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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
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四八八話 ミーティング・フリード


三十分後……


「七瀬」の所有する島へのリゾートの目的の一つであるバーベキューが始まっていた。


ヒロムは砂の城作りを終えた飛天や子猫のシャロとキャロ、リスのナッツとともにバーベキューの会場に来ており、特訓中だったゼロとシンク、カズマも集まっていた。


七瀬アリサとクルージングの船室で話をしていた相馬ソラ、雨月ガイ、黒川イクトも話が終わったのかこちらに来ていた。


バーベキューは皆が想像した以上に盛り上がっていた。


「てめぇ、イクト!!

また肉取りやがったな!!」


「取られる方が悪いんだよギンジ。

早い者勝ちって言うだろ?」


「なら取ったもん勝ちだな」


ノアルが焼いていく肉を取り合うギンジとイクトのみにくい争いに割り込むようにカズマはイクトが肉を乗せている紙皿の上から数枚肉を奪うと一気に頬張る。


「あっ!?

カズマ、オマエふざけるな!!」


「それは元々オレのだ!!」


「ガキじゃねぇんだから騒ぐなよ」


「「はぁ!?」」


うるさいわよ、と夕弦は追加の肉を持ってくるなり三人に注意し、肉を近くのテーブルに置くとイクトにあることを頼んだ。


「イクト、ある程度食べたらユリナたちを手伝って。

あの子たち頑張って焼いてくれてるけど食べてないみたいだから」


「ん?

わかった」


「よっしゃ、イクトが向こう行けば肉は……」


「ギンジはノアルと交代しなさい。

あとカズマも少しは手伝って」


「……肉食いたい」


「食い足りねぇ」


「わがまま言ってないで働きなさい。

心配しなくてもまだお肉はあるから」


「「……はーい」」


ユリナに言われるとギンジとカズマは面倒くさそうに返事をして肉を焼くノアルと交代しようとする。


そんな中……


「夕弦、肉欲しいんだけど!!」


慌ててやって来たレナは夕弦に肉を寄越せと言うが、その彼女の両手には紙皿、その紙皿の上には肉が山のように乗っていた。


「……レナ、みっともないからやめて」


「わかった、これ食べてからにするからキープしといて」


「そんなルールはないわ。

大人しく座って食べてなさい」


「ケチ……」


「はいはい、好きに言ってなさい」


拗ねるレナを椅子のある方に向かわせると夕弦は別の作業に向かおうとするが、そんな彼女のもとに真助がやって来て彼女にお茶の入ったカップを渡す。


「あら、ありがと」


「元「月翔団」の癖が抜けないのか?

さっきからあれこれ周りを円滑に動かそうとしてるけど、楽しめてるか?」


「私は別にいいのよ。

今楽しむべきはユリナたちだし、その上でアナタたちが少しは休めるなら率先して働くわ」


「熱心だな、オマエは。

しばらくはオレがやっとくから休んでろ」


「でも……」


休むように言われても夕弦はそれを快く受けようとしないが、そんな夕弦に真助はある方向を指さしながら言った。


「ヒロムとシンクが七瀬アリサと話をしていたガイとソラから報告を受けてる。

大きな組織に属してる経験の長いオマエが間に入って何か助言してやってくれ」


「……そういうことなら休ませてもらうわ」


真助の話を受けて理解したのか夕弦は彼が指さした方を歩いていき、真助はギンジと肉を焼くのを交代したノアルに話しかけた。


「オマエとしては初めてだろ?

こういう盛大な行事は」


「ああ、初めてで少し戸惑ってるよ。

どうしているのが正解なのか分からないしな」


「楽しんだもん勝ちだよ、こんなのはな。

まぁ、「一条」に捕まってたオマエからしたら難しいことか?」


「……真助は慣れてるのか?」


「ん?」


「真助はこういうことに慣れてるのか?」


いいや、と真助はノアルの問いに対して言葉を返すと続けてそれについて話した。


「元々オレは狂ってるくらいに強いヤツとの戦いを求めて裏世界にずっと生きてたからな。

華やかなのは慣れねぇけど、たまにこうして守ってきたものの笑顔を見れるなら悪くないって思ってるよ」


「守ってきたもの、か」


「……行き場のないオレを受け入れたのはヒロムだ。

そのヒロムが守りたいと思ったものを同じように守るようになるとは思わなかったな」


「……ガイが前に言ってたんだ。

ユリナたちのヒロムへの想いは連鎖反応を引き起こすって。

オレたちもある意味でヒロムの意思に反応して変わってるのかもしれないな」


「かもな。

それより……食ってるか?」


「ああ、美味しいよ。

昔食べてたものなんかより断然な」


「何食ってたんだ?」


「実験のために蛇とかワニとか……色んなものは食わされてたからな」


「……あんまり聞いてて面白みがある話じゃないことはわかった」







***



少し離れた場所……


そこでも肉が焼かれており、ユリナたちが焼いていた肉を交代してイクトが紅月シオンとともに焼いていた。


「珍しいよな。

シオンが手伝うなんて」


「あ?」


「昔のオマエならやらなかったろ?」


「……アイツがうるさいからだ」


イクトの言葉にシオンは簡単に返すとふと視線を横に向ける。


視線を向けた先ではアキナたちが食事をし、そこにいる緑色の髪の少女・雨木ハルカはシオンの視線に気づいたからか手を振っていた。


イクトもそれを見ており、シオンとハルカというカップルのやり取りにニヤケていた。


「何だかんだで仲良くやってるんだね〜」


「……茶化すな」


「茶化してないって。

女嫌いのオマエが頑張ってるってことだろ?」


「……何も頑張ってないさ。

ハルカは……何ともないからな」


「何ともないってのは?

まさか過去のトラウマを……」


「最近ユリナたちとかかわるようになってきてこの女嫌いもマシになってきてな。

過去のトラウマは乗り越えてない。

姉をこの手にかけたことは忘れられない……けど、姉のように優しい性格のユリナたちとは話をするのは苦手ではあるがアキナやレナと言った女らしさとは無縁のヤツとは普通に話せる」


「……彼女が手を振ってる中でこの話されるとハルカは女らしさが無いって言ってると思うのはオレの間違い?」


「間違ってはない。

ハルカは何ともないからそういうことになる」


「……普通にひでぇな」


イクトとシオンが話をしながら肉を焼いていると紙皿を持った愛咲リナがやって来る。


「すみません、あちらのテーブルの分がないみたいなので分けてもらえますか?」


「……」


「シオン?」


「……イクト、対応頼む」


「……はいはい」

(普通に慣れてきたなら相手すればいいのに)


リナに対して反応せず、それどころか自分に押し付けてくるシオンにイクトは呆れながらも彼の代わりにリナの頼みを聞くように彼女が持ってきた紙皿に焼けた肉、そして野菜を盛り付けていく。


「こんだけあれば足りる?」


「あっ、できたらもう少し……」


「なら後からオレが運ぶよ。

それ持っていって食べてて」


「いいの?」


「大丈夫、大丈夫。

ゆっくりしててよ」


「ありがとうございます」


イクトの言葉に甘えるようにリナは礼を言うと席に戻るように歩いていき、彼女が歩いていくとイクトはため息をつくなりシオンに言った。


「……もう少し話す努力した方がよくない?」


「必要ない。

オレの今の仕事は焼くことだ」


「……」


「何だ?」


「いや……」

(戦いの時はスゴいけどこういう時はビビりなんだなとか言ったら殺されるよな……)


なんでもない、とイクトは一瞬声に出しかけた言葉を押し殺すようにシオンに言うと肉を焼く作業に戻る……




***



別の場所



そこでも肉が焼かれていた。

そしてその肉を焼いていたのは……ゼロとセイナだった。


「……」


「ゼロさん、よろしければ休んでくださいね?」


「……問題ない」


セイナの気遣いに冷たく返すゼロ。

だがそんなゼロに対してセイナは優しく声をかける。


「もしよろしければお食事を……」


「オレの体は人に近いものだが精霊にも近い。

食糧などなくとも体は機能する」


「ですが……」


「……それと、オレのことは構うな」


「え?」


「オマエがここにいるのはヒロムのためであってオレのためじゃない。

間違えるな」


まるで突き放すかのようなゼロの言葉。

彼女を冷たく突き放そうとするゼロの言葉だが、セイナはそれを受けても怯まなかった。


「ゼロさん、アナタもヒロムさんのために戦ってるのですよね?

でしたら私はヒロムさんのために戦うアナタのお力にも……」


「オレはそんなこと頼んでない。

オレはオレのやるべきことを果たすために戦うだけ、その邪魔をされるのは腹立たしいんだよ」


「……」


「喧嘩してるの?」


ゼロの言葉にセイナが言葉を詰まらせていると飛天がやって来てゼロに声をかける。


声をかけられたゼロは舌打ちをすると飛天に言った。


「喧嘩じゃない。

少し注意してただけだ」


「そうなの?

タイチョーさん、顔こわかったよ?」


「気のせいだ。

それより肉か?」


「うん!!

お肉いっぱいほしい!!」


飛天は元気に答えるとゼロに紙皿を渡し、ゼロは受け取ると紙皿に焼けた肉を盛っていく。


「ほらよ。

運べるか?」


「うん、大丈夫!!

タイチョーさん、ありがとう!!」


ゼロが盛った肉の皿を嬉しそうに受け取ると飛天はゼロにお礼を言って歩いていく。


飛天が歩いていくとゼロは一息ついてからセイナに告げた。


「……オマエはどうも他人の世話を焼くのが好きなようだがこれだけは覚えとけ。

オレはヒロムが果たそうとしていた復讐を代行するために戦う。

その邪魔だけはするな」


「ですが……」


「ですがも何もない。

オレにとってヒロムの果たさなかった復讐はどうにかして終わらせたいだけ。

それにオレは元々存在しないはずの命だ。

致命傷を受けてもヒロムの精神世界に戻れば完治する。

そんなオレの心配するならほかのヤツらの心配をしてくれ」


「……似てますね」


「あ?」


「初めてお会いした時のヒロムさんも今のゼロさんと同じでした。

目的のためなら自分のことなんて顧みない、どんな時でも迷うことなく決断される……お二人のそんな姿を私は尊敬します」


「……話聞いてたか?

オレは……」


「わかってます。

アナタが手を出すなと言うなら私は何も手出ししません。

ですが……もしヒロムさんがアナタを助けろと言われた時はアナタではなくヒロムさんの言葉に従います」


「……あっそ。

まぁいい、こっちはあとやっとくからヒロムさんのところに焼けた肉でも運んでくれ」


「わかりました」


ゼロに面倒くさそうに言われても嫌な顔をしないセイナは彼に従うように焼いた肉や野菜を盛りつけた皿を持ってヒロムがソラたちと話す場へと向かっていく。


彼女が去っていくとゼロは深いため息をつき、そしてどこか辛そうな表情を浮かべる。


「……ったく、なんでオレなんか心配するんだよ。

てめぇに心配されなくてもオレは強いのによ……ホント、人間って面倒だな」





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