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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
324/672

三二四話 破綻と決別


「ここだ」


バッツの案内と彼の運転する車で移動してヒロムたちは飾音と愛華がヒロムと離れて暮らすのに使っていた別荘へとやって来ていた。


とはいえ車に全員乗れなかったためシンクが氷の竜・ゼロノートを呼び出して移動に使い、車に乗れなかった数人はゼロノートに運ばれた。


「まったく……私のことをタクシーと勘違いしてないか?」


「悪いなゼロノート。

つぎはまともな事で頼るよ」


「今後このようなことがないことを祈る」


シンクが謝るとゼロノートは不満をこぼしながら冷気となって消える。


ゼロノートが消えるなりヒロムは別荘の入口へと足早に向かっていき、インターホンを鳴らして誰かいないか確認しようとする。


が、ヒロムのその行動を見たガイは慌てて止めようとする。


「ヒロム!!

敵がいたら厄介だぞ!!」


「どの道ここにいるのは敵だけだ。

「竜鬼会」の連中かあの人だけ……。

それだけだろ?」


「だけど……」


待て、とシオンはガイを止めるとインターホンを鳴らそうとするヒロムの隣に駆け寄ると右手に微力の雷を纏わせながら扉に手を当てる。


「……」


「どうした?」


何をしてるのか確認しようとヒロムが声をかけると、シオンはゆっくりと手を離してヒロムに伝えた。


「……中に一人いる。

電気信号をこの建物全体に流して調べた結果……女が一人いる」


「つまり……」


「もしかしたらオマエの母親がいるかもな」


シオンはヒロムに伝えると入口の扉のドアノブを掴み、そして勢いよく扉を開ける。


敵が待ち伏せしている可能性を危惧するガイは落ち着かない様子で今にも止めたそうな顔をしていたが、ヒロムはそんなガイの心配を無視するように中に入っていく。


「……どうする?」


中に入ったヒロムに続くかどうかをガイに確認するソラ。


ガイはため息をつくと少し考え、考えた上でソラたちに指示を出した。


「オレとソラ、シオンとシンクは中に入る。

イクトの指揮の下で真助、ギンジ、カズマ、ノアル、夕弦は周辺の警戒を頼む」


「分かった」


ガイは指示を出すと中に入っていき、彼に指名されたソラ、シオン、シンクも続くように建物内へと入っていく。


建物内へと入ると広がるどこか埃っぽい室内。

ヒロムは迷うことなく先に進んでおり、ガイたちもそれについて行くように少し早足で歩く。


廊下をしばらく歩き、リビングへとたどり着くとヒロムは迷うことなくそこへ入り、ガイたちも続くように入る。


「……来ましたね」


リビングにいたのは姫神愛華……ヒロムの母親だ。


彼女の姿を確認したヒロムは何かを言うわけでもなく右手に白銀の稲妻を駆けさせると精霊・フレイの武器である大剣を出現させ、それを手に持つと愛華に突きつける。


「ヒロム!!」


「止めるなよガイ」


突然のことに驚き思わず止めようとするガイに一言強く告げるとヒロムは大剣を突きつけたまま愛華に問い詰める。


「オレの遺伝子情報を埋め込んだ人工生命を生み出したのは確かか?」


「……ええ、間違いありません」


ヒロムの冷たい目で睨まれる中で焦ることも無く静かに答える愛華。


そんな冷静な愛華から全てを聞き出そうとヒロムは彼女に対して質問を続ける。


「なぜそんなことをした?」


「全てはあなたを否定する「八神」に打ち勝つためです。

あなたの力になれる存在が多くいれば「八神」も怖くない、そう考え……」


「その「八神」と親父は裏で繋がっていた。

アイツがオレのことを「無能」と呼ぶように仕向けた犯人だってことはアンタも知ってるはずだ」


「ええ、そうですね。

ですが……」


「アンタはそれを知っていた。

知った上でアイツがやろうとすることに加担した……違うか?」


「……それを知ったからこちらに来られたのですよね?

でしたら……」


「いつから知ってた?」


ヒロムは大剣を握る手に力を入れながら愛華に更なる質問をする。


その質問を受けた愛華は少し間を置くとゆっくりと口を開け、そしてヒロムが知りたいと思っている全ての真相を語り始めた。


「私がその事に気づいたのはあなたがあの名を与えられた数ヶ月後の事です。

私は何度か「八神」の役人の方と会ったことがあったので、突然のことを疑問に感じて独自に調査しました」


「その過程で知ったのか?」


「ええ、その通りです。

あの人が……飾音さんがあえてあなたのことをそう呼ばせていると知り、私はあの人から真相を聞こうとしました。

そしてあの人は私に言いました。

「ヒロムはこれからの未来を変える希望になる。そのための試練だ」と」


「試練だと……?」


話を聞いていたソラは黙っていることが出来ず、思わず拳銃を取り出して構えると愛華に向けて叫ぶように言った。


「オマエたちの身勝手でヒロムは絶望して復讐に染まった!!

愛していたから強くしたい、夢を託したいから追い詰めた……あの男はそう言っていたがそんなのは後付けの言い訳でしかない!!

オマエら二人は……ヒロムのことを人として見ていない。

己の価値観と願望を押し付けるために利用していただけだ!!」


「……その通りですね」


「そしてその押し付けとともに命の冒涜を行った!!

「竜鬼会」の……ウルの存在を生み出したのはオマエだ!!」


「そう、ですね……」


一つ聞かせろ、とシンクは前に出るなり愛華に対して自分の抱く疑問を伝えた。


「鬼之神麗夜はアンタのことを把握してたのか?

ヤツは「八神」の獅角と接触していたが、コンタクトを取るには何かしらの協力が必要なはずだ」


「……ええ、彼に関しては私個人が関与してました」


「なぜ?」


「……飾音さんは「八神」をどうにかして制御してヒロムさんの成長の糧に出来るように仕向けようとしていました。

私は以前から親しくしていた鬼之神麗夜……麗夜と何度かやり取りをし、そして彼に私が生み出した人工生命のウルを託しました」


「ヒロムの支えにしようとしていた存在をなぜ渡した?」


「……ウルは生まれて間もないころはヒロムさんのために生きるのが使命だと感じていました。

ですが時が経つにつれて自分の正体を知った彼は……彼の心は次第に歪み始めました。

他人のために生み出されたと知ったウルは憎悪に取り憑かれ、私はそれを止めるために彼に託したのです 」


「身勝手だ……!!」


愛華の話を聞いたガイは怒りを隠せず思わず拳を強く握り、ガイの反応を見た愛華はヒロムたちにウルのことを続けて話した。


「ウルの体には亀裂にも似た痣があります。

あれは人工生命としての劣化による身体の急激な成長に体が耐えられなくなって生じたものです。

今のウルの体はおそらく限界に近づきつつあります」


「痣……?」


愛華の話を聞くなりガイは何かを思い出そうとする。


「痣」。

そのワードを聞いた途端、何かを思い出さなければならないと感じたのだ。


「……痣……」


「ガイ?」


「どうした?」


突然悩むガイを不思議そうに見るソラとシンク。

二人の視線を受ける中、ガイはようやく何かを思い出したらしく思い出したことについてヒロムたちに話した。


「痣……「覇王竜」にもあったよな?」


「痣?」


「亀裂みたいな痣、顔左半分にあったんだよ、「覇王竜」の顔にも」


そう言えば、とソラとシンク、そしてヒロムは「覇王竜」の顔を思い出した。


ガイが言うように顔左半分に広がる亀裂にも似た痣があった。


先程ヒロムとシンクは「覇王竜」について話している中である可能性について示唆していた。


その可能性について確認するかのようにヒロムは愛華に質問をした。


「ウルの他にもオレの遺伝子情報を組み込んだのか?

敵のリーダー……「覇王竜」と呼ばれる男はウルと同じように左半分に痣があった。

今の話が本当なら……アンタは他にも遺伝子情報を与えてることになる。

……どうなんだ?」


「……「覇王竜」。

そうですか……彼に、ゼアルに会ったのですね」


「ゼアル?」


「それがアイツの名前か?」


「彼の名前です。

私がヒロムさんの遺伝子情報を組み込んだもう一人の青年です」


「なぜ与えた?」


「……それもヒロムさんの力になれる存在を作ろうとしたからです。

彼は元々大きな事故で心肺と身体の機能が半分以上失われていました。

そしてその失った部分を補うようにしてアナタの遺伝子情報を組み込んだのです」


「つもりヤツはウルと違って元々は何の接点もない人間だったってことなんだな?」


「ええ、私が事故で負傷する彼を見つけなければ……こんなことにはなりませんでした」


ふざけるな、とシンクは愛華に向けて強く言うと続けて彼女が引き起こした現実について突きつけるように話した。


「アンタのその軽率な考えと行動理由のせいで今ヒロムは大きな事に巻き込まれている。

こんなことになりました、すいませんじゃ済まされないんだよ」


「そうですね……。

何をしても許されることではありませんね」


「もはやアンタのまいた種はヒロムだけではなくこの世界すら巻き込もうとしている。

その罪をアンタはどうやって償うつもりだ?」


「……」


シンクの言葉に黙ってしまう愛華。

そもそもシンクの言い分は間違いではない、むしろ正論だ。


ヒロムのためと言ってやった軽率な考えと行動によってヒロムはもちろんのこと、ユリナたちや蓮夜たちにまで危害が加わっている。


さらに言えばその被害は街にも及んでいる。

もはや身の内話では済まされないレベルにまで発展している。


囚人たちが野に放たれ、街を破壊するような行為を招いた。


もはや謝罪して済むレベルではなくなっている。

それほどまでの大事になっているのだ。


愛華のこれまでの行いを知って怒りを隠せないソラとシンク、それにガイとシオンも何かしら感じている。


そんな中、ヒロムは大剣を下ろすと武器を消し、ため息をつくとなぜか愛華に背中を向ける。


「ヒロム?」


突然のことに何をするのか気になったシオンは彼に声をかけるが、声をかけられたヒロムは背を向けたまま愛華に向けて告げた。


「……この先アンタと関わることはない。

もう、アンタとの縁はここで終わる」


「……仕方の無いことですね」


「ああ、仕方の無いことだ。

だからもうこうして話すことも無い」


「……」


「ウルもゼアルとかいう野郎も両方まとめてオレが殺す。

止めるならアンタも殺す」


「……止める気はありません」


そうか、とヒロムはため息混じりに愛華に向けて言うと出ていこうとする。


そんなヒロムに向けて愛華は今更ではあるが自らの思いを伝えるように言った。


「どんな形になっても……私はアナタを愛しています。

これまでも……アナタに嫌われた今もこれからも」


「……」


愛華の思いに対して何も言わずにヒロムは去っていき、ガイたちもそんなヒロムに続くように静かに去っていく……


母と子、本来なら家族として接する距離感の二人はもういない。


今日ここで……

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