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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
能力邂逅編
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四八話 談話


時間は進み、夕方。


「……」




なぜこうなったんだ?



精神世界での用を済ませ、リビングに来たヒロムはその目に映る光景に疑問しかなかった。


ユリナとリサ、エリカがいるのはわかる。

いや、朝からいたからそんなことは当たり前のこと。



だが、なぜかヒロムが呼んだ覚えのないソラたちがいるのだ。



しかもソラの隣には「七瀬」の当主である七瀬アリサがおり、さらに昨日激闘を繰り広げたあの鬼月真助とシンクもいる。


しかも真助とシンク、そしてシオンはなぜかボロボロになっていた。



「……何しに来た?」


「悪いなヒロム。

たまたま全員が「八神」に狙われたんだし、許してくれ」


ガイの言葉になぜここに集まったのか理解したヒロムはため息をつくと、頭の後ろを掻きながらガイに詳しく説明するように求めた。


「誰に襲われた?」


「オレは前に襲ってきた牙天が連れてきた能力者千人、そんでソラとイクトは「ハザード・チルドレン」に襲われた」


「……牙天て誰だ?」


「え……いや……」


ヒロムが覚えていると思って話していたガイは一瞬ヒロムの言葉に戸惑い言葉を詰まらせるが、それに代わってシオンが話し始めた。


「シンクを追っていたオレは、角王の獅角と狼角に襲われた。

その時に「狂鬼」が加勢してきた」


「角王、か……。

オマエらがボロボロになってるのもそのせいか?」


「いや、ヒロム。

これは「一条」の幹部の鬼桜葉王にやられた」


鬼桜葉王。

聞いた事の無い名前にヒロムは首を傾げるが、ソラの隣に座るアリサが口を開け、説明を始めた。


「鬼桜葉王は一条カズキが信頼を寄せる幹部の一人で、異名は「鬼滅」、そしてアナタが現れなければ「覇王」の名を冠していたであろう能力者」


「……ふーん」


アリサの説明を適当に聞き流すヒロム。

その態度はまるでアリサを信用していないようにも見えた。


それを感じたアリサは何とか聞いてもらおうとヒロムに対して訴えかける。


「すぐに信用してもらえないことはわかってます。

ですが、私はアナタのために力になれるなら「七瀬」の全力を……」


「別に信用してないんじゃない。

信用しようと思わないだけだ。オレにとってアンタは「十家」の一つを統べる女でしかないし、「十家」はオレの敵でしかない」


「そうかもしれませんが……」


アリサがヒロムに対して説得しようとするのをソラが止め、そのソラはため息をつくなり立ち上がるとヒロムに対して頭を下げる。


突然のことで周囲は騒然とするが、ヒロムだけは何がしたいんだと言いたげな顔をしていた。


「悪い、ヒロム。

七瀬アリサを呼んだのはオレだ。

責任はオレが取るから、彼女の話を聞いてほしい」


「……メリットがない」


「トウマは「ハザード・チルドレン」を……オマエが発症した「ハザード」を兵器利用する気でいる。

それに「一条」の幹部が動き出してるんだ。

オマエの気持ちもわかるが、この先を考えれば「十家」に属するからこその彼女の話を聞いておくべきだ」


「……ちっ」


わかった、と舌打ちをしたヒロムは軽く返すとソラに顔を上げさせ、アリサを見ながら告げる。


「ソラに免じて信用してやる。

その代わり、妙なことしたらまずはオマエを潰す」


「わかっています」


「……で、その鬼桜葉王は何なんだ?」


ヒロムはひとまず「鬼桜葉王」についての話題に戻すとイスに座り、アリサの話を聞こうとした。


アリサもヒロムが話題を戻したということもあり、鬼桜葉王について語り始めた。


「能力者でありますが、能力を発動する瞬間を見たものは「十家」内でも彼の属する「一条」だけと言われるくらいに彼は能力を使いません。

現に彼は軍の小隊を生身の身体能力だけで圧倒する力を有しております」


「ま、能力者だしな」


「生身であることを忘れないでくださいね?

それに……噂でしかないですが、鬼桜葉王の能力を見たものは必ず負けるそうです」



「……シンクと「狂鬼」とオレの三人で挑んでヤツに負けたが、能力を使わせることはできなかった」


「ふーん……」



「少しは興味持てよ……」


シオンがため息をつくと、それに対してヒロムが一言申した。




「負けたから諦めるのか?」


「何?

そんなわけ……」


「次会ったら勝てばいい、それだけだ。

だったらオレは何も言わない」


そうか、とヒロムの言葉を予想していなかったシオンは少しだが驚き、少し反応に困っていた。


それを見兼ねたガイは次なる話題としてある人物について話し始めた。


「オレのところと、ソラとイクトのところにバッツという戦士が現れた」


「ああ?

なんかの量産された兵器か?」


「いや、蝙蝠の騎士を自称する一人の戦士だ。

少し変わったヤツなんだが……そいつはオレの能力について知っていた」


ガイの能力を知っている。

それを聞いたヒロムは適当に聞き流していた今までには見せなかった真剣な表情を見せ、そして続きを聞こうとガイに対して視線を送る。


それを受けたガイは続けるようにバッツについて語り始めた。


「ヤツはオレの能力を一度見た事のある人物だ。

でなければこれまで使わなかったオレの能力とその名を言い当てるなんてできないからな」


「ソラとイクトもなのか?」


「いいや、オレとソラのところに来た時は「ハザード・チルドレン」と戦ったオレらのデータがどうとか言ってたぜ?」




「さっきから気になってるんだが、その「ハザード・チルドレン」って何?」


ふとヒロムが「ハザード・チルドレン」について疑問を抱くと、隣からソラがその疑問について説明した。



「さっきオレが軽く言ったが、オマエが発症している「ハザード」に同じように発症している能力者たちのことを指すらしいが、「八神」がこれまで集めたオレらの戦闘データを与えられていることから手の内はほとんどバレている」


「つまり、人間をベースにした戦闘マシーンってことか。

それで?」


「ま、オレの「炎魔」とコイツの「影死神」で倒したさ」


それより、と今度はソラの方から一つ、ヒロムに対して質問をした。


「オマエの「ハザード」はどうなんだ?」


「それなら……」


ソラの問いに対して答えようとしたヒロムだが、なぜかヒロムは一瞬言葉を発することを躊躇い、そして少し悩むと曖昧な言い方をした。


「……まあまあだよ。

何とかなる」


「はあ?

オマエな、昨日の……」


「過去は役に立たない。

今を見ることにした」



何が言いたい、とソラはヒロムに言いたそうに見つめるが、ガイたちはそれ以上言ってもヒロムは答えないとわかっているのか何も言おうとしなかった。


ソラもそれをわかってはいるが、昔からの付き合いでもあるヒロムがこうしてわざとらしく曖昧な言い方をしたことが気になって仕方なかった。


いや、おそらくアリサがいるのが原因の一つだろう。

ソラに免じて信用するとヒロムは言ったが、それでもまだ疑っているに違いない。


だから、今はこう言うしかなかった。


「……オマエのことだから何かあるんだろうけど、話せる時になったら全部話せよ?」



「あいよ」


「本当にわかってるよな?」


「もちろん?

話せる時には話してやるよ」


「……上からなのが腹立つな」


そんなことより、とヒロムは強引に話を逸らし、新しい話題に変えようと真助の方を見た。


「ここに来るとは意外だったよ」


「オレもそのバッツについて調べたかったんだよ。

だがおかげで「八神」と関わりがあるらしいということがわかったから、来た価値はあった」


「ふーん……」


ヒロムはまたしても興味のなさそうな返事をし、そのまま話を終わらせる。


というよりは、ガイたちもそれ以上何かを話そうとしない。


つまり、伝えることは伝えたのだろう。


そんな中、アリサはシンクに対して一つ質問をした。


「氷堂シンク、あなたに一つ訊きたいことがあります」


「……なんだ?」


「八神トウマのもとにいたあなたが知っているかはわかりませんが……「デバイスシステム」についてご存じですか?」


アリサの口から出た言葉、「デバイスシステム」。

それを聞いたシンクは何も言わずに頷き、そして少し間を置くと口を開いた。


「……「四条」の当主とトウマは許嫁の関係になり、そしてその際に協力関係となった。

そこでトウマが持ち出したのが「四条」の得意とする兵器開発、それも武器を携帯するための道具だ」


「それが……デバイスシステムか?」


「元々はな。

だが開発段階で無数の可能性に気づいた研究者たちはあらゆる形のシステムを完成させた。

……オレが破壊した研究施設もそのシステムのデータが置かれていた」


話だけでは全容が見えない「デバイスシステム」。

シンクはふと何か思いついたのか、ユリナを見ながら質問をした。


「そこの女……オマエがもしソラと同じ炎が使えるとしたらどうだ?」


「わ、私が……?

ビックリ……します」


すでに自分に質問されたことにビックリしているユリナは少し怯えたような声で答え、それを聞いたシンクも納得したのか頷くと説明を始めた。


「今の内容を可能にするのが「デバイスシステム」だ」


「はぁ!?」


「ちょっと待ってください!!

それって……」


「あんたが今考えた通りだよ、七瀬アリサ。

トウマは……いや、「八神」は科学の力を用いたやり方で能力者が複数の能力を持つ状態をつくろうとしている」


「デバイスシステム」の全容。

それが真実かはわからないが、ソラたちは驚き、最初に話を持ち出したアリサも言葉を失っていた。


が、ヒロムに関しては何の反応も示していない。


ソラはそんなヒロムに質問しようとしたが、それに気づいたヒロムは先に口を開いた。


「その「デバイスシステム」とか、「ハザード・チルドレン」とかいうのも含めて「八神」のやり方だって言うなら、オレは「天獄」のリーダーとして潰す」


「ヒロム……」


「ま、強制はしないが、力を貸してくれるなら助かる」



ヒロムの口から出た最後の言葉。

それを聞いたソラとガイ、イクト、シオンはなぜか不思議そうな顔をしていた。


「……どうかしたか?」


「オマエ、熱あるだろ?」


ねぇよ、とヒロムがソラに言い返すと、ガイが咳払いをしてヒロムに自分の意見を述べる。


「言われなくても、ここまで一緒に来たならこれからもついていくさ」


「だな。

オレとガイは元々昔からの付き合いだ。

今更切って終わるような仲だと思うなよ?」


「ま……大将に恩を返すまではついていくさ。

返したあともだけどね」


「……オマエが戦うなら力になる。

覚悟は決めている」





ガイ、ソラ、イクト、シオンの意見を聞いたヒロムは呆れながらもうれしいのか鼻で笑う。


するとさらに横から真助がヒロムに伝える。


「オレもしばらくは「氷牙」……シンクと行動することにした。

だから何かあったら駆けつける」


そうか、とまさかの真助の言葉を聞いたヒロムは少し驚きながらもため息をついた。


そして、少し間を置くと深呼吸して全員に告げた。


「じゃあ、覚悟しとけよ?

この先は……激しいからな?」



***


しばらくしてシオンはハルカを、ソラはアリサを連れて帰り、シンクと真助はやることがあるとして去り、残ったガイ、イクトはヒロムの部屋にいた。


そして、ガイは今だから聞けることをヒロムに尋ねた。


「特訓の成果を言わなかったのは「七瀬」がいたからか?」


いいや、とヒロムはガイの質問にあくびをしながら答えると続けるように説明し始めた。


「オマエがバッツとかいうヤツの正体について話してるの思い出したからかな」


「正体がわかったのか!?」


ガイは驚きのあまり声が大きくなるが、ヒロムは首を横に振った。


ではなぜだ?


ガイが聞き直そうとすると、イクトが横から話に入ってきた。


「じゃあ何でだ?」


「……なんかさ、変じゃないか?」


「変?」


「最初に「ギルド」のヤツが現れてから今日に至るまでの間、なんかこう……話がうまく進みすぎてる気がするんだ」


「?」


どういうことかわからないガイとイクトは顔を見合わせるが、二人とも首を傾げる。


そんな二人を見兼ねたヒロムは自分の言葉に対して説明を付け加えた。


「……シンクがオレと合流したのも、真助がこうして協力しようとしていること、そして「七瀬」が協力しようとしていること。

そのすべてが仕組まれている可能性がある」


「まさか……全部バッツが?」



「ああ……。

仮にガイの言うようにバッツというオレたちの知る誰かの変装したその戦士がすべてを仕組んでいるとすると……今回の敵襲も納得ができる」


「……たしかにおかしいかもな。

わざわざ勝てないとわかってる「ハザード・チルドレン」をオレやソラと戦わせたり、ガイに千人の能力者を仕向けたのも、倒されたらすぐに去ったのも変だな」


「もしシンクを始末するための囮としての陽動にしては少し規模もおかしい。

わざわざ角王を向かわせたのに、シオンたちはここまで負傷しながらも追撃を受けずに来たんだ」


ヒロムの言葉により、自分たちの身に起きたことが謎の多いことだと感じ始めたガイとイクト。


ヒロム自身も自分の言葉に対して悩み始めるが、その悩みをかき消すかのようにリサが部屋に入ってくる。


「ご飯できたよ〜」


「あ、おう」


「二人も食べて帰るでしょ?」


いいのか、とガイはヒロムの方を見て確認を取ると、ヒロムは頷く。


「ああ、せっかくだし食ってけよ」


「じゃあ……」


「お言葉に甘えますかぁ!!」


ガイとイクトは早々に立ち上がると夕食を食べに向かい、リサもヒロムを連れていこうとするが、ヒロムは先に行くように伝える。


「悪い、少し用を済ませてからいく。

先に食べててくれ」


「え〜。

一緒に行こうよ」


「本当に少しだけだから、先に行ってろ」


文句を言うリサの背中を押しながら部屋から出すと扉を閉め、さらに鍵をかけた。



「……」


ヒロムはため息をつくと、机に置いてある自分の携帯電話を手に取り、そしてある人物の番号へと電話をかけ始めた。


「……」


電話をかけてすぐ、通話相手はそれに応じた。


『もしもし』


「ああ、オレだ。

少し話がしたいから、明日ウチに来てくれないか?」


『それはいいけど……』


「オマエに確認したいことがあるんだよ、カルラ」

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