五一〇話 レプリカ・ブレイズ
「なんで……オレと同じ……」
『我が王……お覚悟を……』
ヒロムとまったく同じ外見となった黒い異質なものは大剣を構えるなりヒロムに斬りかかろうとし、ヒロムは戸惑いながら大剣による攻撃を刀で止めて防ぐ……が、刀で攻撃を防いだヒロムは力で押し負けてしまい、それによって後ろに押し飛ばされてしまう。
「くっ……!!」
(何てパワーだ……!!
この一撃……受けたら即死レベルだぞ!!)
『我が王よ……全力で来ることを勧めます……故……』
押し飛ばされたヒロムが異質なそれの力に驚きながらも受け身を取る中、それは大剣を勢いよく振ると巨大な斬撃をヒロムに向けて放つ。
ヒロムは刀を構え直して防ごうとするが、それよりも先に稲妻を纏ったフレイとステラが斬撃を放って相殺してヒロムを守ってみせた。
「フレイ、ステラ!!」
「マスター、ご無事ですか!?」
「大丈夫ですか!?」
「……問題ない。
それより……」
フレイとステラがヒロムの身を心配して駆け寄る中ヒロムは異常が無いことを伝えると異質なそれ……自分と同じ姿をした白い瞳のそれを見てフレイたちに言った。
「ヤツの力は本物だ。
何が原動力になってるかは分からないが……あれは明らかに人の域を超えた力を持っている」
「ではどうすれば?」
「……全員で仕掛ける。
それが最善策で……」
『無駄な足掻き……とだけ伝えましょう……我が王……。
この我……ゲンムには無駄な足掻きでしかありません……』
「ゲンム……?
それがオマエの名前なのか?」
『名はないが……貴殿らが我のことを「それ」や「あれ」とよぶ……から適当に名乗ったまでだ……』
「そうかよ……呼ばねぇけどな!!」
ヒロムは異質なそれ……ゲンムの名乗りに対して返すと刀を強く握って斬撃を放ち、フレイたちもそれに続くように攻撃を放っていく。
が……
『……極端だな……』
ゲンムは大剣を構え直すような素振りを一瞬見せるが、ヒロムたちの攻撃に対してため息をつくと何故か大剣を投げ捨ててしまう。
「何?」
「何を……」
『我が王……貴殿のその傲り……身の程を持って理解してもらおう……』
大剣を投げ捨てたゲンムはヒロムたちの放った攻撃に向けて自ら突っ込むかのように走り出し、ヒロムたちの放った攻撃に迫る中ゲンムは華麗な動きで次々に攻撃を避けていく。
いや、ただ避けているのではない。
ヒロムたちの放った攻撃がそれぞれ迫る中で攻撃が命中するであろう瞬間の数秒前に攻撃がどう命中するのかを察知して的確に無駄なく回避できるように攻撃の軌道上から避けていた。
「なっ……流動術だと!?」
(今の動き……間違いなく流動術だ。
攻撃を寸前で躱したのではなく、攻撃が迫る中で軌道を読んで躱した。
間違いなく流動術だ……!!)
「ふざけた真似を!!」
ヒロムは全身に稲妻を纏うと地を強く蹴って一気に加速するとともにゲンムとの距離を一瞬で詰めて斬撃を連続で放つが、ゲンムは何食わぬ顔でヒロムの放つ全ての斬撃を躱すと素手で刀を掴み止めてしまう。
「!!」
『真似ではない……。
これは……貴殿の成長……そして、我の成長でもある……』
「ワケわからねぇ事言ってんじゃねぇ!!」
ヒロムは刀に稲妻を纏わせて刀を掴み止めるゲンムの手を斬り落とそうと……したが、ゲンムはヒロムが刀に纏わせた稲妻ごと刀を強く握り、そしてそのまま握り潰してしまう。
「!!」
『我が王よ……その動き……全て見えている……。
貴殿の動きの特徴……癖……感情の変化の要因……我には我が王のあらゆるものが見える……』
「黙れ……」
『黙れ……か……。
貴殿がそれを口にする時……は自分の思い通りにならなかった時が多い……。
今も……思い通りにいかなくて……言ってるのか……?』
「黙れって言ってんだろ!!
偽者が!!」
違う……、とゲンムはヒロムの言葉に返すとヒロムに掌底を叩き込み、それを受けたヒロムが仰け反ると同時にゲンムはヒロムに拳の連撃を放つ。
ゲンムの連撃を受けたヒロムはその衝撃によって飛ばされて倒れ、倒れたヒロムにゲンムはある事を話していく。
『我は貴殿が無意識下で……精神の深層に到達した時より生を授かりし者……。
時が来た時……いずれその時が来た時のために……我は我が王が求める最善のものを与えるべく……ここにいる……』
「……ワケわからねぇ事……ぬかすなよ……ボケが……」
『我は理解の外にある……。
貴殿が今理解出来ないのも……無理はない……』
「うるせぇ……。
黙らねぇなら消すだけだ!!」
ヒロムは左手首の金色のブレスレットから光を発するとそれをステラの武器である赤い刀身の剣とアルマリアの武器である剣に変えて装備し、二本の剣を装備したヒロムは全身に強く稲妻を纏わせる。
『無駄なこと……』
「無駄ではありません!!」
構えるヒロムの姿に呆れたように言葉を発するゲンムだが、そのゲンムの言葉を否定するようにフレイは言うと走り出す。
彼女だけではない。
ステラ、アルマリア、メルヴィーもゲンムを倒そうと走り出し、さらには光とともに精霊・ラミア、ティアーユ、オウカも現れて武器を構えながら走り出した。
「マスターが諦めないかぎり終わりません!!
これまでがそうだったようにこれからもマスターが進むのなら私たちが全力で手助けして道を開く!!」
『天の字名を持ちし精霊よ……。
汝らは勘違い……をしている……』
「勘違い?
何言ってんのよ!!」
「私たちは勘違いなどしていない!!」
ゲンムに真っ先に接近したラミアが刀で斬りかかり、さらにオウカが続けて攻撃を放つ。
が、ゲンムはラミアとオウカの攻撃を素手で止めてしまう。
『それこそが……勘違い……。
我からすれば……汝らは愚か……』
「愚かで結構よ。
私はマスターの力になれるならそれで十分!!」
「マスターは私たちに手を差し伸べてくれる。
その思いに応えるのが私たちの役目!!」
『……違う……』
ゲンムが呟くと強い衝撃がどこからともなく発生し、発生した衝撃がラミアとオウカを吹き飛ばす。
「「きゃあっ!!」」
「ラミア!!
オウカ!!」
「よくも!!」
吹き飛ばされたラミアとオウカの名をヒロムが叫ぶ一方でアルマリアとステラはゲンムに攻撃しようと向かっていき、ライフルを構えたティアーユと杖に魔力を集めるメルヴィーはアルマリアとステラの援護をすべく後方より支援攻撃を放つ。
『束になっても無意味……』
ティアーユとメルヴィーの放った攻撃が先行するかのようにゲンムに迫っていくが、ゲンムはその全てを避けようとせずに両手を叩いて軽い衝撃を生むとともに蹴散らしてしまう。
「そんな!?」
「今何を……!?」
『その程度……それが汝らの今の限界だ……』
「はぁぁぁあ!!」
「やぁぁぁあ!!」
アルマリアとステラはゲンムに接近すると勢いよく斬撃放とうとする……がゲンムは音も立てずに姿を消すと二人の背後へと移動してしまう。
「「!?」」
『これが実力の差……』
ゲンムは地面を強く蹴って衝撃波を発生させ、発生させた衝撃波でステラ、アルマリア、ティアーユ、メルヴィーを吹き飛ばしてしまう。
「「きゃぁぁぁあ!!」」
「オマエ……よくも!!」
「許さない!!」
ヒロムとフレイは同時に接近して攻撃を放つが、ゲンムは天に手をかざすと音も立てずに投げ捨てたはずの大剣を出現させて装備し、大剣を装備すると二人の攻撃を止めてしまう。
『許さない……か……。
許す許さない……というのは人の感情論でしかない……。
力の器たる精霊は……消えても新たな器を得れば……蘇る……それだけだ……』
「ふざけんな……!!
精霊は道具じゃない!!
オレの大切な家族だ!!」
『家族とは思い違いも……いいところだ……。
たかだか力を収めておく器に……無駄な情が芽生えたのか……?』
「違う!!
フレイたちは道具なんかじゃない!!」
『貴殿が何と言おうと……事実は変わらない……。
所詮精霊は……人間の道具だ……』
「黙れ!!」
ヒロムは稲妻を強く纏うとゲンムを倒そうとするが、ゲンムはそれよりも先に大剣を勢いよく振ってヒロムとフレイを吹き飛ばしてしまう。
……が、ヒロムは何とかして受け身を取ると両手の剣を消して新たに大剣を槍を出現させると叫んだ。
「クロス・リンク!!」
ヒロムが叫ぶと大剣と槍は光となってヒロムを包み込み、光に包まれたヒロムは青い装束を身に纏うと白と青の交わったロングコートを羽織り、両手両足にアーマーを付けて大剣を装備して現れるとゲンムに斬撃を強く放つ。
が、ゲンムはその一撃を大剣で止めてしまい、攻撃を止めたゲンムはヒロムの姿を見るなり指摘した。
『我が王よ……それが証拠だ……。
器の使う武器のみで行うその力……それこそが道具であることを認めている証……』
「これはフレイたちと戦うために導き出した新たな技だ!!
オマエの言ってるそれとは違う!!」
『そこに意思はない……。
そして……貴殿は器の力を纏っているだけ……。
そこに家族だとか情だとかは……ないはずだ……』
「うるせぇ!!
オマエは……」
『黙らせたいのなら……努力しろ……』
ヒロムが大剣を構えて動き出そうとするとゲンムはそれよりも早く動いてヒロムに接近し、接近するとゲンムはヒロムを勢いよく蹴り飛ばし、無数の衝撃をヒロムの全身に叩き込んでいく。
「がっ……!!」
蹴り飛ばされ、衝撃を受けたヒロムは倒れてしまい、身に纏った力は消えてしまう。
「クソ……」
『これが現実……。
貴殿は強さを求めて……精霊を道具のように扱おうとした……。
その結果がこの有様……どのような気分だ……?』
「黙れ……!!
オレは……」
『現実を受け入れよ……。
貴殿はこの精神世界の王として……精霊という器の中の力を支配する運命……にある……』
「んなこと……」
「マスターは……そんなことしない……!!」
ゲンムの言葉にヒロムが反論しようとするとシンクに支えられていたはずのテミスがフラつきながらもヒロムのもとへ向かおうと歩きながらゲンムの言葉を否定する。
「マスターは自分が傷つくことを恐れない……。
どんなに自分が傷つこうと……マスターは私たちのことを大切に思ってくださる。
そんなマスターがアナタの言うような非情なことはしない!!」
『天の字名も持たぬ器よ……。
汝の言葉は聞かぬ……』
「たしかに私たちはマスターのために存在している。
けど……マスターがともに戦うことを望まれるのなら……私はその思いに応える!!」
テミスがゲンムに対して強く言うと彼女の全身が紅く光出し、そして彼女の周囲に突然紅い炎が現れる。
「テミス……」
『何故……その炎を……出せる……?
その炎は……オマエの炎では……』
「何故かなんて関係ない。
今の私にあるのは……マスターの力になるという意思だけよ!!」
テミスは全身に紅い炎を纏うと銃剣を出現させて装備し、装備した銃剣は真紅に染まり……炎を纏った彼女は炎の中で……




