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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
426/672

四二六話 覇王叛乱


精神世界……


そこにいるヒロムは目の前に現れた人物に驚いていた。



『久しぶりだな、ヒロム。

外だと数日、こっちの時間軸だと……何時ぶりだ?』


闇を纏うように現れ、そしてヒロムを嘲笑うかのような表情で少年はヒロムのことを見つめる。


ヒロムの前に現れた少年。

現れた紫色の髪の少年を目にしたヒロムは彼が存在することを疑ってしまう。


「何でオマエがここにいる……!?」


『何でって言われてもなぁ……オレはオマエは心の闇だろ?』


「ふざけるな……!!

オマエはたしかにオレが……オレたちの力が消滅させたはずだぞゼロ!!」


ヒロムは少年……ゼロに向けて言うが、ゼロはあくびをするとヒロムに自身のことを話していく。


『たしかに倒されたな。

けどあの時オレはオマエの中にオレの一部を忍び込ませておいたんだよ。

だからオマエが瀕死になれば……こうして甦れるってわけだ』


「最初からそのつもりで……」


『当たり前だろ。

でなきゃ心の闇失格だからなぁ』


「心の闇……?」


ゼロの言葉、それを耳にしたヒロムは違和感……いや、疑問しかなかった。


「オマエが心の闇だって言うなら外にいるクロムは何なんだ?

二人して心の闇を名乗りやがって……どっちが本物なんだよ?」


『……なるほど。

記憶が混濁してるな』


「記憶が?」


『まぁ、いいか。

忘れるどころか知らねぇ可能性もあるし……教えてやるか』


「何を……」


『どこまで聞いた?

オマエはヤツからどこまで聞いた?』


真剣な表情になるなりヒロムに問うゼロ。

ゼロの突然の問いにヒロムは少し躊躇いを感じながらも彼は何か知っていると判断すると答えるように話していく。


「……クロムは元々「ヒロム」となるはずだった精神で、精神の崩壊によって消えかけたアイツは精霊とともに封印され、精神の消えた体を埋めるようにオレが新しい精神として生まれたんだろ?」


『……その程度か?』


「何?」


『オマエの認識してる内容はその程度かって聞いてるんだよ』


呆れ気味に言うとゼロはヒロムに冷たい言葉をぶつけ、続けてヒロムにある事実を伝えた。


『ヤツが言ってることはたしかに合ってる。

けど半分くらいは間違えてるからな』


「半分……?」


座れ、とゼロは指を鳴らすと椅子を二つ出現させて片方の椅子にヒロムを座らせ、自分も座ると詳しく話し始めた。


『ヤツが言うように精神の崩壊と新しい精神の誕生は間違ってはいない。

だが崩壊した精神と誕生した精神は間違ってる』


「どういう事だよ?

ヤツが本来の……」


『ヤツが本来の「ヒロム」だと言うなら何故精霊の記憶に細工をした?

フレイたちがヤツ本来の力だと言うなら何のために細工を施した?』


「それは……」


『何故ヤツの精神が崩壊しただけでオマエという精神が誕生する?

ヤツにとってオマエが力を得ることは都合が悪い事じゃなのか?』


次々に問うて来るゼロの言葉にヒロムは何も言い返せず、ヒロムが言い返せないでいるとゼロはクロムについてある事を告げた。


『ヤツが言ってた言葉に確かな証拠はない。

ただオマエは精霊の指揮権を奪われたことによりあたかもそれが事実だと錯覚してるに過ぎない』


「ならアイツは……クロムは何者なんだ?」


『決まってんだろ。

ヤツこそが精神の崩壊に乗じて誕生したもう一つの精神の成れの果てだ』


「は……!?」


ゼロの言葉に驚きと戸惑いを隠せないヒロム。

するとゼロはヒロムにある事実を伝えた。


『そもそも崩壊して封印された程度の人間の精神が肉体を構築して精霊のように現界するなんて本来は不可能だ。

だがヤツはオマエが複数の精霊を現界させている情報を得ると必要な肉体を構築する術を手にし、そしてオマエの心の闇として……精霊と人間の狭間の存在として現界して現れた。

そして……このタイミングで現れたのは全てをオマエから奪うためだ』


「オレの全てを……!?」


『オマエの精霊の記憶が曖昧だった理由……あれ精神の深層に封印されたヤツがヤツとともに封印された精霊に干渉し、その上でフレイたちにも干渉したから起きた現象だ』


「けどバッツはオレのことを……」


『それはバッツを欺くために用意した嘘によるものだ。

バッツにとって飾音という存在はオマエの行く末を見届けるために従わなければならない道標でもある。

その道標の意思を語られたら……さすがのアイツも騙されるわな』


「……クロムはオレの全てを奪ってオレになろうとしてるのか?」


『かもな。

けど……オマエの体を乗っ取れば完成するはずの計画で敢えてそうしなかったのはオマエの中で成長した力が想像を超えていたことで肉体を完全構築出来るようになったからだろうな』


「……」


落ち込むなよ、とゼロはヒロムに一言声をかけ、その上でヒロムにある事を伝えた。


『ヤツに全てを奪われたのならオマエのこの精神世界も崩壊してなければおかしい。

だが崩壊せずにこうして残っている。

その理由が分かるか?』


「……アイツにとって不要だったからか?」


『いいや、奪いたくても奪えなかったからさ。

この精神世界にあるオマエの霊装が邪魔をしてな』


「オレの……霊装?」


ゼロの言葉をヒロムが不思議に思っているとゼロは指を鳴らし、彼が指を鳴らすと荒れ果てた精神世界の至る所から無数の輝きの粒子が現れる。


現れた粒子には何か映し出されており、ヒロムは椅子から立ち上がると粒子を一つ手に取って確かめようとした。


「これって……」


粒子を取って確かめたヒロム。

そのヒロムが見たのは粒子の中に映し出されるこれまでのヒロムの思い出……フレイたち精霊やガイたち仲間たち、そしてユリナたちと過ごしたかけがえのない時間が紡ぎ出した記憶だった。


『クロムがオマエらに見せた記憶の映像はヤツがオマエを惑わすために用意した偽りのもの。

だがこれはこれまでオマエが長い時を重ねて紡ぎ上げてきた真実の形だ。

この全てはヤツには奪えない、そしてヤツが自分のものとして語れない偽ることの出来ないものだ』


「これがオレの霊装……」


『これはオマエの霊装だがまだ完成していない。

だがこの乱れた時間軸の中にある精神世界でなら完成させることは出来る』


ゼロの言葉を受けるとヒロムは手に取った粒子を空に返し、ゼロの方を見ると強い意志を抱きながら彼に向けて言った。


「力を貸してくれ。

オレは……オレの全てを取り戻す」


『オッケーだ。

ならまずは……精神の深層に向かうぞ』


「精神の深層に?」


ゼロは立ち上がるとどこからかホワイトボードを出現させ、出現させたホワイトボードにクロムについての解説を書き上げた。


『ヤツはオマエの精神の崩壊に便乗して生まれた負の感情、つまり心の闇であることには変わりない。

だが心の闇が度を超えて自我を持ってオマエを利用しようとするということは深層に何か深い闇がある可能性がある』


「それを消すのか?」


いいや、とゼロはホワイトボードを消すとヒロムにある事を提案した。


『上書きするのさ。

オマエの心の闇をヤツからオレに、な』


「な……!?

オマエは天邪鬼を殺したんだぞ!!」


『その天邪鬼に会えるかもしれない、としたら?』


「え……?」


『そもそも天邪鬼を作ったのはオレじゃない。

そしてあの時……精神の深層を探るオマエの前に現れたあのゼロはオレじゃない』


「なっ……!?」


『あのゼロこそがクロムだ』


「……なるほど!!」


全てを理解したヒロムは拳を強く握り、そして全てを確かめるようにゼロに訊ねる。


「アイツがロザリーやゾルデたちの記憶を書き換えた上で解き放ち、精神の深層に向かうためにステラを救うように仕向けさせた。

そしてゼロ・ロードへと変貌したあの時に奪ったオレたちの力で……クロムと言う新たな肉体を生み出したんだな?」


『その通りだ。

あの時言ってたアイツの計画……それが今回のヒロムの乗っ取りだ』


「……ならあの時から今まで利用してたってわけか」


ヒロムは今まで利用されていたことを知ると怒りを隠せず、そんなヒロムにゼロはある取り引きを持ちかけた。


『今オマエが霊装を手にして戻っても全ての精霊を宿すアイツには適わない可能性はゼロじゃない。

だが、オレがオマエの精霊となって力を貸せば……』


「オマエを囮にして力を取り返せってことか?」


『どうだ?

オマエは全てを取り戻し、オレは本来の心の闇としてオマエに忠誠を誓う……二度とないチャンスだぞ?』


「……やってやるよ。

オレが……オレとオマエであの偽りの存在を壊してオレが覇王として君臨する!!」


決まりだな、とゼロが言うとヒロムと彼の間に何か魔力の糸のようなものが繋がり、それが消えるとゼロはヒロムに握手を求めた。


『精霊としてオマエに力を貸すがオマエをマスターとは呼ばない。

それでも力にはなる……それでいいよな?』


「当然。

何も知らない偽りの覇王としては真の覇王になるためなら何でも利用してやる」


ゼロに対して返事を返すとヒロムは彼と握手を交し、二人が手を離すと目の前に光の道が出現する。


「さて……ここでこの荒れようだ。

深層に安全はないけど……いいよな?」


『オマエが行くならオレも行く。

そこに異論はない』


「なら……」


『決まりだな』


「『行くぞ!!』」


ヒロムとゼロは同時に走り出し、そして目の前に現れた光の道を進んでその先にある世界に向かおうとする……




***


ヒロムの体の治癒が今も行われる部屋の前……



ヒロムが目を覚ますのを待つかのようにユリナたちはそこにおり、祈るようにして部屋の前に集まっていた。


「……ヒロムくん……」


「ね、ねぇ!!

あれ見て!!」


ユリナが両手を合わせて祈る中、リサが指さして全員に何かを見せようとする。


彼女が指さす先を全員が見ると……バッツがフレイとステラとともにこちらに向かって走って来ていたのだ。


が、ヒロムに攻撃していたフレイとステラを知るユリナたちはどうすべきか戸惑い、彼女たちと一緒にいた飛天はフレイとステラからユリナたちを守ろうとする。


「ボクが守るんだ!!」


「だ、ダメ飛天く……」


「ユリナ!!

マスターの容態は?」


フレイは彼女たちに駆け寄ると部屋の前に止まってヒロムの状態について訊ね、フレイの言葉を聞いたユリナは耳を疑ってるのか確かめるように質問した。


「いつもの……フレイ?」


「……ごめんなさい。

マスターを傷つけたのは私の未熟さが原因です。

ですが……その償いをしに来ました」


「……うん!!」


ユリナは涙を流しながらどこか嬉しそうに返事をするとフレイに抱きつき、そして彼女に頼んだ。


「ヒロムくんを助けて……」


「……任せてください」




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