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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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三七一話 望む運命


その頃……


病室にて安静にしている白崎夕弦のもとへと「月翔団」の団長・白崎蓮夜が訪れており、訪れたら蓮夜は彼女にヒロムとの一連のやり取りについて報告していた。


「……以上がヒロムとの会話の全てだ。

今後のオマエについてはヒロムでもオレでもなく、オマエ自身に決めてもらう」


真剣な面持ちで話す蓮夜。

その蓮夜の言葉を聞いた夕弦は少し間を置くように考えると蓮夜に対してある事を確かめるように質問した。


「……私がここで「月翔団」を離れる判断をした場合、強襲部隊の隊長が空席になってしまうということですか?」


「仕方の無いことだ。

誰かが脱退すれば空席ができてしまう、組織としてはよくあることだ」


「……」


「オマエが気にすることじゃない。

後任の能力者くらいは選任すればいいだけだ」


「私が脱退すれば彼はどうなるんですか?」


夕弦は次に自分ではない別の人物の心配をし、その人物についての今後のことを知ろうと質問をした。


質問された蓮夜は夕弦がその質問をするのを察していたのか何も悩んだりせずにすぐに答えを返した。


「黒川イクトに関しては罰することも拘束することもしない。

今回彼は正式に「月翔団」に加入していないとして処理する。

……彼のことは何も心配しなくていい」


「……そうですか」


「オレにはオマエらの恋仲を引き裂くような真似をする気はないが、後悔するような選択だけはしないでほしいと思ってる。

「月翔団」を気にかける必要は無い。

オマエは……」


「無責任なこと言うのね」


蓮夜が夕弦に対して話しているとその会話を途切れさすように天宮スバルが病室に入ってきて蓮夜に向けて話し始める。


「そうやって遠回しに圧かけて選択肢の幅を狭めるよつなことして楽しいのかしら?」


「……そんなつもりはねぇよ」


「アナタにその気がなくても聞いてる側からしたらそういう風に聞こえるのよ」


「……何の用だ」


「都合悪くなると話変える癖やめたら?」


うるせぇな、と蓮夜は少し鬱陶しそうにスバルに言うが彼女に蓮夜の言葉を無視して夕弦に歩み寄り、歩み寄るとスバルは夕弦が出そうとする決断について一つアドバイスをした。


「どっちに属すかなんて決めなくてもいいのよ。

アナタがどうしたいのか、それを答えるだけでいいわ」


「お母さん……」


「おい、スバル。

何……」


「少し黙ってて。

私は今夕弦と話をしてるの」


スバルは蓮夜を黙らせるように言葉を発すると夕弦に向けて自身のことを語り始めた。


「私は「月翔団」から離れて色々なところを巡り歩いた。

世界各地のあらゆる場所に行って自分がこれまで見ていたものがいかに小さいものかを痛感したわ」


「自分を見つめ直したのですか?」


「そうよ。

色んな景色や人を見て多くのことを学び、私は私も知らない自分を知ることが出来た。

けど……それでも私が今何をしたいのかはハッキリわからない。

答えを出したくてもすぐに迷いが生まれる」


だから、とスバルは夕弦の手を取ると優しく微笑みながら可能性に向けて今すべきことを伝えた。


「アナタは悩んで悩んで……悩み続ければいいの。

私がすぐに出せなかったのと同じようにアナタもすぐには答えを出せない。

今ここで答えを出そうと必死になってもそれは本当のアナタの答えじゃないわ。

その場の空気に流されてアナタ自身の答えを無視して上辺だけで答えたような答えじゃダメ」


「……答えが出なかったらどうすればいいんですか?」


「悩み続けるしかないわ。

人はそのために思考を働かせるの。

アナタはこの世界にいる一人の人間。

「月翔団」の部隊を一つ束ねる隊長でもなければ「天獄」に身を置く能力者でもない……悩みを抱いて前に進む人間なのよ」


「……」


「悩みたきゃ悩め」


すると話を聞いていたのか氷堂シンクが病室の扉を開けるなり中に入って夕弦に向けて話そうとする。


傷だらけだった体には包帯が巻かれ、満身創痍ではない

体でこの病室まで来たシンクは落ち着いた様子で夕弦に向けて話した。


「能力者としてのオマエは強い。

「月翔団」を束ねる男が一人も倒せなかった敵の能力者をオマエは負傷してでも倒したんだからな。

「天獄」の戦力としてはオマエがいると大いに助かる」


「シンク、私は……」


「だが残念なことにオレにはオマエを止める権利はない。

「天獄」の創設を提案した程度のオレにはな。

そんなオレからオマエに言えるのは……オマエには悩む権利があるってことだけだ」


「……」


「……それに今ここにヒロムがいれば同じことを言うはずだ。

オマエがどうするかを決めるのはオレたちでもヒロムでもないからな」


「シンク、アナタは私に「天獄」に残ってほしいと言わないのですか?

以前のアナタなら……」


「言ってたかもな、前までなら。

けど、今はそれじゃダメだって分かってるからな」


「そう……」


「待てよシンク。

オマエ、安静にしとけって指示を……」


「オレは特異体質だからな。

優しいお姫さんが万能薬を届けてくれたおかげでほぼ治った」


「ふざけるなよ?

オマエは……」


「残念だが夕弦と同じようにオマエにオレたちをどうにかできるわけじゃない。

オレたちにはオレたちの答えがある」


「オレたちだと?」


オレたちというシンクの言葉が気になった蓮夜。

そんな蓮夜の疑問を解決するようにシンクはその言葉の意味を語っていく。


「真助とノアル、ギンジとカズマはヒロムのもとへ連れていく。

悪いがここに残すわけにはいかない」


「ふざけるな。

アイツらは今回の件で負傷して……」


「ノアルは元々「魔人」の力で勝手に再生する。

真助も霊妖反転からの抜刀した刀「狂血」があれば再生能力の恩恵を受けられる。

となれは負傷しているのはカズマだけ。ギンジに関しては防衛に徹していたおかげで外傷はないが何も出来なかったことへの心の傷とやらはあるだろうがな」


「今急いで動く必要も無いのになぜ安静にしようとしない?

敵は去ったんだ、だったら……」


「その敵を倒したのはヒロムだ。

オレたちは為す術もなく倒されて傍観してるしかなかった」


「なら何を……」


「オレたちは変わらなきゃならない。

そのためにどうするかを決めただけのこと。

それがオレたちに今必要なものだ」


「必要な……」


シンクの言葉に何かを感じたのか夕弦は反応し、そんな夕弦に向けてシンクは冷たく告げた。


「迷うだけならここで一生迷ってろ。

何も出来ないのに来られても迷惑なだけだ。

だが……本当の意味で答えが出せたのならオマエはその答えを信じて進め」


夕弦に対して言葉を告げるとシンクはそれ以上何かを言うことも無く病室を去っていく。


シンクが病室を去っていくと夕弦は彼の言葉によって何かを決心したのか蓮夜を強く見つめる。


そして……


「団長……いえ、お父さん。

私、どうしたいか決めました」







***


夜の屋敷……


ヒロムは庭で一人夜空を見上げていた。


「……」


何をするでもなく地面に座り込んで胡座をかいて夜空を見上げて天一面に広がるかのような無数の星を瞳に映していた。


「……」


「世間を騒がす覇王様が夜空の星を見上げてポエムでも考えてるのか?」


夜空を見上げていたヒロムの後ろに黒い魔力が現れ、現れた魔力は黒い鎧を身に纏って顔を赤いバイザーで覆う騎士の精霊・バッツへと変化する。


バッツ。

かつては姫神飾音を宿主として「八神」の刺客として暗躍していた精霊。


姫神愛華の誕生日パーティーを戦場に変えたあの日にイクトに致命傷を負わせたことがきっかけで姫神飾音とともに消滅したはずのバッツはイクトの精霊として再臨した。


今やバッツはこれまでヒロムたちが知ることの出来なかった事実を知る最大のカギとなっている。


そしてイクトの精霊となったバッツの今の目的は本人が言うには姫神飾音が見届けられなかったヒロムの行く末を見届けることだと言うのだ。


「……宿主が変わると随分と馴れ馴れしい性格になるんだな」


「なんだ?機嫌悪いのか?」


「……いや、そんなんじゃねぇよ」


「そうか。

オレはてっきり世間の強い風当たりに心が疲弊してるのかと思ったんだがな」


「……」


「……図星かよ」


自身の言葉に対してヒロムは沈黙し、その沈黙を受けたバッツは自身の言葉が的中したことに何故かため息をついてしまう。


ため息をついたバッツはヒロムの隣に座ると彼に話しかけた。


「話くらい聞いてやるよ。

これでもオマエの親父の精霊だったんだからな」


「……元、だろ?」


「元でも何でも変わりねぇよ。

遠慮なく話してみろよ」


「……」


「言いにくいか?」


「……いや、オレの中で答えを出すべきか悩んでるんだ」


何か言いにくそうに重い口を開くヒロム。

その口から出た言葉を聞いたバッツはヒロムの話を真剣に聞こうと彼に質問をした。


「何を悩んでるんだ?」


「……ガキの頃、オレは「無能」と呼ばれるようになって周りから見放された。

理不尽な仕打ちと言われのない不名誉でオレはあらゆる大人から希望を奪われる道を歩いていた。

「八神」に命を狙われ、蓮夜には愛咲リナって同級生を利用して策に嵌められ、親父と母さんには……人生そのものを偽られてた」


「……すまないな。

その大人の片棒を担いでたオレには謝っても足りないくらいの罪があるな」


「いや、そうじゃない。

結局オレは「無能」と呼ぶヤツらをこの手で潰すことで気を紛らせていた。

だからそれについてはどうにでもできる気持ちの問題で解決した。

けどて……今回の件はオレが自ら敵を倒して終わらせる道を選び、その結果としてオレは人々の心の中で恐怖の対象となっている」


バッツに語るヒロムの脳裏に「竜鬼会」との戦いの際の市民が自分に向けるあの冷たい目と数々の言葉がよみがえる。


それを黙らせようとするようにヒロムは拳を強く握ると続きをバッツに語っていく。


「今回の件でガイたちは運よく英雄扱いで済んだ。

けど逆にその扱いを受けるアイツらの目に映るオレの評価はアイツらを苦しめている」


「そうじゃないだろ。

アイツらが苦しんでるのはオマエの行いが正当に評価されなかったことに対してだ。

オマエが受け入れてるってことにも原因はあるのは一理あるけど……けどそれを言い始めたらキリがないだろ?」


「……バッツ、行く末を見届けてくれるなら教えてくれ。

今のオレは「八神」を倒すべきなのか?

ユリナたちを守るだけのために戦うべきなのか?

己を偽らぬ覇王になると誓って精神の深層に到達したのに……何も分からないんだ」


「ヒロム……」


「覇王になると決めて戦ったはずなのに現実に直面してこの有様だ。

……今のオレには他人にとやかく言う資格はない」


「……それがオマエの本心か?」


「そうだ……」


だったら、とバッツは後ろに視線を向けながらヒロムに伝えた。


「今度は本音をぶつけてみろや」


「……?」


バッツが何を見てるのか確かめようとヒロムも後ろを向いて視線をそちらに向け、視線を向けた先にいる人物を見たヒロムは少し驚いていた。


「オマエ……」

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