四九八話 覇道と騎士道
ソラが味方であるゼロに襲いかかっているその一方……
ガイたちがキリスが連れて来た残り二機となった機械兵器・イレイザーの相手をしている最中、突如現れたヘヴンによって飛ばされたヒロムは自身を飛ばした張本人たるヘヴンと戦っていた。
「ふん!!」
ヒロムの相手をするヘヴンは魔力の剣を構えてヒロムに斬りかかり、ヒロムはそれを躱して反撃の一撃を放つべく拳を強く握って構える。
「はぁっ!!」
ヘヴンに向けて放たれたヒロムの拳の一撃、その一撃をヘヴンは魔力の剣で止めるのではなく避けると左手に力を溜めて衝撃波を放ってヒロムを吹き飛ばそうとする。
「……!!」
「吹き飛べ」
「させるか!!」
ヘヴンが衝撃波を放つその瞬間、ヒロムは稲妻を強く放出して衝撃波にぶつけ、ヘヴンの衝撃波の力を相殺して防いでみせた。
「ほぅ……シンギュラリティに到達したことである程度は能力者らしく振る舞えるようになったのか」
「……オレの戦い方にとやかく言われるのはともかく、オマエが何でシンギュラリティの能力者のことを知ってる?」
「さぁな、何故だろうな。
その理由をオマエが知ることは無い」
「そうでもないさ。
オマエを倒して力づくで聞き出せば関係ない!!」
ヒロムは左手首の金色のブレスレットから光を発させるとともにその光を精霊・フレイの武器である大剣に変化させて装備し、大剣を装備したヒロムは武器を構えるなり走り出してヘヴンに斬りかかろうとする。
……が、ヘヴンは魔力の剣をもう一本生み出すとそれを武器を持っていない手に装備して二刀流となって大剣を止め、大剣を止めたヘヴンは魔力の剣に力を溜めると弾き返し、さらにそこから魔力の剣に光を集めるとヒロムに至近距離からビームを放つ。
「!!」
至近距離から放たれたビームにヒロムは驚き一瞬反応が遅れるが、大剣を盾にするようにして構えるとヘヴンの攻撃を全て防ぎ切り、大剣を盾にして攻撃を防ぐ中でヒロム新たな武器として精霊・テミスの武器である銃剣を出現させると左手に持つと大剣を盾にしながら身を乗り出してヘヴンに向けて次々に炎の弾丸を放っていく。
ヒロムの攻撃、ヘヴンは何の焦りもなく魔力の剣で切り払ってしまい、攻撃を防いだヘヴンは魔力の剣に光を集めるとともに次々に斬撃を放ってヒロムが盾代わりにしている大剣を破壊してしまう。
「ちっ……!!」
大剣が破壊されるとヒロムは稲妻を強く纏ってその場から離れるように走り出し、ヘヴンと一定の距離を保つように移動しながらヒロムは銃剣を構えながら炎の弾丸を放っていくが、ヘヴンは魔力の剣で迫り来る攻撃を全て器用に受け流すとヒロムとの距離を詰めるべく動き出す。
ヘヴンが動き出す中でヒロムは銃剣を構えながら走っており、作戦を変えないのかヒロムは炎の弾丸を放ち続けていた。
いや、作戦を変えないのではない。
次なる作戦に変えるべくヒロムは思考を働かせているのだ。
「……動き出したな」
(これまでとは違ってオレを相手にするために何か用意してきたのか終始攻撃のリズムが崩れないな。
デバイスシステムからのアップグレードを使う可能性を考えると……ヤツがさらなる動きを見せない限りはこっちも派手には動けないな)
「……となればこっちも仕掛けるしかないな」
ヒロムは思考を働かせながら銃剣で攻撃を放ち続け、放ち続ける中で指を鳴らすと金色のブレスレットから光が勢いよく放たれる。
放たれた光はヒロムから離れてヘヴンの方へと向かう中で形を変えていき、形を変えた光は精霊・フレイとラミアに変化していく。
「ヤツへの攻撃を頼む。
何か隠してる可能性があるからそれを強引にでも使わせろ」
「「了解です!!」」
ヒロムの指示を受けるとフレイは大剣、ラミアは刀とそれぞれの武器を構えると勢いよく走り出し、ヘヴンに接近すると二人は勢いよく斬撃を放つ。
が、ヘヴンは二本の魔力の剣で二人の攻撃を受け止めると弾き、弾くと同時に力を溜めるとフレイとラミアに向けて魔力をビームにして放つ。
「見事な一撃、だが無意味だ。
今のオレには届かない」
フレイとラミアの攻撃を賞賛しつつもその一撃は自身に及ばないと告げるヘヴンの放ったビームはフレイとラミアに迫っていく……が、二人にビームが迫る中、ヒロムは金色のブレスレットからさらに光を飛ばすとその光を精霊・オウカへと変化させ、現れたオウカは両手に刀を構えると一閃を放ってビームを消し去ってしまう。
「ご無事ですか、二人とも」
「オウカ、助かりました」
「気を取り直して反撃……」
「そうはさせぬ」
オウカに助けられてフレイが礼を言う中でラミアは反撃を始めようとするが、ヘヴンは彼女たちの行動を邪魔するように次々に魔力の弾丸を放っていき、フレイたちは武器で防御して防いでいく。
そんな中、銃剣を構えたヒロムは稲妻を武器に纏わせながらヘヴンに接近し、接近するとヒロムは勢いよく斬撃を放ってヘヴンの攻撃を中断させるとともに彼の持つ二本の魔力の剣のうちの一本を破戒する。
「!!」
「隙だらけだぞ」
魔力の剣を一本破壊したヒロムは続けて攻撃を放つが、ヘヴンは残る一本の魔力の剣に力を集約するとヒロムの一撃を止めてしまう。
二人の武器の刃が交わり、接近したこの状態でヒロムヘヴンを睨んでいた。
「せっかくのバカンスを台無しにしやがって……。
この落とし前は高くつくぞ」
「我々には関係の無いこと。
そして姫神ヒロム、オマエにはバカンスなどよりも我々と同じ世界の方が合っている」
「オマエらと同じ世界だと?」
「シンギュラリティに到達したオマエは戦うことでより強さを増していく。
未だ加速して成長するシンギュラリティの力はやがて覚醒に達する、オマエはその事を理解してるからこそ戦いを望んでいる!!」
「望もうと望まなくともオマエらが襲ってくるなら戦うしかねぇから戦ってんだろうが!!」
どうかな、とヘヴンは力を溜めて剣を振り切るとヒロムの銃剣を押し返し、ヒロムに向けて蹴りを放つ。
放たれた蹴りに対してヒロムは落ち着いた様子で回避すると銃剣を構えて弾丸を放つが、ヘヴンは魔力の剣を用いて切り払って防ぐとヒロムに告げた。
「オマエは我々と同じ戦士だ。
戦うことでしか存在意義を示せない、故に武器と力を手に取って戦おうとする!!」
「オマエらがオレたちの邪魔を……アイツらの日常を壊してるからだろうが!!」
ヘヴンの言葉を否定しようとヒロムは銃剣に稲妻を纏わせて攻撃を放とうとするが、ヘヴンはそれよりも早くヒロムに接近すると銃剣を破壊してヒロムに魔力の剣の切っ先を向ける。
「!!」
「壊されぬように我々から守るのか?
まるで我々がオマエたちの全てを壊そうとしてると言いたげだな」
「事実だろうが!!
ライブハウスの時も屋敷に攻めてきた時も……そして今回も!!
オマエらが現れなきゃ何も起きなかった!!」
「それは違うな。
そこまで言うなら問わせてもらおう……昨日オマエたちは屋敷を離れて二手に分かれて行動していたが我々は屋敷を攻めたか?」
「何?」
「我々はオマエたちを倒すべくオマエの前に現れたはずだ。
そこにオマエの守ろうとする女は一人でもいたか?」
「何が言いたい……!!」
「分からないなら教えてやろう、姫神ヒロム!!
我々や他の敵がオマエたちの前に現れるのはオマエがそこにいるからだ!!
我々がオマエたちの日常を壊してるのではない!!
オマエという存在がそこにあるから敵が現れ、オマエの存在が日常の中にあるから壊される!!
ただそれだけのこと、それを理解出来ぬとは片腹痛い!!」
「そうかよ……。
そこまでしてオレを倒し戦うための理由がほしいのかよ……!!
なら望み通り戦って終わらせてやるよ!!」
ヒロムはブレスレットからさらに光を発させるとそれを精霊・ソーナに変え、ソーナの出現とともにオウカは彼女とともにヒロムの隣に並び立つと烈風を巻き起こし、烈風を巻き起こした彼女たちは嵐となってヒロムを包み込む。
「クロス・リンク、「天鬼」オウカ!!「狂弓」ソーナ!!」
ヒロムの叫びに呼応するように嵐はさらに激しくなっていき、嵐が吹き荒れる中ヒロムは魔力を身に纏う。
「咲き乱れるは桜花、乱れ狂うは凶刃!!」
ヒロムがさらに叫ぶと魔力と嵐が一つとなって眩い輝きを放ち、放たれた輝きがヒロムを包み込むとヒロムは装いを変えていく。
二本の刀が地面に突き刺さると同時にヒロムは和装に近い戦闘装束に身を包み、ローブをマントのように翻しながら纏うと右肩に鬼の面をあしらったような装飾を装着、さらに篭手にも似たガントレットと鋭い刃のついたブーツを装備し、背中に薙刀を携行すると二本の刀を両手に装備して自身を包む輝きを切り裂きながら現れる。
「クロス・リンク完了……狂天鬼刃!!」
「……新たな精霊とその精霊によるクロス・リンクか。
いいだろう、受けて立とう!!」
刀を二本装備したヒロムに対抗するかのようにヘヴンは新たに魔力の剣を出現させると再び二刀流となり、そしてヘヴンは全身に魔力を纏うと大地を強く蹴ってヒロムに接近する。
接近するなりヘヴンは魔力の剣を振り上げて斬撃を放とうとするが、ヒロムは右手に持つ刀でヘヴンの攻撃を止め、攻撃を止めたヒロムは左手の刀に黒い稲妻を纏わせながら斬撃を放とうとした。
しかし……
ヘヴンは両手の魔力の剣を手放すなり突然高く飛び、標的となるヘヴンが高く飛んでしまったことによりヒロムの放つ斬撃は空を斬って終わってしまう。
「!?」
「攻撃の瞬間が目に見えてわかる!!
そんな分かりやすい攻撃では倒せぬぞ!!」
高く飛んだヘヴンは降下する中で魔力の大剣を生み出すとそれを装備してヒロムに襲いかかり、ヒロムは刀を二本交差させるようにして大剣を防ぎ止めると受け流すようにヘヴンを押し飛ばす。
が、押し飛ばされたヘヴンは難なく体勢を立て直すと魔力の大剣を構えてヒロムの方へと走り出そうとした。
しかし……
「はぁっ!!」
「やぁっ!!」
ヘヴンがヒロムに向けて走り出そうとした瞬間、武器を構えたフレイとラミアが接近してきて攻撃を放ち、二人の存在に気づけなかったヘヴンはその攻撃を受けると仰け反ってしまう。
「!!」
「「はっ!!」」
仰け反って無防備になったヘヴンに追撃を加えるべくフレイとラミアは同時に斬撃を放ち、斬撃を直撃で受けるしかないヘヴンはそれを受けると軽く吹き飛んでしまうが、ヘヴンは魔力の大剣を地面に突き刺して衝撃を緩和させると体勢をすぐに立て直した。
体勢を立て直したヘヴンは大剣を地面から抜き、そして自分に攻撃したフレイとラミアを見るなり呟く。
「……油断出来ないな。
姫神ヒロム本体の力が増してるように精霊も力がさらに強くなっているな」
「私とラミアの攻撃を耐えた……!?」
「デバイスシステムかもしれないわ。
コイツらは……」
違うな、とヘヴンは魔力の大剣を突然宙に浮かすと魔力の槍を出現させて大剣と同じように浮かせ、二つの魔力の武器を怪しく光らせる。
「何をする気だ……!?」
ヘヴンが何かをする、それをすぐに理解したヒロムは刀を構えるなりヘヴンに向けて走り出そうとしたが、ヘヴンはそれよりも先にヒロムやフレイたちが耳を疑うような言葉を口にする。
「……クロス・リンク!!」
「何!?」
「「何ですって!?」」




