表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・覇乱
487/672

四八七話 リコード・ワード


昼のバーベキューのために用意された島の一角。

バーベキューの準備をしているユリナたちは東雲ノアルと岩城ギンジが荷物を運び終えると段取りを進めていた。


が、ユリナは何かを悩んでいた。


「えっと……お肉と野菜は七瀬さんが用意してくたのを使うけど、やっぱりバーベキューっぽく串に刺した方がいいのかな?」

「でも串だと飛天くんが危ないよ?」


「それに串に刺すとなるとこれだけの人数分となると時間がかかりそうですね……」


七瀬アリサが手配して用意してくれた肉や野菜をどう下ごしらえするかを悩むユリナはエレナとユカリにそうだんするが、相談された二人も難しそうに悩んでいた。


三人が悩んでいると腹を空かせたのか薄紫色の髪の少女・狂美レナはユリナに大胆な提案をした。

いや、大胆というよりは……適当すぎる提案だ。


「どうせ食べれば一緒だからまとめてバーッと焼いちゃえば?」


「……バカレナ。

アンタは下がってなさい」


レナが適当すぎる提案をすると彼女の後ろからユキナが来てレナを黙らせてどこかに行かせようとするが、レナはユキナに反論するかのようにユキナに問う。


「私間違ったこと言ってないわよ?

何がおかしいのよ?」


「アンタみたいなムードぶち壊す人はいらないの。

皆楽しもうとしてるんだから黙ってて」


「はぁ?

腹減ってるんだから早く食べたいのよ」


「なら島の奥に森みたいなところあるから何か採ってきて食べてなさいよ」


「私は肉が食べたいの。

早く食べたいのよ」


「わがまま言ってたらアンタの肉焼くわよ?」


「は?」


「何よ?」


「二人とも揉めないで!!」


ユキナとレナが一触即発になる寸前まで睨み合っているとユリナが二人を止めに入り、そしてユリナは二人に対して注意をした。


「せっかくのリゾートだから仲良くして。

喧嘩はダメだからね」


「お腹空いた」


「わがまま言わないで我慢してねレナ。

今ちゃんと準備してるから」


「……わかった」


「ユキナも……」


「ごめんなさいねユリナ」


ユキナにもユリナが注意しようとした時、ユキナは突然ユリナを抱きしめる。


「ユキナ!?」


「気にしないで。

ユリナの優しさが嬉しくて抱きしめたくなっただけだから」


「よく分からないけどやめてくれるかな!?」


ユキナの抱きついた理由に困惑してやめさせようとするユリナだが、ユキナは聞く耳も持たずに彼女を抱きしめる。


ユリナがユキナに抱きつかれて困っていると黒菱レイナがユリナに質問をした。


「あの……お肉ばかりで魚がないようですが、魚は釣りに行かないとダメなのですわよね?」


「あっ、えっと……」


「魚は私とヒロムがダメなのよ」


レイナの質問にユリナが答えようとするとそれよりも先にユキナが答えるが、ユリナは彼女の言葉が気になってしまった。


「えっ?

ユキナもダメなの?」


「……アレルギーだから。

食べたりもダメだし魚を触れたもので触られたものもダメだし……とにかく魚を口にすると体が痒くて仕方ないし口の中荒れるし……」


「す、すみません……」


「アナタが謝ることじゃないわよ。

私のアレルギーだから仕方ないことよ」


ユキナのアレルギーの話を聞くと謝ってしまうレイナだが、そんなレイナに謝る必要は無いとユキナは伝えた。


だがユキナのアレルギーは分かったとしてレイナはまだヒロムが魚がダメな理由を知らないでいる。


「……でしたらヒロムさんは?」


「ヒロムは……魚全般を強く拒絶するからダメなのよ」


「まぁ!!

好き嫌いはよくありませんわ!!」


「でもヒロムくんの場合は諦めた方がいいよ?」


「姫野さん、好き嫌いはよくありません。

日々動き続けられているヒロムさんのお体のためにもしっかりと栄養を摂ってもらわなくてはなりません!!」


「……そんなに出したいなら出してもいいけど、ヒロムがガスマスク付けた時は覚悟した方がいいわよ」


「ガスマス……ガスマスク!?」


ユキナの忠告の中のガスマスクというワードに驚くレイナ。

するとレナが彼女にユキナの言うガスマスクについて詳しく話していく。


「アレはヤバいわよ……。

昔何も知らないユカリが良かれと思ってサンマを焼いて夕飯を用意してたんだけど……ヒロムは臭いを感じるなり不機嫌になるし食卓に並ぶサンマを見た途端どこからともなくガスマスク用意して装着すると……すごい不機嫌になってドスの効いた声で呟くのよ」


「お、大袈裟では……」


「大袈裟じゃないわよ。

ユカリは謝って何とか宥めたけど、私が声を掛けたら矛先私に変わってヤバかったんだから。

どんな表情してるか分からないのに一方的に言葉責めされるし……」


「アンタが声掛けたのが原因じゃないの?」


「それはない!!

私の悪くない!!」


「……絶対アンタがやらかしたからキレただけで魚は関係ないと思うわ」


「……よく分かりませんが魚はやめた方がよさそうですわね」


レナが必死に話す中ユキナは呆れながらため息をつき、レナの話を一応聞いていたレイナは魚という選択肢を諦めようとしていた。


一通り話の流れが終わると少し静かになり、それによって別の場所での会話がこちらに流れてくる……







***


ユリナたちとは別の場所でバーベキューの用意……をしてるはずのアキナとリサは何故かセイナ・フローレスと白崎夕弦にあれやこれやと質問をしていた。


「ねぇ、夕弦は彼氏とどんな感じなの?」


「イクトとはどこまで発展してるの?」


「……アキナもリサも期待しすぎよ。

私とイクトはごく普通のカップルと変わらないわ」


「でもデートってしてるの?」


「デートは……ないわね。

今はそういう時じゃないからっていうのもあるし……まだ当分はないんじゃないかしら?」


「ええ!?

付き合ってるのに!?」


「もったいないわよ!!」


「どのタイミングでもいいからデートすべきよ!!」


夕弦の発言にアキナとリサは驚きを隠せず、驚いた二人は夕弦に恋人関係にあるイクトとのデートを実行すべきだと伝える。


が、夕弦は二人の言葉に対して自分の思いを伝えた。


「今はまだイクトが私に気を使ってくれてる状態だからそういうのはまだ無理よ。

気を使ってほしいとも言ってないけど、何かと気にかけてくれてるからわがままも言えないのよ」


「ふーん……」


「ってことは夕弦はデートしたいってこと?」


「まぁ、せっかく付き合ってるなら一度はしてみたいかも。

戦うことばかりだったからたまにはアナタたちみたいに女の子らしいことをしたいと思うわね」


「へぇ〜」


「私の話は面白みがないかもしれないわね。

ごめんなさいね」


夕弦の今の思いを聞くなりリサは何故か面白そうにニヤニヤしながら彼女を見つめるが、夕弦はそんなこと気にすることもなく作業を進めようとする……が、アキナがそれを許さなかった。


「まだ聞きたいことがあるのよ夕弦。

もしイクトが浮気したら夕弦は突然怒るわよね?」


「変なこと聞くのね、アナタは」


「けっこう真面目な話よ?

夕弦は……」


「怒らないわ。

それにイクトはそんなことしないって信じてるもの」


「はい?」


「イクトは一見軽そうに見えるけどしっかりとした人だし真面目で誠実で、普段のあの性格は場を和まそうとしての結果。

それだけ気配りの出来るイクトが浮気なんてしないわ」


「……」

(怒るかどうか聞いただけなのになんか惚気話聞かされたんだけど……)


「アキナ?」


「……何でもない。

私が聞いたのがバカだったわ」


夕弦の答えが期待はずれだったのかアキナはため息をつき、彼女のため息の理由が分からない夕弦は不思議そうに彼女のことを見ていた。


が、アキナは何事も無かったかのように一瞬で切り替えるとセイナに対して質問を始めようとする。


「ねぇ、セイナ。

アナタにもいくつか質問したいんだけどいいかしら?」


「はい。

何でしょうか?」


夕弦から自分へと話題の矛先が向けられたにもかかわらずセイナは普通に返事をする。


やましい事などないからこその余裕なのか、それとも何かあったとしても隠し通せるからなのかは分からない。


それを確かめるべくアキナは質問をした。


「ヒロムに対して好意を抱いてるの?」


「直球!?」


「リサが反応してどうするのよ?

どうなのセイナ?」


「真助さんにも聞かれましたが、私にはそういったものはありません。

なのでそこは安心してください」


「怪しいわね……」


アキナの質問に対してセイナは淡々と答えていくが、その答えに納得いかないアキナはセイナを怪しむ。


ヒロムの事となると誰にも負けぬほどの重い愛を見せるアキナ。

それ故なのかアキナはセイナの言葉を疑っている。


が、アキナが疑っていると荷物を運び終えたであろうノアルがやって来てセイナをフォローした。


「彼女はキミが思ってるような邪な感情は抱いていない。

彼女はただヒロムのために力になろうとしてるだけだ」


「あら、ノアル。

彼女の味方なの?」


「別にそんなんじゃない。

どっちの味方とかはないし、オレはただ怪しまれてるセイナがかわいそうだと思ったから口を出しただけだ。

それに……」


「それに?」


「ヒロムへの愛が異常なまでに強いアキナにそこまで言われるのは彼女がかわいそうだからな」


「待ってノアル。

なんで今私のことディスったの?」


「?

ほめただろ?」


「どこが!?

明らかに頭おかしいみたいに言ったわよ!?」


「一般的な範疇で話せばアキナのヒロムに対してのそれは常軌を逸しているようにも見えるんだが?」


「何でなのよ!?」


ノアルの悪気のない思わぬ正直な発言にアキナは声を荒らげるようにして異を唱えようとするが、それを聞いていたリサやアキナをよく知る少女たちは笑いをこらえていた。


「ちょっ……笑わないでよ!!」


リサたちが笑いをこらえているとアキナは恥ずかしそうに彼女たちに言い、ノアルはそれによってアキナの質問攻めから解放されたセイナに歩み寄ると彼女に一つ忠告した。


「ヒロムの力になるべくここにいる、その事を忘れず強く心に刻め。

いいな?」


「は、はい。

どうして急に……」


「……ヒロムに対しての思いを間違えれば道を間違える。

ただそれを止めるためだ」


セイナに忠告したノアルはかつてヒロムのもとを訪れたばかりの頃の雨月ガイのある話を思い出していた。



『簡単に言うならヒロムのことを「好き」って気持ちが共鳴してるんだよ。

そのせいでユリナたちはお互いの愛情表現について羨ましく思ったりするせいで注意するとか止めるとかの判断を放棄してるんだよ』


「……キミがここにいる理由はヒロムのため。

オレやガイたちと同じ志のもとで集まっている、それを忘れるな」

(人の在り方、その答えはまだ分からないがこれだけは言える。

ヒロムに関わることでその思いが歪むことは人の在り方として間違っている……)


ノアルがセイナに向けた言葉、そこに秘められた思いは言葉を口にしたノアルにしか分からず、そしてそれをセイナが知る術は……ない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ