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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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三六九話 孤立の勢力


「止めたいなら……オレを殺せ!!」


大剣を構えながら蓮夜とその部下に向けて告げるヒロム。


ヒロムの言葉を聞いた七瀬アリサと十束俊介は突然の事で驚きを隠せない様子だったが、蓮夜はヒロムのその行動を見ると深いため息をついた後にヒロムを見るなり確認するように言った。


「……本気か?

本気で言ってるんだな?」


「オレがこんなふざけた冗談言う人間に見えるか?

悪いが……本気で言ってるんだよ。

命かける覚悟も出来てるしな」


「縁を完全に切ったとしてもオマエ一人じゃこの先は生きていけないぞ。

オマエは……」


「オマエらに守られてたとでも言いたいなら好きに言えよ。

けどな、その守ってた立場のオマエら大人がこの数日でどれだけの罪を暴かれた?

二年前のオマエがオレを騙した罪、姫神飾音が「八神」やオレを利用した罪、姫神愛華が命を人為的に生み出した罪……オマエらの行いはオレを守るどころか苦しめるだけだった!!」


「苦しめるだけ?

オマエらが「八神」との戦いに勝ったとしてもその後始末はオレらが引き受けてた!!

それなのに都合が悪くなれば好き勝手言うのか!!」


「鬼之神麗夜のことも姫神愛華のこともろくに気づけなかったヤツが非力なヤツを相手にして満足してんじゃねえよ。

ガキを見張るのがそんなに楽か?ガキの監視と不始末で権力かざせるのか?

大層ご立派な立場だな」


「口を閉じろ」


ヒロムが蓮夜に向けて挑発にも取れるような強気な発言をしていると蓮夜の部下数人が拳銃を取り出すなりヒロムに向けて構えてヒロムに黙るように忠告し、その上でヒロムに対して告げた。


「それ以上の団長への侮辱は反逆として処罰しなければならない。

それ以上はしゃべ……」


「反逆?バカ言ってんじゃねぇぞ。

オレは「姫神」との縁を本気で切るつもりだ。

今更反逆だの言われても手遅れだ」


「子どもが一人で何でもできると思ってるのか?

団長は……」


「何も知らない少女を騙し、騙してることも黙ってオレを騙した。

オマエらが信用する団長ってヤツのことをオレはもう信用出来ねぇんだよ」


「団長がどれどけキミのことを……」


「オレを気にかけてるから何だ?

思うなら行動で示せ、上に立つ人間らしく行動でな」


「キミは……」


もういいだろ、とソラは呆れながら言うとヒロムと蓮夜、蓮夜の部下の間に割って入るように前に出ると蓮夜の部下に向けてある事を告げた。


「アンタらが蓮夜を庇いたいなら好きにしろ。

けど、ヒロムの言い分も間違ってないってことも理解しろ」


「何?」


「アンタらは未然に防げたこともまともに防げてないし挙句の果てにはユリナたちを守ってほしいというヒロムの頼みもまともに成し遂げてない。

それに身内間の問題すら解決できない……そんな大人に頼りたいと思うか?」


「キミは彼の言う「姫神」との縁を切ることに反対しないのか?

彼が路頭に迷う可能性があるのに止めないのか?」


「止める理由がない。

ヒロムが決めてヒロムがやりたいと思ったのならオレは止めない。

オレはただヒロムのために力になるだけだ」


それに、とソラは右手に炎を集めると集めた炎で紅い拳銃「ヒートマグナム」を作り出し、拳銃を構えると蓮夜の部下に向けて忠告する。


「オレが倒す敵は今も昔も変わらずヒロムの邪魔をするヤツだ。

ヒロムがやると決めたことを邪魔するのならまずはアンタらから倒す」


「っ……!!」


「……雨月ガイ、キミは止めないのか?」


ソラの言葉に驚く蓮夜の部下だが、その中の一人が驚きながらもガイに彼らを止めないのかを訊ねた。


が……


ガイは腰に帯刀した霊刀「折神」の柄に手をかけると蓮夜の部下に向けて殺気を放ち、殺気で彼らが怯むとガイは彼らの今の姿を指摘するように言葉を発した。


「あまり話を広げようとしないでくれ。

ヒロムがそうすると決めた以上オレが取るべき選択肢は決定している。ソラと同じだ。

アンタらが邪魔するのなら容赦しない」


「キミまで……」


「クジャってヤツの襲撃を止められなかったアンタらにヒロムは任せられない。

それにヒロムが決めたことの邪魔はさせない。

アンタらが何をしたとしてもオレはその悉く斬り捨ててやる」


「……!!」


ヒロム、ソラ、ガイ……三人がそれぞれが「月翔団」に対して強い意志を向けたがために蓮夜の部下たちはその強い意志を前にして臆してしまうが、蓮夜は違った。


ただため息をつくと蓮夜は三人の意志を確認するように冷たく聞き返した。


「オマエらが決めたなら止める気はねぇが覚悟は出来てるんだよな?

オマエらにどんだけの力があるか分かった上で言ってんだよな?」


「くどいぞ蓮夜。

オレはもう決めたんだ、今更変える気は無い」


「……そうか。

イクト、シオン……オマエらの意見も聞こうか」


ガイやソラの意見も代弁するようなヒロムの言葉をきいた聞いた蓮夜は彼の言葉に対して何か言い返すこともなく納得するとイクトとシオンの意見を聞こうとする。


意見を求められたイクトはなかなか口を開こうとしなかったが、彼とは対照的にシオンは迷うことなく蓮夜に向けて思っていることを容赦なく告げていく。


「……アンタらと何かするくらいなら関係を無くした方が今後のためにはなるだろうな。

家の名に甘んじてるのはヒロムではなくアンタらの方だ。

「姫神」に仕える「月翔団」、その名に頼ってるのがバレバレだな」


「名前だけで頼りないって言いたいのか?」


「そう言ったんだよ、遠回しにな。

アンタらのこれまでの功績は何があるか思い返してみろ。

敵を倒したか?何かを守ったのか?

いいや、何もしていない。アンタらは何も成し遂げてない。

あのパーティーの会場に現れた敵を倒したのも今回の件でアンタらがしっかり守るべきだった女たちを守ったのも全部ヒロムの手柄だ。

アンタらは立場を利用して何もしていなかった、違うか?」


「言いたいことはそ……」


「まだある。

今回の件……「竜鬼会」に関しては共闘に近い関係にありながら何故アンタらは何も出来なかった?」


「こちらでも色々調べていた。

その上で……」


「行動しようとしてた?

言い訳にしては上出来だな」


「何?」


「結局アンタら……オマエらは立場を危険に晒したくないから言い訳用意して何もしなかっただけだ。

オレらに敵を倒させて後始末だけ請け負う気だったんだろ?

オマエらが何もしなかったせいでヒロムは余計なもの背負わされてるけどな」


「オマエ……」


事実ですよ、とシオンの言葉に腹を立てる蓮夜を向けてイクトは冷たく言うとそのまま蓮夜を冷たい眼差しで見つめながら告げた。


「アナタは守るべき立場にありながら守れなかった。

守るどころか危険に晒してしまった」


「イクト、オマエは仮にもオレたち……」


「仮にも「月翔団」に属してる身だって言いたいんですか?

残念ですけどオレは「天獄」に属した上で夕弦と一緒に提携しやすいように名前だけ置いてただけ。

オレとしてもアナタに仕えるくらいなら「月翔団」をクビになって解放された方が楽でいいでけどね」


「夕弦のことはどうする気だ?」


「アナタが認めないって言うならオレは彼女に別れるように伝えますよ。

オレとしてはアナタが邪魔しても彼女の手を離す気はないですけど、彼女の心中を察すると離さなきゃならない可能性もあるからね」


「人の娘を弄んで楽しいのか?」


「アナタは大将を利用して人生を狂わせたあの人らのやってたことを野放しにしてた。

そんな人が娘を心配しても……自分勝手にしか思えない。

アナタにとって……姫神ヒロムは形式上で守ってればよかったんでしょ?」


「違う!!

オレは……」


もういい、とヒロムは蓮夜に話させないように言葉を発するとソラたちを下がらせ、彼らを下がらせるとヒロムは蓮夜にある提案をした。


「取り引きだ蓮夜。

姫神愛華の身柄を「七瀬」に渡せ。

そうすれば今の今までの言葉を取り消してやる」


「オマエ……!!

自分の母親を売るつもりか!!」


「罪を贖うためだ!!

正当に贖える機会を与えられる「七瀬」に渡さなきゃ今回の件での悲劇を償えないんだぞ!!」


「オマエは母親を……肉親を見捨てるのか?」


「見捨てたくないなんて思わねぇよ!!

心のどこかで家族だと信じていた……けど、オレは家族だと信じていた相手に利用されてたんだぞ!!」


姫神愛華のことについて蓮夜はヒロムに真意を確かめようとするが、ヒロムに迷いなどなかった。


もはや彼の中には答えが出ていた。


「……オマエはまた罪を隠すんだろ?

都合の悪い事実を隠すのはオマエの得意としてる事だもんな」


「……ヒロム、オレは……」


「……夕弦は「天獄」から追放する。

「月翔団」を抜けると言わなければだけどな」


ヒロムは手にしていた大剣を消すと七瀬アリサの方を見て彼女に向けてある頼み事をした。


「七瀬アリサ、頼みがある」


「頼み、ですか?」


「……今回の件でオレの仲間が負わされるであろう罪を免罪してもらうように手回しして欲しい。

見返りが欲しいなら何でもしてやる」


「待ってください!!

「一条」の情報操作で罪を背負うことはないんです!!

なのにどうしてアナタが……」


罪だからだ、とヒロムはどこか悲しそうな瞳をしながら呟くと続けてアリサに向けて話した。


「今回の件でオレはもう後戻り出来ないところまで手を汚した。

だからオレの背負えるだけの罪は肩代わりしたいんだ。

コイツらの未来を終わらせたくないから」


「姫神さん……」


「……待てヒロム」


ヒロムの言葉にアリサが言葉を失っていると蓮夜は七瀬アリサに歩み寄ると彼女に頭を下げた。


「姫神愛華の身柄を預かって欲しい。

その代わり……彼らの身柄は「姫神」が預かるように手配させてもらいたい」


「蓮夜、残念だがオレは……」


「ヒロム、これは取り引きだ。

オマエの望み通り愛華は「七瀬」に引き渡す。

だからオマエらの非礼に目をつぶってるんだ」


「……そういう話だったな」


「いいのですか?」


確認するようにヒロムに訊ねるアリサ。

彼女からすれば実の母親を引き渡そうとするヒロムを止めたいのだろう。


だがヒロムに迷いはなかった。


「……彼女は人為的に生命を作り出して禁忌を犯している。

引き渡すだけの理由はある」


「ですが……」


「それにオレはもうあの人とは縁を切った。

今更何もねぇから大丈夫だ」


「……」


「……ヒロム、今後のことだが……」


「悪いが蓮夜、今後はあまり関わりたくない。

もう大人に振り回されたくないからな」


「……分かった。

導一にもそう伝えておく」


じゃあな、と蓮夜はヒロムに向けて一礼すると部下を連れて去ろうと歩いていき、その後ろ姿を見届けたヒロムは七瀬アリサに礼を言った。


「悪いな、見苦しいところを見せて」


「いえ、その……」


「姫神愛華の身柄を預かったら後はアンタに任せる。

アンタとの取り引きはそれで終わりだ」


「……そうですか。

分かりました」


では、とアリサはどこか納得いかぬ様子のままヒロムに一礼すると十束を連れてこの場から去っていく。


「月翔団」のトップと「七瀬」の当主が去った。


だがその場に残っているのはヒロムたちと何とも言えない冷たく苦しく張り詰めた空気だけだ……




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