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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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二七四話 輝きの先へ


『……反吐が出るなぁ』


ヒロムとフレイのやり取りを見ているゼロは心底嫌気がさしたかのような顔をし、そしてヒロムに向けて彼の変わらぬ言葉が放たれる。


『そいつらが何を言おうとオマエは身勝手な男だ。

生まれたばかりで意識もなく行ったことだと思ってるか知らねぇが、オマエがやったことは覆せない。

そして今オマエが抱く感情もだ。

オマエはもうこれまでのようにそいつらを信用するなんて出来ないはずだ』


「……」


『何せオマエの中でそいつらへの認識は変わっている。

これまでの精霊という認識から自分が都合よく生み出したあるはずのないものに変わりつつあるんだろ?

だったら……』


黙れ、とフレイはゼロに向けて一言言うとヒロムを離し、彼女はボロボロになった体で大剣を構えようとする。


そして大剣を構えた彼女はゼロに向けて強い闘志を向けながら話し始める。


「アナタがマスターの闇や心の裏の存在だろうとマスターを愚弄するのは許さない。

マスターを……私たちのマスターを敵視するのであれば私はアナタを倒します!!」


『おいおい、正気か?

ただの精霊の一人がオレを倒せるわけねぇだろ?

それにオマエ……そいつの罪を背負うとか言ったか?』


「マスターがご自身のこれまでを贖うべき罪だと言うのなら私たちにもその責務はあります。

私にはその責務を全うし、マスターの全てをともに成し遂げるためにこそその言葉を口にしたのです」


『頭のネジぶっ壊れてんのか?

罪だとかそんなのはねぇんだよ。

オマエたちを生み出したのはそいつの身勝手であり、オマエたちを形づけているのはそいつの中にある無様な欲だけだ!!

力が欲しいという欲の果てがオマエたちだ!!』


「力が全てではないことをマスターは知っている!!

アナタのその言葉はただマスターを否定するためだけに用意してる虚構でしかない!!」


『虚構だと……?

本来存在してないはずのオマエが偉そうに……』


「本来存在していないはずだったからこそ私はマスターの今を否定するアナタを許せないのです!!

アナタはマスターと自分が同一人物だと謳っていましたが、私はそうは思わない!!

アナタはただ闇の中で孤独にいる自分と私たちに囲まれて過ごすマスターとの違いに嫉妬してただけです!!」


『嫉妬だぁ……?

笑わせるなぁ!!』


フレイの言葉を聞くなり少し苛立ったゼロは叫ぶなり闇を全身から放出し、放出された闇で天を黒く染めるとフレイを睨みながら告げる。


『オレはいわば姫神ヒロムの負の感情と闇の心を内包する存在!!

仮初の幻想に身を委ねてるだけのその男に嫉妬するはずもない!!

むしろその男の無様な姿に怒りを感じるだけだ!!』


「仮初ではありません……私たちは今こうしてここにいる!!

これは紛うことなき事実です!!」


『非力な精霊の分際で偉そうな言葉を……!!

そもそもオマエたちは本来存在することも生まれることもなかった存在!!

自らの身勝手で生み出したその男が憎くないのか!!』


「そんなものありません」


ゼロの言葉に対してフレイは一切の迷いなく答え、そして彼女はただ真っ直ぐゼロを見つめながら彼に向けて今ある胸に秘めた思いを語り始める。


「生まれることも存在することもなかったとしてもここにこうして存在してマスターと触れ合うことが出来る。

マスターの決死の判断だと理解しているからこそマスターを咎めるような理由もなければ必要性も感じられない。

アナタがマスターを否定するのと同じように……私はどんな道を進もうともマスターを信じ続けます!!」


『この……!!』


「それに私はこれまで多くのものをマスターからいただいています。

その恩を返すために私はここで戦っているんです」


「……!!」


フレイの言葉、それを聞いたヒロムは何かを感じ、そして彼はロゼリアの質問の言葉を思い返していた。


『貴公が本当に望むもの、本当に心の底から求めているものは何なのか。

それに気づけなければこの質問の真意を知ることは出来ませんよ』


精神の深層に到達したい理由、そしてその目的について聞かれたヒロムの答えの中にはまだ何かあるとして真意に気づくように告げてきたロゼリア。


その質問を受けていたヒロムだからこそ、フレイの言葉を聞いて感じるものがあった。


「そうか……」

(ロゼリアが言いたかったこと……今なら分かるな。

それに……)


「アイツの質問の意味もな……」


ヒロムは自分の中である事に気づいたらしく、それを確かめるべくアマゾネスの方に視線を向け、そして彼女に向けて話し始めた。


「アマゾネス……。

オマエ、オレに質問したよな?」


「質問?

ああ、アナタが何を求めてるかって質問?」


「ああ、オレは自分のため……自分自身を知った上で前に進むためと答えた。

けどオマエはオレが嘘をついてると言った」


ヒロムは自分がアマゾネスに対して答えた言葉を思い出すように話すと、その上で彼女に向けて改めて彼女の質問に対しての答えを述べた。


「オレは……自分のことをどうにかしてまわりを安心させようとしてた。

だから前に進むために自分を知ろうと考えた。

けど……オレはただ強くなりたかったんだ。

誰かを守るため、誰にも負けないような強い力が欲しかった。

大切な人を、仲間を、支えてくれる人を……そして、これまでそばで見守り続けてくれていた家族を守れるだけの強い力を求めてる」


「……力が手に入ればそれでいいのかしら?」


「力が手に入ったのならオレはこの手が届く範囲のものを守りたい。

戦うことも守ることも……両方を実行できる力がオレは欲しいんだ」


『ハハハハハハハ!!

傑作だよ、傑作』


するとゼロがヒロムの言葉を聞くなり腹を抱えながら大声で笑い、そしてヒロムに向けて彼の言葉に対しての異論を語り出した。


『オマエ自身がこれまで忌み嫌ってきた正義の味方のような言葉を使うとはな!!

手の届く範囲のものを守りたい?

偽善もそこまで行けばご立派で敬意を表したくなるよ!!』


「笑いたいなら笑えよ、ゼロ」


『……あ?』


ゼロの言葉を受ければヒロムは先程までは否定しようとしていた。

なのに今はそれをしないどころか、彼に好きにさせようとしているのだ。


『オマエ、何……』


意外すぎるヒロムの反応に戸惑いを隠せぬゼロはなにか言おうとしていたらしいが言葉を失ってしまっており、そんなゼロに向けてヒロムは語りかける。


「オマエが何を思ってもオレが否定していいはずがなかった。

オマエが言うようにオレとオマエは一心同体……表と裏として繋がっている」


『何訳の分からねぇことを……』


「悪いなゼロ。

今も昔もオレは自分の価値観から生まれる正義を振りかざす正義の味方は大っ嫌いだ。

だからオレはそんなもんになる気は無い。

オレはオマエが言うように身勝手で我儘な人間らしく……「覇王」として全てと向き合う!!」


ヒロムが自身の強い意志を言葉でゼロに向けて伝えるように言い放たれると、彼の周囲に無数の光が現れる。


彼の周囲に現れた無数の光は輝きを増しながら彼の周りを飛び回り、光はラミアたちの方へ向かって飛んでいく。


輝きを放ちながら向かっていく光はゼロの闇に拘束されているラミアたちの周囲を飛び回ると彼女たちを拘束する闇を消し去り、そして闇より解放された彼女たちの体が輝きに包まれていく。


「これは……」


「何……」


「すごく心地のいい……」


『バカな……!?

なぜオレの闇が!?』


自身の闇が消されたことに驚くゼロだが、彼が驚いている間に光はフレイの周囲を飛ぶと輝きを放ちながら彼女の全身の傷を消し去っていく。


『なっ……!?』

(何が起きている!?

なぜオレの闇が!?なぜヤツの体が……)


「ゼロ……オマエが闇を統べるならオレは光を統べる」


光はフレイのもとからヒロムのもとに戻ると彼の体からも傷を消し去り、そして無数の色に輝きながら天へと消えていく。


「オマエが否定するのならオレが全力で受け止める。

オレは……オレたちは前に進むために全てと向き合う!!」


『前に進むため?

戯言を言うな!!』


ヒロムの言葉に苛立ちが隠せないゼロは彼に対して全てを否定しようと闇を放とうとする。


が、ゼロのその一撃を邪魔するかのように衝撃波が飛んで来てゼロが放とうとした闇を消し去ってしまう。


『!?』


「させないわよ、ゼロ」


するとアマゾネスが全身に魔力を纏うなり走り出し、そして手甲の鈎爪に力を込めるとゼロを切り裂こうと襲いかかる。


が、ゼロは闇を纏うなりそれを避けると彼女を殴り飛ばそうとするが、その攻撃を力が回復したであろうロゼリアが斧を用いて防いでしまう。


『貴様らぁ!!』


攻撃を防がれたゼロはどこか悔しそうに叫ぶが、アマゾネスとロゼリアは息を合わせると同時に蹴りを放ち、そしてゼロを蹴り飛ばしてみせた。


「あら、ロゼリア。

助けてくれるの?」


「……たまたまです。

それよりもいいのですか?

貴女はあの男に加勢するのかと思ってのですが……」


「ここに来るまでの私ならそうしてたわ。

聞きたい言葉を聞いたせいなのか……私としてはあの口うるさい悪逆な王を倒したくなったのよ」


「悪逆な王……ですか。

王と呼ぶには未熟すぎる気もしますが……」


「あそこの彼が王を名乗るなら表裏一体の関係だから間違いではないでしょ」


「……それもそうね。

でも、この世界に二人の王は必要ないわ」


分かってるわよ、とアマゾネスはロゼリアに向けて言うとヒロムの方を見ながら彼に対して問うように叫んだ。


「精霊のマスター、今一度アナタに質問する!!

アナタは今何を望み、そして何を求めて精神の深層に向かうのかを!!」


「何を望み、何を求めて……か。

そんなの決まってるだろ!!」


ヒロムは笑顔を浮かべるなり全身に白銀の稲妻と紫色の稲妻を纏い、そして自信満々にアマゾネスに向けて答えた。


「オレが精神の深層に向かう理由は更なる可能性を見つけるため!!

オレが望むのは仲間や大切な人たちを導くだけの王としての力だ!!」


ヒロムがアマゾネスの質問に答えた時、その言葉に反応するかのようにフレイたち精霊の体が輝き始め、彼女たちの体から光の珠が出るとヒロムの方に向かっていく。


白、黒、赤、紫、青……さらにどこからか三つの光の珠がヒロムのもとへと飛んでくると、二十四の異なる色を持つ光の珠がヒロムの周りを飛び回る。


「これは……」


「そう、それでいいのです精霊のマスター。

アナタは何かのために自分を偽ってきた。

その偽りを捨ててこそアナタはより強くなれる!!」


「精霊のマスター……今こそ貴公は更なる次元に向かうのです!!」


アマゾネスとロゼリアがヒロムに向けて言葉を放つと二十四の光の珠が眩い輝きを放ちながらヒロムを包み込んでいく。


が、それをこの男は黙って見ていない。


『……今更何をしても無駄なんだよ!!』


蹴り飛ばされたはずのゼロが巨大な闇をヒロムに向けて解き放ち、放たれた闇がヒロムを飲み込んでしまう。


『感情論だけの強がり如きで戦いは変わらない!!

今更何を思おうとオマエがこれまでを否定しようとしたことに変わりはない!!

オマエはここでオレが……』


不可能だ、とヒロムの声が響くとともにヒロムを飲み込んだはずの闇の中から無数の光が溢れ出ていき、そして闇が光に取り込まれる形で消えてしまう。


そして……


光が溢れ出るとともにその中からヒロムが姿を見せる。


右眼を白銀、左眼を紫色に光らせ、そして体に光を纏うヒロムとこれまで見たことの無いような落ち着きを見せながらも今まで見せたことがないような異質な気を放っていた。


『な、何だこれは……!?』


「いくぞゼロ……。

オレはオマエを……導く!!」


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