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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
精神干渉編
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三四話 幸先

「少し違うんじゃないかな……それぞれ目指す先がさ」


イクトの言葉。

それがどういう意味なのか夕弦は少し理解出来なかった。


「どういうこと?」


夕弦は思わずその真意を確かめようと尋ねた。


気になってしまい、思わずだ。


イクトも大したことを言ったつもりもないらしく、少し間を置くと話し始めた。


「だって違うだろ?

ヒロムはただトウマと「八神」を潰したい、ガイとソラはそんなヒロムのために戦おうとしているが、その中でもソラは自分の手でトウマを殺そうとしている。」


「……アナタは?」


「オレはさ、大将についていくだけ。

その先に何があっても関係ないね」


夕弦に問われるとイクトは何の迷いもなく答え、そしてどこか無関心にも思える答えを返した。


イクトの自分自身がどうしたいかという答えに夕弦は少し不満があるようだった。

「それでアナタは満足なの?」


「まあね。

オレとしては……オレとしてはこんなやばい日常がなくなって、平穏な日々になればいいと思う」


「だったら……」


「だからオレはヒロムが暴走するのを止めたい。

それと同じくらい、ソラを止めたい」


ソラを止めたい。

どういうことだろうか。


先程からイクトは何が言いたいのだろうか。


「……どういうことなの?」


「……ソラも暴走するかもしれない」


「何ですって!?」


イクトの言葉に夕弦は思わず大きな声を出してしまい、取り乱しかける。


ふと我に返り、咳払いをして気持ちを落ち着かせると夕弦はそれについて尋ねた。


「どういうことなの?」


「……ソラの「炎魔」の力、あれは強力な反面、リスクが大きい。

だからこそ、その力が精神に異常を与える可能性があ

る」


まさか、と夕弦が何かを言おうとすると、イクトはただ頷く。


夕弦はイクトが何を言おうとしているのか理解し、同時にイクトも夕弦がその答えに達したことを理解したのだ。


「……だからソラを止めなきゃならない」



***

部屋を出たソラはヒロムのもとへ行くため、ヒロムが手当てを受けている部屋の前まで来ていた。


ソラはため息をつくと扉を軽くノックしようとしたが、部屋の中からの声でそれを一瞬躊躇った。


「あ、こら!!

変なことしないの!!」


「うるさい。

オレに任せろ」


「だ、ダメだよヒロムくん!!」


「いいじゃない、ユリナ。

ヒロムくんも楽しんでるし」


部屋の中からの声、何かをやっているのはわかるのだが、どうも手当てをしているようには聞こえない。


「ダメよ〜。

もっと優しくしなきゃ……」


おいおい、何してんだよ。


声だけだが、明らかに何かおかしなことをしてるのはわかる。


人が真剣な話してたというのに、アイツは……



入るぞ、とソラはヒロムがユリナたちからの手当てを受けている部屋の扉を開ける。


何をしてるか確認しようと開けたが、その目に映った光景は想像していたものとは違った。


その光景にソラはただ一言発した。


「何してんだ……?」


ソラの目に映った光景、それは別に普段見てる光景からすればおかしなことではなくもなかった。


リサとエリカがヒロムにピッタリとくっつき、それを離れさせようとするユリナ、そしてヒロム当人は知恵の輪のようなものをしていた。


ようなもの、というよりは知恵の輪だ。


ヒロムはというと傷の手当ては既にされている。

刀による傷はなかったが、鬼月真助の能力による黒い雷を受け、何度も攻撃を受けていたらしいが、今見た感じでは問題なさそうだった。




「……いや、何してんだよ?」


「ああ?

リサがこれやれって言うからやってんだよ」


「いや……なんで知恵の輪なんだ?」


「知らねぇよ。

つうかとっと外れ……」


「あ、こら。

また力任せにやろうとする」


手にする知恵の輪を強引に引っ張って外そうとするヒロムにリサはさらに体を密着させながら阻止しようとする。


そんな光景を見るとソラは呆れてため息をつく他ない。


「……ったく。

平和なヤツらだ……」


「……で、何の用だ?」


ヒロムは飽きたのか知恵の輪をリサに渡すと、ソラの方を見ながら何の用なのか尋ねた。


ソラも話を聞こうとする気になったヒロムの今のその状態を気にしつつも話し始めた。



「……いや、オマエの様子を見に来たんだが、ハーレム満喫中みたいで邪魔したな」


「人聞きの悪いこと言うなよ」


事実だ、と今のヒロムの状態にソラはため息をつく。


両手に花、という言葉があるが、今のヒロムはそれより羨ましいことになっている。


リサとエリカがヒロムに密着し、さらにユリナがそばにいる。


この状況をイクトが見れば必ずこういうに違いない。


「リア充爆発しろ……」


「ああ?」


「いや、何でもない。

で、「ハザード」はどうなんだ?」


ソラはすぐさま話題を本来の目的に戻した。


そう、ソラは何もヒロムをからかいに来たわけではない。


ヒロムの身に起きた変化、それによりヒロムに異変がないかを聞きたかったのだ。


「どうなんだ?」


「今のところは、な」


今のところは。

ヒロムのその言い方は少し含みがあった。


いや、こうしている今は何もないと言いたいのだろう。


「……戦闘になればヤバそうか?」


「どうかな?

とりあえず、完全に飲まれかけるまではユリナたちのことを認識出来てたしな……」


ヒロムのふとした一言にユリナたちは嬉しそうな反応を見せるが、ただの惚気にしか聞こえなかったソラはため息しか出なかった。


「どうした?」


「……ったく。

人が真剣に心配してるってのにさ……」


「あら、でも戦うヒロムくんはカッコよかったわよ?」


今全く求めていないことをリサは何の躊躇いもなく言うが、それを聞かされたところでソラはどうにも出来ないし、どうにかしようとも思わない。


リサの言葉をスルーする形でソラは話を続けた。


「とにかく、今後の戦闘は警戒する必要があるな……」


「かもな……」


珍しくヒロムはソラの言葉に同意してくる。


普段なら「オレのやりたいようにやる」だの自分のやりたいことをやろうと言う。


だが今はソラの言葉に対して反論することもなく、ただ同意して受け入れたのだ。


「どうした?

やけに素直だな?」


「別に何も……」




「あ、そういえば」


何か思い出したようで、エリカがヒロムの言葉を代弁するかのようにソラに説明した。


「さっき戦ってた人、ヒロムくんは「周りを見てない」から仲間になる気はないって言ってたのよ」


「……言う必要ないだろ」


「周りを見てないのはいつものことだろ?」


おい、とソラの言葉に文句があると言わんばかりにヒロムは反論しようとしたが、それより先にソラが自分の意見を述べた。



「むしろその方がコイツもやりたいことやれるし、そのおかげでオレらはオレらのやりたいことをやれるんだ」


「だってさ」


ソラの言葉を聞いたヒロムの反応を伺うかのようにリサとエリカはヒロムの顔を覗き込む。


が、ヒロムはどこか呆れた顔をしており、それを見た二人は何も言わずにソラを見た。


「どうした?」


「……」

「……」


「いや、何か言えよ?」


「……ところで」


「おい!!」


唐突に話題を変えようとしたヒロムにソラは不満をぶつけようとするが、ヒロムが話題に出した内容によりソラはそれすら出来なくなってしまう。


「特訓の方はどうなんだ?」


「え……ああ。

あの調子乗りのせいで両手でなら制御できる」


(そこはおかげって言うべきじゃないのかな……?)


ソラのイクトに対する言い方にユリナは少し疑問を抱くが、そこはあえて言わないでおいた。


「オマエの方はどうなんだよ?

夕弦と特訓の方は」


「さあな」


自分のことなのにまた適当な返事を。


ソラとユリナは同じように思うが、ふとヒロムは思い出したかのように語り始めた。


「そういえば、「狂鬼」のヤツと戦ってる時に「ハザード」に飲まれたとき、妙なことになったな」


「妙なこと?」


「あ、そういえばヒロムくんキラキラしてたよね」


「してたしてた」


リサとエリカは鬼月真助との一戦でのヒロムが身に纏った銀色の魔力を思い出したらしく、ヒロムに密着したまま楽しそうに話し始めた。


その光景にソラはもはや不快感しか感じておらず

舌打ちすると本題に戻した。


「何があった?」


「声がしたんだよ。

「あなたなら大丈夫」ってな」


「はあ?

どうせフレイたちの……」


違う、とヒロムはソラの言葉をハッキリと否定した。


こうもハッキリと否定されるとその理由が気になる。


ソラはなぜなのか尋ねた。


「どうしてだ?」


「今まで聞いたことのない声だった。

それに、なぜか心地よくて、懐かしかった」


「……いや、そう、か。

とにかく、「ハザード」については進捗なしなんだな」


「……悪いな」


「別に。

……無理だけはするなよ?」


「わかってるよ」



***



ソラは先に一人で帰り、イクトはなぜか夕弦とともにどこかへと向かった。


身体の方も戦闘で負傷している。

安静にしようと思ったのだが……



「おい、部屋は向こうだろ」


「そんなこと言わないで、ね?」



早々に寝ようと思ったヒロムの部屋の前で、リサとエリカが枕を片手に訪問していたが、ヒロムは追い返そうとしていた。


二人ともベビードールと呼ばれる何やらセクシーなものに身を包んでいるが、そんな誘惑に負けるヒロムではない。


「とりあえず部屋に戻れ」


「じゃあ入れて。

風邪引いちゃう」


「んな恰好するからだ。

……ワガママなら明日聞いてやるよ」


約束事だからね、とヒロムの言葉を念押しするように二人は笑顔で確認してくる。


まあ、一度言ったからには約束は守るつもりだ。


「わかったから行け。

ユリナに怒られるぞ」


「そうね、じゃあね〜」


「何かあったら添い寝するからね〜」


早く行け、とヒロムは部屋に戻ろうとする二人を見送ると部屋の扉を閉め、鍵をかけるとベッドへと向かった。


「……ったく、なんでオレの前であんな恰好するかな?

イクトと違って何も思わねぇのにな…」


ヒロムは独り言を言いながらもベッドに入ると、そのまま電気を消した。


「……フレイたちはまだ家事してるみたいだし、静かに寝るか」


電気も消えて暗くなった部屋の中で目を閉じたヒロムはそう時間もかかることなく、眠りについた……

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