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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
287/672

二八七話 答えは決まっている


バニーがヒロムに出した問題。


それはヒロムにとって大切なのはこの精神世界とアナタに宿るフレイたち精霊か、それともいつもヒロムの力になってくれているガイたちや支えとなって助けてくれているユリナたちかというものだ。


この問題そのものが試練であり、そしてヒロムは少し悩んで答えを出せばいいと軽い考えを抱いていた。


だが、試練というのは甘くなかった。


バニーが追加で告げてきたルール。

それは選択した答え以外はヒロムの中から消えるというものだ。


フレイたち精霊を選べばヒロムはガイたちとこれまで過ごしてきた日々の思い出と彼ら彼女らの存在も記憶も消される。


そして反対のガイたちを選べばフレイたちはヒロムの中から消滅し、そして彼女たちとヒロムが今いるこの精神世界そのものが崩壊する。


つまり、バニーの出した問題に対してヒロムはどちらかの答えを選ぶために片方を犠牲にし、片方を完全に失わなければならないのだ。


「オマエ……!!」


「アマゾネスやロゼリアのように簡単にクリア出来るはずないのよ、私の試練は。

さて、アナタの答えを聞かせてもらいましょうか……精霊のマスターさん♪」


この問題を解くことは不可能だと感じたヒロムは問題を出したバニーに対して強い怒りを抱くと共に睨みつけ、その視線のを感じたバニーは面白そうにヒロムに答えを選べと言わんばかりに急かす言い方をする。


「試練をクリアしたいんじゃなかったの?

はやくしてくれないと時間切れになるわよ?」


「時間切れ……?

どういうことなの?」


バニーが口にした時間切れという言葉を聞いて戸惑うフレイ。


そんなフレイに向けてバニーは試練に対して施されたルールについて説明を始めた。


「無制限に悩まれたら簡単すぎるでしょ?

だから私の試練には制限時間を設けたのよ。

ていうか、時間切れになるまで悩まなきゃいいことでしょ?」


「待ってください。

その……時間切れになったらマスターは……?」


「時間切れになったら?

そんなの決まってるじゃない……精霊のマスターには全てを失ってもらうわ」


「!!」


「仕方ないでしょ、これが私の与えられた使命にして私の試練なんだから。

このくらいの事は承知の上でしょ?」


何もおかしなことは言っていないと言わんばかりの言葉で説明をするバニー。


そのバニーの説明を受けたフレイはアマゾネスの方に視線を向けた。


なぜ視線を向けたのか、それはアマゾネスなら何かを知っていると思ったからだ。


精神の深層に向かうために必要な試練、その試練を出してきたアマゾネスならバニーの試練の真偽を知っているはずだからだ。


「アマゾネ……」


「彼女の言葉は事実よ。

バニーの試練は「真実の解答を手にすること」。

これまでのようなどちらでもない曖昧な答えではクリア出来ず、そして選ばなければ全てを剥奪される……」


「どうしてそんな試練が……!!」


仕方ないことよ、とバニーはこの試練に対して不満を持つフレイに向けてある事を話し始めた。


「精霊のマスターは無意識で精神の深層に到達した。

そして精神の崩壊を阻止するために私たちは誕生し、彼の中で生きる運命となった。

その彼が再び精神の深層に向かおうとするのだからそれ相応のリスクがあることは理解してもらわないとね」


「そんな……」


「でも答えを選べば彼の命は助かるのよ?

答え次第では私たちも助かるし……」


「そのためにこれまでマスターとともに過ごしてこられた人たちが犠牲になっても構わないと言うのですか!!」


「黙りなさい!!」


フレイの言葉を聞くなりバニーは声を荒らげるように叫び、そして指を鳴らすとともにフレイの体が無数の手錠や枷に拘束されてしまう。


「!!」


「最初からずっと彼のそばにいた程度で分かった風な言い方をするな!!

彼がそれらとともに過ごす中で私たちは精神の深層の入口を隠していた!!

そして精神の深層のことどころか私たちの事など思い出せずに何も無いかのように過ごしている彼のそばにいたいとどれだけ願ったことか……!!

その苦しさがアナタに分かるはずないでしょ!!」


「っ……!!」


「そこで彼の答えを待ってなさい。

アナタがそこから無事に帰れた時、彼の覚悟を受け止めることだけは忘れないようにね」


「そんな……」


「バニー!!」


バニーの言葉に何も出来ないことを痛感したフレイは絶望したかのような表情を見せ、そんな彼女の表情を見るとアマゾネスはバニーに攻撃しようとする。


が、それすら見越していたのかバニーは指を鳴らすと無数の鎖を地面の中から出現させるとその鎖でアマゾネスを縛り上げる。


「くっ……!!

こんなも……」


「力任せに引きちぎりたいならお好きにどうぞ。

でも……さすがのアナタもその至近距離からじゃ致命傷は避けれないんじゃない?」


「何……?」


バニーは一体何を言ってるのか?


アマゾネスはよく分からず、とにかく自身を縛る鎖を彼女が言うように引きちぎろうとした。


しかし、引きちぎろうとしたアマゾネスは鎖を見るなりその動きを止めてしまう。


「……!!」


「あら、頭の中は筋肉じゃなかったのね。

ちゃんと知識があったようで安心したわ」


「姑息な手を……」


バニーに向けてどこか悔しそうに言うアマゾネス。

そのアマゾネスの体を縛る鎖をよく見ると、鎖の至る所にダイナマイトが設置されていたのだ。


バニーがなぜアマゾネスが致命傷は避けれないと言ったのか、その鎖についたダイナマイトが物語っていた。


つまりアマゾネスは大人しくしていれば何も起きないが、万が一にも鎖を引きちぎろうとすればダイナマイトが何らかのスイッチで作動して爆発、その爆発によってアマゾネスは手痛いダメージを受けることになるのだ。


それを理解したからこそアマゾネスは動きを止め、そしてバニーの思惑に乗せられる形でただ黙ってヒロムの答えを待つしかない状態にされたのだ。


「……」


「お利口さんで良かったわ、アマゾネス。

いくらアナタでもそれを防ぐのは不可能でしょ?」


「……そうね」


悔しさを噛み締めるかのように小さな声で呟かれたアマゾネスの一言、それを聞き取ったバニーは再びヒロムに向けて言葉を放つ。


「さぁ、精霊のマスター!!

アナタにとって大切なのは精霊と人間、その答えを……」


「その前に一ついいか?」


バニーの言葉を遮るようにヒロムは突然彼女に向けて質問をしようとする。


フレイたちか、ガイたちやユリナたちか。


どちらかを選ばなければならないこの局面でヒロムは問題の答えではなく、バニーに対しての質問を口にしようとしていたのだ。


「……何かしら?

時間も無いのだから手短に頼むわ」


「そうか。

なら一つだけ……オマエにとって大切なのは何だ?」


ヒロムのバニーに対しての質問、それはバニーがヒロムにした質問を聞き返してるだけのものだった。


その質問をされたバニーはヒロムの不可解な考えに首を傾げるが、当のヒロムは何か企んでるかのような顔をしている。


「……よく分かりませんね。

なぜアナタにした質問を私が答えなきゃならないのか……理解に苦しみますね」


「分かってるからこそ質問したんだ。

オマエにとって大切なのはどっちなのかをな」


「……分かってるのならその頭に記憶し直してもらう為にも答えましょうか……。

そんなの精霊に決まってるわ!!

これまでの時を取り戻すためにも私は私自身が必要になる!!

だからこそ私は私自身を生かすために精霊を選ぶ!!」


「……そうか。

それを聞いて安心した」


バニーの答えを聞いたヒロムはなぜか安心したような表情を見せるとフレイとアマゾネスに向けて優しく伝えた。


「……オマエらのこと、すぐ助けてやるよ」


「ま、マスター……!?

待ってください!!」


「精霊のマスター!!

私のことはいい!!

だからアナタの答えを……」


分かってるさ、とヒロムはアマゾネスの言葉に対して一言答えると深呼吸し、そしてバニーに視線を向けると彼女の問題に対して答えを述べようとする。


「バニー……オマエは精霊か人間、選べと言ったな。

だからオレは……どちらも選ばない」


「……は?」


ヒロムの答え、それを聞いたバニーは聞き返すかのように冷たい口調でヒロムに言い返す。


「アナタ……その答えの意味が分かってるの?

どちらかを選び、どちらかを失わなければこの試練はクリア出来ない。

なのになぜ選ばないの?

選ばないということは……時間切れを待つということになるのよ?

それはつまり……」


「全てを失うってか?」


バニーの言葉に対してヒロムは不敵な笑みを浮かべながらバニーの言葉を訂正するように話す。


「オマエはその問題にある欠陥部分に気づいてないようだな。

おかげで一度は怒りに囚われたオレもすぐに冷静に考えて気づけたからな」


「欠陥?

そんなのあるわけが……」


「あるんだよな、これが。

教えてやろうか?」


「だから何度も言わせないで!!

この試練に欠陥なんて……」


「ならなんでオマエは精霊を選んだ?

オマエはオレに問題を出した時、一度も「どちらかを選べ」とは言ってなかっただろ?」


「何を……」


「おかしいと思ったんだ。

本当に二択なら精霊と人間のどちらかを選べと出題するはずなのにオマエはその聞き方をしなかった。

そしてオマエはオレが問題と同じ質問をした時、あたかも答えはどちらかを選ばなければならないような口振りで答えた」


「それはアナタが……」


「オレは別にどっちかなんて聞いてないぜ。

それなのにオマエは精霊を選んで答えた。

まるでオレに答えはどちらかを選ばなければならないと思わせるかのようにな」


「……っ!!」


ヒロムの話を聞いたバニーはまるで核心を突かれたかのように焦りを見せ始め、その反応を見たヒロムはバニーを見ながら彼女の出した問題についてさらに話を進めた。


「アマゾネスはオマエの試練のことを「真実の解答を手にすること」。

つまりそれはオマエやオレ自身の置かれた状況や問題に対してあらゆる視点から物事を見極めて答えを出せってことなら正解はその中にはないんだよ」


「じゃあアナタの答えは……」


決まってる、とヒロムはバニーに向けて自信を持って強く答えた。


「オレはどっちも選ぶ。

これまでのこともこれからのことも全てを受け入れた上でオレにとってかけがえのないものだからこそどちらかを選ぶことはしない。

オレにとってはどっちも大事で、どっちもオレが恩を返さなきゃならないものだ」


「……」


「だからオレはどっちも見捨てない。

オレは精霊も人間も大切だからこそその両方のために進む」


「……」


「さて、バニー。

答え合わせだ。

この答えで試練はクリアするのか……ハッキリさせようか!!」

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