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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
384/672

三八四話 運命の厄道


とある廃工場……



前髪に金のメッシュの入った黒髪の青年が黒いコートを纏ってそこを歩いていた。


廃棄されたままの機械が乱雑に並んでおり、青年が奥に進むと壊れた機械の上にフードを被った黒いコートの男が座っていた。


「……やぁ、珍しいな」


機械の上に座る男はどこか呑気に青年に話しかけるが、青年は少し苛立ちながら男に向けて追及する。


「アレはオマエの差し金か?」


「差し金?

何のことだ?」


「惚けるな。

あの戦士、アレは間違いなくデバイスシステムの一部を反映された装備を纏っていた。

オレが葉王から得た情報をこの短期間で流用できるほどの知識を持つオマエがやったとしか考えられない」


「……なるほど。

あの戦士を見たんだな?」


「そうだ。

だから問うぞ……アイツはオマエの差し金か、ヴィラン」


落ち着けよ、と青年にヴィランと呼ばれた男は指を鳴らし、彼が指を鳴らすと青年はいつの間にか椅子に座らされていた。


今来たばかりでそこに椅子などなかったはずだ。

なのに青年は突然椅子に腰掛けていた。


「……っ!!」


「落ち着けたかい?」


「相変わらずだな……ヴィラン。

なら一言答えろ。

アレは……」


「オレとは無関係だ」


ヴィランと呼ばれた男は青年に向けて伝え、そして伝えると男は……ヴィランは青年の言う戦士について話し始めた。


「こちらでも姿は確認している。

ネクロドールという同胞を倒されたショックの中で現れたあの謎の戦士の存在は興味深い」


「……オマエの差し金でないのは分かった。

ならアレは誰がつくった?」


「さぁな。

それについてはオレの管轄外だ」


「……「世界王府」の中枢を担うオマエがいい加減でどうする?

オマエの……」


「落ち着け、ノーザン・ジャック。

焦る気持ちは分かるが冷静に考えるんだ」


「オレは冷静だ」


椅子に座らされている青年は……ノーザン・ジャックは両腕に鋭い爪を有したガントレットを装備させると自身が座らされている椅子を切り刻んで破壊して立ち上がり、立ち上がるなりヴィランの隣に一瞬で移動して彼に爪を向ける。


「冷静だからこそオレはアレが敵なら対処しようと考えている」


「……まだ冷静になれていない。

冷静ならあの戦士の不十分なところを見抜けるはずだ」


「不十分だと?

どういう意味だ?」


ノーザン・ジャックはヴィランに向けたガントレットの爪を下ろすと彼の言葉の真意を確かめようと問い、ヴィランはノーザン・ジャックの問いに答えるように話し始めた。


「あの戦士は姫神ヒロムを狙っているようだが、それは命を奪うためではない。

こちらの計画上欠かせない姫神ヒロムから何かを得ようとしている。

おそらくは姫神ヒロムの内包する力、最悪の場合は姫神ヒロムそのものを狙ってるかもしれない」


「そのものを?

なぜだ?」


「まず姫神ヒロムは世間から迫害されている。

「竜鬼会」の思惑によって我々が数々の同胞を得た一方で迫害される彼は多くを失っている」


「……街を守ろうとした結果だ。

無駄に戦って損してるとは哀れだ」


「そんな哀れな姫神ヒロムを狙っている。

迫害されているということから考えると……あの奇妙な戦士姫神ヒロムにこの世界の現実を告げて絶望させた上で仲間にするつもりなんじゃないか?」


「……無謀だな」


「そう、無謀だ。

今の姫神ヒロムを簡単に仲間にするのは不可能だ」


「だから絶望させるってか?

哀れを通り越して滑稽……」


「それは違うな。

確かに哀れだが、姫神ヒロムを仲間にするのが不可能な理由は何だと思う?」


「……何?」


突然のヴィランの質問。

その質問を受けたノーザン・ジャックは考えるように間を置き、しばらくするとゆっくりとヴィランの質問に対する回答となる言葉を発していく。


「……姫神ヒロムはこれまで「無能」として扱われてきた。

大人によっての妨げられた未来の中で生きてきたアイツはもはや他人のことなど気にかけることはない。

そんな人生を送ってきたヤツがこの数日間の迫害に追い打ちをかけるように現実見せても変わらないってか?」


「素晴らしい、その通りだ。

姫神ヒロムはこれまで「無能」として世界を見てきた。

そして「無能」と蔑まれて十年経つとともに精霊との繋がりが増し、さらに己の中の閉ざされた真実を知った。

それによって彼は能力者を凌駕する存在に進化した」


「あの「竜鬼会」の一件は姫神ヒロムの母親が偽善で取った行動が原因でもある。

他人からの迫害に比べりゃ残された家族からの裏切りの方が酷だからな 」


「そう、あの戦士は肝心なところを見落としている。

あの姫神ヒロムの精神力は常人の想像を絶するレベルよ強さだ。

数十の精霊を宿し、その精霊に精神を押し潰されることなく自我を保っている」


「……だがヤツは姫神ヒロムを狙っている。

何か対処しなければ……」


問題ない、とヴィランは万が一に備えようと考えるノーザン・ジャックに向けて言うと続けてある事を伝えた。


「その件に関してはヴァレットとカノリスに声をかけてある。

彼なら問題なく対処してくれるはずだ」


「ヴァレットはともかく……カノリスは超がつくほどの問題児だ。

そんなヤツを野放しにして大丈夫なのか?」


「問題ない。

オレはカノリスは必ず成し遂げてくれると信じている」


「オマエが知らないはずないよな?

カノリスは……〇〇〇なんだぞ?」


「……だからこそ彼に託したのさ。

姫神ヒロムの運命をな」





***




屋敷……


屋敷に戻ったヒロムは自分の部屋にガイ、ソラ、イクト、シオン、ノアル、真助を集め、「七瀬」のもとに向かっていたガイとソラから報告を受けていた。




「……以上が十束さんからオレとソラに伝えられた内容だ。

残念なことに「竜鬼会」の件はもうこれ以上どうにも出来そうにないらしい」


「……そうか」


「さすがのアリサもお手上げだとよ。

敵を倒して街を守ったオマエは街を破壊して人の命を無駄に散らした残忍な覇王、そう思われてる」


「おい、ソラ!!」


「何だよイクト。

事実を言っただけだ。

今更嘘で慰めても何にもならねぇだろ?」


「だからって言葉選べよ!!

オマエは出会った時から……もっと言えばコンビ組んだ時から……」


「誰がいつオマエとコンビ組んだって?」


イクトの言葉にどこか不機嫌さを見せながら彼を睨むソラだったが、そんな二人のやり取りに対して真助は咳払いをすることで止めるとガイに向けて質問をした。


「ガイ、他の情報は?

イクトが話を聞いてた五十嵐とヒロムが篭ってたライブハウスの経営者の男は「七瀬」の内通者だろ?」


「八坂さんからは特には。

多分ライブハウス周辺の状況整理が終わってないんだと思う。

五十嵐さんの方はイクトに報告するって……」


ガイが真助の質問に答えると、真助はイクトに話せと言わんばかりに視線を送り、視線を受けたイクトは深呼吸すると話し始めた。


「解剖の結果が出たよ。

死因は……内部を引き裂かれたことによるものらしい」


「内部を引き裂かれたことによる……?」


「どういうことだ?」



「五十嵐さんも言葉に悩んでたよ。

外傷なしで中味スプラッたで臓器という臓器がほとんど原型留めないレベルで引き裂かれてたらしいからさ」


「……案外エグイな」


「どうやって内部を攻撃したのか、だよな……」


「決まってんだろ。

これをやったのは……間違いなく能力者だ」


イクトの話に若干引く真助の隣でガイはどうやって内部を損傷させたのかを考えようとするが、そんなガイの言葉を遮るようにシオンは冷たく言葉を発する。


「五十嵐ってやつもイクトも死体を見て能力者だと言ったのならその能力者の能力だ。

そしてその能力は人の命を簡単に奪う力を持っている」


「それは分かってる。

オレは……」


「分かってるならどうすべきかも理解してるはずだ。

どんな人間かなど関係ない……その能力者を始末して事件を終わらせる」


「始末じゃダメだ。

身柄を拘束して然るべき相手に……」


「人の命を平気で奪えるようなヤツに然るべき相手もクソもねぇ。

肝心なのはこの事件の犯人は野放しにしてたら危険だってこと、つまり生かす方が危険ってことだ」


「オレたちがそいつを殺せば同じになる。

オレたちは……」


「テロリストと称される「竜鬼会」を倒した英雄ってか?

オレたちは周りの雑魚倒した程度でそう呼ばれるのに黒幕を倒したヒロムは迫害されてるのにか?」


「誰もそんなこと言ってないだろ!!」


「だったら理由なんざいらねぇだろ!!

敵は能力者、生かす必要がないなら消すだけだ!!」


シオンの言葉に怒りを隠せないガイとガイに向けて強く言葉を発したシオンは睨み合い、その場の空気が重くなる。


……が、そんな中でヒロムはため息をつくとシオンに向けて指示を伝えた。


「シオン、可能なら生け捕りだ。

無理なら殺してもいい」


「ヒロム、何を……」


「ガイは黙っててくれ。

……シオンの言い分は分かるが、オレは英雄なんざ望んでねぇ。

嫌われるなら嫌われるで違う生き方を見つけるまでだ」


「……いいのか?

可能ならと言われてもオレは殺す気でやるぞ?」


「構わないさ。

どうせ殺人鬼なら大人しくしてるはずねぇだろうしな。

やりすぎなければ大丈夫だ」


「そうか」


「ヒロム、これは……」


「ガイ、オマエの言い分も分かるが今は抑えてくれ。

殺人事件の件は犯人を捕まえれば終わる。

問題は……あの戦士の方だ」


殺人事件の犯人についての話を終わらせるとヒロムは自分を襲った謎の戦士について全員にあることを伝えた。


「ヤツの装備がデバイスシステムなのはたしかだ。

それの出処がどこなのかはどうでもいい。

とにかく重要なのはヤツに仲間がいるかどうかだ」


「協力者がいるってことか?」


「あのアップグレードの力からしてヤツ一人でどうにかしてるとは思えない。

ヤツを倒して拷問してもいいが、ヤツに仲間がいるならいずれ洗われるかもな」


ヒロムは立ち上がるなり部屋を出ていこうとし、そんなヒロムにどこに行くのかノアルは訊ねた。


「どうしたんだ?」


「リビングに行く。

ユリナたちのところにな」


ヒロムはノアルの問いに対して答えると部屋を出ていき、ヒロムが出ていくと真助はガイやソラたちに向けて今のヒロムについて話した。


「……今のヒロムは精神的に追い詰められてる可能性がある。

不要な心配事を増やしてそれを増大させるわけには行かない」


「そのために何とかするんだろ」


真助の言葉を受けたソラは冷たく言い返し、そして己の決意を口にする。


「ヒロムを苦しめるのなら阻止する。

オレたちが何とかしてでも……かならずヒロムを救う!!」

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