四九六話 劫火の魔弾
「殺した方が手っ取り早い」
ソラは右手に持つ紅い拳銃「ヒート・マグナム」を構えると同時に狙いを定めて次々に炎の弾丸をキリスに向けて放ち、弾丸を放ちながらソラは走り出すと敵を殺そうと迫っていく。
「待てソラ!!」
「待ってられるか。
ヤツは敵、それだけで十分な理由になる」
「ちっ……」
(バカかよアイツ!!
キリスはシンギュラリティについて知っている。
そしてヤツは「一条」に協力者がいることも明かしやがった。
その協力者が誰なのかだけでも聞き出したかったのに……!!)
「……仕方ねぇ。
アイツを倒して聞くしかねぇな!!」
キリスが何故シンギュラリティについて知ってるのかについて知りたかったゼロはひとまずキリスを倒すことに切り替えるとソラの後を追うように走り出す。
走り出したソラとゼロ、キリスはソラの放った炎の弾丸をサーベルで防ぎながらそれを確認するとため息をつく。
「まったく……野蛮な猿が加わった途端に冷静に動ける戦士まで猿と同等にまで知能レベルが下がったか?
所詮は能力者……猿と同等に進化の道を歩んできた蛮族か!!」
キリスは青い輝きを放つと同時に音も立てずに消え、キリスが消えるとソラは立ち止まり四方八方に炎の弾丸を撃ち放つ。
姿を消したキリス、だが四方八方に撃ち続ければいずれは命中する可能性はあるとソラは考えたのだろう。
しかし……
「その程度で命中するとでも?」
ソラが炎の弾丸を放つ中、キリスはソラの死角に姿を現すと同時にサーベルで突きを放ち、放たれた攻撃はソラの体を貫いてしまう。
「……!!」
「ソラ!!」
「他愛もない」
貫かれたソラの動きは止まり、ゼロが彼の名を叫ぶ中キリスはソラに冷たく言葉を吐き捨てるように言うとサーベルを抜こうとした……のだが、キリスがサーベルを抜こうとしたその瞬間にソラの全身は炎へと変化して消えてしまう。
「!?」
「他愛もない……か」
炎へと変化して消えたソラにキリスが驚いていると彼の頭上にソラが現れ、現れたソラは引き金を引くとビーム状の炎を撃ち放ってキリスを襲う。
炎が迫る中キリスはサーベルに青い輝きを纏わせるとともに斬撃を放って炎を防ぎ止めるが、ソラは左手に紅い拳銃「ヒート・マグナム」を持ち替えると同時に銃声を二度響かせると得意の速射で十二発の炎の弾丸を放ち、放たれた弾丸は先に放った炎を止めるキリスの体に全弾命中する。
「!!」
「その装甲……左の速射じゃ傷すら付けられないようだな。
けど、時間は稼げた」
「時間稼ぎだと!?」
「はぁぁぁぁあ!!」
ソラの言う時間稼ぎということにキリスが耳を疑っているとゼロは刀に魔力を纏わせながら接近してキリスに斬撃を放ち、魔力を纏った斬撃を受けたキリスはそれを防ぐことも出来ずに身に受けると仰け反り、そして防ぎ止めていた炎はキリスが仰け反ったことによって再び動き出してキリスを焼こうとする。
「ぐぁぁあ!!」
「ゼロからコピーして得たその速度とやらも結局はその場しのぎの技だったってことだな。
このまま焼かれて……」
「……なんてな」
ソラが話す中、炎の中からキリスが一言発し、言葉を発すると同時に炎が切り刻まれて消されてしまう。
炎が消えると中から一切のダメージを受けていない無傷のキリスがサーベルに青い輝きを纏わせながら現れ、姿を見せたキリスは勢いよくサーベルを振るとゼロとソラに向けて斬撃を放って二人を吹き飛ばす。
「ぐっ!!」
「がっ!!」
「相馬ソラ、オマエがバローネとヒューリーの耐炎モードを攻略していなければオレはオマエの対策など用意しなかったんだ。
オマエが耐炎モードを超えたからオレはそれを超える力を用意するしかなくなったんだぞ?」
「まさか……耐炎モードの上をいく力が開発されてたのか!?」
「開発?
少し違うな……能力者の戦いは力の強い方が勝るのだろ?
ならばオレは実力でオマエを上回ってオマエの悉くを覆す道を選んだ!!」
「なっ……!?」
(コイツ、今までのヤツとは違う!!
今までのバローネやヒューリー、ヒロムたちから話を聞いてるヘヴンやスローネはデバイスシステムとアップグレードを軸に戦ってたのにコイツは……純粋な力を放つ上で鎧だけを纏ってるってのか!!)
「……イグニス!!」
キリスの言葉に驚きを隠せないソラは慌てて次なる策を用意するかのようにイグニスの名を叫び、ソラが叫ぶと紅い炎が現れて炎の中より紅い鬼のような見た目の炎の魔人・イグニスが姿を現してキリスに襲いかかる。
「オラァ!!」
両手の鋭く尖った爪でイグニスはキリスを切り裂こうとするが、キリスはサーベルでその攻撃を弾くとどこからか拳銃を出すと装備して魔力の弾丸を至近距離で放つ。
放たれた魔力の弾丸はイグニスに迫ると爆発して彼を吹き飛ばすが、イグニスは地面を強く蹴ることで吹き飛ばされる勢いを全て殺してそれを防ぎ、そして両手に紅い炎を纏わせるとキリスに向けて撃ち放つ。
「爆ぜろ!!」
「……無駄なことを」
イグニスが放った紅い炎を前にしてもキリスは動じることなく拳銃を構えると青い輝きを拳銃の中へと吸収させ、輝きを吸収した拳銃の引き金が引かれるととともにビーム状の青い輝きが放たれて紅い炎を消し去ってイグニスやソラたちを襲っていく。
「ぐぁぁあ!!」
放たれたキリスの攻撃を前にして防ぐことも出来ずに直撃を受けたイグニスは負傷しながら倒れ、攻撃の余波に襲われたゼロとソラは吹き飛ばされてしまい、飛ばされた先で倒れてしまう。
「野郎……!!」
「この程度か魔人。
オマエの力がこの程度なら話にならないな」
「ナメたこと言いやがって……!!
ソラ、アレやるぞ!!」
「分かってる!!」
イグニスは立ち上がりながらソラに向けて指示を出し、それを受けたソラは立ち上がるなりイグニスに向けて勢いよく紅い炎を放つ。
「……ヒート・オーバー。
互いに炎を高めながら供給し合い、その上で限界を超えるほどに力を一時的に底上げする技。
その技はバローネとヒューリーが受けているからデータにある」
音も立てずにキリスはソラとイグニスの間へと一瞬で移動するとソラの放った紅い炎を斬り裂いて消してしまい、そしてイグニスに向けて強力な一撃を放って彼に致命傷を負わせようとする。
「ぐぁっ!!」
攻撃を受けたイグニスの体は大きく抉られ、そしてそのダメージによってイグニスは膝をついてしまう。
膝をついたイグニスを見下すかのようにキリスは仮面越しに睨むと背を向け、背を向けたままイグニスに告げた。
「魔人特有の再生能力があるとしてもそれほどのダメージを受ければしばらくは動けまい。
大人しく主が殺される様を見ておけ」
「オマエ……!!」
「テメェ!!」
ダメージを受け、痛みに襲われるイグニスはその痛みに耐えるように拳を握りながらキリスを睨み、イグニスを攻撃したキリスを倒すべくソラは全身に紅い炎を纏うと敵に攻撃しようとするが、キリスは青い輝きを纏いながら加速して姿を消すと連続で斬撃を放ってソラに食らわせ、斬撃を受けたソラは負傷して倒れてしまう。
「がっ……」
「ソラ!!」
「ぐっ……この……!!」
倒れてしまったソラはイグニスが叫ぶ中ソラは何とかして立ち上がろうとするが、キリスはそんなソラに向けて冷たく告げる。
「もう立ち上がるな。
オマエではオレには勝てない」
「……黙れよ……。
オマエらはオレが……」
「もう無駄だ。
オマエがどれだけ機転を利かせてもオレには通用しない。
オマエの思考などオレはとうに超えている」
「そう……かよ……!!」
「諦めろ。
オマエの命はここで終わりだ」
立ち上がろうとするソラに歩み寄るとキリスはサーベルに青い輝きを纏わせ、そしてソラの命を狩り取るかのようにキリスは勢いよく突きを放つ。
「ソラ!!」
彼を助けようと走り出すゼロ、だがキリスのサーベルは今にもソラを貫こうと迫っていく。
刻一刻……ゼロが走ったところで間に合いそうもない。
誰が見てもそう思える状況、その中で異変は起きた。
ソラを貫こうとするキリスのサーベルは突然何も無いはずの場所で止められ、そして何かが弾ける音がするとサーベルの刀身は砕け散ってしまう。
「!?」
突然のことに驚くキリスは慌てて後ろに飛んでソラから離れると何が起きたのか探ろうとするが、それよりも先にソラは全身から勢いよく紅い炎を放出しながら立ち上がり、そして立ち上がったソラは瞳を赤く光らせながらキリスを睨んだ。
「……オマエ如きに終わらされてたまるか。
オレにはやるべき事、やるべき使命があるんだよ……!!」
「バカな……今オマエは何をした……!!」
「……オマエがオレを上回ってるって言うからオレはその上を行こうとしただけだ」
「今のオマエにはシンギュラリティに到達出来るほどの力量は無いはずだ!!
今以上の強さに至るのはこの土壇場では不可能なはずだ!!」
「分かってねぇな、オマエ……。
オレはもう普通の能力者じゃねぇ……オレはイグニスとの契約で魂の一部を魔人へと変化させている。
その変化をより大きくさせてオレは魔人へと近づいた!!」
「ありえない!!
そんなことをすればオマエの体は……」
関係ない、とソラはさらに紅い炎を放出するとキリスを強く睨み、そしてさらに勢いよく紅い炎を放出するとキリスに向けて言った。
「オレは全てを破壊してでもヒロムを守ると決めた。
あの日からオレのこの魂も体もアイツの力になれるのならばその全てを捧げる覚悟は出来てんだよ!!」
ソラの意志に呼応するように彼の赤く光る瞳がさらに強く光り、放出された紅い炎は激しく燃え盛りながら周囲の大地を焼き払おうとしていく。
いや、それだけではない。
炎はソラの頭上に集まると一瞬だが龍や鬼、悪魔を思わせるような姿に変化しながら殺気のようなものをキリスに向けていた。
「ま、まさか……純粋種の東雲ノアルと同じように人をやめて忌まわしき魔人へと進化したのか!?」
「忌まわしいかどうかはオマエにもオレにも関係ない……!!
今この力は……ヒロムの敵を倒すために燃やす!!」
ソラは地面を強く蹴ってキリスに接近しようとし、紅い炎が燃え上がるとともにソラは一瞬でキリスに接近して連続で攻撃を食らわせ、さらに両脚に紅い炎を纏わせるとキリスを蹴り飛ばしてみせる。
「ぐぉぉぉお!!」
蹴り飛ばされたキリスは炎に襲われながら地面に叩きつけられ、急いで立ち上がると自身の体を焼こうとする炎を払って新たなサーベルを出現させて装備しようとした……が、ソラが指を鳴らすとキリスが装備しようとしたサーベルが前触れもなく爆発して破壊されてしまう。
「なっ……なんだこの急激な変化は!?」
「悪いな……オマエはここで殺す!!」
「まさか……自力でシンギュラリティに到達したのか!?」
 




