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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
314/672

三一四話 冷たい執行人


「な……」


「何が……?」


目の前で起きた突然の出来事。

それにカズマとギンジは驚くとともに困惑していた。


何が起きている?

なぜこうなったのか?


二人にはそれが理解出来なかった。


無数の氷柱に体を貫かれたバロン。

そしてそのバロンの後ろからゆっくりと現れた一人の男。


長い白髪、黒いロングコート。

そして冷たい表情と鋭い眼差し。


見るだけで冷たい何かを発してるような気がしてならない。


まるで氷のような男……その男はその鋭い眼差しでバロンを見るとバロンに向けて言葉を発する。


「貴様は役目を果たせなかった。

その意味……理解してるよな?」


「待ちやがれ……クローラー。

オレは……言われた通り敵の足止めを……」


「足止めをするはずの貴様は醜態を晒す形で追い詰められている。

貴様は足止めと同時に敵の始末も任されている。

それなのに貴様は敵の一人もまともに殺せていない」


「オマエが邪魔しなきゃ……これから……」


「計画は最終段階に達している。

敵を倒すのに手間取ってる暇も……ない」


バロンを貫く氷柱から無数の氷の枝が生え、その枝がバロンの体を徐々に凍りつかせていく。


「や、やめろ……!!

クローラー!!

他のヤツらはウルに助けられて……」


「ウルはウルだ。

オレはオレ……他のヤツらがどうかなんて関係ない」


「ふざけ……」


さよならだ、と男が……クローラーが指を鳴らすとバロンは全身氷漬けになり、そして氷は砕け散ってバロンの体は氷とともに消えてしまう。


砕け散った氷はさらに粉々になって粒子のように変化すると風に吹かれて散る。


そこにあるはずのバロンの体はなく、そしてバロンの姿も消えている。


恐怖、得体の知れぬ恐怖がカズマとギンジの身に襲いかかる。


「ギンジ、まだ動けるか?」


「何とか……」


「動けるなら……オマエだけでも逃げろ」


ギンジの身を按じるカズマは彼に対して逃げるよう提案するが、ギンジは首を横に振ると呼吸を何とかして整えると拳を強く握りながら構え直した。


ギンジは「ハザード」を強引に増幅させた強化法による反動のせいかふらついており、今にも倒れるのではないかとカズマは心配になっていた。


だがそんなカズマの心配を余所にギンジは強く握る拳を構える中で敵を見つめ、そしてカズマに向けてある事を伝えた。


「……限界まで追い込む。

だから……援護頼む」


「援護くらいいくらでもしてやるが……危ういと思ったら顔面殴ってでも連れて逃げるからな?」


「分かったよ……!!」


「いくぞ!!」


カズマの言葉を合図にするように二人は走り出し、クローラーは二人の行動を見るなり首を鳴らす。


そしてバロンに向けていた鋭い眼差しが二人に向けられる。


「……貴様らの相手はオレの管轄外だが、仕方ない」


「いくぞ、コラァ!!」


「やって……やる!!」


カズマは赤い雷を纏うと加速して接近すると猛攻を放ち、ギンジも瘴気のようなものを纏いながら走るとクローラーに勢いよく拳撃を放つ。


だが……


「その程度か」


カズマとギンジの放った攻撃はクローラーに命中することはなく、それどころか二人の攻撃はクローラーの手前で何かによって防がれてしまう。


「何!?」


「オレたちの攻撃が……」


「想定の範囲内……いや、想定していた以上に弱い」


「……まだだ!!」


クローラーの言葉に対してカズマは強く叫ぶとトンファーに赤い雷を纏わせ、纏わせた雷で槍を形成すると連続で攻撃を放つ。


が、放ったその攻撃も何かによって防がれ、そしてカズマの赤い雷の槍は凍りついてしまう。


「雷が……凍ってる、だと!?」


予期せぬ事態に驚くカズマ。

驚いたことによってカズマの動きは止まってしまう。


そんなカズマに向けてクローラーは何かを語り始める。


「……栗栖カズマ。

仕える主人を変えたことで迷いがなくなり、強さを得たようだな」


「あ?

余裕があるからって……」


「バロンを相手にするならその程度で事足りただろう。

だがオレの相手をするにはまだ足りない」


クローラーが手をかざすとカズマが身に纏う赤い雷が一切の音も立てずに凍りつき、完全に凍りついた雷は砕けて散々になっていく。


何が起きた?

一瞬のことで理解が追いつかないカズマは次の行動に移ることが出来なかった。


……が、ギンジは違った。


「ああああ!!」


何度も何度もクローラーに向けて拳撃を放ち、何度目に見えぬ何かに防がれても諦めずに攻撃を放ち続けていた。


そんなギンジの攻撃を前にクローラーはため息をつくとギンジの拳を掴み、ギンジの攻撃を止めた上で彼に向けて冷たく告げた。


「岩城ギンジ。

オマエは何をしてもオレには及ばない。

それどころかオマエは敵の戦力としても計算されていない」


「んだと!?」


「弱い、弱すぎる。

この程度で強くなったと誤解してるなら考えを改めるべきだ」


「うるせぇ!!」


クローラーの言葉を否定するように叫ぶギンジは瘴気のようなものをさらに放出させるとクローラーに掴まれていない方の拳で殴ろうとする。


しかし……


クローラーに掴まれているギンジの拳が突然凍り始め、そしてそれは次第に腕全体に広がっていく。


「な……何だよこれ!!」


「せめてもの慈悲だ。

ゆっくりと苦痛を味わいながら朽ちるがいい」


クローラーはギンジの拳を離すと彼を蹴り飛ばし、そして蹴りを受けた部分も徐々にではあるが凍り始めていた。


「が……あ……ああ!!」


腕の体が凍りつく中、ギンジの体から溢れていた瘴気のようなものが薄れていき、気づけばそれは完全に消えていた。


「あ、ああ……ああああ!!」


体を蝕むように広がりながら凍りつく中で生じる激痛にギンジは苦しめられ、それを見たカズマはトンファーに赤い雷纏わせ直すと再び攻撃を仕掛ける。


「オマエ!!

ギンジに何をした!!」


ギンジを助けようと放つ攻撃。

だがそれもクローラーの前で何かによって防がれてしまう。


「この……!!」


クローラーを倒そうと何度も放たれる攻撃。

その全てがクローラーの前で何かによって防がれてしまう、その繰り返しだ。


「何で当たらねぇんだ!!」


何度も何度も放つ攻撃、その全てが防がれることに苛立つカズマ。


何度も放つ攻撃の中の一撃がクローラーに命中していればそれはそれで気持ち的に余裕がまだあった。


だが今、カズマの攻撃は一切命中していない。


それどころか……


「なっ……!?」


それどころか攻撃を放ったカズマのトンファーは氷に覆われ、そして纏っていた赤い雷は凍りつくとまた砕け散ってしまう。


さらにカズマの体の一部はギンジと同じように凍り始めていた。


「どうして……」


「貴様はオレの能力の効果範囲内に留まり過ぎた。

ただそれだけだ」


「能力の効果範囲だと……?」


「オレの能力は「凍獄」。

自身の周囲の大気や大気中の水分を自在に凍結させ、そして有効範囲内に存在する生命の体内の水分を凍らせることが出来る」


「大気を凍結……!?」


「貴様らの攻撃を防いだのもそれだ。

大気を凍結させて壁を作り、その壁で攻撃を防いでいた」


そして、とクローラーが指を鳴らすと烈風が吹き荒れ、吹き荒れる烈風は吹雪に変わるとカズマに襲いかかり、彼を勢いよく吹き飛ばしてしまう。


「がぁぁあ!!」


吹き飛ばされたカズマは吹き飛ばされた先で倒れてしまい、倒れたカズマの体はギンジ以上に氷に体を蝕まれていた。


「がっ……」


「カズ……マ……」


「この程度だ。

貴様らの力では何も出来ない。

オレの力の前で為す術もなく倒れ、そして誰にも知られることなく死滅する。

その命を大気に溶け込ますようにな」


「くそ……」


「こんな……とこで……」


倒れ、そして体が氷に侵蝕される中でカズマとギンジは悔しそうに言葉を発するが、そんな言葉に聞く耳すら持たないクローラーは頭上に無数の氷柱を出現させると二人に狙いを定めながら彼らに向けて告げた。


「貴様らの人生はここで終わる。

さらばだ、愚かに歯向かった能力者たちよ」


クローラーが指を鳴らすと無数の氷柱は一斉に撃ち放たれ、カズマとギンジを貫こうと迫っていく。


「くそ……」

(ここまでか……。

悪いな、ヒロム……せっかく武器用意してくれたのに……。

オマエの期待に応えれなかったな……)


ここで終わる、カズマはそう覚悟を決めた。


覚悟を決めたカズマを射抜こうと眼前まで迫る氷柱。

もう逃げようとしても間に合わない。


完全に終わりを覚悟したその時だ。


「……終わらせねぇよ」


どこからか声がするとともにカズマとギンジを狙う氷柱が氷の龍によって破壊され、そして二人の体を蝕むように凍り続ける氷が消え去っていく。


「何……?」


突然の事でも表情を一切変えないクローラー。

だが変わらぬ表情の奥からは目の前で二つの命が終わるはずだった光景が止められたことに驚いているようにも感じられた。


なぜ止められたのか?


クローラーがそれを考えようとしていると、カズマとギンジのもとへ一人の少年が現れる。


「ずいぶんと盛り上がってるな、「竜鬼会」の能力者」


「オマエ……」


「まさか……」


現れた少年に驚きを隠せないカズマとギンジ。

その二人の反応に興味も反応も示さない少年はただクローラーを見ながら言葉を口にする。


「コイツらで役不足ならオレが相手してやるよ」


「貴様……!!」


「同じ氷の能力と竜装術だろ?

どっちが強いかハッキリさせたくないか?」


少年は……氷堂シンクは余裕があるような態度で挑発するようにクローラーに向けて言うとゆっくりと敵に向けて歩を進める。


そんなシンクに向けてクローラーは氷の刃を生み出すと撃ち放とうとするが、シンクが右手をかざすと放とうとした氷の刃の上から別の氷が覆い被さるようにして破壊されてしまう。


「!?」


「オマエの能力……大気や大気中の水分を凍結させるような厄介なものだが、その気になればオレは他人の氷を乗っ取ることも出来るんだよ」


「戯れ言を!!」


シンクの言葉を否定するようにクローラーは氷の槍を出現させると即座に撃ち放つが、シンクが右手を動かすと氷の槍は突然方向転換してクローラーの方に向かって飛んでいく。


「!!」


迫り来る氷の槍を避けるクローラーだが、自身の氷の攻撃を返してきたシンクのその力に少し余裕があった表情が一変しつつあった。


焦りと動揺。

シンクの力を前にしたクローラーは確実に追い込まれていた。


「貴様……どうやって……」


「別に、何もしてないさ。

ただオマエと比べて氷の扱いが上手いだけさ」


「何だと……?」


さて、とシンクは全身に冷気を纏うとクローラーを冷たい目で睨みながら彼に向けて告げる。


「オレの仲間に手を出した落とし前……きっちりつけてもらうぞ、執行人!!」

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