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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編
382/672

三八二話 怒る心


姫神ヒロムが所有する屋敷。



「竜鬼会」での一件以前から彼が所有して生活するこの屋敷はこれまでと変わらず使われている。


これまで何かあればこの屋敷に集まって話し合い、ユリナたちやガイたちはここに宿泊してヒロムとの時間を過ごしていた。


それはこれからも変わらないのかもしれない。



そんな屋敷のリビング……



リビングではソファーに座った白髪の少年が煎餅を食べながらテレビを見ていた。


白髪の少年、少年の左目の下には切り傷にも似たような赤い痣があった。


「……」


ただ集中してテレビを見て、そしてテレビを見ながら煎餅を食べる少年。


すると……


「クソがっ!!」


リビングの入口の扉が乱暴に開けられると紅月シオンが苛立ちながらリビングに入るように歩いてくる。


そしてリビングに入ってきたシオンはその苛立ちをぶつけてくるかのように少年に向けて話し始めた。


「シュミレーターの相手に八つ当たりしても変わらないとか偉そうに説教しやがったぞアイツ!!

肝心な時には何もしなかったくせにこういう時だけは偉そうに言いやがる!!」


「……ロビンか?」


「ああ、伝説の賞金稼ぎとか大袈裟な呼び方されてるアイツだ。

「竜鬼会」の一件で大したことしてねぇくせにこういう時は何の躊躇いもなく指図してきやがる!!」


「……」


「シュミレーターもシュミレーターだ。

最大レベルで設定してあの程度の敵しかプログラムで用意されないなら無意味だ」


「……元々はヒロムが幼少時代に使ってたものだろ?

地下の戦闘シュミレーションシステムではオレたちの力には対応出来ないだろ」


「アイツもアイツで何でシステム改善してねぇんだよ。これじゃシュミレーターがあったとしても使いもんにならないだろ……」


「そもそもヒロムには精霊がいる。

わざわざシュミレーターを使わなくても問題無いのでは?」


「……なら何のためのシュミレーターなんだよ」


シオンは愚痴をこぼしながらソファーに腰掛け、そんなシオンに向けて少年は質問をした。


「何故そこまでして強くなろうとする?

「竜鬼会」の一件は解決して日常は戻ったはずだ」


「戻った?

それは敵が消えただけって意味か?

悪いが何も戻っちゃいない……戻るどころか失ってるんだ」


「……ヒロムのことか?」


「そうだ。

アイツは自分と向き合ってどうしたいか決意して、その上で守れるものを守ろうとした。

その結果敵を倒せたのにヒロムは街を破壊し平和を奪った悪として認識されている」


「……一ついいか?」


ヒロムに対する周囲の反応などに不満を隠しきれないシオンの言葉を受けた少年は……東雲ノアルはシオンに向けて質問しようとした。


「少し気になったことがあるんだが、いいか?」


「あ?

何だよ?」


「オマエは「月閃一族」の末裔の一人として一族を束ねる素質となる「晶眼」に選ばれた。

オマエとしては一族の再興などに専念するのかと思っていたんだが、何故それとは無関係なヒロムのことを気にかける?

オマエはかつてヒロムを倒そうとしてたんだろ?

なのに……」


「愚問……すぎるな。

その質問をする辺り何も見えてないな、オマエ」


「そうなのか?」


「人間の在り方云々が知りたいのならまずは物事を見極めやがれ。

でなきゃ勘違いで終わるぞ」


「勘違い?」


「まずオレは「月閃一族」の再興なんてする気は無い」


シオンはノアルが食べている煎餅を数枚横取りして食べ始め、煎餅を食べながらノアルの言葉の中の間違いを訂正するようにシオンは語り始めた。


「一族を束ねる資格か血に認められたか知らねぇがオレは別に「月閃一族」を栄えさせるとか元に戻したいとかはない。

過去の栄光で戦闘種族と呼ばれた「月閃一族」は滅んだ。

今いるの末裔は今やるべきことをやるだけだ」


「オマエも真助もカズマも一族を再興したくないのか?」


「……してどうする?

オレたちは今ヒロムに仕えている。

それ以上にやることはあるか?」


「……誰かに仕えてるからなのか?」


「本音を言えばオレたちは誰も一族を束ねたいとか思ってねぇからだ。

どうせなら……「月閃一族」唯一の最強の能力者になりたいと考えてるくらいだ」


「……」


「末裔とか再興とかの話はここまでだ。

今話すべきはそこじゃないからな」


「今話すべき?」


ヒロムのことだ、とシオンはテレビに向けて右手をかざし、かざした右手に微弱の雷を纏わせる。


シオンの右手に雷が纏われると誰もリモコンを触っていないのにテレビのチャンネルが変わり、ノアルが先程まで見ていた番組からニュース番組へと切り替わった。


『続いてのニュースです。

先日のテロリスト襲撃事件で被害を受けた街の復興はおおよそ完了したことが発表されました。

政府は先程……』


「街は元に戻った。

だが街に住む人間の多くは「竜鬼会」のことをただのテロリストとして認識し、そしてそのテロリストの狙いはヒロムだったことにされている。

ヒロムが「竜鬼会」の黒幕であるゼアルを討ち倒した事実はどこかに消され、残されたのは事実とは異なるヒロムが悪という虚実のみだ」


「情報操作されたせいだ。

真実が伝われば……」


「ゼアルとヒロムの戦いは多くの人間が目撃している。

それに情報操作されてる大半は「竜鬼会」に関するおおまかな情報とオレたちについてだ。

今こうして報道されている情報のほとんどは目撃者やその目撃者から話を聞いた人間がヒロムを悪という目で見た結果出来た操作されていないもの。

真実が伝わったところでヒロムが悪という認識は消えない」


「……」


「最初はヒロムも予想していたからその気もなく平然と暮らしてたさ。

けど日が経つにつれてヒロムの心は追い詰められていたんだ……。

どこに行っても自分を悪として嫌い、何も悪くないヒロムに責任を負わせようとする。

無実の罪でヒロムは全方位から敵視される、その状況が続いた結果ヒロムはさまよっている」


「どうにもならないのか?」


ノアルが質問するとシオンは煎餅を勢いよく噛み砕き、口に含んだ煎餅を飲み込むとニュース番組の流れるテレビを見ながらノアルの質問に答えた。


「……どうにもならない。

どうにかすべき大人が手を打たない以上、オレたちにできることはヒロムが万が一にも道を踏み外しそうになれば止めることくらいだ」


「ヒロムはそんな過ちを犯すほど愚かじゃない。

アイツは……」


「誰かのために、思いのために戦おうとしたアイツが行動した結果がこれだ!!

もはやアイツが信じようとしたものがアイツを追い詰めようとしている!!」


「……っ!!」


「……目を背けるな、ノアル。

「竜鬼会」の事件はあの女子校の時とは訳が違う。

あの時はあそこで敵を倒して守ったことが成立したから良かっただけだ。

けど今回は……何もかもが手遅れなんだよ」


ノアルに向けて告げたシオンの言葉。

その言葉からはどこか彼が抱く痛みのようなものを感じとれ、そしてそれを理解したノアルはそれ以上何かを訊ねようとはしなかった……







***



その頃……



ネクロドールを倒し、謎の戦士との戦いを終えたヒロムは真助とともにユリナ、エレナ、ユキナを連れてライブハウス「BEAT」の前まで戻っていた。


そして彼らのもとには一人の男が事情聴取のために来ていた。


「なるほど……。

収容施設から脱走してたネクロドールを無事撃破して民衆に感謝されてたら変な戦士みたいなのに襲われたってわけね」


「ああ、心当たりはあるか……イクト」


さぁな、と男は……イクトは首を横に振りながら一言返すと続けてヒロムの言う謎の戦士について話した。


「そんな怪しい見た目のヤツがいるなら大将にすぐ報告するし「七瀬」からも情報があってもおかしくないからな」


「つまり……」


「その謎の戦士がもう一度大将の前に現れないかぎりは新たな情報は手に入らないと思うよ。

今戦闘現場を五十嵐さん指揮の下で捜査してもらってるけど手がかりはないだろうし」


「……五十嵐、か。

オマエもオレと同じで「七瀬」の力を借りてるんだな」


「そういやここのライブハウスの運営してる人も「七瀬」の人だったっけ。

大将も昔と違って「七瀬」と手を取り合ってるんだな」


「……違うな。

そうでもしないとオレの居場所が無くなるからだ」


イクトが笑顔で話す中、ヒロムはどこか虚しさを感じてるかのような表情を浮かべながら言葉を発する。


ヒロムの言葉によって空気は重くなり、気まずい流れになってしまうが、真助は咳払いをすると話題を変えようとした。


「今のオレたちが「七瀬」に頼ってるとかはどうでもいいことだ。

問題はあの謎の戦士の出処が現時点で何も分からないってことだ」


「そこだよな。

大将と真助で何か気になったことは無いの?」


「気になったこと……。

そういやヒロム、アイツのアップグレードのことデバイスシステムって言ってなかったか?」


「デバイスシステム?

何で「四条」の兵器システムの名前が?」


真助の口からデバイスシステムの名が出るとイクトは不思議そうに首を傾げ、そしてどうしてなのか聞き出そうとヒロムの方に視線を向ける。


イクトに視線を向けられたヒロムは面倒くさそうにため息をつくと自身が何故デバイスシステムの名を出したのかについて説明した。


「至極簡単な話だ。

全身を覆うあの鎧、アップグレードによる強化が機械的に思えたこと……それらを考慮した場合に考えられるのは「四条」の開発しているデバイスシステムしか考えられない」


「けど大将、「四条」がわざわざ大将を狙う必要あるのか?

下手に動けば返り討ちに遭うし、最悪の場合「八神」のこれまでの行いが漏洩するきっかけになりかねないのに」


「たしかにデバイスシステムを生み出したのは「四条」だ。

そして「四条」の当主と婚約の関係にある「八神」の当主たるアイツが利用してもおかしくは無い話だ。

だが……デバイスシステムの情報を持ってるのは何も「四条」だけじゃない」


「どういう……」


「……そういうことか」


ヒロムが何かを伝えようとして話す中それが分からないイクトだったが、その隣で真助は何かに気づいたのかその内容を確かめるようにヒロムに話した。


「デバイスシステムを生み出したのは「四条」だが、その「四条」の施設を攻撃してデータを盗んだヤツがいるってことだな?」


「ああ、そしてそいつの犯行をオレたちは知っている」


「もしかしてだよな、大将?」


「もしかしてで済む話ではないな。

デバイスシステムを奪うかのように「四条」の施設を襲撃した男……ノーザン・ジャックがそれを手にしてる可能性があるってことだ」


「まさか敵は……」


「ああ、ついに本格的に動き出したのかもな。

あの「世界王府」がな」

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