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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
能力邂逅編
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五二話 暗雲


戦闘後の後処理があるとしてカルラはその場に残り、イクトもソラのところへ向かうと言って帰った。



ヒロムはガイと二人で歩いており、向かっている目的地はヒロムの屋敷だ。


「それにしても、あの力は凄かったな……」


ガイは今思い出しても圧巻させられるヒロムの力について話し始めた。


が、その話に興味がないヒロムは何の反応も見せずにただ歩いていた。


それでもガイは話を続けていた。


「オレらで歯が立たなかったあのバッツを追い込んだんだしな。

それにあの速度、凄かったよ」


ヒロムの「ソウル・ハック 」について自分の事のように嬉しそうに話すガイだが、ヒロムはその話を聞いても反応しない。


さすがにこれ以上は続ける意味もないと悟ったガイは話をやめようとしたが、ふと疑問に思ったことをヒロムに訊いた。


「そう言えば、なんであの時言い直したんだ?」


「……」


『これがオレの新しい力……いや、新しい姿、「ソウル・ハック」だ!!』



ヒロムの言葉を思い出したガイは不思議そうにヒロムを見るが、ヒロムはため息をつくだけで何も言わない。





バッツの言う通りと言うと聞こえは悪いが、ヒロムの姿に大きな変化はなかったし、どちらかといえば力を得たような状態だった。


それなのに、ヒロムは「新しい力」と言いながらも「新しい姿」と訂正したのだ。



つまり、何かしらヒロムの思い描く形があったのだろう。



「未完成って言ってたし、もしかしてあそこから……」


「変に話題をつくろうとするな。

オマエらしくない……」


「いや……」


「わかってるんだよ。

オマエの一言でオレがアレの正体を予測し、そして今となっては確信している。

そのことで何か思うことがあるから気を遣ってるんだろ?」


「……ごめん」


謝るなよ、と突然謝罪したガイに向けてヒロムは言うが、ガイは先程とは打って変わったように申し訳なさそうに話し始めた。


「オマエにそう結論させたのはオレが話したからだ。

その結果、オマエにとっては最悪の決断を迫らせてしまった」


「バカ言うな。

オマエのおかげでオレの中の疑問も違和感も解決した」



「けど……」


「それに未完成だから安心はできない。

むしろ、厄介なのはアイツの学習能力だ」


「バッツの……?」


「ああ、オマエの「修羅」もイクトの「影騎死」も昨日一度見ただけであそこまで対処していたんだ。

次に戦う時は完成させなきゃ勝てない」


「たしかに、な……」


ヒロムに言われるとガイは冷静に今回の戦闘について考えた。


ヒロムの攻撃も煙となって避けた初撃以外は最小限の行動で防ぎ、ガイの「修羅」もその力を知っているであろうバッツは避けずに魔力を用いた拳での攻撃で防いだ。


イクトも「影騎死」の自動防御も発動しない一撃を受け、カルラに至っては能力を使ってもダメージを与えれなかった。



が、ガイにはバッツの持つ力の一つについての疑問がある。


「でもバッツに対してダメージを与えても元通りになってた。

それってアイツが無敵なんじゃ……」


「オマエってたまに頭悪いよな」



バカにするような言い方をするヒロムに少しイラッとするガイだが、ヒロムは補足するように説明してそれを抑えた。


「あの鎧は直ったが、中身は見えていない。

つまり、再生能力があってもそれが外内両方に適用されるかは定かじゃない」


「……そういうことか」


「それにあの煙だってそうだ。

アレがアイツの能力では無い可能性もある」


「じゃあ、一体……」




さぁな、とヒロムはため息をつくとそこで話をやめ、そしてそれ以上この件については何も言わなかった。



ガイもヒロムのそれに合わせて話をやめ、そして別の話題に変えた。


「そういえば、今から何があるんだ?」


「ああ?

オマエ、オレがイクトに言った意味をわかっててついてきてたんじゃないのか?」


「いや、普通に断ってただけだろ?

そんなことに意味……て、まさか嘘ついたのか!?」


ご名答、とあくびをしながら答えるヒロムにガイは唖然としてしまうが、それではいけないと思ったため、言葉の真意をたしかめた。


「ユリナたちの守りがあるって……」


「嘘に決まってんだろ?

アイツも素直だから断れば身を引くし、その上でユリナたち絡みだと思わせれば確実に身を引いてくれる。

リア充嫌いのアイツならな」


「……そういうことか。

で、本題は?」


「本題ってほどじゃない。

ただ、イクトは少し口が軽いからな……」


「?」


不思議そうな顔をするガイに対してヒロムはあまり見せない真剣な顔で語り始めた。


「オレのこと……「ソウル・ハック」のこともだが、オレの真相についてここでオマエに語る」


「真相……!!」


「ああ、オマエにだけは知ってもらいたい」




***


とある屋敷。


古びた外観、それを覆うように生える草木。


それによりどこか薄気味悪い雰囲気が漂う。



その屋敷の一室。


「どういうことだ!!」


八神トウマは声を荒らげ、そしてソファーに腰掛けるバッツを睨む。


バッツの方はというと呑気にくつろいでいた。


「落ち着けよ。

戦闘データは取ってきただろ」


「そういう問題じゃない!!

「ハザード・チルドレン」をこうも連続して酷使されたら後がなくなるだろ!!」


「……「兵器」をどう使うかはオレが決める。

オマエはそこから得たデータを頼りにすればいい」


ふざけるな、とトウマはバッツの言葉を一蹴するように言い放ち、そして続けざまに告げる。


「アンタなら自由にさせてもいいと思ったんだぞ?

それなのにあの「無能」とその手下に潰され、挙句牙天やウチの能力者まで被害を受けている……!!」


「弱いから負けた、それだけだろ」


「オマ……」

「いつまで言い争う気だ?」


トウマの言葉を遮るように、バッツの向かいに座る鬼桜葉王がため息混じりに尋ねる。


「客人を前にして騒ぐなよ」


「……アンタもだ。

一条カズキの力を借りるとは言ったが、なぜ角王二人を潰した!!」


「オマエがカズキの計画に支障を与えるようなことをするからだ。

カズキの計画のためにもアイツらは生かす必要がある」


「話が違う!!

オレは……」


「オマエの事情なんて知らねぇよ〜?

オレからすれば、カズキの力を借りなきゃ何も出来ないオマエの語る言葉は響かないんだよ」


ふざけるな、とトウマが言おうとすると葉王は一瞬でトウマの前に移動し、そのままトウマの首を左手で掴む。


「!?」


「甘く見られたもんだなぁ?

オマエがこれからどうなるかはオレのさじ加減だ。

オマエの戦闘力を底上げするよう指示されたのはオレだが、オレからすればオマエなんて見捨ててもいいくらいだ」


「この……」


トウマは何とか抵抗しようとすると、葉王はトウマの首を掴む手に力を入れる。


「がっ……」


「オマエから潰そうか?」


「その辺にしておけ」


葉王がトウマに向けて右手の拳で攻撃しようとしたが、バッツがそれを阻止するように止めた。


予想外だったのか葉王も少し驚いており、同時に興がさめたのかトウマを投げ捨てる。


葉王から解放されたトウマは何度かむせるが、正常に戻ると葉王を睨んだ。


「……ガキが」


「そう言うなよ、葉王。

オマエの行動でそのガキの運命が左右されるが、同時にそれはオマエの一条からの評価にも直結するんじゃあないか?」


「……痛いところを突くなぁ。

だがカズキからは見込みがないなら潰していいとも言われてんだぜ?」


「なら早る必要はない。

オマエの事情はさておき、互いにコイツの成長は価値がある」


バッツの語る言葉はどこかおかしかった。

「八神」に属する戦士としてヒロムたちの前に現れたバッツの言葉はまるで「八神」とは無縁の人間が語るように、それどころか「八神」を利用するかのようにも聞こえてしまう。


葉王はその真意を知っているのか、小さくため息をつくとトウマを一瞬だが睨み、そしてバッツの方を見ると告げる。


「まぁ、データを分けてもらえるならオレからすれば何でもいいんだよ。

カズキの計画は否が応でも完成させなきゃだからなぁ」


「そうか。

だったら話が早い」


ほらよ、とバッツはUSBメモリーを一つ葉王に投げ渡す。


葉王はそれを受け取るとこれが何なのか確認しようとしたが、バッツがただ頷いたのを見て何なのかはすぐに理解した。


と同時に口元を隠すマスク越しでもわかるほどの笑みを葉王は浮かべた。


「まさかこんなに早く求めてたものが手に入るとはなぁ」


「求めてたもの……?」


二人の会話の中に入れぬトウマは葉王が何を言っているのか不思議で仕方なかった。


が、知らないからといって教えを乞うても葉王は教えはしないし、何ならそのトウマの言葉に対して何か言い放つに違いない。


そう思うトウマは何も言えず、ただ聞くに徹するしかなかった。


「それがあれば一条の計画はどうなる?」


「大方完成だろうなぁ。

これでオレらの退屈な日々が終わる……!!」


「はっ、怖いくらいにCrazyなヤツだ。

己の強さから来る虚しさをどうにかするために一条の計画に加担するとはな」


「別にいいだろ〜?

オレからすれば、今のこの日本にオレを楽しませられるヤツはいないんだからなぁ」


「……オレが潰してやろうか?」


「やめてくれや……。

オマエのそれは冗談に聞こえねぇよ」


さて、と葉王は首を鳴らすとトウマの腕を掴み、そのままトウマを連れて去ろうとする。


「な、何を……」


「てめぇに休む時間はねぇ……。

オレが今から叩き潰す」


待て、とトウマは葉王に告げようとするが、葉王は聞く耳を持たずにトウマを連れて部屋を出て行ってしまう。



残されたバッツはため息をつくと、再びソファーに腰掛ける。




「……無知なガキの守りも疲れるぜ。

力故に自分が優れてると勘違いして吠えて、鬼の怒りを買ったんだからな」


それに、とバッツは何かを思い出したのか、急に笑いだした。



「ついにヤツは「ハザード」に対する対策を思いついた!!

あの力、「ソウル・ハック」のすべてを知ることが出来れば「兵器」の完成は目の前!!

なんて最高なんだ!!」



高らかに笑うバッツ、その鎧に包まれた外観も相まってか、ただ奇妙としか言いようがない。


ヤツ、それはおそらくヒロムのことだろう。

「八神」が「無能」と呼ぶヒロムの力、それに関してバッツは喜び、そして何かを目論んでいる。


「……クッハッハッハッ!!

ヤツも大したもんだ!!

その名を覆すように努力しやがって!!」


無駄なんだよ、とバッツは小さく呟くと全身を煙に変えながら続けて独り言を呟く。


「オマエがどう足掻こうがオレの与えた「無能」の名から逃れられないのさ……」


バッツは煙に姿を変え、そしてそのまま煙は音もなく消えてしまう……

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