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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
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四九二話 リゾート・コール


バーベキューが一段落ついてからしばらくして、それぞれがバカンスを楽しむ流れになる中……



「足りないな」


シオンは突然何かに不満を持っているらしくそれを口にした。


「こんなんじゃ足りない。

もっと……もっと必要だ」


「何ブツブツ言ってんだ?」


シオンが一人で何か呟いているとカズマが不思議そうに寄ってくる。


「食い足りねぇのか?

ならアイツらに言って何か用意してもらえば……」


「違ぇよ」


「なら何なんだ?

足りねぇって言ってたからてっきり……」


「足りねぇよ……全然。

ここに着いてから命の危機とか緊張感が全然ねぇ。

こんなんじゃオレたちは腕が鈍るだけだ」


「……ならオレと手合わせするか?

こう見えてさっきまでゼロとシンクに付き合って鍛錬してたからそれなりに……」


「オマエじゃ役不足だ」


「あぁ!?

言っとくけどな、オレはアストのところでどんだけ……」


「オマエの動きじゃ「晶眼」を進化させられない。

未来視を超える動きが出来る相手じゃなきゃこの力を強くさせれない」


「……それって無理じゃね?

流動術を会得したガイか流動術とそれを超えた未来視を持つヒロムしか相手にならねぇじゃねぇか」


「……」


「無視かよ。

けど、未来視に頼りっぱなしの戦い方もどうかと思うけどな。

オレたちは戦闘種族「月閃一族」の末裔、その血筋の能力者として……」


「……分かってるだろカズマ。

その戦闘種族の末裔は全員ヒロムに負けて今も勝てない現状にあるってことを」


カズマの言葉を途中で止めるかのようにシオンは今自分たちの置かれている状況を言葉にし、シオンの言葉を受けたカズマはそれによって黙ってしまう。


黙るカズマ、そのカズマにシオンは更なることを伝えた。


「オレたちはヒロムと出会い戦うまではそれぞれが持つ強さである程度は敵を圧倒して倒してきた。

オレは強さを求めて裏社会の賞金首を潰し、真助は強者と噂される者を根絶やしにすべく動き、オマエは大事な仲間のために強くなり更なる力を得て戦士として成長した。

なのに……オレたちはヒロムと戦って負けた。

それで終わらずにオレたちはヒロムに負けてから大した活躍はしてない。

「竜鬼会」の一件も敵のリーダーたるゼアルの力の前に圧倒され、結局ヤツを倒したのはヒロムだった。

それだけじゃない……「竜鬼会」の竜装術の使い手のほとんどをアイツが倒したと言っても過言ではない」


「たしかに……な。

オレはギンジと二人で一人の能力者を追い詰めただけで後から来た能力者に圧倒されて終わった。

街で暴れるゼアルを止めようとしてオレたちが頑張って戦った結果……オレたちは完膚なきまでに叩きのめされた」


「結局あの戦いで未来視は役に立たなかった。

それに……クロムの件もだ。

カズマとギンジは知らないだろうけど、クロムはヒロムを瀕死まで追い詰めて負傷させた。

オレたちはそのヒロムの仇を取るべくクロムを倒そうと全員で挑んだが……結局はバッツの一か八かの賭けによって目を覚ましたヒロムがゼロを引き連れて現れたことでクロムとの形成が逆転、そしてヒロムはその時シンギュラリティの能力者に覚醒して勝利している」


「そんなに強かったのか?」


「……オマエも経験してるはずだ。ヒロムの複数体の精霊の力をな。

普段はヒロムの指示、意思に従ってるから殺しに来るような一撃は無いに等しいがクロムが支配した時は違った。

百パーセントの殺意によって動く殺戮人形と化した精霊たちは足止めするだけでも手一杯だった」


「それほどの力だから「一条」はヒロムを狙い、「八神」はヒロムを消したいのか……」


「……ヒロムは狙われるだけの理由とそれ相応の力と潜在能力を秘めている。

この先オレたちが変わらなきゃこのクソみたいな展開は続く。

「天獄」って組織はヒロム一人の力で問題を解決するだけの集団、その汚名を着せられる日も遠くない」


「シオン……」


「……カズマが言いたいことは分かる。

オレたちは戦闘種族たる「月閃一族」の血を継ぐ末裔だ。

こんな弱気な事を言う前に強くなって力で証明すればいいだけのことだがその力でこれだけの差が日々出来ている。

埋めようと必死になってもアイツはこっちの努力など覆すくらいに簡単に強くなっていく」


胸の内の思いを口にするシオンは気づけば拳を強く握っていた。


ここまでの思いを口にしたシオン、言葉にして出してもその思いは消えないようだ。


そんな時……


シオンのもとへ彼の宿す精霊である兎の精霊・「雷兎」のライバがやってくると呆れながら主たるシオンに言った。


「兎角、らしくない言葉を吐くマスターにはガッカリだぜ。

オレのマスターなら堂々と胸張ってる方がクールだぜ」


「ライバか……。

オマエには分からないさ、この悔しさはな」


「兎角、分かりたくもねぇけどな」


「何?」


「兎角、オレのマスターは強さの高みを目指して強くなり続ける戦士だ。

悔しさを感じる前に立ち上がり進み続けるのがオレのマスターであり新たな一族を束ねる存在だ」


「ライバ、オマエ何を……」


「あの精霊の王様が強いのは精霊の力を借りてきて積み上げたもの、それに対してマスターはオレが宿す前までは一人で積み上げてきた。

兎角、これまで一人でやってきたやり方で止まってるならオレのことも頼ればクールにいくかもだぜ?」


「……ライバの言う通りだ、シオン。

ヒロムは強い、けどそれは精霊たちと力を合わせるというアイツのやり方で到達した強さだ。

シオンにはアイツとは違う強さに到達することの出来る道があるってことだ」


「ヒロムとは違う強さに、か……」


ライバとカズマの言葉を受けたシオン、二人の言葉を受けたことで彼は何か感じたのか大きく息を吐くとライバに向けて言った。


「オマエの言う通りだライバ。

ここから先のことを考えればオレとオマエが力を合わせるのが得策かもしれないな」


「兎角、クールに決めたいだろ?」


「クールかどうかは別として、オレはオマエと高みを目指したくなったってだけだ。

ついてくるよな?」


もちろん、とライバは頷き、シオンは続けてカズマにあることを頼んだ。


「この流れで少し強引に頼むけど……少しツラ貸せ」


「だいぶ強引だな……。

まぁいいけど。オレもちょうど暴れたいところだったし……付き合ってやるよ」


カズマが承諾するとシオンは彼とライバとともに島のどこかに向けて歩いていく……



***


その頃……


ヒロムたちがいる島から遠く離れた場所の上空を何やら飛行船のようなものが飛んでいた。


そしてその飛行船の中にはヒロムがネクロのもとを訪れてスローネたちを迎え撃った際に姿を見せた藍色の鎧を纏った騎士・キリスがいた。


「……」


「キリス、目標地点まで約三十キロの位置まで到達した」


飛行船の窓から外を眺めるキリス。

そのキリスに現状を報告するかのようにヘヴンがやって来るなり彼に伝え、キリスはヘヴンの報告を聞くと彼に言った。


「例のアレの起動が済んだら即行動に移せ。

今回の件はアレの性能テストでもあるからな」


「すでに起動シークエンスは完了、現在は目的地に向かうように先に発艦させている。

残りの認証作業は目的地に向かう過程で完了するようにセットしておいた」


「そうか。

ならば問題ない」


「……今回はオマエも出るのか?」


「当然だ。

オマエらが不甲斐ないせいでグランに迷惑がかかってるからな。

失態による遅れはこの手で取り戻す」


キリスはヘヴンに冷たく言うと彼に背を向けて歩いていこうとするが、ヘヴンはそんなキリスに確認を取るように訊ねた。


「オレもオマエと同じタイミングで出て敵を牽制しなくてもいいのか?」


「オマエが加勢しなくともオレは役割を果たす。

それに……オマエの役割は敵を牽制することじゃない。

グランがオマエ用にチューンナップした例のモノを姫神ヒロムに使用してデータを集めることだ」


「そちらに専念していいのか?」


「それがオマエの今回の役割だ。

オレがヤツらを攻撃している間にオマエはデータを集めろ。

グランのため……全ては我々の計画の達成のためだ」


「……了解だ。

こちらの事は任せてもらおうか」



何かを暗躍する二人、その二人はどこかに向けて歩いていく……。



***


島のビーチ



バーベキューの片付けが終わったユリナたちは海で遊んでおり、ヒロムは飛天たちの子守りを砂浜でしていた。


そしてノアルとギンジはヒロムの近くにパラソルを立ててゆっくりと休んでいた。


「お嬢さんらは元気だな……」


「彼女たちはこの日を楽しみにしていた。

だからこそ今を楽しもうとしているんだよ」


海で遊ぶユリナたちの姿を見ながら呟くギンジにノアルは説明するが、そんなことは分かってるギンジはため息をつくとヒロムにも聞こえるようにノアルに言った。


「あんだけ戦いに明け暮れてたからかこういう日常は無縁な気がして仕方ねぇんだよな、オレ的にはさ」


「彼女たちからすれば戦いに明け暮れてるオレたちは異常に思えるかもしれない。

それと同じことで彼女たちにとって今のこの時間が当たり前なんだよ」


「……ノアルはあのお嬢さんらに優しいね〜。

んで、ヒロムは何とも思わないのか?」


話が聞こえてるはずのヒロムが反応しないからかギンジはノアルの話を聞いた後にヒロムの意見を聞こうと話を振るが、ヒロムは飛天たちと遊んでるからなのか反応しない。


「おーい、ヒロム。

聞こえてるか〜?」


反応しないヒロムに対してギンジはもう一度話しかけ、二度目の呼びかけにようやくヒロムは反応した。


「……オレからは何も言えねぇよ。

ユリナたちが楽しんでるならオレはそれで満足だからな」


「うわぁ……二人とも優しいな」


ヒロムの言葉がノアルと似たようなユリナたちに対して優しい言葉だったことにギンジは驚く。


驚くギンジ……そのギンジはふと遠くを見るなり二人な訊ねた。


「なぁ……アレって何だ?」


「ん?」


「何がだ?」


ギンジに訊ねられたヒロムとノアルは彼が見るものを見ようと視線を向ける。


視線の先……空には何やら光る物が飛んでおり、ヒロムとノアルは目を凝らしてよく見ようとした。


「あれって……」


「……まさか!!」


何かを感じたノアルはヒロムを守ろうと立ち上がり、ヒロムも飛天たちを守ろうとしながらユリナたちに向けて叫んだ。


「ユリナ!!

そこからはやく離れろ!!」


ヒロムが叫ぶとその声が聞こえたのか海で遊ぶユリナたちはヒロムの方を見るが、何が起きてるのか分からない彼女たちはそこから動こうとしない。


「はやく逃げろ!!

そこから離れろ!!」


ギンジの見つけた光る物体は徐々に迫っている。

ヒロムは必死に叫んでユリナたちを避難させようとするも彼女たちは事態を把握出来ていない。


「ヒロム!!

このままじゃ……」


「ノアル、飛天たちを頼む!!」


ヒロムはノアルに面倒を見ていた飛天たちを託すように言うと走り出し、稲妻を全身に纏いながら加速していく。


「こうなったら……やるしかない!!」

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