で光になると彼と一つになる。
光と一つになると袖のない青いロングコートを纏い、ヒロムは白銀のガントレットとブーツを装備し、さらに腰にベルトが巻かれて両肩には白銀のアーマーが装着される。
そして十二基の長身の銃身に変化したアウラはヒロムに近づくと十二のうちの四基をヒロムの頭上に動かし、二基ずつで合体させてシールドのような状態にさせるとヒロムの左右を守るように両肩のアーマーにそれを装着させ、残りの八基はヒロムの腰に巻かれたベルトに結合するように装着させる。
「クロス・リンク完了……「天弾紡王」!!」
ヒロムは叫ぶと両手にショットガンを構えて爪と羽根のビットを撃ち落とそうと弾丸を放つが、ビットはその攻撃を避けていく。
「……読めてんだよ!!
キャノンビット!!」
ヒロムは叫ぶと両肩と腰の十二基の銃身を自身から分離させるように射出させ、射出された銃身はイヴナントの爪と羽根のビットのように意思を持つように動きながら弾丸を放っていく。
イヴナントのビットはヒロムのキャノンビットを回避しながらヒロムに向かおうとするが、キャノンビットは上手く連携を取りながら弾丸を放つことで次々に敵のビットを撃ち落としていく。
『ァァァァァア!!』
ビットが撃ち落とされるとイヴナントは動揺してるかのように声を上げながら頭部に魔力を収束させようとするが、ヒロムは両手に持つショットガンを前後で連結させると魔力をそれよりも先に収束させてビームを放つ。
放たれたビームはイヴナントの頭部に集まる魔力を消すと共に敵の頭に命中し、命中するとイヴナントは苦しそうに怯んでいく。
『ゥゥゥ……』
「よし!!」
(葉王の能力が機能してる!!
このままこのイヴナントの装甲を破壊して中の彼女を助ければ!!)
イヴナントの内包する「受けた衝撃が中に格納された人間に流れ込みダメージを与える」という機能が葉王の能力によって防がれていることを確かめるとヒロムは連結させたショットガンを分離させ、ショットガンを変形させるとメイスようにして打撃形態へと可変させるとイヴナントに向けて走っていく。
「このまま一気に……」
『ゥゥゥ……ゥゥゥ……助け……テ……』
「!?」
葉王の能力が働いている今のうちにイヴナントの装甲を破壊しようと接近していくヒロムだが、そのヒロムが迫る中イヴナントは突然言葉を発する。
助けて、明らかにそう言った。
その言葉を聞いたヒロムは予想も出来ぬ事に足が止まってしまい、攻撃をも躊躇ってしまう。
「今なんて……」
ヒロムが攻撃を躊躇うと天からイヴナントの羽根のビットがいくつも飛んで来る。
向かってくる羽根のビットはヒロム自身を狙おうとせずに彼の周囲で円を描くよう地面に突き刺さり、羽根が全て突き刺さると彼の足下に魔方陣のようなものが浮かび上がる。
「しまっ……」
魔方陣の出現に焦るヒロムは慌てて逃げようとするが、その時既に遅し。
ヒロムの足下に現れた魔方陣は光を発すると無数の魔力の帯を放ってヒロムの全身を拘束し、ヒロムを拘束すると帯伝いに電撃を流し込んでいく。
「がぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ヒロムくん!!」
「ヒロムさん!!」
電撃を受けて痛みとともに叫ぶヒロムの身を心配してユリナたちは葉王の展開した魔力の防壁の内側から彼の名を叫ぶが、電撃に襲われる彼には届いていない。
「がぁぁぁぁぁぁあ!!」
『ァァァァァア!!』
全身拘束されて電撃を受けるヒロムが苦しむ中イヴナントはヒロムを倒すべく動き出し、ビットとして射出させ破壊されたはずの爪を腕の装甲を展開するとともに新しいものへ付け替えていく。
「がぁ……!!
野郎……!!」
『助け……ゥゥゥ……殺……ゥゥゥ!!』
「何を……言って……」
「気になるかい?
なら教えてあげるよ」
葉王の足止めを受けるリュクスは葉王の攻撃を対処する中で余裕を見せながらヒロムにイヴナントについて話していく。
「イヴナントは元々能力を持たぬ人間用に四条貴虎が開発しようとしていた試作型のデータを元に生み出された機能性拡張型のデバイスシステムを搭載したアーマーだったんだ。
だけど……面白みがないだろ?
その程度のシステムじゃ面白みがない……だからオレは貴虎に新しいものを提案したのさ」
「新しい……もの……?」
「そう、イヴナントは装着者の意志を無視して闘争心を駆り立てさせる。
戦いたくなくても中に入れられれば闘争本能が刺激され続け、耐えられなくなった脳は死滅する代わりにイヴナントは中に人がいるかぎり暴れる兵器となったのさ」
「まさか……「ハザード・チルドレン」のデータを流用したのか……!!」
「正解だ!!
その結果無意識下での学習を身につけ、イヴナントは自我を持つ兵器として完成したのさ!!」
「てめぇ……ふざけんな……!!」
嬉しそうに叫ぶリュクス。
そのリュクスの言葉にヒロムは電撃を受けて耐える中で怒りを抑えられなくなっていた。
が、そのヒロムへと爪に魔力を纏わせながらイヴナントが迫っていた。
「まぁ……キミはイヴナントの実戦データを集めるいい材料になってくれた。
……さよならだ」
リュクスが冷たく告げるとそれを合図にするようにイヴナントはヒロムを引き裂こうと襲いかかる。
「ダメぇぇぇぇ!!」




