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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
421/672

四二一話 誰ガ為ノ祈リ


時は流れ、夕方……


各々の役目を果たして屋敷に戻ったヒロムたち。


リビングに集まったヒロムたちは何があったかを報告し合い、そしてヒロムは手掛かりを求めて向かった山林での出来事の全てを話した。


「四条貴虎……」


「大将がそんなに苦戦する相手がいたとは……」


「けどそれよりも……」


「リュクス、ヤツが現れるなんてな」


四条貴虎について話を聞いて驚く紅月シオンと黒川イクト、その一方で雨月ガイと相馬ソラはヒロムと四条貴虎の戦いに乱入する形で現れたリュクスの存在に驚いていた。


「二年前のあの時は現れる度にこっちに都合のいい情報を与えてくれてた得体の知れないヤツだったけど……」


「得体が知れなかったからこその今回だろ。

ヒロムを狙っている、となれば敵であることは確実だ」


「そのリュクスがヒロムのことを「偽りの覇王」と呼んだんだが、心当たりはあるか?」


リュクスについて話すガイとソラに対してノアルはリュクスがヒロムに言った「偽りの覇王」と言う言葉について知っているかを訊ねるが、二人は首を横に振る形で答えを返した。


「そうか……」


「残念だけどオレは知らないな」


「オレもだ。

そもそもオレやガイ、イクトが会った時はイクトを利用した情報屋を始末させようとしてる印象があったし、リュクス以外の件でもそれらしい言葉は聞いたことがない」


「その言葉がどうかしたのか?」


「……リュクスのその言葉に反応したクロムがヒロムを攻撃して逃亡した」


ノアルの口にした「偽りの覇王」と言う言葉について何かあったのかガイが訊ねるとノアルの横からシンクが若干の怒りを感じるような言い方をして全員に伝えた。


「ヒロムに向けてリュクスが言った「偽りの覇王」と言う言葉にクロムは何か知ってるような反応を見せたが、ヒロムがそれについて説明を求めようとするとヒロムを攻撃して吹き飛ばして逃げたんだよ」


「なっ……」


「アイツは味方じゃないのか?」


「……少なくともヒロムを攻撃したのなら敵だ。

理由は何であれ、味方などとして扱う必要はない」


驚くイクトとシオンに対してシンクは冷たく告げると続けて全員にクロムについてある事を伝えた。


「クロムは間違いなく何かを企んでいる。

ヒロムのことを狙ってるのは間違いない……となれば、オレたちは全力でヤツを始末する他ない」


「始末する他ないって……冗談だろ?」


「仮にもアイツは大将の……」


「甘えたこと言うなよガイ、イクト。

アイツの目的と真意が分からないなら他に手はない」


「それは……」


「知りたいなら教えてやってもいいけどな」


シンクの言葉に対してガイが何か言おうとしたその時、どこからともなく誰かの声がした。


ヒロムたち全員が声のした方……リビングの入口の方へと視線を向けると、そこには話題に上がっていたクロムが立っていた。


「クロム!!」

「オマエ……!!」


クロムがいることに驚くヒロムを守ろうとするようにシンクは立ち、ガイたちもシンクの話を信じたのかヒロムを守ろうと構えようとするが、クロムは彼らの事など気にすることなく歩いてソファーに近づくと座り、座るなりヒロムに話しかけた。


「……少しは冷静に考えられたか?」


「……何をだ?」


「考える時間は与えた。

何かしらオマエなりに考えたんだろ?」


「……偽りの覇王についてか?」


「そうだな……。

で、オマエは何を感じ、何を考えた?」


「……」


クロムは次々にヒロムに質問をするが、クロムの質問に対してヒロムは何も答えられなかった。


そんなヒロムの様子を見かねたクロムはため息をつくとヒロムに告げた。


「聞きたいことがあるならハッキリ言えば答えてやるよ。

せっかくだからな」


「……嘘偽りなくか?」


「当たり前だ。

リュクスって野郎がいなけりゃこんなことにならずに済んだ。

その落とし前だ」


「ヒロムを攻撃したことについてはどう弁明する気だ?」


ヒロムに対して歩み寄るかのような姿勢で話すクロムだが、シンクはそのクロムの言葉を疑っているのか山林にてヒロムを攻撃した事についての言い訳を聞こうとした。


問われたクロムはどこか面倒そうな顔をするが、シンクの言葉を無視するようなことはせずにあの時の行動について全て説明した。


「ああでもしなきゃヤツにはオレとヒロムの間に確執がると思わせられないだろ?

演技のために必要な行動だ」


「演技のため?」


「どこでどう知ったかは分からないがリュクスはオレとヒロムの秘密を知っている。

となればオレの計画も早める必要がある」


「計画ってまさか……!!」


待て、と警戒するシンクの前にイクトの精霊として宿る黒い騎士の精霊・バッツが現れ、現れたバッツはクロムを見ながら言った。


「物事には順序がある。

オマエのその計画は急げばヒロムを追い詰めるだけだ」


「お優しいな、バッツ。

さすがは飾音の元精霊ってだけあるな」


「オレにはヒロムの行く末を見守る責務がある」


「……そのヒロムってのはそいつの事か?

それともオレのことか?」


バッツの言葉に対してクロムは問い返し、クロムがバッツに問うその内容にヒロムたちは違和感を感じた。


バッツは今「ヒロムの行く末を見守る」と言った。

それなのにバッツに問い返したクロムの言葉は何故かヒロムか自分のどちらなのかと言うものだった。


訳が分からなかい。

そう思うしかない。


そんな中、何かに気づいたらしい鬼月真助はクロムに向けてある質問をした。


「オマエはヒロムなのか?」


「真助、何を……」


「そうだ」


真助の質問に対してシンクは異を唱えようとしたがそれよりも先にクロムが答え、それによって全員が混乱してしまう。


「なっ……」


「クロムがヒロム!?」


「どういうことなのよ!?」


驚き困惑するイクト、ノアル、白崎夕弦。

そんな中真助はヒロムたちにクロムのことで気づいた事を話し始めた。


「リュクスってヤツが現れてヒロムに「偽りの覇王」の名を出した時にクロムが取り乱したと聞いて不思議に思った。

クロムが慌ててヒロムに何か隠す必要のあるものとは何か……それを考えた時、心の闇であるクロムがヒロムである可能性もあるんじゃないかって思ったんだ」


「心の闇だから……?」


「けど、コイツはクロムって名乗ってんだぞ?

なのに何でヒロムの名を……」


「精神の崩壊だ」


真助の言葉に対してソラが反論しようとするとバッツがある事を全員に話した。


「本来のヒロムの精神はすでに崩壊している。

崩壊した本来の精神は精神を破壊した精霊のほとんどを道ずれにして精神の奥底に隠れるようにして封印し、器だけとなった体には仮初の精神が宿った」


「仮初の……精神?」


「それって……」


「そうだ。

クロム自身が本来のヒロムの精神の主人格であり、ヒロムを名乗る今のヒロムは……崩壊した精神を埋める形で後から生まれた精神なんだ」


バッツの言葉、それを聞いたガイたちはあまりのことに言葉を失うが、その中でヒロムはバッツに近づくなり彼を壁に押し飛ばして首を掴んだ。


バッツの首を掴むヒロムからは強い怒りのような感情を感じ取れ、ヒロムはバッツを強く睨みながら問い詰める。


「デタラメ言うなよ、バッツ!!

オレはオレだ!!

そんな話が……」


「飾音がオマエを「無能」と呼ぶように仕向けたのは本来のヒロムの精神が戻るようにオマエを追い詰め、オマエの精神が崩壊した時に今のクロムの人格を元に戻すためだ!!」


「……っ!!」


「……飾音はたしかにヒロムを愛していた。

だがアイツは精神の崩壊を感じ取り、その過程でオマエが本来の精神とは違うと知ったからあんなことをしたんだ!!

ヒロムの本来の精神と姿を取り戻すために……アイツは自ら嫌われる役を買って出たんだ!!」


「……ふざけるな!!」


バッツの言葉に感情を抑えられなくなったヒロムはバッツを殴ろうとするが、ヒロムの拳をクロムが止め、そしてクロムはヒロムの体に掌底を叩き込むと殴り飛ばしてしまう。


「がっ……!!」


殴り飛ばされたヒロムは壁に激突し、クロムは両足に黒い稲妻を纏わせるとヒロムに接近して蹴りを放ち、壁を突き破らせるようにしてヒロムを外へと蹴り飛ばした。


蹴り飛ばされたヒロムは壁を破壊して勢いよく外に放り出され、そして庭へと飛ばされたヒロムは倒れてしまう。


クロムはヒロムを追うように壊れた壁から外に出ると黒い稲妻を纏いながらヒロムに告げた。


「オレとしては今更ヒロムになる気もないし、オマエが強くなるならオレはそのまま消滅しても良かった。

だけど……オマエのその脆い精神力を見せつけられる度にイライラさせられて我慢の限界だ……!!

ここでオマエを終わらせてやるよ」


「何を……」


構えろ、とクロムは音も立てずにヒロムに接近するとヒロムを殴り、さらに蹴りを食らわせるとヒロムに言った。


「オマエを殺してオレがヒロムになってやる。

そうすれば全て蹂躙できる。

オマエが果たせない「十家」の抹殺も……オレが成し遂げてやるよ!!」


「……黙れ!!」


クロムが殴ろうとするとヒロムは白銀の稲妻を纏って防御し、ヒロムはクロムを押し飛ばすとフレイたち精霊を呼び出した。


「オレはオレだ!!

オマエが何と言おうとオレはオレのやるべき事を果たす!!」


「やるべき事?

それが今なんだよ、偽りの覇王が!!」


クロムが黒い稲妻を右手に纏わせながら指を鳴らすと強い音が鳴り響き、その音によって突然フレイたち精霊の動きが止まってしまう。



「ヒロム!!」


屋敷の方からヒロムを心配してガイたちが走ってくる中、ヒロムはクロムに問う。


「何をした……!!」


「知りたきゃ試してみろ。

オマエの力をな」


「……上等だ!!

「天剣」フレイ!!「星槍」ディアナ!!」


何をしたのか問うヒロムを挑発するようにクロムは言い、ヒロムはそれに応じるかのように「クロス・リンク」を発動しようとフレイとディアナの名を叫ぶ。


名を呼ばれたフレイとディアナはヒロムのもとに駆けつけると武器を投げ捨て、そして……


フレイはヒロムの方を向くなりヒロムを殴り、さらにディアナはヒロムを蹴り飛ばした。


「!?」


フレイとディアナの突然の攻撃に防御も出来ずに受けたことで倒れてしまい、ヒロムは何故フレイたちが自分を攻撃したのか分からず戸惑ってしまう。


「オマエら、何で……」


「まだ分かんねぇのか、偽りの覇王。

なら……分かりやすくしてやるよ。

フレイ、ディアナ……そいつを倒せ」


「……マスターの仰せのままに」


「……おまかせを」


戸惑うヒロムに現実を理解させるかのようにクロムが指示を出すとフレイとディアナはヒロムを倒そうと襲いかかり、ヒロムは立ち上がるなり慌てて防御しながら二人を止めようとする。


「やめろ!!

オマエらと戦うなんて……」


二人を止めようとするヒロム言葉に耳を傾けることもなくフレイとディアナはヒロムを何度も殴り、クロムはその様子を見ながらヒロムに告げた。


「無駄だ。

そいつらの中にオマエの存在はない」


「何で……」


「オレがオマエから全てを返してもらった。

本来のオレの力……全ての精霊をな!!」

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