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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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三一八話 悪逆の狼煙


ところで、と敵のアジトに殴り込むと意気込んだシンクはふと何か気になったのかゼロノートに向けて質問をした。


「ゼロノート、言い難いんだが……そのまま行動するつもりか?」


『そのままとは何だ?

私は竜だぞ?』


「そうじゃなくてだな……。

その竜の姿は普通の人間が見れば混乱を巻き起こす可能性がある。

だから言ってるんだよ」


『人間のことなど気にしてられん。

私は……』


「人間のオレと契約するんなら従え」


ゼロノートの言い分を最後まで聞くことなくシンクは竜に向けて強く告げ、言われたゼロノートはため息をつくと仕方なさそうに従おうとした。


従う意思を表すかのようにゼロノートは全身を冷気に変化させると小さな冷気の玉となり、冷気の玉はシンクの体の中に入り込んでいく。


「……!!」


『お望み通り、人間に迷惑がかからぬようにした。

満足か?』


「……まぁいい。

これでオレも動きやすくなった」


『敵が現れたら私をここから出せよ?』


「オマエは最後の切り札だ。

ヤバい時にしか呼ばねぇよ」


『ふっ……ならその時が来るのを楽しみに待つとしよう』


ただただ不吉でしかないゼロノートの言葉がシンク中に響き、その言葉を聞いたシンクはため息をついてしまう。


その時が来るというのはシンクとしては本意ではない。

最後の切り札、つまりは敵が奥の手を出して追い詰められてしまった時のための手段なのだ。


それをあっさりと使うような状況が訪れるのは芳しくない。


だからこそゼロノートの言葉はあまり喜べないし、どちらかと言うとため息をつきたくなる。


「……勘弁してくれ」


『なぜだ?

私はオマエの役に立つために言ってるんだぞ?』


「笑えねぇな。

竜を野放しにするような状況に陥るなんて……」


「さっきから一人で何話してんだ?」


シンクが自身の中のゼロノートに話していると誰かがシンクに声をかける。


聞き覚えのある声、その声を聞いたシンクは声のした方に目を向ける。


声のした方には三人の少年がおり、三人はシンクの方を見ていた。


が、シンクは戦闘態勢に入ろうとも警戒しようともしなかった。


むしろ逆だ。

彼の方からその三人の方へと歩み寄っていく。


「どうやらまだ生きてたらしいな」


「オマエに心配されるまでもねぇよ」


シンクのもとに姿を見せた三人の一人……相馬ソラはシンクに向けて強めに言うと歩み寄ってきた彼に状況を確認するように質問した。


「そっちの状況を教えろ」


「いきなりだな」


「敵の狙いのこともある。

手短に話せ」


急かすようにシンクに問い詰めるソラを後ろの二人……雨月ガイと黒川イクトはソラの様子を少し呆れ気味に見ており、シンクもソラの質問に答えるように何が起きていたかを語った。


「オレが駆けつけようとした時、栗栖カズマとギンジが仮面をつけた「竜鬼会」 能力者と戦っていた」


「仮面をつけた……バロンってやつだな」


「倒したのか?」


ソラの後ろからガイがシンクに対して質問すると、シンクは首を横に振るとそれについて詳しく話した。


「倒したというよりは倒された、だな。

さっきオレが倒したクローラーってヤツに殺されたんだよ」


「クローラー!?

あの死刑執行人のクローラーが「竜鬼会」に味方してたのか!?」


「やはり賞金稼ぎをしてたオマエは知ってるか。

そう、そのクローラーだ。

ヤツはこの世界に人がいるかぎり罪は消えないなどと言ってヤツらの竜装術の力を得た」


「……どんな能力だった?」


「クローラーは「凍獄竜」……夕弦から事前にもらっていたデータにはない名前だった。

だがバロンの方は……たしか「幻奏竜」って言ってたか?」


「つまり……」


「ソラの倒した「重爆竜」とガイの倒した「斬刃竜」と合わせてデータにあった三体は倒せたってことだな」


「残るは……」


「夕弦の倒した「泡沫竜」も合わせれば残るのは二体……「光天竜」と「闇天竜」だな」


ソラ、ガイ、シンクの倒した竜装術の使い手と夕弦の倒した使い手を合わせて残る敵を計算しようとするイクト。


そんなイクトに向けてシンクは冷たい視線を向けながらある事を訊ねた。


「夕弦がデータと一緒にメッセージを添えてたが……オマエはヤツと契約したのか?」


「ヤツって……」


惚けるな、とシンクは指を鳴らすとイクトの周囲の地面を凍らせ、彼を少し驚かせると脅すように言葉を発する。


「ガイもソラもすでに知ってるはずだ。

それならオレにバラしても問題ないはずだ」


「……分かったよ」


イクトはため息をつくと自分の影に視線を向ける。


イクトが影に視線を向けると彼の影の一部が歪み、その歪みの中から黒い鎧の騎士のような姿をした精霊・バッツが現れる。


「よぉ……この姿じゃ馴染みねぇよな?」


バッツは現れるなりシンクに向けて言うが、シンクはその言葉を無視するなり彼に向けてある質問をした。


「ヤツらの研究所の場所を教えろ。

時間が無い、分かる限り全てを教えろ」


「……残念だがシンク。

オマエのその期待には応えれそうにない。

ヤツらの拠点や実験設備は使い捨てが多かったから把握出来てないんだよ」


「ふざけるな。

オマエが知らないわけないだろ?

オマエはあの……」


落ち着け、とガイはバッツに問い詰めようとするシンクを宥めるように言うと彼とバッツの間に立ち、シンクがバッツに手を出す前に彼に向けてある事を伝えた。


「急ぐ気持ちは分かるけど落ち着いてくれ。

バッツが本当に知ってるならオレたちはそこに向かってるし、夕弦がオマエに渡したデータにも添付してるはずだろ?」


「……」


「オレたちだってこの事態を早く片付けたい。

それはオマエと同じだ」


「そんなことは言われなくても分かっている。

だがな、ガイ……オマエは大きな事を見落としている」


「大きな事?」


「おい、何の話だ?」


説明しろ、とソラはシンクに向けて言うと彼が何を考えているのかを知ろうとする。


シンクはソラの言葉を無視するとガイに対してある男の事を訊ねた。


「鬼之神麗夜についてはどうなった?」


「おい、オレのこと無視すんなよ?」


「オマエのそれは後回しだソラ。

まずは鬼之神麗夜について教えろ」


「……どこまで知ってる?」


「死体で見つかったこと、ヤツと「装鬼会」の人員が利用されていたこと。

夕弦のデータにあった内容だが、他に隠してるのなら教えろ」


「他も何も隠してることは何も無い。

仲間にわざわざ隠し事する必要ないだろ?」


「仲間、か。

訳あり揃いのメンツだがな」


「それも全部オマエの掲げた「天獄」のせいだけどな」


どこか皮肉とも取れるような言い方をするソラの態度にガイはため息をついてしまう。


するとイクトが一度話題を変えるようにシンクが言おうとしていたものを聞き出そうとする。


「ところで何を話そうとしてたんだ?

急ぐだけの価値はあるものか?」


「それはオマエが判断すればいい。

だが、オマエたちはなぜヤツらのことを無視してる?」


「ヤツら……?」


「誰のことだ?」


シンクが言いたいとしてることが分からないソラとガイは不思議そうな顔をし、話を聞き出そうとしたイクトも首を傾げるが、そんな三人とは違い一人はシンクが言おうとしていた事に気づいていた。


「……シンク、オマエはこの期に乗じてトウマが仕掛けてくると考えているのか?」


「「!!」」


「なっ……!?

なんで「八神」の親玉の名前が!?」


バッツの口から出た言葉にガイたち三人は驚きを隠せずにいたが、シンクは違った。


「トウマはあの一戦でヒロムに負けている。

本来ならそこで全て終わってもよかったはずだ。

だが……ヤツは必ず復讐に現れる。

あれほどの大規模な戦いで負けたことで抱く誇りは汚されたと勘違いしてるはずだ」


待てよ、とバッツはため息をつくとシンクの考えに対して反論するように話し始めた。


「トウマがヒロムを狙う可能性はオレも考えた。

だが考えてみろよ?トウマがヒロムの命を公に狙おうとすればボロが出る。

「ネガ・ハザード」の件……他の人体実験の件もだ。

ヤツは裏で人道に反しすぎている。

今ヒロムを狙えばヤツは自分の首を絞めかねない」


「だから可能性は低いってか?

少しでも可能性があるなら対策を……」


「その可能性自体ないんじゃないか?」


シンクがバッツに反論する中、何かに気づいたガイはそれをシンクに伝えた。


「今回の件、鬼桜葉王が寄越した情報から全て始まってる。

これがもし「一条」が関与してるってなれば……トウマとしては逆らえない相手がいるなら動かないはずだ」


「まさかだが……敵でしかない「十家」の頂点の存在を信用するってのか?」


「今のこの件を解決するために「八神」を対処するなら方法は他にはない。

確証がないにしても考えられる可能性があるならそれを信じるしかない」


「……ちっ。

よりによってあんなヤツらを信じるしかないとはな」


「大博打なのは分かってる。

それでも……」


「やるしかない、だろ?

分かってるさ。

だがやるからには徹底的にやるぞ」


「そのつもりだ」


「で……具体的にはどうする気だ?」


「次は「次元竜」ウルを……」


次にどうするかをシンクに伝えようとしたガイ。

すると突然どこか遠くの方から大きな爆発音が響いてくる。


「「!!」」


「爆発!?」


「一体どこから……」


おい、とシンクは爆発音がした方を見るなり慌ててガイたちに声をかけると走り出そうとする。


「シンク?

どうし……」


シンクの見る先を見たガイたち。

シンクが慌てている理由を知ったのか彼らも焦りを表情に浮かべると彼を追うように走っていく。


「ふざけやがって!!」


「これからどうするか悩んでる時に!!」


ソラとイクトが不満をこぼし、ガイも焦る中で思わず言葉を出してしまう。


「頼む……間違いであってくれ!!」


「だが方向は一致してる!!

急がないと間に合わなくなるぞ!!」


「分かってるよシンク!!

このままじゃ……ヒロムが危ない!!」


ヒロムが危ない、そう言ったガイは走る速度を上げようとする中で携帯電話を取り出すと誰かに電話をかける。


『どうし……』


「……シオン!!

ヒロムが危ないかもしれない!!

至急屋敷の方に向かってくれ!!」


『何!?

分かった!!』


電話は一方的に切られるが、ガイは気にすることなく次の相手に電話をかけようとする。


が、次の相手がなかなか電話に出ようとしなかった。


「くそ……!!

頼むから出てくれ!!」


焦りだけが増す。

何か起きているのは間違いなく、そしてその事実だけが彼らの不安を駆り立てる……


***



ガイたちが慌てて走り、ある場所に向かう一方……


未だ目を覚まさないヒロムがいる屋敷の周囲は「月翔団」の団員が守るように配備されている。


が、少し離れた場所で起こる爆発によって警戒は強くなりつつあった。


「敵が近くにいる可能性がある!!

警戒しろ!!」


大きな声で叫ぶようにして指示を出す団長・白崎蓮夜は団員に指示を出している。


穏やかな雰囲気ではない。


屋敷の中で皆の帰りを待つ姫野ユリナたちはそれを感じ取っていた。


そしてそれは不安に直結してしまい、彼女たちはリビングの窓から外を見ようとしていた。


「みんな大丈夫かな……?」


「大丈夫よきっと。

いつもみたいにボロボロになってでも帰ってくるよ」


心配そうにつぶやく姫野ユリナを励まそうとする桃園リサだが、彼女も不安は感じている。


リビングにはただ不安が漂っていた。


そんな中、異変は突然起きた。


どこからともなく飛んでくる魔力の弾丸が屋敷の庭に次々に飛来し、そしてその一部が建物にまで襲いかかる。


「「きゃぁぁあ!!」」


突然のことで悲鳴をあげるユリナたち。

そんなユリナたちの不安や恐怖をさらに駆り立てるかのように弾丸が飛来した庭に敵が現れる。


「あの時の借りを返してやるか……」


その敵は……かつてヒロムが倒した男、「竜鬼会」の能力者・弾馬銃哉だった。


そしてその傍らにまた一人……


白い装束に身を包んだ男が現れる。


「さぁ、全てを終わらせようか」


白い装束の男……「次元竜」のウルは天に手をかざすと空間を歪め始める。



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