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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編・王導開闢
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二六八話 微かな望み


「……最悪だな」


鎧の女との戦闘を繰り広げていたヒロム。


精霊・アリアとマキナによる「クロス・リンク」の力を攻略されつつある中でヒロムと鎧の女の前に現れたのはヒロムが苦戦を強いられた相手……アマゾネス。


アマゾネスはヒロムと鎧の女に対して順に視線を送るとなぜか嬉しそうに笑みを浮かべる。


「フフ……。

私のいない所で楽しそうに戦ってたのね」


「アマゾネス……!!」


ただでさえ鎧の女を相手に苦戦しているヒロム。

そこにアマゾネスが介入するとなれば圧倒的に不利だ。


ましてアマゾネスが何かの気まぐれでヒロムを助けるなんて奇跡のような展開も起きないだろう。


つまり、この状況は非常にまずい。


未だに能力を使わない鎧の女、先の戦闘においてヒロムたちを寄せ付けぬ力を見せつけたアマゾネス。


この二人はどちらも天邪鬼と同じヒロムとの繋がりが途切れて封印された精霊だ。


ヒロムとの繋がりが途切れてるからこそその繋がりを取り戻すために試練をクリアしたいヒロムだが、この二人は二人ともが戦いを求めている。


とくにアマゾネスはヒロムとの戦いを楽しもうとしている。


「……」

(アマゾネスは確実にオレと戦おうとするはずだ。

オレとの戦いを一対一で臨みたいのならあの鎧の女を倒そうとしてくれるかもしれないが……このタイミングで現れたってことはあの女と手を組んでる可能性もある)


大将を構えるヒロムは突然現れたアマゾネスの動向に警戒しながら彼女がどう動くかを考えようとする。


が、そんなヒロムの思考をかき乱すかのようにアマゾネスは鎧の女に向けて話し始めた。


「ねぇ、ロゼリア。

アンタが何で精霊のマスターと戦ってるの?

アンタはどちらかと言うとそこの彼には興味ないんじゃなかった?」


「……貴女には関係のないこと。

私は精霊のマスターの力を見極めるために戦っている。

貴女のような戦闘に快楽求めるような野蛮な理由じゃないわ」


「野蛮?

どうかしらね。

アンタも私も元々はそこの彼に仕えるはずだった精霊。

そして私たちはそこの彼が精神の深層にたどり着いたことで生まれた存在……つまり彼も私も同じように戦うことを求め、アンタも私と同じように戦うことを求めてるってことよ」


「戦いたいことを正当化しようとしないでもらえるかしら。

私は彼と戦ってるのだから」


「……そう。

じゃあ……仕方ないわね」


鎧の女の言葉を聞いたアマゾネスはため息をつくなり不敵な笑みを浮かべ、そしてヒロムの方に向かって走り出すと彼に攻撃しようと襲いかかる。


「やっぱりか!!」


アマゾネスとの戦いは避けられないと覚悟していたヒロムの予想通りアマゾネスは彼に接近し、彼を倒そうと手甲の鈎爪で襲いかかるが、ヒロムは大剣で一閃を放つことでそれを防いでみせた。


「へぇ……さっきまでみたいに防御壁つくらないんだ」


「オマエに対して発動しても意味ねぇだろ?」


「理解してるようね……でも、無いよりはあった方がマシかもね!!」


ヒロムに向けてアマゾネスは爪によって放たれる斬撃を何度も何度も放ち、ヒロムは大剣で全て斬り払うようにして防ぐ。


が、アマゾネスはそれを読んでいたのか全身に魔力を纏うなり至近距離から何十もの衝撃波を発生させてヒロムに襲いかからせ、大剣での防御も「クロス・リンク」の力による防御も間に合わなかったヒロムは勢いよく吹き飛ばされてしまう。


「ぐぁっ!!」


「ほらどうしたの?

あんだけロゼリアを楽しませてたのに私とは楽しんでくれないのかしら?」


「脳筋女が……。

つうかそのロゼリアって誰だよ」


「鎧に身を包んでるアイツの事よ」


アマゾネスは自身が口にするロゼリアが誰のことなのかを説明会するように鎧の女を鈎爪で指しながらヒロムに言うと、さらに衝撃波を生み出してヒロムに攻撃した。


先刻のアマゾネスの衝撃波に吹き飛ばされたヒロムは即座に立ち上がると大剣に魔力を纏わせながら防ごうと動くが、ヒロムが衝撃波を防いでいるとアマゾネスは彼に接近して腹に蹴りを食らわせる。


「がっ……」


「隙だらけね。

何か考え事でもしてたのかしら?」


「この……」


「そうだとすればずいぶん余裕があるようなのね!!」


アマゾネスは魔力を足に集中させるとヒロムに対して蹴りの応酬を放ち、そしてヒロムは防ぐ間もなく全て受けると勢いよく蹴り飛ばされてしまう。


地面に何度も打ちつけられるように蹴り飛ばされた先でヒロムは倒れ、彼が倒れると同時に「クロス・リンク」の力が解けて元の姿に戻ってしまう。


「クソっ……!!」


「意外と脆いのねアナタの力は。

ロゼリアを楽しませてたから多少は期待してたのに……ガッカリだわ」


倒れても尚立ち上がろうとするヒロムの姿を見ながらアマゾネスはどこか残念そうに言うと、倒れても尚立ち上がる意志を見せる彼に向けてある事を告げた。


「どうせ他にも手は用意してるんなら見せてみなさいよ。

私には通じないって証明してあげるわ」


「挑発か?」


「いいえ、事実を分からせるための忠告よ。

アナタ程度がどれほど踠き足掻き苦しんで練り上げた策も経験の積み重ねで得た技術も私には通じない、所詮はその程度の力で止まってることを理解させるためによ。

現実を突きつけられて絶望したくないのなら……諦めることを勧めるわよ」


「……」


「そう言えばロゼリアに向かって少し偉そうに言ってたわよね、アナタ。

答えがないからこそ戦う、て。

哀れな話よね……結局アナタ程度じゃその場で理想論を語ることしか出来ないんだから」


「オマエ……!!」


アマゾネスの数々の言葉を受けて怒りを抑えられないヒロムは拳を強く握ると白銀の稲妻を全身に纏わせ、そしてアマゾネスに殺意を向けながら睨みつけた。


その睨みつけるような視線を受けてもアマゾネスは平然としており、それどころか今のヒロムの姿を嘲笑うかのように話し始めた。


「理想論の次は感情論なの?

自分の弱さから目を逸らすかのように必死になって抗っても力の差は埋まらない。

ここに……アナタと私との間に生じた力の差はもう埋まることは無いのよ」


「だから諦めろってか?」


「奥の手があったところでアナタの今の力は私には及ばない。

私だってまだ本気になってないのだから」


「……そうかよ。

けど……」

(ここで簡単に諦めてたまるかよ……!!)


ヒロムはアマゾネスに向けて構える中で身に纏う白銀の稲妻をさらに強くさせ、そして彼は頭の中でアマゾネスを倒すための手段と策を用意しようと考え始めた。


(ヤツらに見せた「クロス・リンク」は所謂オレの体への負担が少なくて済むものだけだ。

つまりまだオレにはフレイとラミアによる強力な「クロス・リンク」が残っている。

ディアナとクロナの「クロス・リンク」による超高速戦闘状態で三十秒ヤツの動きを封じてからフレイたちとの「クロス・リンク」に切り替えて攻撃すれば……)


「マスター、ダメです……」


ヒロムが頭の中で考えを巡らせていると、それを阻止するかのようにフレイがヒロムに向けて言った。


「今のマスターの体であの「クロス・リンク」を発動して何が起こるか分かりません。

そんな状態での発動は出来ません……」


「な……」


フレイの言葉を聞いたヒロムは予想すらしてなかったのか動揺してしまい、そしてその様子を見るなりアマゾネスは笑い出した。


「ハハハハ!!

どうやら頼みの綱も尽きて本当に手の打ちようが無くなったようね」


「……だとしても」


ヒロムは深呼吸するなり白銀の稲妻をさらに強くさせ、そして自身の手元にフレイの武装である大剣を出現させ、それを手に取るなりアマゾネスに向けて構えた。


未だ諦めようとしないヒロムにアマゾネスは深いため息をつくが、それを聞いたヒロムは強い意志を胸に抱きながらアマゾネスに向けて言った。


「オマエを倒さなきゃオレは前に進めない……!!

オマエを倒して道を切り開かなきゃオレは何も出来ないまま終わっちまう……!!

だからオレは……オマエをここで倒す!!」


「無駄なことよ、精霊のマスター!!

アナタの力は私には及ばない!!

自分を偽ってまで戦おうとするアナタでは私は倒せな……」


「どうかしら?」


すると鎧の女がヒロムの方に向かって歩きながらアマゾネスに向けて話し始めた。


「貴女は戦うことで快楽を得ているようだから気づいてないのかもしれないけど、彼は確実に成長している。

天邪鬼の話を聞いたことで新たな志を胸に抱き、そして私や貴女に及ばない実力も進化し続けている」


「進化?笑わせないで。

アナタや私に苦戦してるというのに進化していると断言出来るわけがない」


「ええ、たしかに苦戦してる姿は多々見られた。

でも精霊のマスターは変わりつつある」


「本気で言ってるの?

自分を偽ってまで戦おうとしてるだけの彼が?」


「アマゾネス、貴女を相手に戦った時に何を思い何を感じたかは知らない。

だけど彼は変わっている……少しずつ、一人の戦士として確実に変化している」


「戯言は結構!!

アナタが何を言おうと私やアナタに苦戦してた事実は変わらない!!

繋がりが途絶えているからと妙な優しさを持つからそうやって……」


「いいえ、これは優しさから言ってるものではない。

これは彼と……精霊のマスターとの手合わせをした上で私が見定めた事実から伴う結論です」


鎧の女はヒロムの目の前に立つように歩み寄ると斧を構え、そしてヒロムを守るようにアマゾネスの方を見ながら魔力を纏った。


「!?」


「な、何が……」


突然のことでヒロムはもちろんのこと、フレイたちまでもが女の行動に驚き、さらにアマゾネスも目を疑うような光景に少し困惑していた。


「な、何をやっているの……!?

アナタまさか……」


「そのまさかよ。

私は彼と戦闘を行い、武器を交えることで本質を見抜こうとした。

そして彼は少し不格好ではあるものの私の期待を超えてくれる答えを見せてくれました」


そして、と鎧の女は斧にも魔力を纏わせると力強い一閃を放ち、そこから解き放たれた斬撃がアマゾネスに襲いかかる。


迫り来る斬撃をアマゾネスは鈎爪で防ごうとするが、斬撃の力の余波のせいで攻撃を防いだにもかかわらず後ろに押し返されてしまう。


「くっ……!!」


「私は導き出した。

私と答えを……私の試練を乗り越えた彼に従うと!!」

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