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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
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四五九話 レクイエム・エンハンス


藍色の騎士・キリスの出現とキリスによって追い詰めた敵を逃がされてしまったヒロムたち。


敵が消えてしばらくは警戒態勢を維持していたが、危険性が無いと判断したヒロムたちは武器を下ろし、そしてイクトはヒロムに詫びた。


「大将、ごめん。

オレが油断してたせいでバッツの力を……」


「イクトが気にすることじゃない。

オレもスローネが何か企ててるのを未来視で察知しながらも全容が掴めてなかったせいで止められなかったし、何よりオウガをもっと早く倒してればそうならなかった」


「大将は何も……」


全くだな、とシオンはイクトの言葉を遮るようにヒロムの言葉に対して冷たく言うと続けてヒロムに言った。


「クロムとの一件で精霊が変化して真理の精霊になったのはいいとしても、これまで流動術と自分の経験を頼りにしてきたオマエが未来視を得た途端にそれに頼りっぱなしとは聞いて呆れるな」


「シオン、オレは……」


「ハッキリ言っといてやるよヒロム。

未来視は万能じゃない。

確実な応えのない戦いにおいてそれは明白なことだろ」


「……そうだな」


「少しは反省してもらわなきゃ困る。

今回の敗因はヒロム、オマエの判断の甘さだ。

もっと的確な判断をしていれば新手が現れても逃がすことなく対処出来たかもな」


「……すまない」


シオンの言葉に反論できないヒロムはただ彼に詫び、シオンの話を聞いていたネクロは不思議そうな顔でイクトに質問した。


「イクト、何故紅月シオンは負けたと言いたげなんだ?

敵を追い詰め撤退させたのはこちらだろ?」


「……今のままじゃダメだからだよ」


「?」


「大将やオレたちはこれまで多くの敵を相手に戦ってきてる。

完全に再起不能にした相手もいれば、あと少しで倒せるってところで逃げられた相手もいる。

今回のも今まで通りと言えば今まで通りだけど、そこで終わっちゃダメだとシオンは思ってるんだ」


「……徹底してるのか」


「そうかもね。

大将に冷たく当たるのも同じように未来視の力を持つが故に思うところがあったからだと思うけど、それ以上にシオンの中の大将のイメージと今の大将にズレが出来てるのかね」


「そうか……。

気難しいヤツだというのは理解した。

それよりもだ……姫神ヒロム」


イクトの話を聞いたネクロはシオンに対してのイメージを頭の中で訂正するとヒロムに向けて言った。


「あの藍色の鎧の騎士はキミは初めて見たのか?」


「ああ、アイツは初めてだな。

オレが倒したオウガってのも初めてだったけど……後から来たあのキリスとか言うヤツは初めて見たはずなのにそれだけで異常なまでの強さを感じ取れた」


「復讐に生きる心を宿した騎士とか名乗ってたな。

スローネはバッツの力を取り込んで何かを企んでるようだけど、あのキリスってのはスローネとは違う別の目的があるみたいだったな」


「そういやキリスって野郎はスローネが万全じゃないかのような言い方してたけど信じられるか?」


ネクロの質問に対してヒロムとシオンが話していると真助が横から話に入り、真助の言葉を聞いたヒロムはキリスが言っていた言葉を思い返していた。


『装備テストのヒューリーと目的のために能力吸収に特化させて出力を低下させたスローネを倒し、新型の力を搭載したオウガをも圧倒した。

……少しは期待出来そうだな』


「……キリスってのが言ってることが事実ならヤツらは加減してたことになる。

だがそこまでして遂げたい目的があったとなれば……キリスの登場とあそこから難なく撤退したのも策略だったのかもな」


「真意はヤツらにしか分からないが、どちらにしてもオレたちは倒し切れなかった上に逃がしてしまってる。

結果として見れば負けてるも同然だな」


「負けてるも同然、か。

紅月シオン、キミはどうやら勝ち負けに強いこだわりがあるようだな」


「あ?」


「いや、悪いことじゃない。

キミの言う通り敵は逃がしてるし、倒したのもまぐれかもしれないからな」


「何が言いたい?」


「キミの言いたいことは最もだが結果をもっと前向きに捉えるべきだ。

キミたちの実力を敵は高く評価して対策を練ろうとしていることが分かったし、キミたちの力は敵に通用することも把握出来た。

それだけでも大きな収穫じゃないか?」


「……ポジティブに考えるのは結構だが現実はそんなに甘くない」


「ふむ、そうか。

ならこれ以上は何も言わないでおく。

それで姫神ヒロム、次はどうするつもりだ?」


シオンに冷たく返されたネクロはこれ以上何かを言おうとせずに話を終わらせるとヒロムにこれからどうするかを訊ねた。


「これからどこに向かうんだ?」


「そうだな……ひとまずゆっくり休みながら安全に話し合える場所に行きたいな」


「それならば案内しよう」


今後の方針を聞いたネクロは案内するようにどこかに向けて歩いていき、ヒロムたちはそれについて行くように歩いていく……




***


どこかの施設



ヒロムたちの前から一瞬で消えたスローネ、ヒューリー、オウガはそこに倒れており、彼らの前には彼らを連れ去った藍色の騎士・キリスが立っていた。


「……無様だなスローネ。

オマエの役割は姫神ヒロムの中の力を取り込むことのはずなのに、こうも失敗するとは情けないな」


「……まだ準備段階だ。

これから……」


「猶予はない。

オマエたちのミスで計画は衰退し全て無駄になった時どう責任を取るつもりだ?」


「……」


「苦戦した挙句手に入れられたのはバッツの力だけ……。

己の無能さを恥じろ」


「オマエ……!!」


キリスの言葉に怒りを隠せないスローネは立ち上がるとどこからともなく剣を取り出すとキリスに向けて突きつける。


「私は尽力して目的を果たそうとしている!!

それを今更現れたオマエにとやかく言われる覚えはない!!」


「オマエたちに下された指示とオレに下された指示は違う。

現にオレは指示を全うし、そしてやり遂げた上でオマエたちを助けたんだ」


「私はオマエに負けてはいない!!

鎧の出力さえ戻せば私はオマエを……!!」


「ならば鎧の出力を元に戻すよう調節してかかってこい。

鎧無しの素のスペックでも劣るオマエに勝ち目はないがな」


「オマエ……!!」


「そこまでにしておけ」


スローネがキリスの言葉に感情を抑えられなくなっていると彼らのもとにヘヴンとバローネが現れ、現れたヘヴンはスローネに落ち着くように伝えた。


「相手の神経を逆撫でして発言するキリスの癖にそろそろ慣れろ」


「ヘヴン、キミはコイツの味方なのか?」


「我々は仲間だ。

どっちの味方とかそんなのは無い」


「くっ……!!」


「……ヘヴン、バローネ。

体の方は?」


問題ない、とキリスの問いに対してヘヴンは答え、バローネも同じらしくただ頷いた。


二人の返答から二人の状態を理解したキリスは彼らに向けて少し冷たく告げた。


「次は無様な姿を晒さぬようにしろ。

その鎧も傷を癒す蘇生装置もタダじゃないからな」


「承知している」


「わかってる事だけど一言余計じゃない?」


「そう思うなら成果を出せ、バローネ。

そうすればオレは何も言わない」


「了解しましたよ、キリス」


「……キリス。

その偉そうな態度も長く続かなくしてやる」


「やってみろよスローネ。

オマエじゃオレには敵わない」


「キサマ……」


何をしている、と男の声がするとともに彼らのもとへと一人の騎士がやって来る。


赤い魔力の翼を羽ばたかせ、全身真紅の細身の鎧に包み青い瞳のようなものが施された仮面をつけ腰に金色の剣を二本携えた騎士。


その騎士が現れるとスローネはキリスに向けていた剣を下ろし、騎士は翼を消して地上に降り立つとスローネに向けて話しかけた。


「この場で剣を構えようとは、何事だ?」


「……」


「スローネの今回の失態についてオレが言及していたら逆上して襲いかかろうとしてたのさ」


「キリス、オマエ適当なことを……!!」


「よせスローネ。

キリス、報告するなら脚色を加えずに事実を述べてくれ。

それでは真実が伝わらない」


「伝わらなくても大丈夫なことだから話を盛ったのさ。

スローネがミスしたのに変わりないが、アンタの方が尻拭いさせられるようなことはないから安心しろ」


「……その心配はしていないんだがな。

それよりもスローネ、その傷から察するにひどく苦戦したようだな?」


「……申し訳ありません、グラム。

ですがバッツの「干渉する力」をデバイスシステムに取り込むことは成功しました」


「取り込んだのか。

それは何よりだが……取り込んだ成果と結果的な損害が釣り合わないのはいかがなものかな?」


「それは……」


「まぁいい。

キミはヒューリーやオウガと傷を癒したまえ。

後のことは我々で進めておく」


「……感謝します」


スローネは自身がグラムと呼んだ騎士に向けて謝礼の言葉とともに頭を下げ、頭を上げるとスローネはヒューリーやオウガとともに光となって消えてどこかに行ってしまう。


スローネたちが消えると真紅の騎士・グラムはキリスに向けてある事を伝えた。


「……スローネはバッツの宿していた力を取り込んだんだな?」


「ああ、アンタの指示通りにな。

だが取り込めたのはバッツの宿してる力だけで片割れの力は奪えていない」


「それは仕方ない事だ。

黒川イクトの内包する「死獄」の力は彼独自の能力。

それを簡単に奪えるとは思ってはいない」


「……カイザーもそれは承知の上か?」


「その通りだよキリス。

今回の彼の成果はカイザーにとっては良き収穫として捉えられているよ」


「……そうか」


さて、とグラムはヘヴンとバローネに向けて指示を出すように話していく。


「二人にも頑張って動いてもらおう」


「我々は何をすれば?」


「簡単なことだ。

以前話していたある人物と接触して欲しい」


「了解しまし……」


「ただしヘヴン。

これはバローネにも言えることだが……くれぐれも彼に会う時はその鎧は外すようにしてくれ」


「「了解」」


グラムの指示を受けるとヘヴンとバローネは指示を実行するかのように消え、残ったキリスと二人だけになったグラムは彼に向けてある話をした。


「……計画は順調だ。

キミが気を張らなくともいいくらいに順調だとカイザーも言っていたよ」


「悪いがオレはカイザーを信用してない。

オレが信用してるのはグラム、アンタだけだ」


「嬉しいことを言ってくれるが悲しいことでもあるな。

カイザーはオレ以上に計画のために人事を尽くしてくれている。

そのカイザーを嫌うのはやめてあげてほしい」


「嫌ってはいない。

ただ……ヤツからはどこか胡散臭さが見えて気味が悪い」


「確かにそうかもしれないな。

だがカイザーがいなければキミもオレもこうして計画を進められなかった。

それだけは忘れてはならない」


「……分かってるさ」


「それならいい。

じゃあ、次の仕事に向かおう。

次は……」


グラムはキリスに次の仕事について話すと彼とともに消えてしまう……

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