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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
精神干渉編
33/672

三三話 暗躍


ヒロムとの一戦。

それは予想を超えるほどの激闘で、そして真助が心の底から楽しめた戦いだった。


「最高だったな……」


人の気配すらないような路地裏の道をフラつきながらもゆっくりと歩く真助は一人思い出すと思わず笑ってしまう。


「もう一度、戦いたいものだ……」


真助は思い出しながら歩くも体力が限界なのか、壁に手をつくと休憩をとる。


「……だが、ヤツの「ハザード」がある限りは満足に戦ってはくれないか」


真助はヒロムとの戦いを思い出す中で、ヒロムの「ハザード」について考えた。


発症原因を「八神」の当主、トウマと思っていたらしいが、今回の戦闘時の状況からそれはないと真助は考えていた。


そもそも「八神」とかかわりがなく、その大本でもある「十家」とは接点すらない真助と戦っている中で、「ハザード」は進行した。


仮に真助が「十家」とは無縁の存在と知らなかったとしても、戦闘中にあそこまで大きな力に飲み込まれそうになっていた。


つまり、ヒロムの「ハザード」と「十家」の関係性は薄い。


それに、あの銀色の魔力。


あの魔力が出現すると同時に「ハザード」が抑えられ、そしてヒロムの動きが変わった。


「……あれは「ハザード」ではない。

そう、「ハザード」ではない力……」


真助はこれまで「ハザード」だけでなく精神干渉汚染に発症して命が消えた者たちを見てきた。

が、その中でも今回のようなケースは見たこともないし聞いたこともない。


だが、目の前で起きたことは現実だ。


一体何が……


「ずいぶんと派手にやられたなぁ」


すると真助の前に何者かが現れる。


紫色の細身の鎧のようなものを全身に纏い、顔は仮面により隠れて素顔は見えない。


あえて一言で言うなら、その全体像はダークヒーローのようであった。


男だと思われるが、今の言葉を発して聞こえてきた声には機械音のようなものが混じっている。


つまり、変声機を使って正体を隠してるのだろう。



「……誰だオマエ?」


「そう警戒するなよ?

オレはオマエが思ってるほど怪しくねぇぞ?」


「その恰好でよく言うぜ……」


見慣れぬその姿と口調から真助は警戒心を強め、「血海」の柄を掴み、抜刀できるように構えた。

が、ヒロムとの一戦での疲労もあり、少し意識が朦朧としつつあった。


「く……」


「無理をするなよ。

あれだけの戦闘をしたんだ」


「……見ていたのか」


「ああ、しっかりとな。

おかげでいいものが見れたぜ」


目の前の男の言葉、それが何を指しているか真助はすぐにわかった。


「「覇王」のあの力か……?」


「そう、その通りだ。

オマエのおかげでオレのところに運が巡ってきたってもんだ」


「……オマエの目的は何だ?」


「そう構えるなよ。

オレは交渉に来ただけだ」


「何?」


オレと来い、と男は突然真助に告げる。

突然の言葉に真助は少し戸惑うが、すぐさま言い返した。


「オレには何のメリットもない……

オマエが何者かがわからない以上、承諾する気はない」


真助はハッキリと誘いを断るが、男は断られるのがわかっていたのか鼻で笑うと続けて言った。


「……だろうな。

まったくもってその通りだ」



「何?」


「冷静な判断、結構だ。

残念だが諦めるしかないな」


男の何の迷いもない言葉に真助は不思議に思うしかなかった。


それもそうだろう。

急に現れて自分を誘ってきたのに、断られるとまるでわかっていたかのようにあっさりと諦める。


この男の行動すべてが不可解でおかしかった。


「……何がしたい」


「おいおい、何の話だ?」


「……オマエの目的は何だ?」


「またそれか。

……たく、かわいくないねぇ」


ため息をつくと男は真助の方を見ながら続けて言った。


「オマエは精神干渉汚染に少し過敏な反応を見せるよな?」


「……まさか、だよな?」


真助はゆっくりと「血海」を抜刀すると構えるが、疲労があるからか、ヒロムとの一戦のときのような威圧感は感じられなかった。


その真助の姿に男はガッカリしたのか座り込むと、ため息をついてから真助にあることを伝えた。


「……聞いたことあるか?

「ハザード・チルドレン」と呼ばれる子供たちの実験を」


「な……」


男の告げた「ハザード・チルドレン」という言葉に真助は一瞬言葉を失うが、「血海」を握る手に力を入れながら男に問い詰める。


そうしなければ気が済まなかった。

「ハザード・チルドレン」、その言葉にある「ハザード」とはおそらく精神干渉汚染のそれだ。


つまり、



「あんなものを使って実験をしたのか!!」


「おお、その殺気だ。

それでこそ戦闘種族」


「答えろ!!

オマエは「ハザード」の末路をわかっててそれをさせたのか!!」


「そう怒るなよ。

オレは何もしてない。

何せその実験を見物しただけだからな」


ふざけるな、と真助は刀を男に突きつける。

ヒロムとの一戦で見せていた楽しそうに笑う姿はなく、怒りと憎しみに満ちた顔は殺気のみを纏っている。


男はそんな真助の姿を見て満足したのか賞賛するかのように手を叩き、そしてさらなる内容を告げた。


「「ハザード・チルドレン」は「四条」の有するある兵器と併用させるために実験されている」


「なぜここで「十家」の一角が出てくる?

オレが聞きたいのは……」


「よく考えろよ。

その一角の「四条」の兵器と併用させるための実験を行う「十家」の一角を」


「まさか……」


男の言葉に真助は何を言ってるのかすぐに理解し、そして思わず男の言葉を疑う。


「バカな……もしそうだとすれば……」


「そう、あの「無能」も利用価値があるってことだ。

となれば、そのうちオマエを楽しませた男は命を狙われる。

あんな力を使ったんだからな」


すると突然、男は音もなく姿を消してしまう。


真助は慌てて周囲を探すが、全く見当たらない。


どこに行ったんだ。

必死に探していると、姿が無いはずの男の声が周囲に響く。


「オレが言えるのはここまでだ。

あとはオマエがどうするか、それ次第だ」


「待ちやがれ!!

テメェは一体何者なんだ!!」


「あえて名乗るのなら……

蝙蝠の騎士、バッツだ」


「バッツ……」


じゃあな、と最後の一言とともにバッツと名乗った男の声は消えてしまう。


「……ふざけやがって!!」


***


真助が去った後、ユリナが連絡を取ったことで駆けつけたソラとイクトの助けもあり、ヒロムは屋敷に運ばれ 、ユリナによる傷の手当を受けていた。


別室でソラとイクトは鬼月真助との一戦での出来事を夕弦からの報告により知り、そしてヒロムの現状を聞くと二人は悩み始めた。


「つまり……ヒロムの「ハザード」の発症原因は今までトウマとその家である「八神」だと思っていたが、実際はそれらは関係なく、むしろヒロムに原因があるってか?」


「「狂鬼」の言葉を信じるならですがね」



「関係の有無はともかく、大将の「ハザード」が大きく進行してるならそれはそれで厄介だな」


「かなりやばかったのか?」


ええ、と夕弦は返事をしながら鬼月真助との一戦でのヒロムを思い出しながら二人に話し始めた。


「最初はフレイたちと連携して戦いながらも徐々に進行していたようでした。

ですが、フレイたちが圧倒され、ヒロム様も追い込まれた時に「ハザード」が一気に進行してしまいました」


あれ、とイクトは夕弦の話から一つ疑問に思い、それについて問う。


「なんで「ハザード」が一気に進行したかわかったんだ?

「ハザード」は病なんだから……」


「全身を魔力にも似た闇のようなものに覆われたんです。

ヒロム様は魔力を外部放出出来ませんからヒロム様の魔力ではないとすぐにわかりましたし、「狂鬼」もそれを見ると「ハザード」の進行だと確信していました」


なるほど、と夕弦の報告で疑問が解決したイクトは一安心したが、ソラは違った。

夕弦の報告、それを聞いたソラは若干呆れていた。


夕弦の報告内容は確かにヒロムについてのことだが、肝心の「ハザード」については戦った相手である「狂鬼」鬼月真助の言葉による情報ばかりだ。



「……こっちから説明求めておいてなんだが、ヒロムの「ハザード」についてはオレらだけじゃどうにもできそうにないな」



「……そう、ですね。

あの男は妙に詳しかった」


「……ヒロムの「ハザード」の原因か」


そういえば、とソラは突然話題を変え、イクトに話を振った。



「オマエ、何か知ってんだろ?」


「ん?」


「そもそもヒロムの「ハザード」……いや、精神干渉汚染を疑ったのはシオンだ。

アイツが問い詰めてきた時、オマエは誰よりも先に話を終わらせようとした」


ソラはシオンと出会った日のことを思い出していた。


ソラとイクトで苦戦したシオンをヒロムは圧倒し、アルカとテミスに後を任せたとはいえダメージすら受けていなかった。


そんなヒロムにシオンは精神干渉汚染について話し出した。


ヒロムも何の話かわからないという反応だったが、イクトだけは違った。


慌てて話を終わらせるかのように結論だけを言い、そしてその話題すらうやむやにした。


その時はヒロムの機嫌を損なわなくて済んだと思ったが、今となっては違う。


「……あれは知られちゃマズイことがあったからだろ?」


「まさか、たまたまだよ。

ヒロムの「ハザード」が表に現れ始めたのは最近だし、単なる偶然」


「……」


イクトの言葉にソラは疑いの目を向け、そして何も言わずに目を逸らした。


「今は信じてやるよ」


ソラはため息をついてイクトを見ずに言うとそのまま部屋を出ていった。


そんなソラの後ろ姿にイクトは何か言うわけでもなく、他人事のように呑気にあくびをしていた。


そんなイクトに夕弦はソラの言葉に何も思わないのか尋ねた。


「いいのですか?

あんなに言われたのに……」


「別に大したことないって。

いつもあんな感じだしね……」


自分のことなのに興味がなさそうに話すイクトに夕弦は少し呆れていた。


が、そんな夕弦に対してイクトはソラについて語り始めた。


「アイツはさ、落ち着いてるように見えてそれが出来ないんだよ」


「はい?」


「……ヒロムの「ハザード」を止めるためなら自分の体がどうなってもいいから「炎魔」を使おうと考えるし、自分の手でトウマを倒そうと考えてる」


「トウマを倒そうと考えてるのは皆同じでは?」


「少し違うんじゃないかな……それぞれ目指す先がさ」




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