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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
精神干渉編
30/672

三〇話 狂鬼


「遊んでやるよ!!」


真助は刀持つ手に力を入れるとこちらに向かい、走り出した。


刃こぼれしたその刀を武器にする。


それには何かしら意味がある。


ヒロムと夕弦は互いにそれを理解し、言葉を発するわけでもなく、ただ頷くと走ってくる真助の両サイドに回り込むように動き出した。



さすが、と真助は感心していた。

戦闘において一瞬の判断が状況を左右する。


その判断が遅れるほど、後手に回り、不利となる。


だがヒロムと夕弦は違った。

真助の行動から危険性を感じ取ると互いに意思疎通することなく瞬時に判断して行動したのだ。


(さすが、その辺のモルモットと違って慣れてやがるな)


二人の行動に喜びを感じた真助は笑みを浮かべ、速度を落とすなり立ち止まり、どちらが先に仕掛けてくるかを待った。


(こいつ……)


(慣れているのは向こうも同じですね……)


ヒロムと夕弦は真助同様に止まるが、夕弦は真助の方を見るなり魔力を纏いながら走り出した。


「まずはオマエか!!」


「ヒロム様に手は出させない!!」


夕弦はガントレットの鋭い爪で真助に斬りかかろうと狙いを定めるが、それよりも速く真助は刀を振り上げるとともに狙いを定め、夕弦に斬りかかってくる。


夕弦は攻撃をやめると真助の刀による攻撃を左手のガントレットで防ぎ、同時に右手のガントレットに魔力を集中させていく。


「相討ち覚悟かと思ってたんだが?」


「そんな気は無い。

倒れるのは貴様の方だ!!」


夕弦の纏う魔力がより一層大きくなると、それに合わせて風が夕弦のもとへと集まり始める。


遠くでこちらを見守るユリナたちは何が起きているか分かっていないが、夕弦をよく知るヒロムは分かっており、そして真助はこれまでの経験からか何が起きているかはすぐに理解した。


「さすがは「風」の能力者か」


「やはりわかっていたか。

だが!!」


刀を防いだガントレットで少し刀を弾くと、夕弦はすかさず刀を左手のガントレットで掴んだ。


「うお!!」


「わかっていたとしても私は勝つ!!」


夕弦の右手のガントレットの爪に風が集まり、それが魔力と合わさると、爪が大きくなり、そして鋭さを増していく。


「……爪迅術・鋭伸!!」


さらに風が集まると爪はより一層大きくなり、そのサイズは夕弦の身の丈と同じにまでなっていた。


「マジか……」


「くらえ!!」


「くらうかよ!!」


真助は刀を手放すと、勢いよく後ろへと飛んで逃げようとしたが、そう簡単に逃げられるはずがなかった。


真助に狙いを定めた夕弦は身の丈にまで大きくなった爪を持つ右手のガントレットを振り上げ、勢いよく振り下ろした。


「風爪烈衝斬!!」


夕弦が勢いよく振り下ろした爪は大きな斬撃を放ち、逃げるのが間に合わなかった真助はそれを直撃で受けてしまい、さらに爪に集まった魔力と風が弾け、真助は大きく吹き飛ばされていく。


「……やるな」


「当然です」


夕弦は自身がガントレットで掴み、真助が手放した刀を投げ捨てるとヒロムのもとへと向かおうとした。


しかし




「……あっぶねぇな!!」


大きく吹き飛ばされた真助は体を大きく捻り、そして体勢を立て直すと、何もなかったかのように夕弦を見た。


が夕弦の一撃は確実に決まっており、真助の体にはそのダメージがしっかりとあった。

出血もしている。



にもかかわらず真助は何もないかのように刀を拾いに向かおうとしている。


「さすがにあの距離じゃ間に合わねぇよな?」


「バカな……」


真助へ一撃を放った夕弦はただ現状に驚くしかなかった。


手応えはあった。

あの距離、あのタイミングで真助を逃すはずもなく、その一撃は決まっていた。


それなのに、真助は今も尚立っている。


「何をした?」


「ああ?

何だと思うよ?」


「貴様にあの一撃を防ぐ余裕はなかったはず。

なのに……」


「言いたいことはわかるけどさ、現実見ろよ。

オレはこうして立ってるんだからな」


「何を……」


「頭冷やせ」


真助の現状に少しばかり動揺する夕弦にヒロムは近づくと、落ち着くように伝えた。


そして続けるようにヒロムは夕弦に対して話し始めた。


「あいつが何したかはオレにもわからんが、今わかってるのはさっき以上の確実な一撃を叩き込むしかないってことだ。

生半可なダメージじゃ倒れないのなら確実なダメージを与える他ない」


「……すいません」


「気にすんな。

オレよかオマエの方が決め手になるのは明らかだしな」


「……謙遜か?」


真助は刀のもとへと辿り着くと、刀を拾い、手に持ち、そしてヒロムを見ながら話し始めた。


「正直な話、一撃は確かにその女が上だが、戦闘センスはオマエの方が上だ」


「嘘臭いな……」


「ま、おしゃべりもここまでだ」


真助は笑みを浮かべながら刀を構える。

が、その真助の身の変化にヒロムはいち早く気づいた。


「おい、傷はどうした?」


ヒロムの気づいた変化。

それに遅れて気づいた夕弦はただ驚くしかなかった。


真助は先程夕弦の攻撃を受けた。

つまり、体にはその傷があるはずなのだ。


なのに、今真助の体にはその傷が消えており、攻撃を受けていないのではないかと疑いたくなるほど、真助の体には何もなかった。


「ありえない……

確実に決まったはず……」


「……アイツの能力か」


真助の能力。

それについては二人とも知らない。


となれば、まず真助の能力を疑うのも必然的だ。


「あれがアイツの能力だとすれば厄介極まりない。

何せ夕弦のあの一撃を受けてもすぐに回復するのなら生半可な攻撃はこっちが不利になるだけだ」


「……攻撃するなら命を奪うしかないですね」


「極論言えばな。

ただ、簡単に言うけど……無理だと思うぜ?」


そう、口では簡単に言えるが実際はそうではない。

目の前の敵、「狂鬼」は二人がかりで攻めてもどうにかしてしまう。


そして夕弦の技を受けても再生して立ち上がるほどだ。


「こうなったら……」


「ハザード」しかない。

ヒロムはそう考えた。

真助の狂っている戦闘力に対抗するにはそれしかない。

どうなるかはわからないが、症状を進行させてでも「ハザード」の攻撃的な状態に賭けるしかない。


しかし、夕弦は違った。


「それだけはダメです」


まるでこちらの考えを読むように言い、そしてヒロムに警告した。


「「ハザード」は力ではありません。

病の一つです。

「ハザード」がもたらす恩恵は薬物と同じ一過性のもの、一度踏み込めば後戻りはできません」


「あいつの手の内全部明かすならやるしかない。

迷ってたらこっちが殺られる」


「ですが……」



「いつまで話してる気だ!!」



ヒロムと夕弦の話を遮るように真助が接近すると勢いよく刀を振り下ろす。


ヒロムは流動術によりそれにすぐ反応して避けたが、夕弦は一瞬反応に遅れて避けられず、ガントレットで防ぐしかなかった。


「くっ……!!」


「夕弦!!」


大丈夫です、と夕弦はヒロムに大きな声で叫ぶように伝えると、真助の刀を弾き、反撃しようとした。


が、真助はその夕弦の動きを封じるかのように連続で斬りかかり、夕弦もただガントレットで防ぐしかなかった。


「くっ……!!」


「どうした、どうしたあ!!」


真助は力いっぱい刀を振り、夕弦を吹き飛ばすと追撃を加えようと動こうとしていた。


「あのバカ……!!」


夕弦が危ない。

ヒロムは走り出し、真助に攻撃を仕掛けるが、真助は避けるとすぐさま斬りかかってくる。


「安直だな!!」


「うるせぇ!!」


ヒロムは真助が斬りかかってくるタイミングで刀の柄を蹴り、真助の攻撃を封じた。


「!?」


「オラァ!!」


真助が怯んだその一瞬を見逃すことなくヒロムは回し蹴りを食らわせ、思いっきり蹴り飛ばした。

が、真助には大したダメージを与えられず、真助自身も体勢を立て直すとすぐさま構えた。


「こんなもんか?」


「この……」


嫌になってくる。

今ヒロムは純粋にそう思っていた。


「月翔団」傘下の部隊「月華」の隊長である夕弦が一瞬反応が遅れたとはいえ苦戦し、さらにこちらの攻撃も大して通じていない。


さらに能力のせいか相手は傷が再生している。

夕弦の一撃がこうもはやく治ったとなればヒロムの攻撃はあまり効かないはずだ。


「くそ……」

(これなら角王相手の方が楽だな……

あっちの方は再生能力がそこまで高くなかったしな。

名前忘れたけど……)


ヒロムが思い出しているのはおそらく拳角との一戦のことだ。


拳角との一戦においてはこちらが有利に進めることが出来たが、今回は違う。


相手は未だ能力を使っていない。

その上でヒロムと互角に戦っている。


つまり、能力を本格的に使われた場合、ヒロムに勝ち目はなくなる。


そうなる前にどうにかしなければ。


「思った以上の強さだ……

これはいつも以上に楽しめそうだなぁ」


「このバトルジャンキーが……」


しかも向こうはこの戦いを楽しんでいる。

ということは間違いなくすぐに終わらぬように奥の手を持っているはずだ。


「どうしたものか……」


ヒロムは真助を前にして頭の中で必死に考えた。

同時に真助がいつ動くかわからないという状況のため、真助の動きにも注意を払っていた。


真助自身もこちらがどう動くか探っており、ただ刀を構えていた。


つまり、先に動いた方が流れを掴むのではなく、確実に相手の行動の先を読んだ方が勝つ。


そう、一切の判断ミスが許されないのだ。



「しょうがねぇか……」


ヒロムは首を鳴らし、深呼吸すると指を鳴らした。


「力を貸してくれ」


当然です、と声がするとともにヒロムのもとへ次々と何者かが現れる。


そう、それはヒロムの味方、そしてヒロムのかけがえのない存在だ。


「マスターのためなら、お力をお貸しします」


ヒロムのもとへ現れたのはヒロムの精霊であるフレイ、テミス、マリア、アルカだ。


四人ともすでに戦う準備は出来ており、真助へと敵意を向けている。


「説明はいるか?」


「いえ、マスターの中で見てましたので把握してます」


「とりあえず、アイツを倒せばいいのよね?」


「……説明の手間が省けて助かるよ」


「……問題はどうやって倒すかですね。

見たところ再生されるようですし……」


「面倒ね。

相手を油断させるしか……」


「オレに考えがある」



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