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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
501/672

五〇一話 暴炎襲牙



「なっ……」


「マスター!!」


突如として迫り来る炎の玉、それを前にしてヒロムは何が起きてるのか分からず迎え撃つべく構えようとし、フレイもヒロムを助けようと走り出す。


「一体何なんだよ、コイツは!!」


ヒロムは迫り来る炎の玉を止めるべく大剣に稲妻を纏わせると斬撃を放ち、放たれた斬撃は炎の玉を両断して破壊される。


……が、炎の玉が破壊された直後、炎の玉が飛んできた方向から無数の炎の矢が飛んできてヒロムに襲いかかる。


「!!」


「マスター!!」


炎の玉を盾にするように放たれたと思われる炎の矢の存在に直前まで気づけなかったヒロムは防御も回避も間に合わない状態になってしまい、フレイも助けに向かおうとするも彼女の速度では間に合いそうにもなかった。


「「させるか!!」」


炎の矢の接近、ヒロムが窮地に陥る中……颯爽と二人の戦士が駆けつけ、駆けつけた二人の戦士は自身の能力を発揮して炎の矢を全て破壊してみせた。


「オマエら……」


間に合ったか、と二人の戦士……雨月ガイと紅月シオンはヒロムの無事を確認すると安心したような表情を見せるが、何が起きてるのか分からないヒロムは二人に訊ねた。


「一体今のは何だ?

まさかヤツらの対能力者兵器の攻撃なのか?」


「いや、ヤツらが連れてきたイレイザーってのは倒したよ。

けど……」


「ソラが暴走した」


「暴走した!?

何でだよ!?」


シオンの簡単な説明に困惑するヒロム。

そんなヒロムにガイは何があったのかこれまでのことを細かく説明した。


「最初はゼロがあの藍色(?)の鎧のやつを相手にしてオレたちが分担して三機のイレイザーってのを相手にしてたんだけど、三機のうちの一機をソラが何とかして倒したんだ。

一機倒したらソラは残りをオレたちに任せてゼロの加勢に入ったんだけど、ゼロの話ではソラはあの鎧のやつ相手に最初は苦戦してたんだ」


「そこから何で暴走したんだ?」


「……魂を魔人の力の贄にしたんだ。

ゼロの話では「炎魔」の力を高めるためにソラはまだ人間のままである魂の一部を魔人に変化させたことでソラはノアルと同じように魔人の能力者となると同時にソラはシンギュラリティに到達したらしい」


「シンギュラリティに……!?」


「オレとガイがゼロから聞いた話じゃソラがシンギュラリティに到達したって判断したのはキリスってあの鎧のやつらしい。

ソラはそれによって得た力で敵を圧倒して形勢逆転したんだが……どういうわけか味方のゼロに攻撃を始めてそこからはただ暴れるだけの状態だ」


「つまり、あのキリスって敵を相手にしたせいでソラは倒すために自分を犠牲にした結果暴走したってことか?」


「そういう事だ。

今ゼロとノアルがソラを止めようとしてるがなかなか手が付けられないらしい。

そのせいでヒロムの方に攻撃を放ったからな」


「だからオレとシオンで慌てて駆けつけたんだ」


「なるほど……。

肝心のキリスはどこにいる?」


「ソラの暴走に乗じてこっちを攻撃してきたから真助とシンクが対応してるが……あの強さはソラが無理しようとするのが分かるレベルだ。

ヤツの力……あれはこれまでの敵とは桁外れのものだ」


「それに……あの鎧のやつはゼロからソウル・ドライヴの力を発揮コピーしやがった」


「……ソウル・ブレイクとクロス・リンクのつぎはソウル・ドライヴかよ」


ガイとシオン、二人の報告にヒロムはどれだけ大変な状況になっているかを知るとため息が出てしまい、ため息をつくとヒロムはガイにソラについて訊ねた。


「その暴走してるソラはどこにいる?」


「あそこだ」


ガイはヒロムにソラの居場所を教えるためにソラのいる方へ指をさし、ヒロムはガイの指さした方を見た。


視線の先……そこには全身から紅い炎を放出させながらゼロと東雲ノアルを倒そうと攻撃しているソラがいた。


ソラを止めるべくゼロは精霊・アイリスとイシスの熱吸収の行えるクロス・リンクを発動しており、ノアルもソラの止めるべく「魔人」の力で全身を黒い鬼のように変化させていた。


が、ソラの止めるべく本気になっているであろうゼロとノアルは暴走して見境の無くなったソラの炎を前に苦戦している。


「アイツら、苦戦してるのか?」


「ゼロは熱吸収の出来るあのクロス・リンクを選んだがソラの体が発するあの紅い炎がクロス・リンクの熱吸収の許容外の力過ぎて吸収が困難らしい」


「しかもノアルの魔人の力を上回ってるらしくノアルのあの状態の硬い皮膚すら焼かれそうになってる」


「……ソラのあの炎での負傷者は?」


「今のところは問題ないが……一つ問題が残ってる」


「何だ?」


あれだ、とシオンは自身の言う残っている問題について話すために指をさしてヒロムにそれを教える。


シオンの指さした先にはソラが宿す炎の「魔人」であるイグニスがいるが、そのイグニスは何故か苦しそうに蹲っており、イクトとギンジ、カズマがイグニスを取り囲むように構えていた。


「アイツら何を……」


「ソラの暴走の影響なのかイグニスが暴走しかけている。

イグニスのその暴走に関してはイクトの影死神の力で魔力を吸収して一時的に抑え込めたが……ソラの暴走で力が増す状態が続く限りは暴走の再発のリスクは消えない」


「……ソラの魔人化に呼応してるのか?」


「鬼桜葉王の話の通りにヒロムとフレイたちがシンギュラリティで繋がって成長するのなら今のソラはイグニスと魔人の力を通じて繋がっている。

その繋がりがシンギュラリティに到達して暴走したと言うのなら……今手のつけられないソラと同じ状態になったイグニスが暴れたら完全に止められなくなる」


「……」


一切の油断の出来ぬ状況、その中に自分たちが置かれていると知るとヒロムは黙り、そしてどうするかを考え始める。


そして……


「……分かった。

なら、ソラはオレが何とかする」


「わかっ……は!?」


「おい待てヒロム。

今何を……」


「確認したいんだけどキャロやシャロ、それにナッツは無事なのか?

あの三匹はソラの宿す精霊、ユリナたちと避難して離れてるとはいえ影響を受けてる可能性がある」


「そっちは大丈夫だヒロム。

シオンがその可能性を危惧してライバとバッツを向かわせてる」


「けど問題はそこじゃないだろ。

オマエ今ソラの相手をするって……」


言ったさ、とヒロムはシオンの言葉に返すとフレイやラミアたちに指示を出した。


「フレイとラミア、オウカはガイとシオンとヘヴンを倒してくれ。

あの様子ならさっきまでのように万全では無いだろうからな」


「待ってくれヒロム。

オレとシオンもオマエの加勢に……」


「ヘヴンはオレのクロス・リンクを独自の方法で会得しやがった。

今クロス・リンクに対抗できるのは流動術を覚えたガイと「晶眼」の未来視があるシオンだけだ」


「だけど……」


「いいからよく聞け。

正直に言えばオレは今冷静じゃない。

ソラの暴走を早く止めたくて仕方ないくらいだ。

だからこんな無謀な指示を出すが、今のはオマエらは冷静だ。

先読みと未来視、二つの力で冷静に判断出来る二人をソラのあの炎で失うわけにはいかない」


「まさか……今の話の間にそこまで考えてたのか?」


「意外だったかガイ?

これでも……覇王として決めるとこは決めようとしてるやだよ。

だから……ソラのことはオレに任せてくれ」


「……」


「……」


「「分かった」」


「……頼むぞ」


「そういえばヒロム、今発動してるクロス・リンクはフレイとディアナのだよな?

それを発動してるのに何でフレイがここに……?」


「簡単に言うとだなガイ……シンギュラリティの成長だ」


ガイの疑問に対してヒロムは簡単に……いや、適当に返すとソラを止めるべく走っていき、ヒロムの言葉にガイはため息をついてしまう。


「……ったく、オマエはすごいよヒロム」


「感心してる暇はないぞガイ」


ガイの横からシオンが注意するように言い、シオンに言われたガイはシオンとともに敵……ヘヴンがいる方を見て構えようとする。


フレイたちもヒロムの指示に従うようにガイたちの隣に並ぶと武器を構え、ヘヴンはガイたちの姿を見ると彼らに向けて言った。


「相馬ソラの暴走は想定外だったがキリスはそれを利用して計画を進めてるようだな」


「人の仲間の暴走を楽しんでんじゃねぇぞ鎧野郎が」


「オマエは敵、オレたちの邪魔をする敵だ。

オレたちが……ぶっ殺してやる」


「威勢がいいな雨月ガイ、紅月シオン。

果たしてその威勢がいつまで持つのか……見ものだ」


クロス・リンク、とヘヴンが呟くと彼の全身の鎧は細身のフォルムへと変化し、そしてローブを纏ったヘヴンは魔力の大剣を構える。


その姿を初めて目の当たりにするガイとシオンは驚く様子もなく息を吐くと全身に魔力を纏い、そしてフレイたちも魔力を纏う。


「ガイ、シオン。

指示を」


「指示か……ないな」


「必要ないな」


「な、何を……」


指示を求めたフレイに対してガイとシオンは拒むように返し、それによってフレイは困惑してしまうが、そんな彼女に対してガイは霊刀「折神」を抜刀するなりある事だけを告げた。


「やることは一つ……目の前の敵を容赦なく倒せ!!」


「それ以上の指示なんていらねぇよな!!」


「……了解!!」


ガイの言葉に続くようにシオンが言うとフレイたちは今やるべきことを再認し、そしてガイたちはヘヴンを倒すべく走り出した。




***



暴走するソラを止めるべく奮闘するゼロとノアル。

だが暴走するソラの炎は勢いを増すばかりで止まる気配もなく、それどころか激しさを増す炎を前にしてゼロもノアルも苦戦していた。


「この……!!

熱吸収が通用しねぇ!!

どうにかして吸収出来ねぇのかアイリス!!」

『無理ですゼロ!!

あれほどの炎を無理矢理吸収したらアナタの体が熱に耐えられずに燃え尽きてしまいます!!』


「ちっ……人と精霊の境目の曖昧な体でも消えかねないってか。

なら能力と魔力を無効に出来る「天霊」の力を持つセラを軸にしたクロス・リンクで……」


「待てゼロ。

今のソラのあの炎を無効にしてもそれで暴走が止まる保証はない。

それにその影響でソラの身に何が起きるのかも分からないのに……」


「ならこのまま焼け死ぬか?

何が起きるか分からないにしてもこの状況を変えられるならやるしかないだろ」


「魔人の力が暴走してるのならオレの力で何とかして止められるかもしれない。

ソラの動きを止められれば……」


「どうやってだ?

止めたくてもアイツに触れることすら出来ないのにか?」


「それは……」


「オレに任せとけ」


どうすべきかで揉めるゼロとノアルの話に入るようにこちらへ走ってきたヒロムが言うとソラの方へと迷うことなく突き進んでいき、そしてヒロムはソラに接近すると彼を殴り飛ばしてみせた。


「ヒロム!!」


「待たせたなゼロ、ノアル。

コイツのことはオレに任せとけ」

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