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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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三一五話 氷VS氷


氷堂シンクとクローラー。

二人が睨み合う中、カズマは何とかして立ち上がろうとしていた。


「くっ……」


体を襲っていた氷は消えている。

だがクローラーの攻撃で受けたダメージは小さくなく、カズマの意思とは裏腹に体はなかなか立ち上がろうとしなかった。


「この……」


「何してる?」


カズマが必死に立ち上がろうとするのを見るなり不思議そうな顔をしながら質問するシンク。


不思議そうに見てくるシンクに向けてカズマはボロボロの体を何とかして立ち上がらせると彼に向けて伝えた。


「……加勢する」


「無茶だな。

ヤツの攻撃でかなり消耗してるはずだ」


「オマエ一人に任せられるか……。

オレも一緒に……」


「ヤツの氷に手も足も出ないのにか?」


「……」


現実を突きつけるかのようなシンクの言葉、シンクが口にした言葉を前にカズマは言葉を奪われて黙ってしまい、そんな彼の様子を見たシンクはため息をつくと事実を語った。


「能力者の戦いは強い方が主導権を握る。

オマエの能力がヤツの氷に消されてたのはヤツの能力がオマエの能力より強いという証明でもある。

今オマエが加勢したところで同じことを繰り返してより大きなダメージを受けるだけだ」


「だけどオレは……」


「それにオマエが無茶して命を落とすようなことがあれば、オマエを信じて武器を託したヒロムの思いはどうなる?」


「……!!」


シンクの口からヒロムの名が出るとカズマは反論しようとしてい言葉を詰まらせ、そしてそのまま黙ってしまう。


黙るカズマを前にシンクはため息をつくと、彼を説得するように話をした。


「オマエが戦うことは別に構わないさ。

これまでオマエはそうやって生きてきたのならそれがオマエの生き方だ。

これまでのように戦いに全てを捧げるなら止めはしない。

だがその全ての中にヒロムに対する思いやヒロムと同じように何かのために戦おうという強い意志があるのならオレは止める。

オマエのことを信じて待つ仲間がいるのなら、オマエはそこに生きて帰らなきゃならない」


「……」


「今のオマエは一人じゃないはずだ。

何かをやろうとして一人で背負わなくていい。

だからオマエはギンジと一緒に隠れるなり逃げるなりしてくれ」


「……任せていいのか?」


「任せろ。

アイツはオレの手で必ず倒す」


「……分かった」


シンクの言葉にカズマは頷くと倒れているギンジのもとに歩み寄り、彼を抱き起こすと肩を貸すようにして戦場から離れるように歩いていく。


……が、そのカズマの行動を一人の男は黙っていなかった。


「敗者には相応の裁きを与える。

逃げるなど許さん」


敵は……クローラーは冷たい眼差しを向けながら言葉を発するとカズマに向けて氷の矢を無数に放つ。


放たれた氷の矢は勢いよくカズマに迫っていくが、シンクが指を鳴らすとカズマを守るように氷の壁が立ちはだかり、氷の矢は壁にぶつかると砕けてしまう。


シンクがさらに指を鳴らすと氷の壁が変形して砲台となり、砲台から巨大な氷塊がクローラー目掛けて放たれる。


放たれた氷塊は乱回転しながら敵に向かって行くが、クローラーはしゃがむなり地面に手をつけて地面を凍らせると凍らせた地面の一部を壁のように変形させて氷塊を防いでみせる。


壁に激突した氷塊は砕け散る中で炸裂して壁を破壊しようとするが、クローラーの作り上げた壁はその一撃に耐えたのだ。


「……さすがは造形術の天才。

造形物のイメージをノーモーションで氷に伝達して形成するとはな」


「オマエとは違う。

オレはこういう時のために常に鍛錬を重ねてきた」


「だがオマエの氷ではオレの「凍獄」には及ばない。

オレの間合いは無敵なのだからな」


「なら試すか?」


シンクが三回目となるアクション、指を鳴らすという行為を行うと彼の周囲に数体の氷の龍が現れ、現れた氷の龍はクローラーの方を見るなり大きな口を上げながら冷気を吸い寄せていく。


「ブリザード・ブリューナク」


吸い寄せた冷気を一つの大きな力に圧縮すると数体の龍は冷気をビームのようにして撃ち放ち、撃ち放たれた冷気はクローラーに迫る中で周囲の大地を凍てつかせながら力を増していく。


が、クローラーは大きく手を叩くような動作を見せると自身を守らせるように巨大な氷の像を呼び、シンクの氷の龍が放った冷気を受け止めさせる。


「ほぉ……」


「言ったはずだ。

オレの間合いは無敵だと……」


「オマエごときが無敵なわけねぇだろ」


シンクが一言呟くと彼の氷の龍の冷気を受け止めていた氷の像が突然氷に覆われていき、氷に覆われた氷の像は方向転換するとクローラーに殴りかかろうとする。


「これは……」


「造形干渉。

そいつの指揮権はオレがもらった」


やれ、とシンクが呟くと氷の像は雄叫びをあげるように大きな動きを見せるとクローラーに殴りかかる。


が、氷の像がクローラーを殴ろうとした瞬間、敵は足に冷気を纏わせると地面を強く蹴って地中から氷柱を出現させる。


現れた氷柱は氷の像を貫くと破壊し、続けてシンクや逃げようとするカズマたちに襲いかかろうとするが、シンクが舌打ちすると氷柱は一瞬で何かによって粉砕されてしまう。


「!?」


「そんなに驚くことかよ。

オマエが大気を操ったようにオレも大気を操ったんだよ。

もっとも操った先は氷柱の中の密度だけどな」


「まさか……膨張させたのか!?」


「何も難しいことじゃないからな。

氷の膨張も造形術の応用で簡単に出来る」


「……貴様、いつの間にそれほどの力を」


「オマエらの情報が不明確すぎるだけじゃねぇのか?

オレとしては別に特別なことをしてる気もないし、こんなのは昔からやれた」


それよりも、とシンクはクローラーを指さすなり敵に向けてある事を訊ねた。


「オレとしてはオマエが「竜鬼会」に協力してることが驚きだったんだが……何でオマエはヤツらに肩入れする?」


「その話は貴様に関係あるのか?」


「関係あるなしはどうでもいい。

オレとしては気になって仕方ないんだよ。

正義をかざす死刑執行人のクローラーが悪の道に染まっている「竜鬼会」に属してるのがな」


「……なるほど」


「答えてくれるよな?

答えないのなら……」


真意を確かめようとするシンクはクローラーの周囲の地面を凍らせるとそこから無数の氷の刃を生み出していつでも放てるように用意した。


氷の刃を見て全て理解したクローラーはため息をつくと少し面倒そうにシンクの問いに対して答えた。


「至極簡単な話だ。

この罪に塗られたように薄汚れた世界を正すためだ」


「意味わかんねぇな。

世界を正すも何もオマエはこれまで死刑執行人として多くの罪人を裁いてきたはずだ。

こんな無実の人間を巻き込むようなヤツらと手を組んでまで罪人を裁きたいのか?」


少し違うな、とクローラーはシンクの言葉の一部を訂正するような前置きをし、その上で彼の言葉を訂正して説明した。


「オレは貴様が言うように今まで多くの罪人を裁いてきた。

罪を償わせるためにひたすらにな。

だがそれでも世に蔓延る悪は途絶えない。

いくら刑を執行しても新たに罪人が現れる」


「その悪の中に「竜鬼会」が含まれるんだぞ?

それなのに……」


理解したんだ、とクローラーはシンクの言葉を最後まで聞かずに自分の話に戻そうとし、そして話題を自分のことに戻したクローラーはシンクに向けて衝撃的な事を口にする。


「この世に悪が存在するから罪人が増えるのではない。

罪人が増えるから悪が蔓延するのではない。

そう……この世界に人という生命が存在するかぎり悪は途絶えない。

だからオレは「竜鬼会」の計画に賛同し、そしてこの世界そのものに刑を執行して全てをリセットしようと決めた」


「オマエ……。

自分の言ってることがおかしいって分かってるよな?」


「貴様が理解出来ないのも無理はない。

貴様だけではない……貴様の仲間も貴様らが守るか弱き女たちもこの話を理解するのは不可能だろう。

そして理解出来ないということはそれだけでも罪だ」


「罪だと?」


「真実を知らぬという罪だ。

この世界の真実を知らぬというのも重き罪だ」


ふざけるな、とシンクは全身に魔力と冷気を纏いながや叫び、そしてシンクはクローラーの言葉を否定するように強く叫んだ。


「ヒロムたちや彼女たちは今を懸命に生きている!!

それをオマエの身勝手なその思想に巻き込むような真似は絶対にさせない!!」


「どんな思想を抱こうとオレは必ず裁く。

とくに貴様は大きな罪を抱いている」


「何?」


「貴様は何かのために戦おうとしているようだが、そもそも貴様は「八神」に加担して多くの人間を巻き込んでいる。

「竜鬼会」の竜装術に活用されている人体実験を生み出したのは「八神」、そしてその「八神」に一度は仕えていたのはオマエだ」


クローラーはシンクがかつて「八神」に属していたことを指摘し、そしてそれそのものが罪だと言う。


が、それを指摘されたシンクはため息をつき、首を鳴らすと大した反応も見せずに敵に向けて告げた。


「そんなもん、オマエに言われなくても理解してる。

「八神」に属していたことも、それによってヒロムの人生を救えなかったことも……その全てがあったから背負わなければならない重い十字架があることもな」


「分かっているならなぜ罪を重ねる?」


「……汚れ役はオレ一人で十分なんだよ」


するとシンクの背中に氷の翼が現れ、両手両足は氷に覆われると鋭い爪を纏い、そして口元を覆うように氷のマスクが装備されると鋭い牙をのぞかせる。


竜装術・氷牙竜。

シンクが実力で到達した竜装術。


その竜装術は竜装術の使用する人体実験から生まれた竜装術とは違う。


純粋種と呼ぶべき力の象徴とも呼べるその姿を見せたシンクはクローラーを睨みながら己の罪について語る。


「オレの手は汚れている。

多くの命を奪い、多くの過ちを犯したからこそ汚れた。

アイツらがオレと同じように罪に染まるくらいならオレはそれを止めてオレ自身の手を汚す。

オレが罪を背負うことでアイツらが平穏の中で生きられるならオレは何だってやる」


「綺麗事だな。

どんなに言葉を並べても罪を重ねることに変わりはない。

綺麗事もそこまでいけば愚かだ」


「愚かで結構。

オレのこの命はもうヒロムやアイツらのために捧げると決めている」


それに、とシンクは脳裏にユリナの姿を思い浮かべると彼女への思いを馳せながら構えるとクローラーに向けて走り出す。


「こんなオレの帰りを待ってくれている女がいる。

この戦いに勝って無事な姿を見せるまではくたばるつもりはない!!」

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