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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
452/672

四五二話 過ぎ去りし絶望


ヒロムの放った光球が流星群のように地上に降り注ぎ、そして蓮夜たちは攻撃から逃れられずに襲われて負傷した体をさらに追い詰められていく。


「……ブラックホール、空間干渉による転移、可能性でしかない偶然を現実にする力。

その全てをこの「クロス・リンク」なら簡単にやれんだよ」


ヒロムが指を鳴らすと光球が降り注ぐのが止まり、攻撃が止まると蓮夜たちは全身負傷して立つことも出来ぬ状態で倒れた。


「くっ……」


「がっ……」


「あれが……能力を持たない人間なの……!?」


ヒロムの圧倒的力、その力を目の当たりにしたスバルは彼を疑うように言葉を発し、それを聞いたヒロムはスバルのもとへ一瞬で移動すると彼女の左手を踏みつけた。


「あぁ!!」


「どんな気分だ?

能力者が能力を持たない「無能」に蹂躙される気分は?」


「……腹立たしいわね……!!

守られるだけの存在が……偉そうに……」


「黙りなさい」


するとどこからともなく風の矢が飛んで来てスバルの体を貫く。


「……!?」


矢が飛んで来た方をスバルが見るとそこには夕弦が立っており、夕弦は自身の周囲に数本の風の矢を展開していた。


「夕弦……?」


「お母さん、私がやりたいことをやるために後押ししてくれてありがとう。

それは今もすごく感謝してる……けど、ヒロム様を侮辱するのなら私はオマエを殺す」


「どうして……この男は敵に狙われる存在……!!

私たちが何とかしなきゃいつかアナタは……」


「今まで何もしなかったくせに偉そうに語るな!!」


スバルの言葉を否定するように夕弦は強く叫び、そして夕弦はスバルに……そして蓮夜たちに向けてヒロムの事を話していく。


「ヒロム様は敵が現れても逃げなかった。

自分にどんな危機が瀕しても諦めずに立ち上がっていた!!

「無能」と呼ばれても抗って……周りからの目なんて関係なく敵を倒して自らの手で守りたいものを守っていた!!

その結果で世間に忌み嫌われても……ヒロム様は戦うことを諦めていない!!」


「……」


「オマエたちは何もしていない!!

「姫神」に仕えることだけで都合のいい時だけ動いて何もしていない!!

……私はそんな組織に属することが屈辱で仕方なかった」


「夕弦……オマエ……」


立ち上がることすら困難な負傷を負っているはずの蓮夜は体を無理やり起こすと立ち上がり、夕弦に歩み寄ろうとするが、夕弦はそれを拒むように蓮夜の周囲の地面に矢を射ち刺していく。


「近寄るな……!!

私は信じる者を家族に否定された。

守りたいものを奪われそうになった……その気持ちがオマエに分かるわけないだろ!!」


「……オレはオマエを……」


「……感謝してます、私を育ててくれて。

でも……これからは私たちは敵同士、もう手を取り合うことは無い」


その通りだな、とゼロはヒロムたちのもとへやって来るように歩いてくると顔を殴られて負傷している導一を蓮夜に向けて投げ飛ばした。


「導一……!!」


「がはっ……」


「何も出来ないようだったから殴っておいた。

これでオマエらは全員負傷者だ」


「オマエ……無抵抗な人間を攻撃したのか!!」


「抵抗してたろ、オマエら「月翔団」が。

「月翔団」は「姫神」に仕えている……ならオマエらの抵抗はほの当主代理の抵抗でもあるってわけだ」


「ふざけたことを……」


「やりたきゃやれよ。

好きなだけ相手になってやるけど……ヒロムの優しさを無下にすることになるぞ?」


「優しさだと……?」


「気づいてないのか?

オマエら全員まだ息がある負傷者だろ?

今のヒロムならオマエら全員簡単に殺せた。

なのに殺さなかった……つまりオマエらはヒロムの情けで生かされてんだよ」


不敵な笑みを浮かべながら告げるゼロの言葉。

それを聞いた蓮夜はヒロムに視線を向け、視線を向けられたヒロムは「クロス・リンク」を解除すると蓮夜を無視して真斗に歩み寄ると髪を掴んで真斗を持ち上げると彼に告げた。


「……今は生かしておいてやる。

この結果に不満があるなら……オレを殺しに来い」


「くっ……オレは……」


「オマエが一度は慕った男として……オマエの命くらいオレが消してやる」


「……っ!!」


「……じゃあな、役立たず」


ヒロムは真斗に「無能」とも言い換えられる言葉を告げると突き放し、真斗はゆっくりと倒れるとヒロムの言葉に対して悔しそうに叫んでしまう。


「ああああああああぁぁぁ!!」


「……オマエが来るのを楽しみにしてるぞ」


ヒロムは真斗に背を向けると導一の方を見、そして彼にある事を話していく。


「さて導一。

この結果を受けたオマエがどう判断するか聞かせてもらおうか……。

最初にオレが持ちかけた取引、受けるか否か答えろ」


「………ヒロムくん、いや……ヒロム。

オレはオマエの取引を受ける気はない!!」


導一はヒロムに強い殺意を向けながら立ち上がるとヒロムの取引に対する答えを伝え、そして続けてヒロムに宣告した。


「オマエは必ず倒して拘束する。

そして……必ず「姫神」の力となってもらう!!」


「……人形にして操るってか?

やれるもんならやってみろ」


「待ちやがれ……!!」


ヒロムは導一を睨むと彼に向けて歩き出そうとするが、それを阻むかのように蓮夜が導一の前に立つとヒロムに言った。


「……導一には手は出させねぇ。

オレが……オレたちが必ずオマエを倒してその首を導一の前に届けるからな……」


「死にかけが偉そうに。

まぁいい……この様子じゃしばらくまともに動けないだろうし、ユリナたちの楽しみにしてる観光の邪魔者にはならないか」


「邪魔者……何を……?」


「オマエらのことだよ。

オマエらがオレを狙うせいでアイツらが安心できない。

そしてオレたちも敵を絞れないから迷惑なんだよ」


「オマエまさか……」


「……これ以上の取引は無駄だ。

今日は見逃すが……次は殺す」


行くぞ、とヒロムは夕弦に言うと彼女とともにゼロのもとに寄り、ゼロは灰色の稲妻を纏うとヒロムたちとともに消えてしまう。


ヒロムたちが消えると蓮夜は行き場のない怒りを吐露するかのように叫び、その場にいた「月翔団」の人間と導一、蓮華はヒロムとの力の差を前にして悔しさが込み上げていた……



***



何の変哲もない河川敷……


灰色の稲妻がそこに落ちるとヒロム、ゼロ、夕弦は姿を現す。


「ゼロ、敵の追手は?」


「オマエがあんだけ派手に暴れたんだから追ってこれるわけねぇよ」


「それもそうか」


それより、とゼロは何か不満があるのかヒロムをじっと見つめると彼に対して訊ねた。


「何でヤツらが取引に応じないまま諦めた?

オマエの当初の目的である「七瀬」主催の夏のリゾート中のヤツらの介入は止められたが、これじゃあヤツらが元に戻った途端に精力揃えて攻めてくる可能性があることに変わりはないぞ」


「……殺してもよかったさ。

けど……あのままオレが従おうとしないアイツらを殺したら、それはクロムと変わらないって思ってな」


「どういう意味だ?」


「クロムはオレに成り代わろうとして邪魔になるガイたちを殺そうとした。

それを否定してオレが倒したのに、同じようにオレが殺してたら変わらないだろ?」


「……つまりオマエはクロムと同じにならないためにわざと殺さなかったのか?」


「綺麗事で済ませるならな。

オレの方が強いことは証明した。

ならばそれ以上は必要ないだろうしな」


「……なるほど。

オマエの甘さは改めて理解したよ」


ヒロムの話を聞いたゼロは呆れているのかため息をつきながら言うとそれ以上は言おうとせずに話を終わらせるとゼロは夕弦に視線を向けて話の話題を彼女へと変えた。


「完全に親と決別する意思を固めたようだな」


「……当然よ。

私はこれからもヒロム様のために戦う。

そのために父や母が障害となり立ち塞がるのなら……私は全力でそれを阻止します」


「その手で自らの親を殺すことになってもか?」


「……ヒロム様のお手を汚させるくらいなら私がやります」


「……そうか。

オマエの覚悟が証明されたなら何も言うことは無いな」


「疑ってたのね?」


「当たり前だ。

親を倒せるか怪しいようなヤツならオレはヒロムを任せられないからな」


「ふふっ、そう。

でも……ヒロム様が飾音と戦うことを決められた時の姿を見てるからか簡単に覚悟が出来たわ」


ゼロに話す夕弦は「八神」との戦いの時にヒロムが姫神飾音と対峙した時に覚悟を決めて戦おうとした時の姿を頭の中に思い浮かべていた。


自分の親が敵として現れて戸惑うはずのヒロムが決意を固め、そして敵として親を倒すと決めたあの姿。


あの姿があったからこそ今回の件を前にしても夕弦は決意を固められたのだ。


「……ヒロム様はいつも私を助けてくださる。

だからこそ私は恩義を感じ、それを感謝して何か力になるべく戦おうと決めた。

ゼロ、アナタが教えてくれた「嵐」の力への昇華のおかげで少しは強くなれたわ」


「オーラって技術らしいな。

蓮夜のを見たから何となくコツは分かったけど、アレをオマエがマスターしてより強力なものにしてしまえば……」


「蓮夜を越えられる、ということね?」


そうなるな、とゼロは不敵な笑みを浮かべながら言い、それを聞いた夕弦はいつもは見せないようなやる気に満ちた表情を顔に浮かべていた。


ゼロと夕弦が話しているとヒロムは二人の話に入るかのように今後のことについて話していく。


「ゼロが危惧するように次にヤツらが攻めてくるとしたら生半可な気持ちでは気持ちでは勝てない。

「七瀬」は表向きの顔があるから加勢したくても出来ないし、これから増してくかもしれない「月翔団」の勢力を「天獄」で対処するには強くなるしかない」


「向こうは下手すりゃ千人……いや、何万の人間を用意してくるかもな。

それを十数人と四十二人の精霊だけで迎え撃つのか?」


「無謀なのは分かってる……それでもやるしかないな」


「ヒロム様、一つよろしいですか?」


「ん?」


「敵が勢力を増す可能性があるのでしたら、こちらも勢力を増やせばいいのではないでしょうか?

小規模でも動ける範囲が増え、人が多くなればそれだけで敵を効率よく倒せるかもしれません」


「……なるほど。

けど、オレらに手を貸す物好きはそういないだろ?」


そんなことはありませんよ、と夕弦はヒロムの言葉に対して返すと続けて自身の提案に対する根拠を話していく。


「ガイたちはもちろん、シンクや真助、私にはこれまで多くの人と出会い接してきたこれまでがあります。

情報屋を倒すためにイクトに力を貸した西の能力者、ガイの目的のために手を組んだ能力者……今の私たちにはこれまで出会った人に声をかけるという選択肢があります」


「だがそう簡単には……」


「その気にさせる方法ならありますよ。

ヒロム様が「姫神」と「月翔団」に勝てば得られるものを利用するんです」


「……なるほど。

その手があったか」


夕弦の話から全てを察したヒロムは不敵な笑みを浮かべると彼女の提案に乗るかのように話を進めていく。


「夕弦の案で話を進めよう。

ユリナたちが観光を楽しめるように配慮しつつオレたちは裏で決着をつけるために人員を集める……当面の方針はこれでいいよな?」


「もちろんです」


「……戦力が増えるなら問題ない」


「決まりだな!!」

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