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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
能力邂逅編
40/672

四〇話 ハザード・チルドレン


バッツと「ハザード・チルドレン」を相手に戦うソラとイクト。


バッツの言うように彼らにはソラとイクトの二人の戦闘データが叩き込まれているらしく、こちらからの攻撃はすべて対処されてしまう。


「くそ!!」


ソラは周囲に炎を拡散し、無数の銃と砲門を生成し、彼らに狙いを定める。


「無限の炎弾……インフィニティ・フレア・バレット!!」


ソラの得意とする高火力による一斉掃射。

ソラの言葉を合図に次々に炎弾が放たれ、彼らに向けて迫っていた。


しかし、彼らは迫る炎弾に対して焦ることも避けようともしない。



「それも対策済みだ」


バッツが言うと、彼らは懐から取り出した何かしらの装置を前にかざし、自分の前に魔力の盾を出現させて迫り来る炎弾を防いでいく。


「!!」


「言ったはずだ。

オマエたちのデータは叩き込んでいるってな」


「だったら……」


「うるせぇな!!」


するとガントレットを両手につけた少年がソラに殴りかかるが、ソラは直撃を何とか回避すると少年に蹴りを入れて距離を取ろうとした。


が、蹴りの一撃が弱かったのか少年はダメージを受けていないような素振りを見せ、そしてソラを挑発するように睨む。


「……何だ?」


「弱いんだよ、アンタ。

オレは強くなって「覇王」を倒したいのによ」


ガントレットをつけた少年はソラを煽るが、ソラは気にすることもなく銃を構え、炎弾を次々に放つ。


確実に倒すため、加減もせず、ただひたすらに倒すためだけに放つ。


が、少年はガントレットに魔力を纏わせるとソラの放った炎弾を殴り潰していく。


「……こんなものか?」


「コイツ……」


他のヤツらとは違う。

外見からもわかるが、今の一連の動きからもそれがわかった。


ソラが警戒しようとしていると、バッツが目の前の少年について語り始めた。


「そいつは「ハザード・チルドレン」の中でも傑作に入る一人、炎城タツキ。

炎の能力とともにそのガントレットの性能でパワーを極限まで高めて戦うんだよ」


「聞いてもいないことをしゃべりやがって……

こっちのデータは揃ってるから余裕ってか!!」


ソラは右手に炎を纏わせると殴りかかるが、少年・炎城タツキはガントレットで防ぐとソラを投げ飛ばした。


ソラは難なく受け身をとったが、炎城タツキがカウンターを仕掛けなかったことが気になっていた。


「カウンター仕掛けなくても余裕かよ……!!」


「アンタに対してそこまで本気になる気にもならねぇよ。

オレは「覇王」を倒したいんだからさ」


「それを聞いてすんなり納得すると思うのか?」


「じゃあ倒してでも探しに……」


「行かせねぇから言ってんだろうが!!」



どうしてでもヒロムを倒そうと考える炎城タツキにソラは炎を纏うとともに殺気を向けるが、炎城タツキは何も気にすることなく構えた。


「威勢だけは良さそうだな、アンタ」


「なめてたら燃やすぞ?」


「やれるもんならやってみな!!

オレたちはトウマ様直々に選ばれた「ハザード・チルドレン」なんだからな!!」


炎城タツキの口から出た人物の名にソラと、そして敵と応戦中のイクトは驚き、他の「ハザード・チルドレン」たちは炎城タツキを見る。


炎城タツキも自分以外の面々がこちらを見たことからその名を口に出すのは禁止されていたというのに気づいたのか、少し反省したかのように頭を下げる。


が、そのおかげでソラはこの炎城タツキという少年がヒロムを倒したがる理由に納得することが出来た。


「……トウマの命令で始末するってか!!」


「本当にあの当主さんだけは手段もクソもないな!!」


ソラとイクトは苛立ちが募り、魔力を大きくしてそれを現すが、バッツはそれを見るとなぜか賞賛するように拍手をした。


「いい魔力だ。

それでこそモルモット相手に相応しい戦士としての力が見れる」


「モルモット?」


「どういうことさ?」


「もう気づいてるんだろ?

コイツらの正体を」


バッツの言葉。

それは謎でしかなかった。


炎城タツキや彼らの正体はトウマの差し向けた刺客としして二人は認識している。


なのにバッツはまだ何かあると言いたげにこちらに投げかけてくる。


どういう意味だ?



考えてみるが、馬鹿馬鹿しくなったソラはバッツに炎弾を放つが、バッツはそれを右手人差し指で弾くと炎弾を破壊した。


「!!」


「オレの前に、そいつらを潰さなきゃだろ?」



「……うるせぇな」


「バッツ、相談があります」



マントを身につけた少女は突然、バッツに一つ相談として話しかける。


「どうした?

凪乃イチカ隊長さん」


「はい、これ以上の長期化は何も得られません。

ですから早々に始末を……」


「お堅いねぇ、隊長はよ」


マントの少女・凪乃イチカが真面目な顔で話す中、ソラの前で首を鳴らす炎城タツキはそれを邪魔するように話し始めた。


「オレら「ハザード」は戦ってなんぼだ。

戦う中で成長するのが醍醐味なんだぜ?」


「だからといってこんなところで時間の浪費なんて出来ないわ」


「はっ、お堅いくせに「ハザード」に発症しちゃうとか……」


待てよ、とイクトは大鎌を握る手に力を入れながら炎城タツキに問う。


その顔にいつものような冗談を言う際のあの笑顔も戦闘中の飄々としたものもなく、怒りに似た感情のみがあった。


「オマエら……精神干渉汚染、「ハザード」に……!!」


「気づかなかったのか?

オレらは「ハザード」に発症して捨てられるはずだった存在。それを救ってくれたのがトウマ様だ!!」


「ふざけるな……!!

そのトウマが、アイツを見捨てたんだぞ!!」


「それは「無能」に力がなかっただけ。

私たちはこの「ハザード」とともに強くなるためにここにいます」


凪乃イチカの迷いのない言葉にイクトはさらに怒りを増していく。


そうか、だから「ハザード・チルドレン」なんだ。

ソラは炎城タツキと凪乃イチカの言葉からすべて理解した。



つまり、「ハザード・チルドレン」とは、ヒロムと同じように「ハザード」に発症した少年少女のことを指し、トウマはそれを道具のように使っているのだ。


だが、そんなことよりもイクトがどうしてここまでムキになっている?


ソラはそこだけが不思議だった。


が、それについてはバッツが説明することにより解決することになる。


「さすがに怒るよな?

精神干渉汚染で遊ばれたらな」


「オマエら………知っててやってるのか!!」


当然だろ、とバッツが指を鳴らすと周囲が紫色の煙に覆われ、煙が晴れると周囲の景色は変化し、気づけばどこかの研究施設だった。




「転移術か!?」


突然の事で驚くソラだったが、気づけば炎城タツキや凪乃イチカ、それに他の「ハザード・チルドレン」がいないことに気づく。


イクトもそれに気づいたらしく、一度冷静になり、自身を守るように影の壁をつくり、警戒した。



が、それでも怒りが収まらないらしく、バッツに詰め寄るように叫ぶ。


「わかっててやってるなんざ人のやることかよ!!」


「アイツらは「兵器」だ。

それをどうしようが勝手だろう?」


ふざけるな、とイクトが叫ぼうとすると炎城タツキや凪乃イチカたちがソラとイクトの周囲に銃を構えて現れる。


が、攻撃する気配はない。


「……?」


「いいことを教えてやろう、相馬ソラ。

その男は……かつて妹を「ハザード」で失い、そして己の力により自身も精神干渉汚染になったんだよ!!」


「……!!」


今だ、とバッツがソラが自身の言葉に驚き、反応が遅れる瞬間に一斉掃射を指示し、それを受けた炎城タツキたちは銃の引き金を引き、乱射する。


イクトは影の壁により守られ、ソラは何とか炎で防ぐが、乱射する勢いは止まらず、確実に追い込まれていた。


「この……!!」


「……ざけんな。

あの時の悲劇を繰り返させてたまるか!!」


いつもは見ることすらない真剣なイクトの表情、それを見たソラはこれまでのイクトの行動について少しずつだが理解していく。


シオンの時に話を逸らそうとしたのは誰よりも思い出したくなかったから、ヒロムの「ハザード」をユリナたちに話したのはヒロムの身を心配し、同時に自分と同じ運命を辿らせぬため。




そして「ハザード・チルドレン」について怒りを顕にしてるのも、自身のトラウマを弄ぶことをしているから。


「イクト……」


「……力型汚染「チャージネス」、それがオレの発症した精神干渉汚染だ」


銃撃が止まず、防戦一方となる今、イクトはゆっくりとソラに語り始めた。


「妹が「ハザード」に発症したと知らずに何食わぬ顔で毎日を過ごしてた。

ある日、目につくものすべてを破壊しようと暴れ始めた」



「おい……」


「親にさえも手をかけ、そして……」


「おい、って言ってんだろうが!!」


ソラはイクトに向かって叫ぶとともに周囲に炎を撒き散らすように次々に放ち、銃撃を止めさせるとともにイクトのもとへ向かうと、イクトを殴った。


「!?」


「オマエの話なんざどうでもいい!!

とくにオマエの過去なんざな!!」


「オマエ……」


ソラはイクトの胸ぐらを掴むと、これまでにないほどに大きな声でイクトに向けて告げる。



「今のオマエがいるからオレは強くなれたんだ!!

だから胸張って戦えや!!」


「!!」


「……今さら聞こうとか思わねぇ。

オマエが話さないのは理由があるってくらいわかる。

なのにこんなときに話しやがって……!!」


「お、オレは……」


ソラはイクトから手を離すと、銃を投げ捨てた。


そして、


「……どうせなら戦いのあとにしやがれ」


「……だな」


イクトはため息をつくと、大鎌を持ち直し、そしてバッツを見ると構え直した。


「じゃあ、サクッと終わらせてオレの昔話といきますか!!」


「……仕方ないから、三十秒は聞いてやるよ」


短いな、といつものように笑うイクトの横でソラは両手に炎を纏わせる。


そして炎は紅くなり、「炎魔」の炎に変化していく。


「データがすべてのヤツらに教えてやるか……」


ソラは両手に纏わせた紅い炎で「ハザード・チルドレン」が持つ銃を焼き払うと、さらに炎を大きくする。


「この……」


炎城タツキはガントレットで殴りかかろうと考えたが、ソラの両手を見て、それを躊躇してしまう。


なぜなら、ソラの両手は、いや、両腕は変化していた。



「……ソウル・バースト」


紅い炎が消えると、ソラの両腕は紅い甲殻にも似たアーマーに包まれ、鋭く尖った爪、さらに小さな銃口のようなものが二つ、手の甲の部分に存在し、その姿は悪魔の腕のようであった。


「炎魔劫拳、焼装」


「プフ……!!

なんだその見てくれだけの変化は!!」


ソラは変化した腕を見ると炎城タツキは笑った。

なぜなら今のソラは魔力を纏っていないし、腕が変化した以外に目立った変化はない。


「何だよ、カッコつけてダサいセリフ並べてさ……」


「悪いな…今イライラしてんだよ」


「あ?

何を……」



炎城タツキはただ目を疑うしかなかった。


ソラは気づけば炎城タツキの背後におり、自身の体には殴られたような跡と焼け焦げた痕跡がある。


何が起きたのか、それを理解しようとしたと同時に炎城タツキは紅い炎に全身が襲われてしまう。


「ぐあああ!!」


ソラが手をかざすと炎城タツキを襲う紅い炎が消えるが、炎城タツキは全身を炎で負傷してしまった。


「悪いな……この炎魔劫拳は「炎魔」の力を何倍にも圧縮して熱し続ける。

だから……」


すると凪乃イチカや他の「ハザード・チルドレン」たちが爆炎に飲まれ、そして吹き飛ばされる。


「な……!!」


今何が起きているのか理解が追いついていない炎城タツキは無意識下なのか後退りしてしまう。


「何しやがった……!?」



「……漲る」


「?」


「漲る、滾る……熱き炎が迸る!!」


ソラが全身に紅い炎を纏うと、周囲が焼け焦げるのではないかと思ってしまうほどの熱風が吹き荒れる。


吹き飛ばされた凪乃イチカたちは立ち上がるとソラの姿に困惑し、それにより慌て始める。

「き、聞いてないわ……」



「データにないぞ、あんなの!!」


「か、勝てるのか!?」


「教えてやるよデータ厨共が……

戦闘で勝てるヤツってのはな、データに頼らずに目の前のことに対して臆することなく対処できるんだよ。

だから見せてやるよ……データに頼ってるオマエらじゃ勝てねぇってな!!」


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