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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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二八一話 偵察の風


敵を倒すためにどうするか、その一連の流れが決まった中、ギンジはまたしてもガイに対して質問をした。


「その作戦……みたいなのって朝になったら開始するのか?」


「そうだな。

こちらとしては身動きが取れやすく、視界が良好な時の方が戦いやすいからな」


「なるほど……」


「何か気になることがあるのか?」


ガイの言葉を聞いたギンジはなにか思うところがあるのか難しい顔をし、その顔をする理由が気になったガイは彼からその真意を訊ねるようと聞き返した。


するとギンジはガイに対してある事を話した。


「あのさ……もし敵もヒロムが何かしらしようとしてる事を踏まえた上で今回のこの奇襲攻撃と真助たちが倒した能力者の回収をしたとしたら、朝まで待つのはまずくないか?

むしろ敵としてはヒロムという頭が戦線から一瞬でも外れるのを待ってる可能性もあると思うし……」


「それも……そうだな」


ギンジに言われて改めて考え直そうとするガイ。

だが、そんなガイに向けてシオンが忠告するかのようにある事を告げた。


「作戦変更するならしっかり考えた上で決めろよ?

ヤツらが把握してるのはヒロムの思考かもしれないが、あのヒロムの思考を超えるようなことをオレたちが簡単に出来るわけじゃない。

軽率な考えで作戦を変えて敵の思惑に嵌るような真似だけはやめてくれ」


「分かってるさ。

けどギンジの言い分も確かだ。

ここは……」


「少数精鋭で夜間の偵察はどうだ?」


ガイが作戦を変えようか考えていた時、ノアルが彼に向けて提案をした。


「朝まで敵が待つはずがないのならこちらがさきに動きを見せれば敵の動きに対して牽制出来るんじゃないか?」


「けどそれで刺激して攻めてきたら……」


「いや、本当に攻める気があるのならもう攻めててもおかしくないかもな」


ノアルの提案に対してガイは異論を唱えようとしたが、それを隣で聞いていた真助が何かを感じたのかガイに向けて話し始めた。


「敵が本当に攻める気のある連中なら獅童ってオッサンを襲った時点で他の動きを見せてるはずだ。

けど実際のところはオッサンが襲われた場所に団長さんが向かっても敵が現れず、今においても敵が新たに攻めてくる様子もない。

ヤツらは戦力調査のためだけに行動していて、今動かせる戦力がないんじゃないのか?」


「……それも罠だったら?」


真助がガイに向けて熱弁すると、それを聞いていたイクトが真助の話に対してある点を指摘した。


「動きを見せないってのはオレらを観察してるからあえて見せてないだけの場合もある。

真助の言い分で動いたとして、敵が待ち伏せしてたらそれこそ攻めるきっかけを与えることになる」


「ならこのまま待つしかないってか?」


「それは……」


「なんだよ、オマエも迷ってんのかよ……」


「迷うに決まってんだろ?

オレだってさっさと終わらせられるなら終わらしたいし……」


「……ならアナタたちが動くのは明日の朝からにしなさい」


すると夕弦が立ち上がるなりどこかへ向かおうとする。


それが気になったイクトは彼女を止めようとした。


「どこに行くんだよ?」


「私はアナタたちと「天獄」として行動する一方で「月翔団」の強襲部隊「月華」の指揮を任されてる隊長でもあるわ。

今のアナタたちよりは自由に動けるはずよ」


「まさか……」


「ええ、イクト。

私は「月華」の隊員とともに夜が明けるまでの間の周辺の偵察を行うつもりよ」


「だったらオレもいく」


夕弦がやろうとしてること、それを聞いたイクトは自身も同行すると進言した。


が……


「アナタはここに残って体力を少しでも回復させて。

アナタは明日ガイたちと敵を追い詰めるために動かなきゃならないのだから」


「けど……」


「それに私一人じゃないのよ?

隊員の協力を受けた上で偵察に向かうんだから」


イクトを納得させようと説明する夕弦だが、説明を聞いているイクト当人は彼女の話を聞いても未だ納得出来ないらしい。


少しわがままにも思えるイクトだが、そんなイクトに向けてガイが彼を叱るように話した。


「心配なのは分かるけど、夕弦も今出来ることをやろうとしてくれてるんだぞ。

危険だとわかってても自分のやるべき事を全うしようとしてるのに、オマエはそれを止めるのか?」


「わかってるよ。

わかってるけど……」


「はぁ……」


なにか言いたげなイクトを見るなり夕弦はため息をつき、そしてイクトに歩み寄ると彼の額にデコピンをした。


「痛っ!!」


「……アナタのその優しさには感謝してるわ。

でも今私はアナタの恋人としてではなく、アナタも仕えるあの人のために動こうとしてるの。

それだけは理解して」


「夕弦……」


「もしそれでも納得出来ないのなら、力づくで思い知らせるだけのこと……どうする?」


脅迫にも似た最後の言葉、それを聞いたイクトは深いため息を着くと頭を掻き、納得いかない部分を持ちながらも夕弦に対して言った。


「……分かったよ。

偵察に行くだけなら素直に従うよ」


「そう、ありがと……」


「その代わり……絶対帰ってこいよ」


「……当たり前のことを言わないで。

ガイ、何かあれば連絡するわ」


分かった、とガイが一言返事をすると夕弦はガイたちに向けて一礼するとリビングから出ていき、偵察のために颯爽と歩いていく。


その夕弦の後ろ姿を心配そうに見つめるイクトだが、急に自分の頬を強く叩くと立ち上がり、そしてシオンを見るなり彼に向けてある事を伝える。


「シオン、悪いけど気分転換に付き合ってくれ」


「……仕方ないか。

加減しねぇからな」


面倒くさそうに返事をするとシオンは立ち上がるとさきにリビングから出ていき、イクトもそれに続くように出ていこうとした。


が、扉の前で一度立ち止まるとガイに向けてある事を頼んだ。


「夕弦から何か連絡あってヤバい状況なら教えてくれ」


「分かった。

ほどほどにしとけよ?」


「分かってるよ」


イクトはガイに向けて言うとシオンを追って行くように出ていく。


「元気なヤツだな」


「そうだな。

それよりオマエらはどうする?」


出ていったイクトのことを真助が呟いていると、ガイはその場に残った彼とノアル、そしてギンジにこれからについて訊ねた。


「オレはお嬢様方の手伝いでもして時間潰しと洒落込むよ。

どうせ明日暴れられるなら構わないしな」


「オレも彼女たちを手伝うつもりだ。

日頃の礼をしたい」


「そっか。

ギンジは……」


あのさ、とギンジはガイに真剣な眼差しを向けると彼ガイにある事を頼もうとした。


「ガイに頼みがあるんだ」





***

三十分後。



とある場所にて夕弦は黒いコートを羽織って歩いていた。


そしてその傍らには数人の黒い軍服に身を包んだ男と女が歩いていた。


夕弦の傍らにいるその数人は彼女が部隊長を務める強襲部隊「月華」の隊員だ。


「急に呼び出して申し訳ないわ」


「お気になさらず。

隊長のご命令なら異論はありませんので」


「それで隊長、今回のターゲットは?」


隊員の一人が夕弦に今回の目的を確認しようと説明を求め、ユリナら改めて隊員たちに集まってもらった理由を話した。


「今回の目的はあくまで偵察、「竜鬼会」の能力者がいないかを調べることが目的よ。

敵は確実にどこかで我々の動きを見ているはず。

こちらが先手を打って強襲するつもりで動いてもらって構わないわ」


「要するに怪しいヤツがいたら潰せばいいんだな、隊長?」


「そういうことよ。

各自先程分担した編成で行動、一時間後に私のところに集合。

いいわね?」


了解、と隊員たちは夕弦に敬礼をすると音も立てずに姿を消し、そしてそれぞれが担当する場所の偵察に向かっていく。


「私も……」


自分も動こうと夕弦が思ったその時だ。


どこからか風に吹かれて飛んできたのかシャボン玉が一つ彼女の方へとゆらゆらとやってくる。


「……シャボン玉?」

(こんな時間に子どもが遊んでる?

それとも……)


突然のシャボン玉を警戒する夕弦。


そのシャボン玉について頭の中で考えているとシャボン玉は光を発しながら大きく膨らみ始める。


「しまっ……」


発光しながら膨張するシャボン玉を前にして慌てて離れようとする夕弦だが、その彼女が動くよりも先に膨張したシャボン玉が爆炎を放ちながら爆発し、夕弦は爆発と炎に飲まれてしまう。


「……!!」


「まずは一人……」


夕弦が爆発に飲まれ、爆煙が立ち上がる中で誰かが現れる。


白い着物に身を包んだ妖艶な女。


簪を頭に刺した女は扇を広げるなり口を隠しながら煙わ見ながら呟く。


「白崎夕弦、十六歳。

「月翔団」の団長の父と能力者の母との間に生まれた女子。

七歳で姫神ヒロムと出会い、父と同じ道を進むとともに姫神ヒロムのためになりたいという夢を抱くと過酷な特訓にも耐えて若くして部隊長に任命されるまでに上り詰めた。

その部隊は事故によって消息不明となった強襲部隊、名は……」


「……ずいぶんと余裕があるようですね」


爆煙が上がる中、突然風が吹くと煙が払われ、爆炎に飲まれていたはずの夕弦はその身に一切の傷を負うことなく姿を現した。


「……なんで無傷なのかしら?」


夕弦がダメージを受けていないことが不満なのか女は眉間にシワを寄せながら呟き、それを聞いた夕弦は親切に何をしたのかを解説してやった。


「爆発の瞬間、私の体に大気の膜を張ったのよ。

それによって私と爆発との間に壁が出来て爆炎が私に命中しなかったのよ」


「……小癪な真似を」


それはどちらかしら、と夕弦は両手に鋭い鈎爪を施したガントレットを装備すると構えながら女に向けて言った。


「シャボン玉……泡で注意を逸らしてから奇襲するなんて「竜鬼会」の能力者は卑怯者の集まりなのかしら」


「奇襲も立派な戦法、違うかしら?」


「ならわざと消息不明になったのも戦法なのかしら。

教えてもらえますか……強襲部隊先代隊長のクジャ」


「……覚えていたのね。

アナタとはそこまで縁はないはずなのに」


「縁ならありますよ。

アナタとは一度手合わせをしてあと二手で倒せるところまで私が追い詰めたのですから」


「子どものお遊びに本気になっていたとお思いで?

残念だけど、アナタの記憶からそれは消すべ……」


残念ね、と夕弦は全身に魔力を纏うとさらに風を纏い、そしてガントレットの爪を鋭くさせると女を……クジャを睨みながら冷たい眼差しとともに言葉を放つ。


「私の記憶が間違ってるのであれば、私はそれを現実にするだけ。

「姫神」と「月翔団」を裏切り、「竜鬼会」というテロリストに加担したアナタを倒す!!」


「……加担、ね。

アナタに勝てるかしらね……「泡沫竜」のクジャとなったこの私に!!」

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